アイススケートを芸術に昇華させた伝説の英国人スケーター、「氷上のヌレエフ」ことJohn Curry
彼はバレエのメソッドを取り入れた演技を導入、1976年に開催されたインスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルで金メダルを獲得、フィギュアスケート界に革命を齎した
プロに転向後は自身のツアー・カンパニーを設立、世界を巡るツアー活動と並行しつつ振付師としても活躍、華麗なスケーティングで多くの観客を魅了した
ところが、輝かしい栄光とは裏腹に、彼の心は深い孤独と鬱に苛まれていた....
僕の魂には、才能と同じだけの悪魔が宿っている
彼がゲイであることの不本意なマスコミ公表は、社会的にも政治的にも驚愕と論争を巻き起こした
同性愛が公的にも差別されていた時代に、常に好奇の目に晒され、病魔に侵されつつも志は気高く、生涯アスリートとしてアイススケートに情熱を注ぎ続けたカリーの原動力 ―
それは、自身の舞が人々の心に感動を呼んだことに他ならない
Claude Debussyの「“牧神の午後”への前奏曲」やNikolai Rimsky-Korsakovの「シェヘラザード」、Maurice Ravelの「ムーンスケート」などにおける流麗な舞は、思わず息を呑むほどの美しさだった
性差のしがらみも世間の喧騒も忘れて、ありのままの自分を出せる場 ― 氷上
永遠の愛を得ることは叶わずとも、人々に夢や希望を与えることが出来た幸せを語った彼の恥じらい気味の表情が、印象的だった
彼が僕を創った
ありのままでいられる僕を
― Johnny Weir
映画『氷上の王、ジョン・カリー』本予告編
映画『The Ice King / 氷上の王、ジョン・カリー』(7日)を観て、初めてその存在を知った
彼がいなければ、後継者とも言うべきJohnny Weirも羽生結弦もあり得なかったかもしれないと思わせるほどに、“男らしさ”や“力強さ”が良しとされた男子フィギュアスケート界を揺るがす、その優美なるパフォーマンスは圧巻だった
アイススケートは芸術だ
だからこそ魅了される
