『我が偽りの名の下へ集え、星々』紹介ブログ

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シュトラウス朝

2017-04-03 | 設定:歴史
リンツ朝最後の皇帝クラウスは後継者を指名せず、選帝侯制度のアイディアのみを残して崩御した。その後の『大空位期』と『選帝侯戦争』に勝ち残り、25年ぶりに汎銀河帝国皇帝の座に着いたのがヴァルデマール・シュトラウス。シュトラウス朝初代皇帝ヴァルデマールである。
シュトラウス家と最後まで皇帝の座を争ったのがシュライデン家であり、ヴァルデマールの即位について両家の間で裏取引があったともっぱらの噂である。いずれにせよ結果的にシュライデン家は皇帝の座に着く事は叶わず、現在でも一族から皇帝を出すことはシュライデン家の悲願となっている。
バイロン朝の時代はまだ事実上、帝国が機能しておらず、リンツ朝でようやくその骨格が定まったものの、『大空位期』と『選帝侯戦争』で再び体制は揺らいだ。その帝制を盤石の元としたのがシュトラウス朝初代皇帝ヴァルデマールであった。
ヴァルデマールの死後、第二代ハインリッヒ帝は暗殺、第三代フリードリッヒ帝はウーラント軍の侵攻を退けた後に急死と悲運が続いたが、第四代ヒルデガルド女帝、第五代マクシミリアン帝の時代に汎銀河帝国は絶頂期を迎えた。
しかしそれを継いだ第六代バルトロメウス帝はシュトラウスの血統、特にヴァルデマールの神格化を図り、奇怪な創作神話や儀式を考案。貴族は元より一般市民からも失笑される事になる。以来、徐々に帝国の権威は落ちていった。
初代皇帝ヴァルデマールの血を引いていない唯一の皇帝となった第十代ルートヴィッヒ帝の堅実な政策で一時は持ち直したものの、いわゆる『引き潮の時』と呼ばれる人類社会そのものの緩やかな衰退には抗えず、その後を継いだ第11代ヘルムート帝は大きな課題を抱え込む事になった。
ヘルムート帝は経済の活性化でこの難局を乗り越えようと考え、貴族領を買い上げ経済特区化を進めたり、民間軍事会社の規制を大幅に緩和して軍事費を削減したものの、それは結果的に貴族や軍の不興を買う事になった。さらには強大化した民間軍事会社が組織犯罪に荷担、あるいは一部富裕層に利益が集中することへの市民への反発も相まって、ヘルムート帝の政策は完全に行き詰まった。ベンディット公爵グレゴールは、この機を逃さず離宮デメテル宮でヘルムート帝に退位を迫り、これを了承させた。
ここに207年に及ぶシュトラウス朝は幕を閉じた。
退位後のヘルムート・シュトラウスは大公の爵位を与えられたものの、事実上、軟禁状態に置かれたまま没した。長男ヘルベルトは生死を含めてその後の詳細は不明である。
現在(2030年)のシュトラウス公爵家は、前皇帝ヘルムートとは直接の血縁はなく、ヴァルデマール帝の兄で『選帝侯戦争』で戦死したヴィルヘルム公の子孫であるルートヴィッヒ帝の血筋となる。