染め場に置きっぱなしになっていた、寸胴鍋。
三週間前に抽出した、ザクロの染液が残されたまま。
今日、もういい加減に片付けなくては、
と、蓋をとったら、
大小の丸い物体が、ヒラヒラと浮かんでいた。
友禅の雪輪模様のようでもあり、しばし見とれる。
見たこともない、生き物。
クロッシェレースのモチーフ?吹き寄せ煎餅?千枚漬け?
カビのように、は、忌避すべき人や物に向けられる言葉、
意に反して増殖を重ねる、嫌われ者(物)。
突然顕れたカビ、に魅せられて、カメラを持ち出す。
カビの一個一個は、名付けたいほどしっかりしていて、
つついても毀れない堅牢な造作だ。
液を庭にぶっちゃけたら、リュウノヒゲにひっかかって、
それでも凛と、存在している。
カビと遊ぶ、春宵。