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徒然自己完結

適当な思いつきや感想を、これまた適当に断片的に残しておくだけの日記です。

悪の教典

2012-02-21 17:02:53 | 読書
貴志祐介 先生

大分前からきになっていて、ようやく新書一冊にまとまったし、ということで購入。
この作家さんは、中学生の時に読んだ『青の炎』からのファンです。
青の炎も衝撃的でした。犯人の視点で、追いつめられて行くのを冷静に見て、捕まらないように、最後には自殺に見えないように自殺する。
そのプロットに引き込まれました。
また、新世界より、も一気に読みました。奇妙な生き物達、奇妙な世界、奇妙な力。そんな奇妙な世界を生きて行く、意図的に集められたほんの少し異分子な子供たちが生きて行く間に起こして行く、たくさんの事。
というわけで、こんかいも楽しみに買って、一晩で読み切りました。

読んで本を閉じて、何とも言えない気分にさせられました。
第1章の最後から、なんとなく変だ、とは思うのですが、中盤で、この人はヤバい、となり、ヤバいっていうか、もうおかしい、おかしいっていうかこれは駄目だ、となります。
犯人の視点にたって、殺人が起こっていくのを見ている訳ですが、どの殺人も、たいした動機もなく、んー、この人じゃまだな、って言う感じで進んで行きます。
だから殺人鬼の出て来るミステリーというよりは、なにか得体の知れない者が人を殺して行くホラーのような。こういうのはサスペンスというのでしょうか?分類は良くわかりませんが、そんな感じです。
貴志先生の本は、ぐいぐいとテンポよく読めるのですが、後半は、それに合わせて”テンポよく”人が死んで行きます。
私は本を読む時には、視点になっている人に共感して読んで行くのを気持ちいいと感じるのですが、共感能力がないという犯人を追いかけて、視点を失って放り出されるような。最後にはどこへ行けばいいのか良くわからないような気になりました。完全な第三者として、理解できない怪物を見るような思いで犯人を見ていたというわけです。そして、これは、他の多数の登場人物が最後にこの犯人を見る時と同じ視点です。つまり、登場人物達も、私もみんな、犯人が理解できない怪物に見える。200ページくらい読んだところではそんなことをするようには全く見えない人が、です。これが本を閉じてのこった、なにか信じがたい人に共感しようとしてしまったような、そういう何とも言えない気分です。

すごい勢いで走り抜けるように読みましたが、正直結構怖かったです。
ホラーじゃないはずなのに、ホラーを読んだ後のような、背筋が寒いような怖さがありました。

しかし、どうしてこんなに読みやすいのか。
また長編を楽しみにしたいです。

仏果を得ず

2012-02-21 16:35:56 | 読書
三浦しをん 先生

この間の舟を編むが気に入ったので、また一つ購入。
今度の舞台は人形浄瑠璃だ。

三浦先生のすごいところは、その世界の事を全く知らなくても、そして興味が無くても面白くて、最後ページを閉じたら舞台に行こうかなと思えるところだと思う。このページを閉じてから、というのが大事だと思う。

ごくごく個人的な感想を書けば、例えば
平 安寿子さんの『こっちへお入り』
これは、主人公のOLが落語にどっぷりはまって行くところを書いた小説だけれど、設定上当たり前だが、本人がおもしろいおもしろい、と話していて、へぇそうなのか、と思うが、読み進めにくかった。この本は、途中で自分もその落語を聞いてみて、一緒にテンションが上がって行かないと、着いて行きにくい。もちろん、落語の筋や面白い言い回しは中で出て来るから、聞かなくてもその落語自体は分かる。それでもやっぱりわからない。落語の魅力などもちろん本を読んでも分からないから当然だが、その魅力が分からないと着いていきにくい。これが私の感想だ。この本は、だからこれを読みながら一緒に落語にはまりましょう、が趣旨だと思う。

