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みどりのブログ

夏休みは・・・学校の課題に追われて追われて、ひたすら追われて・・・・・終わった!!!!!!

『奔馬』

2006-10-03 | 


豊饒の海(二)
『奔馬』三島由紀夫


『春の雪』の松枝清顕の生まれ変わりである、
飯沼勲が主人公です。

ひたすら「純粋」を求め、高潔な「死」を望む。
現代には無い感覚と価値観で、とても新鮮でした。


「死」=悲しみ、終わり、避けるべきもの、絶望感

私にとってはこうでした。
死ぬというのは、全ての終わりで、
現在は「自殺」行為自体が「逃げ」であったり、
道徳的に良くないこととされます。

だけどこの物語は、誠実に「死」と向き合い、
純粋のうちの「死」に全てをかけている。

現代に生きる自分には想像もつかない感情です。
でも、感情移入できてしまうのです。
その生き方を、美しいと感じられるし、憧れのようなものも感じます。


この本のなかで、私自身は本多の心理にとても共感してしまいます。
本多側の立場から、飯沼勲を見ていました。
純粋さや、情熱というのは、精神的な偏りのように感じました。
「極端さ」に近いような。

大人になって、いろんなことを知って、
いろんな人と協調して、
バランスのとれた精神状態をもつことで、性格もまるくなり、大人になる。
バランスがいいってことは、中間的だから、
同時に純粋さは失われていくのではないかと思います。

三島由紀夫は、
年齢を重ねること=「老い」という風に、
いいことと捉えていなかったのかな、と感じます。

本多が歳をとり、飯沼が歳をとり、そこに若い勲の行動が描かれる。
『春の雪』には無かった「年齢」の対比で、
勲の若い純潔さがみずみずしく、際立って、
三島由紀夫が『豊饒の海』で描こうとしたものが少し見えてきたように感じました。







『人間失格』

2006-10-03 | 


『人間失格』太宰治


読んじゃいました。
鬱だったもので・・・つい。

暗い暗い、ひたすら暗い本ですが、
ネクラなので平気です。

三島由紀夫が太宰嫌いだったと知って興味をもったのですが
「太宰治にはユーモアがある」といわれる所以が
非常によくわかりました。
このひと、おもしろい。

序盤、あまりの自虐のすさまじさに笑いそうになりました。
ていうか笑ってました。

自伝ですが、たぶん彼はこの本の中にさえ、
いわゆる「道化」というか・・
すべてを出し切っていない感じがしました。

「人間失格」に相当するようなエピソードと自分自身の性格を選んで、
少し大げさに書いているように感じます。
いや実際どうかはわかりませんが・・・

彼には何かが欠落しているようにも思えますが、
ある部分でとても、純粋すぎたのではないかと思います。

矛盾を受け入れなければ、世の中生きていけません。
彼は矛盾を受け入れられず、
楽に生きることができなかった、という感じがします。

物事の真理を深く考える人ほど、
「生きる」ことに思い悩んだり、
不信感を感じたり、
世の中の当たり前のことを受け入れられなかったりします。

たいていは適当なところで折り合いをつけたり、
考えるのをやめてしまうと思うのですが・・

ときどき、
物事を深く考えることは本当にいいことなのかなぁと感じます。
必ず行き着くところには矛盾があって、
一層わからなくなるからです。


人間失格はたぶん、また読み直します。
この人が、「走れメロス」書いたのかぁ・・
なんだか・・謎です。太宰治。



『チョコチップクッキーは見ていた』

2006-10-03 | 


『チョコチップクッキーは見ていた』
ジョアン・フルーク〔著〕
上条ひとみ〔訳〕


お菓子ミステリーシリーズの第一弾です。
シリーズたくさんでています。
母親がめっちゃ持ってて、ノリで読んでみました。

殺人事件ですが悲壮感、重苦しさゼロです。
キャラクターがとってもいいです。
アメリカのドラマみてるかんじで、楽しいです。

シリーズが進んでいくと、
登場人物に愛着が沸いてくる、らしいです。

これ読んでいる間、やたらクッキーが食べたくなって
ほとんど毎日食べていました。
ダイエットの敵です。

『時生』

2006-10-03 | 


『時生』東野圭吾


「不治の病」「現在、過去、未来の交錯」「タクミ」
このあたりから、なんとなく新保裕一の『奇跡の人』を思い出しました。

『奇跡の人』が、過去の自分探しであるのに対して、
『時生』は「過去」で起きた「現在」の息子との出会いのお話になっています。

そしてもうひとつ思い浮かんだのが、
石川拓司の『いま、会いにゆきます』です。
こちらは『時生』とは逆で、「過去」の人物が、「未来」に行く物語です。

実はこのテの話はあまり好きではないのです。
『いま、会いにゆきます』には号泣しました。
でも最後に過去と未来を繋げてしまったところで、冷めてしまいました。

未来を知っている人物が、現在にいて、
結局その人の知っているとおりの現在が過ぎていく。
これが腑に落ちない。

運命論みたいなものでしょうか。
私はあまり「運命」というものを信じたくありません。
というか、運命どおりに人生が進んでいくと考えたくないです。

その人との未来を知っていながら人を愛す、って・・
なんとなく・・すっきりしない。
というか深みを感じないというか。


あと、東野圭吾は人間をどちらかというと無機質な描きかたするので、
内面を中心にした話は得意じゃないんじゃないかなぁって
ちょこっと思いました。

死を前にした息子の言葉。
ここがこのお話の最重要部分だと思うのですが、
トキオはいいやつだし、セリフもいいのに、
あまり深みや、感動というものを感じませんでした。
トキオのキャラクター自体に感情移入しきれていないし、
悲壮感も感じないので・・・・
これは読む側の気持ちの問題なのかもしれないですが。

さらさらと読めて、なんとなく楽しめる本でしたが、
読後に何かが残る、という感じではありませんでした。


「本の読み方 スロー・リーディングの実践」

2006-08-27 | 


「本の読み方 スロー・リーディングの実践」 平野啓一郎


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 本は、量よりも質であるとし、
 速読を否定し、スローリーディングが提唱されています。
 夏目漱石『こころ』や、三島由紀夫の『金閣寺』等を題材に、
 具体的にスローリーディングの実践方法を紹介しています。
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とても参考になりました。

筆者自身もいうように、本の読み方は人それぞれ自由なわけですが、
本を楽しみつくすためのコツは知っていて損はないと思います。

私も本読むのは速いに越したことないなぁって
単純に思っていたのですが(でも、遅いんだけどね)
この本を読んだらそんな考えは吹き飛びました。
確かに、速読じゃ無理だなぁ・・って。

いくつかの名作を題材に解説しているわけですが、
一冊の本が、ここまで考えられていて、
読者が想像や考えをめぐらすために「空白」までもが
意図してつくられている、これには驚きました。
ここまで深く、深く読み解くことができるものなのですね。

小説家って、すごい。

分かっている人には当たり前のことなのかもしれませんが、
私には足りないものばかりでした。

書き手側の意図をよく考えながら「精読」することと、
「再読」してみること、
このへんの基本的な読書に対する姿勢から変えてみようと思います。