絵日記

「世の中の役に立つ」ものではなくただ「絵でしかない」ものを描いてみたいな、と。

写生

2024-06-10 15:59:20 | 絵画

小学校では写生をさせられる。

教室で、花瓶に挿された花とか、果物なんかを描かされたり、

学校の外に引率されて、公園や河原で風景を描かされたり。

写生はいわばリアリズムへの第一歩で、

花は花らしく、葉は葉らしく、樹は木らしく描くように方向づけられる。

このころから絵は「上手に描けた」かどうかが基準になる。

絵は「うまい・下手」で評価される。

学校では点数を付けなければいけないからね。

ほとんどの生徒はべつに画家になることはないから、

何も絵がうまくなる必要はないような気がする。

じゃあ、写生なんか無駄か、と言うとそんなことはないと私は思う。

ふだん、花なんかをじっと見たりしない生徒でも、

その時間はいやでも見つめざるを得ない。

そうすると、例えば単純な形の葉っぱでも、様々な角度で生えていて、

ねじれたり、反ったり、捲れたり、閉じたりしていて、

「ひとつとして同じものはない」つまり「同じ形の繰り返しでは描けない」ことに気付く。

その形全体をある程度正確に画用紙に描き写すのは、とても難しい。

まして、図工の時間の一時間や二時間では、まず、描くことができない。

植物は一時間くらいでも形を変えるし、

教室の光の当たり方もどんどん変わる。

「花瓶に挿された花」といういわば「切り取られた自然」でさえ、

とても複雑で捉えがたいものなのだ。

そうしたことを、「教わる」のではなく「体感する」ことが

たいせつなんじゃないだろうか。たとえ、絵がうまくならなくても。

 



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