くさき染めにおいて、ヒサカキは特別な木。
その灰が、稀有な材質。
ヒサカキの枝や幹を、生木のまま、
たき火にして、
決して水をかけたりしないで、
鎮火まで待つ。
得られた灰に熱湯をかけ、沈殿させる。
その上澄み液が得難い存在、
なのは、アルミニウムの含有量。
ムラサキ染めにはツバキ灰が必須。
それは縁語としてもよく知られた常識だが、
ヒサカキのアルミ含有量も、知る人ぞ知る。
できることなら、草木染のアルミ媒染において、
ヒサカキの灰を用いたならば、
目も覚める鮮やかさが得られるのでは、と夢想している。
夢想、というのは、
決して再現できないから。
洛北のKテキスタイルスクールの中庭で、
生木を炎上させたのは、もう30年も昔。
現下の法のもとでは、暖炉の薪以外、燃やせない。