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第六 共犯①

2005年01月25日 | 刑法
一 意義

1 共犯とは何か
 (1) 広義の共犯=主体が複数の場合一般をさす
 (2) 狭義の共犯⇔「正犯」
   狭義の共犯=教唆犯、従犯
   正犯=単独正犯、共同正犯
  →共同正犯と教唆犯、従犯の区別は「正犯」か否か。
  「正犯」とは、「実行行為」を行った者である。ただし、「実行行為」は、実質的に理解する=価値的に結果発生を支配することを意味する

2 任意的共犯と必要的共犯
 (1) 任意的共犯→総則の共犯の規定が適用される
   構成要件が一人で実現できるものとして規定される場合に、これを数人で実現する場合
  ①共同正犯(60条)→2人以上共同して犯罪を実行した者(正犯)
  ②教唆犯(61条)→人を教唆して犯罪を実行せしめた者(狭義の共犯)
  ③幇助犯(=従犯、62条)→正犯の実行行為を容易ならしめた者(狭義の共犯)
 (2) 必要的共犯
  構成要件が数人の共同行為を要求している場合
  ①対向犯→2人以上の者の対向的な意思の合致による相対立した行為を独立の構成要件とする犯罪 例:収賄罪と贈賄罪
  ②集団犯→多数人の同一方向に向かっている集団的行為を独立の構成要件とする犯罪(多衆犯) 例:内乱罪、騒乱罪

二 本質

1 犯罪共同説と行為共同説
 (1) 犯罪共同説(判例、通説)
   特定の犯罪を共同したものとして処罰される。
   ただし、構成要件の重なる限度で共犯が成立するとする「部分的犯罪共同説」が通説。
 (2) 行為共同説
   行為を共同したものとして処罰される。

2 共犯従属性説と共犯独立性説
 (1) 共犯従属性説(判例、通説)→犯罪共同説
   共犯の処罰根拠を正犯の実行行為(→最終的な結果発生の現実的危険性)に求める。
 (2) 共犯独立性説→行為共同説
   共犯の処罰根拠を共犯の行為それ自体に求める。
 (3) 共犯従属性説の論証
   この点、主観主義刑法理論(新派)の立場から、共犯の反社会的性格は、共犯行為(教唆行為、幇助行為)に徴表されており、正犯の実行行為は単なる因果の流れにすぎず、共犯が共犯行為をした以上、正犯が実行に着手したかどうかを問わず処罰されるとする共犯独立性説の立場があるが、主観主義刑法理論自体妥当とは言い難い上、共犯の処罰根拠は正犯を介して違法な行為を実現する点にあること(不法<違法>共犯論)、刑法61条1項、62条1項の文言は正犯の実行行為を予定していることなどからすれば、共犯の処罰には正犯の実行行為が必要とする共犯従属性説が妥当である。

3 共犯の従属性
 (1) 実行従属性→共犯の着手時期
 (2) 要素従属性→従属性の程度
 (3) 罪名従属性→共犯の罪名

4 実行従属性
  正犯が実行行為に着手しなければ、共犯は処罰されない。
 ←共犯においても、正犯と同様、違法性の要件として、具体的な結果発生の現実的危険性が必要であるから。

5 要素従属性
  共犯が処罰されるためには、正犯の実行行為が構成要件該当性、違法性、責任のどの段階まで満たすことが必要か。
 (1) 誇張従属性説→構成要件該当性、違法性、責任、処罰条件
 (2) 極端従属性説→構成要件該当性、違法性、責任
 (3) 制限従属性説→構成要件該当性、違法性
 (4) 最小従属性説→構成要件該当性
  (3)説が通説。
  その結果、責任無能力者に教唆した場合、正犯は処罰されないが、教唆犯は処罰される。

6 間接正犯と要素従属性
  間接正犯は、従前、教唆犯が不成立の場合に、犯罪処罰の間隙を埋めるものとして議論されてきた。すなわち、極端従属性説に立った場合、被教唆者に責任能力のない場合は、教唆犯は成立しないので、間接正犯が成立する、という形で議論されていたのである。しかし、教唆犯の成立は「狭義の共犯の成立」の問題であり、間接正犯の成立は「正犯の成立」の問題であり、両者は別の問題である。教唆犯が不成立だからといって、常に間接正犯が成立するわけではないし、教唆犯が成立しうる場合に、間接正犯が成立しえないものではない。間接正犯は「狭義の共犯の不成立」ではなく、あくまで「正犯」の問題である。「正犯」とは、自らの手で実行行為を行った者またはそれと同視できる者である。これを実質的にいえば、結果の発生を一定程度以上支配していた者ということである。

7 罪名従属性=共犯と正犯は同一の罪名について成立すること
  共犯の錯誤において、錯誤論で法定的符合説を採用すれば、部分的犯罪共同説(構成要件の重なる範囲内で共犯が成立する)に至り、その限りでは共犯者間で罪名は異なりうる→罪名従属性は放棄される。