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第四 違法性①

2005年01月25日 | 刑法
一 違法性の意義、本質

1 定義
  行為が、法益を侵害するなど、客観的に見て全体としての法秩序に反すること(行為無価値論)

2 本質
 「法規に違反すること=違法」(形式的違法論)は相当ではない。違法性は、具体的、非類型的な判断であり、形式的、画一的に決められるものではないからである。
 →法規を越えて実質的観点から違法性の有無を判断する(実質的違法論)

3 結果無価値と行為無価値
 (1) 結果無価値=法益侵害または法益侵害の危険性
   例:人の死
 (2) 行為無価値=行為が社会的な倫理規範に反し、相当性を逸脱していること。行為そのものの態様、行為者の意図、目的も違法性の判断要素(判例)。
 (3) 行為無価値論の論証
   違法性の実質を法益侵害及びその危険のみに求める見解(結果無価値論)があるが、そもそも刑法の目的は、法益の保護のみならず、社会倫理の維持にもあることから、違法性の判断は、法益侵害のみならず、行為態様等も考慮して決せられるべきである。したがって、違法性の実質は、法益侵害という結果無価値のみならず、行為が社会的な倫理規範に反し、相当性を逸脱しているという行為無価値をも考慮して全体としての法秩序に違反していることにあると考える。
 (4) 結果無価値論の論証
   違法性の実質については、法益侵害及びその危険のみならず、社会倫理規範違反にも独立した意義を認め、主観的要素を広く違法要素とする見解(行為無価値論)もある。
   しかし、このような違法観は妥当ではない。倫理は本来個人の内面の問題であり、刑法の立ち入るべき問題ではないし、価値観の多様化している現代社会においては、何が倫理的に正しいかは明確ではなく、一定の価値観を刑罰をもって強制するのは妥当でない上、違法性の判断に主観的要素が流入し、処罰が恣意的になるおそれがある。したがって、恣意性の排除及び法と倫理との峻別の見地から、違法は客観化すべきであり、違法性の実質は、法益の侵害及びその危険に求めるべきである(結果無価値論)。
 (5) 検討
   違法性の実質は、結果無価値のみでなく行為無価値をも考慮して、全体としての法秩序に違反していること、というべきである。
  ↓
   故意による殺人行為と過失による致死行為とでは、法益侵害の点(人を死亡させること)において違いがないが、違法性の程度は著しく違うとすべきではないか?(結果無価値論では、この点、故意と過失では責任の重さが異なることになる。)

二 可罰的違法性
 (1) 定義→犯罪として刑罰を加えるに値する程度の違法性
 (2) 内容
  ①違法性の相対性→他の法領域で違法であっても、刑法上ただちに違法とはいえないこと。
  ②狭義の可罰的違法性→違法性が量的に軽微であるために不可罰にするかの問題。結果ないし行為態様の軽微性のみで可罰性が否定される「絶対的軽微」と結果、行為態様に加え、目的、手段等を勘案すれば処罰するほどではないという「相対的軽微」に分けられる。

三 違法性阻却事由の分類

1 緊急行為
 (1) 正当防衛(刑法36条)
 (2) 緊急避難(刑法37条)
 (3) 自救行為
   例:窃盗犯人を追跡して、窃取されたものを取り返す。

2 正当行為
 (1) 法令による行為(刑法35条前段)
   例:刑事訴訟法に基づいてする逮捕
 (2) 正当業務行為(刑法35条後段)
   例:医者のする手術
 (3) その他、超法規的正当行為
  ①被害者の承諾(後述)
  ②推定的承諾
  ③安楽死、尊厳死
  ④争議行為