遠い日に
秋田の郊外に、住んでいた頃
ときおり、牧師さんが、尋ねてくださる。
聖書のお話をして帰り際に、幼い長男に
「神の祝福がありますように」と、祈ってくださる。
長男が初めての、
クリスマスイブを迎えたその日は、
朝から雪が降り続き、吹雪になった。
降った雪は、地上から舞い上がり、降りてくる。
地上は、いつしか雪原になり
波打って起伏し、美しい雪景色。
窓に吹き付けられた雪は
部屋の暖房で、中心から解けて、額縁のようになり、
その窓から見る雪景色は、
絵のようだった。
やがて、吹雪がやみ、
辺りは暗くなった頃、
長男を抱いて、窓の外を見ると、
点々と灯りが見え、だんだん近づいてくる。
「今晩は~」
驚いて、玄関を開けると、
牧師さんが、数人の信者さんと、
灯りを手に、尋ねてくださる。
いつものように、幼い長男の頭をなで、
「神の祝福がありますように」と祈って下さり、
雪の中を遠ざかって行く。
雪の夜に
歌声は、静寂の中に
吸い込まれるように消え
灯りも、点々と遠ざかって行く。
その情景は 、まるで幻想の世界・・・
毎年、クリスマスが近づくと、
過ぎし遠い日の、素敵な夜を
静かに想う。
同文ホームページに記載
http://www.kotorizawa.com/xmasu.html
今年のお稽古も今日でお終い。
茶室には「無事」と書かれたお軸が飾ってあった。
お軸拝見の後に「お軸は?」と、お尋ねしたら、
「一年間無事に過ごせましたので、今日の日にお目に
かけました、このお軸には、思い出があるんですよ」
と、話された。
ご主人が定年で、お仕事を辞められて帰られた日に、
初めて茶室に飾り、無事に仕事を終えられたことに、
感謝をして、お茶を一服差し上げられたそうです。
幼友達で、お茶の先生の感慨深い、お話でした。
ソロバン玉の型の水指
先日、授産施設複合型施設にコーラスの慰問に行った。
会場には、高齢の方、壮年の方、まだ若い人に、
介護士さんが、付き添って、席についている。
指導者の先生が「こんにちは、今日はお招き下さいまして、
ありがとうございます。
皆さんと一緒に、歌いながら楽しい時間を過ごしましょう」と
挨拶をされた。
ピアノ伴奏で、皆さんが知ってる童謡・叙情歌・クリスマスソン
グを歌うと、施設の皆さんも一緒に歌い始めた。
最後に ”雪の降る街を”女性三部合唱で歌いながら、
前を見たら、一人の老婦人が、うつむいたまま、膝の上で
拍子をとっている。
過ぎし日の、思い出が蘇ってきたのでしょうか・・・
その様子を見たら、歌いながら、涙がこみ上げてきた。
先生が「これでお終いにします 又お逢いしましょう」と、
挨拶をして下がろうとしたら、
先ほどのうつむいて拍子をとっていた老婦人が、
「あの~旦那さん 一人で歌って くなんせ」
と、先生に言われた。
独唱をして下さいとお願いをしたのだった。
一瞬空白の時が流れたが、伴奏者はピアノを弾き始め、
先生も壇上に戻り、歌い始めた。
雪の降る街を~♪ 雪の降る街を~♪
思い出だけが通り過ぎてゆく~♪
雪の降る街を~♪
美しい声で、しっとりと歌い上げた。
いつしか、会場は心一つになり、拍手に包まれた。
忘れ去った日々を歌声で、思い出して下ったのでしょうか。
旦那さん! と、呼びかけた言葉にいい知れぬ感動を覚えた。
パソコンの友達二人と、”ホテル森の風 ”に行き、
忘年会を兼ねて昼食会をすることになった。
楽しみにしていたこの日の朝は、最低気温-9.7度の
厳しい朝を迎える。
道路は凍りついたまま・・・
でも、友達は運転の上手な方なので、安心してお話が弾む。
途中の五所湖には、薄氷が張りはじめていた。
しばらく車で走ると、外観はヨーロピアンスタイルのホテルが
森の中に見える。
辺りは白一色、おしゃれなホテルは、女性にはうれしい・・・
ロビーから、らせん状の階段を昇っていくと、
そこには、宮沢賢治の童話の世界が広がっていた。
惹き付けられるように、童話の世界に誘われて行く・・・
< ナナカマドの赤い実が 青空に映えて美しい・・・ 例年、クリスマスの頃には雪が降り ホワイトクリスマスを迎える 街路樹のナナカマドは やがて白い帽子を被るでしょう |
風も無く青空が広がったので、ダム湖へ・・・
夜に降った雪が岸辺に残っている
陽が射して歩くと汗ばむくらいだが、
湖畔の風に顔と手が冷たい。
足元は、凍りついて滑りそう・・・
炉開き
炉を開いて新しい季節を迎える時期であると同時に、
新茶の入った壷を開ける時でもあるこの頃を、
お茶の世界では茶の新年として祝います。
お茶の先生でもある友達から
「今年も炉開きの季節になりました・・・」と、
茶会のお招きをいただきました。
茶室に入ると、”炉開きの茶事”が行われ
茶会席の料理が用意されていました。
新茶の壷を開き「口切り」のおめでたい茶会を
おごそかに催されましたが、会席料理を頂く頃は、
お話が弾み楽しい茶会になりました。