Drマサ非公認ブログ

はじめて入院した23

 隣のベッドに入院してきた人物は芸能関係の仕事をしている60歳の男性であった。カーテン越しに聞こえてくるのだが、どうも映画のプロデュースや舞台演出をしているという。看護師が名前を呼んだが、残念ながら聞いたことはなかった。

 どうも他病院で診察した際、脈拍が遅すぎ、結果心臓にペースメーカーを着けに、紹介状を持ってこの病院に来たらしい。この部屋に入院して来た人物は他にもいたが、ペースメーカーを着けにきたり、電池交換のためという人物が数人いた。

 さて、この60歳位の男性をXさんとしておこう。Xさんは入院してきた時から、随分とうるさかった。禁煙と看護師から言われると、「なんでだよう」「我慢したら死んじゃうよう」と宣まわり、色々理屈を言っていたが、看護師にタバコを奪われてしまった。

 ところがだ、友人と二人きりになったとき、その友人にタバコを隠しているのを見つけられてしまう。友人に言い訳をしながら、「大丈夫だよ、死んでも吸うよ」と言っていたが、家族にバレたようで、そのタバコも奪われてしまう。

 そうすると、ニコチンが入っていないフレーバースティックだろうか、大量に買ってきて、看護師にアピールする。看護師が「偉いですねえ」などと言うと、「頑張ってるでしょう」と甘えた声を出す。私は隣で「タバコ隠していたじゃん」と心の中でツッコミを入れていた。

 それ以外にも、とにかく色々とアピールがすごい。特に看護師に対して、イヤ、はっきり言うと可愛い女性の看護師に対してだ。

 私の方が色眼鏡をかけて、観察していただけかもしれないが、「背中が痛い」「腹減った」「おいしくない」「売店行きたい」「ラーメン食べたい」などと言って、看護師を足止めし、世間話をしている。看護師も話を合わせながら、少しばかり話をかわしつつ、コミュニケーションをしている。ところが意外にも、結構看護師の方も話に乗ってくる。

 看護師だけではなく、家族や会社の部下(女性)にもずうと話し続けている。話し好きなんだろうが、女性には甘えた話し言葉になっている。これが功を奏しているのだろうか。みんながそれを許している。

 彼の人徳だろうか?患者という地位に対する反応なのか?よくわからないが、特徴的なのが言葉遣いが柔らかいのである。それはXさんの見かけとはギャップがある。看護師が検温でもすれば、その度に「ありがとねえ」といった感じである。もちろん、そこから色々と世間話をする。

 例えば「もともと平熱低いのかなあ?」などといえば、看護師が医療的知識をもとに返答する。そして、会話が弾んで行く。コミュニケーション上手ということなのだろうかと思うのだが、なんか胡散臭い。

 私はカーテン越しににそれらやり取りを聞いているのだが、この柔らかい対応は自然な振る舞いではない。看護師がいないときは、言葉遣いも悪いし、友人と二人きりで話しているときは、辛辣な評価を口にしていた。

 これが“業界人”なのかなどと思っていたが、彼の本領はこの程度ではなかった。

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