それに対してこの『仏果を得ず』
浄瑠璃にたいしてはへぇ、一度聞いてみたいなー、程度で十分だ。三浦先生独特の魅力的な登場人物が独特の世界を描き、人形浄瑠璃、という300年以上の伝統をもつ芸の世界へ挑んで行く。人とはなしては、アホとしか思えなかった登場人物のぼんぼんの色気や近松門左衛門の意図に気づき、またなにかを見ては、あぁあの場面は、とくる。その場面場面は知らなくても、一緒に考える気になれる。そして、そんな浄瑠璃一辺倒な技芸員たちを囲む人たちもまた魅力的だ。
奥様の
「さて、うちのひとはどこでどうしてござるんや?」
の一言にはしびれる。面白い。
自らの極めたい芸に没頭している男どもと、それを生暖かく見守りながら支えている女性陣。みんな色濃く面白い。
さらさらっと読めて、そして本を閉じたら、一度くらい伝統芸能とやらを見に行こうかな、と思わせてくれる。
楽しい小説でした。


永遠の0

2012-02-21 16:35:16 | 読書
永遠の0を読んだ。
最初はタイトルに惹かれた。何が書いてあるのか、どんな0なのか。
あらすじを読んで、あぁ零戦の0なのか、と分かった。
そこで、何度か購入を迷った。
本屋の平積みでは長い事推されていたけれど、戦争小説か、と思うといまいち気がのらなかったからだ。

戦争映画や戦争小説はどうしても後味の悪い気持ちにさせられるものが多いと思う。日本人だからどうしても日本目線でみるから、とういうのもあるかもしれない。その先は敗戦だと分かっている。
戦略に目を向ければ日本の戦略は大勢を見れば明らかにどうしようもないものばかりで、始めっから負けに向かって走っているようにしか見えない。こういうものは、結果をみて、相手の状況を知ってから批判するのは卑怯だと思うけれど、それにしたって、それはないだろう!!とさけびたくなるような大きなポカをいろいろとやらかす。敗色が濃厚になってきてからはもっとひどい。起死回生の一手をさがしているとは思えないような、諦めているなら無駄に人を死なせないでくれといいたくなるような作戦が多い。
じゃあ前線や、一つ一つの戦局をまかされる人達に焦点をあてるとなると、これまた理不尽な思いで読んでいて悲しいのか腹が立つのかとにかく胸の奥の方にこもる何かがあって気分よくはもちろん読めない。一所懸命に戦っているのはわかるが、人間性に焦点が当たれば当たる程、理不尽に死んで行くのを追いかけるのが辛くなる。上からの命令に、どんな命令でも従うしか無いという現実と、絶望的な目の前の戦況に、胸の奥がもやもやしてやりきれない気持ちになる。

小説にして映画にしても、どれだけ良いと言われようと見ると気が塞ぐようなそんなイメージが強く、なかなか手が伸びなかった。

だから、この小説を読んでちょっと驚いたのは、読後感の良さだった。
戦争の悲惨さに焦点を当てていない訳ではない。むしろ戦時中の理不尽さやそれでも戦った人たちの気持ちはこれでもか、と書かれていた。それでも、悔しかったり、悲しかったりしても絶望感がないのだと思う。焦点は守りたいモノや生き延びたい将来に当てられていて切なくても、直視したくなるように書かれている。

戦争にかんしては上記のように、触れるのを避けるようにしてきたのであまり詳しくもないけれど、それでも激戦地として有名だということは知っている戦場が並んでいた。ミッドウェー島がハワイだというのも怪しかった私でaある。日本地理ですらあやしく世界地理などさっぱり。名前だけは聞いた事があっても、恥ずかしながらどの辺りかは全くわかっていなかったソロモン諸島、ガナルカナル島などの戦争の様子を覗けたし、読後には、知らないじゃないよな、と思ってgoogle mapで調べてみたりしたくなる。
海軍の航空部隊がメインだが、人が振り返って話す、という設定だったので陸軍の話も少しだけ触れられている。
悲惨なことが軽く語られている訳でもないけれど、それでも最後にはどこか心がほっこりとするような。それでいて、もう少し第2次大戦もまともに勉強してみようかという気にさせてくれる。そんな小説です。
概要を聞くよりも、読んで欲しいと思います。

