アークルクス

ミュープル・ステーブルの競馬ブログ

地味に傑作?『光とともに…自閉症児を抱えて』

2004年05月06日 | Weblog
さて、開局50周年ドラマ『仔犬のワルツ』は、
ワタシ的には駄作だったけど、
日テレは、他で地味に光るドラマを作っています。

それが、『光とともに…自閉症児を抱えて』。
題名の通り、自閉症児とその母親、そして先生の話です。
テーマも雰囲気も派手さがなく、どこかの原作を映像化したような雰囲気。

視聴率はどうなのかは知らないけれど、
おそらく良い数字を取ってはいない気がします。
私は、ほんの2回しか見ていないのだけど、
それなりの感想を書いてみます。



ストーリーは、
授かった子供が、自閉症だったという衝撃から始まり、
その育児での苦悩、周囲の差別の苦しみ。
そのなかで理解ある先生の懸命な働きで
自閉症の我が子が、一歩一歩成長していく、ささやかな喜びを噛みしめる
という感じです。

もちろん、このドラマを通して、
「自閉症という病気を理解してもらう」という意味合いを、
持たせることはできるかもしれません。

でも、このドラマの自閉症というテーマは、
あくまで人間を描く切り口にすぎない、と私は考えています。

テレビの中の、自閉症を抱える親子の苦しみという姿には、
他の難病や精神的障害、身体的障害を抱えた親子、
もしかすると、普通の親子でも通じるものがある気がします。



このドラマの良さというものを、
いざ書こうとすると、ちょっと考え込んでしまう。
というののも、何ていうか、「普通」なんですよね。
なんかドキュメンタリーを撮影したかのような普通さ。

その普通さが、このドラマの良さなのだけれども、
過剰演出に慣れてしまった鈍感な神経の視聴者にとっては、
はなはだ物足りない演出かもしれない。



「自閉症」という病気は、世間ではとても誤解や侮蔑のある病気です。

私は幸いにも、
心理学関係の本を読んだり、
自閉症に関するものを見た経験があるので、
普通の人よりかは誤解が少なくて済みましたが。

しかし、現実の社会には、

防衛庁長官(あの年金払っていなかったヤツだっけ?)が
海外の軍隊に比べて束縛の多い日本の自衛隊に関して
「自衛隊じゃなくって、自閉隊」とかいう
無神経というか、情け無い言動を起こしたりしてますし、

また私の親も、嫌な表現をする人間で、
「お前なんか、自閉症だ」とか、
私の身内でも聞く状態です。

上は日本の大臣から、下は自分の親までが、
こんな差別ばかりなのですから、
現実の世間では、大変な空気に曝されているんだろうかと、
考えてます。



では、このドラマで、
自閉症の差別がなくなるのか?

個々の病気に対する差別が無くなるかどうかなんていうのは、
私には、大きな意味には感じません。

差別というのは、
「自閉症」とか「身体障害者」とか「らい病」とか、
個々の病気の無理解が生み出すものでは無いからです。
また個々の病気の理解が進んだところで、
差別の人間の数は、減ることはありません。

差別をする人間の根っこには、
「多様な人間を許さない狭量さ」と
「自分本位のワガママさ」
「自分が優れているという自己評価の快感」
・・・の性格にあるのです。

だからこそ、わが国は
「ホームレス」や「老人」を侮蔑し、襲撃し、
「自閉症」や「障害者」を質の悪い出来損ないの表現として用い、
「らい病の元罹患者」を隔離し続け、反人権的法律を放置してきたのです。

差別的人間の自閉症の差別が消えたところで、
その表現は、他の言葉に取って代わるだけです。
他の病気や境遇や社会的弱者、経済的弱者の人間を表すような、
言葉が置き換わるだけで、差別の表現が別の表現に変わるだけで、
差別する人間が減るわけではないのです。

自閉症について、バカ議員にこんこんと説教したところで、
「自閉隊」が「●●●自衛隊」とか差別用語が置き換わるだけでしょう。

差別は「無理解」が生み出すものではない。
差別は「人間としての器の狭さ」が生み出すものなのです。



さて、ドラマの話に戻りますと、

小林聡美という女優が、実に良い存在感ですね。
自閉症という病気に通じ、根気よく熱心に、
自閉症の子供に接している先生の役なのですが、
これが、「ハマリ役」って感じです。

そして篠原涼子という、母親役が良い。
派手さのない化粧を抑えられた美人というのが、
母親という雰囲気を充分に伝えてきます。

私は自閉症という病気は、あまり詳しくないので、
自閉症という病気を、
子供の俳優がどこまで表現できているかは、
よく判りません。



このドラマには、
世間一般でいう「出来ない子」が「一歩一歩、成長していく喜び」があり、
「自分の子供を信じる親」という微笑ましさがあり、
「浅はかな世間の目に負けない強さ」が描かれてます。

これが、自閉症という切り口で描かれているわけです。
でもその中身は、育児一般の苦しみに通じるのかもしれません。
(私は子供を持ったことないからなぁ、、、)

「うちの子は、まだ字が読めない」とか
「うちの子は、オシメが取れない」とかいう
周囲と比べる親の焦り、

「うちの子は、性格が暗い」とか
「うちの子は、泣き虫で仕方無い」とかいう、
懐の狭い親のイライラ感、

こういうところで相似しているテーマを持っている気がします。

『光とともに…自閉症児を抱えて』、このドラマは、
よくある「明るく生きる親子」というドラマではなく、
「育児は楽じゃないよね、けど頑張れば良い事もあるよ」と表現すればいいのかな?

日テレが、開局50周年の銘を
なぜこのドラマではなくて、「仔犬のワルツ」に与えたのか、
ちょっと考えてみたり。

最新の画像もっと見る