『時生』
2006-10-03 | 本

『時生』東野圭吾
「不治の病」「現在、過去、未来の交錯」「タクミ」
このあたりから、なんとなく新保裕一の『奇跡の人』を思い出しました。
『奇跡の人』が、過去の自分探しであるのに対して、
『時生』は「過去」で起きた「現在」の息子との出会いのお話になっています。
そしてもうひとつ思い浮かんだのが、
石川拓司の『いま、会いにゆきます』です。
こちらは『時生』とは逆で、「過去」の人物が、「未来」に行く物語です。
実はこのテの話はあまり好きではないのです。
『いま、会いにゆきます』には号泣しました。
でも最後に過去と未来を繋げてしまったところで、冷めてしまいました。
未来を知っている人物が、現在にいて、
結局その人の知っているとおりの現在が過ぎていく。
これが腑に落ちない。
運命論みたいなものでしょうか。
私はあまり「運命」というものを信じたくありません。
というか、運命どおりに人生が進んでいくと考えたくないです。
その人との未来を知っていながら人を愛す、って・・
なんとなく・・すっきりしない。
というか深みを感じないというか。
あと、東野圭吾は人間をどちらかというと無機質な描きかたするので、
内面を中心にした話は得意じゃないんじゃないかなぁって
ちょこっと思いました。
死を前にした息子の言葉。
ここがこのお話の最重要部分だと思うのですが、
トキオはいいやつだし、セリフもいいのに、
あまり深みや、感動というものを感じませんでした。
トキオのキャラクター自体に感情移入しきれていないし、
悲壮感も感じないので・・・・
これは読む側の気持ちの問題なのかもしれないですが。
さらさらと読めて、なんとなく楽しめる本でしたが、
読後に何かが残る、という感じではありませんでした。