春になったら苺を摘みに

2012-02-06 15:51:39 | 読書
梨木香歩

西の魔女が死んだを読んだ。
イギリス風のオールドスタイルで生きる祖母と女の子の交流を書いた小説だ。というと、ひどく平べったいけれど、ちょっとファンタジックで、不思議な気配があって、魔女だという祖母の目を通して見える世界がとても素敵だ。心のあり方とか、自然とのつきあい方とかを教訓的ではなくて、なんだかいい雰囲気ね、という感じで示してくれる。そこで出て来るイギリス風のオールドスタイル、というのにすごく惹かれてこの作者の別の作品は、と探していて見つけたのがこの本、『春になったら苺を摘みに』
作者がイギリス留学中に下宿した家主、その下宿であった人たちを中心としたイギリス留学を書いたエッセイです。
海外留学先の下宿としては、ものすごいラッキーで無ければこんなところには当たらないと思うけれど、とても素敵な下宿先です。
ロンドン郊外のちょっとした田舎。なんといっても信じられないくらい、下宿先の女主人が良い人。本当に、西の魔女が死んだの魔女みたいなおばあさん。博愛精神が人の形をとったような方に描かれています。

いろんな国の人が下宿にやってきて、一緒に住んだり、イギリス国内を旅行してみたり。時々不意に戦争のこととか、重いテーマが出てきたりして、でもそういうのまで包むような穏やかな雰囲気が一本通っています。

イギリスの田舎のカントリーハウスを訪ねて、のんびりと旅行してみたくなる、そんな一冊です。

ニッポン社会 入門

2012-02-05 20:06:34 | 読書
コリン・ジョイス

イギリス人の新聞記者の方。10年日本に住んで、日本の記事を本国の新聞社に送ったりしていたらしい。
その方の日本社会入門。というと堅苦しく聞こえるが、要は日本って住んでみるとさ、っていう感じのエッセイです。すごくイギリス人っぽいユーモアにあふれています。というかこれがイギリス流のユーモアなのね、っていう感じ。
各記事がそれぞれおもしろいし、へぇっと思います。海外に何度か行った事があるなら、あぁ、なるほどっと思ったりもします。

個人的に面白いな、と思ったのは彼の好きな日本語のところ。
一番好きなのは、おニューだそうです。
たしかに、言われてみればおもしろい言葉。
英語のnewになぜか丁寧語のおがついちゃってる。
作者もこれについて、英語のnewにはない、新しい服や靴をかって初めて使う時のわくわく感があらわれていてすごくいいって言ってます。
言葉については、擬音語は学ばないと分からない、と言われてあぁ、と思いました。
おなか減った、の意味は分かっても、おなかぺこぺこは理解できなかった、とか。
あー、とか思います。
頭いたい?ときかれたら答えられるけど、頭がんがんって感じ?ときかれても答えられない、とか。頭いたい?とか英語で言いにくいし、できるだけ簡単な日本語で聞いてあげようと思ったのかなぁ?
擬態語って自然と使いますけど、考えてみればそんな音しないんだから、音で表してみて通じるってすごいよね。

まぁこういうのはささいな例ですが、イギリスと比較してみたりしながら、日本って独特な国だよね、っていう感じで進みます。軽快に笑い飛ばしてくれたり、褒めてくれたりまぁそんな感じで。自分より日本に詳しいんじゃないかとか思います。
ちょっと国際感覚みたいなものをかじった気になってみたい時にいいんじゃないかとも思いますが、なにより、おもしろい小ネタを探している人におすすめ。
同じ作者のイギリス社会入門とあわせて、面白い読み物です。
日本語も軽快で読みやすいです。