歌詞のない子守唄

ダークファンタジーの傑作「パンズ・ラビリンス」。
今年のアカデミー賞でも3部門で受賞。
スペイン語映画では画期的とも言えるでしょう。


内戦下のスペイン、少女オフェリアは
妊娠中の母親と一緒に再婚相手の元へやって来る。
新しい父親はゲリラを掃討せんとする
フランコ軍の冷酷な司令官だった。
辛い現実から逃避するように彼女は異世界への扉を開く。

多数の人が触れていますが、まず連想したのが
ヴィクトル・エリセの「ミツバチのささやき」です。
エリセは私の大好きな映画作家で、
今まで40年で長編は3作しか残していません。
スペイン内戦の政治的背景にした少女の通過儀礼の物語。
この作品ではフランケンシュタインが
異世界の象徴として描かれていました。

その一方で昔マニアが狂喜した
ジム・ヘンソンの「ダーク・クリスタル」がありましたが
今作はその世界をハイブリッドに蘇らせたかのようです。
通常VFXを駆使したファンタジー物は
一般作品よりも下に見られがち。
しかし今作はファンタジーと
芸術としての側面が高い次元で融合しています。

痛いシーンをひたすら見せ付けるのは監督のシュミでしょう(笑)。
酒を飲んだ途端ににじむ包帯・・・イテテテ・・・。
クリーチャーのデザインも素晴らしく独創的。
この辺は以前に監督した「ヘルボーイ」の
クリーチャーにも通ずるものがありましたね。

ラストをどう取るかでかなり印象は変わりますが、
作品の評価自体は揺るがず。
必見です。