見出し画像

And This Is Not Elf Land

The Great Gatsby Ⅳ

「グレート・ギャツビー」

うーん、前言撤回かな…やっぱり野崎訳の方がいいかも。
The Great Gatsby Ⅰ
The Great Gatsby Ⅱ
The Great Gatsby Ⅲ

Scott Fitzgeraldの文章のように修辞語や分詞句が多いものは、原文に忠実に翻訳するのは不可能に近いのでしょうね。Scott Fitzgeraldに限らず、外国語で書かれた作品においては、原文の味わいというのは、むしろ「ぎこちない直訳」の方が伝わるのではないかと私的には思うのです。しかし、もちろん、それでは「翻訳」とは言えない。日本語として体を成していく過程で、オリジナルの味わいは次第に損なわれていくというか…まぁ、そこら辺りが限界なんでしょうね。

原文の味わいが損なわれていないのは野崎訳の方だと私は思います。一方、村上氏の訳には、いわゆる「今どきの」若い人たちをも惹きつける独特のリズムがある。20世紀初頭のアメリカ文学のファンである私としては、これをきっかけに、この時代のものがもっと読まれるようになればいい。

さて、DaisyがGatsbyのパーティーにやって来るようになります。相変わらずの派手な狂騒の世界。

Or perhaps I had merely grown used to it, grown to accept West Egg as a world complete in itself, with its own standards and its own great figures, second to nothing because it had no consciousness of being so, and now I was looking at it again, through Daisy's eyes.
(または、おそらく私がそれに慣れているだけかもしれない。West Eggを、その独自の基準やそこにいる偉大な人物たちとともに、そうありたいと願わないからこそ、どこにも劣っていない一つの完全な世界として受け入れるようになっていた。そして今、僕はもう一度Daisyの視点からそれを見ていた。)

そして、Daisyは

But the rest offended her--and inarguably, because it wasn't a gesture but an emotion. She was appalled by West Egg, this unprecedented "place" that Broadway had begotten upon a Long Island fishing village—appalled by its raw vigor that chafed under the old euphemisms and by the too obtrusive fate that herded its inhabitants along a short cut from nothing to nothing. She saw something awful in the very simplicity she failed to understand.
(しかし他のことは彼女を嫌な気分にした。それはジェスチャーではなく感情であり、否定のしようもなかった。彼女はWest Eggにウンザリしていた。ここはブロードウェーがロングアイランドの漁村に生じさせた前例もない場所だった。彼女は昔風の婉曲な言い方の下で体を擦り付けるような生々しい活力や、無から無への近道を渡るそこの住民の中にあまりに押し付けがましいという避けられない宿命があることに。彼女は自分が理解できない非常に単純なものの中に、何か恐ろしいものを感じた。)


Gatsbyは富を得てDaisyに再会したものの、やはりDaisyにとって彼は「向こう側」の人間であることには変わりがなかった。夢を実現しようとがむしゃらに突き進む人も、元々「持っている」人にとっては鬱陶しく映るだけ。彼女には、そういう人たちって「無から無へと渡っているだけ」と映っているに過ぎないのだ。

このあたりはJack LondonのMartin Edenにもリアルに描かれている。

Gatsbyは対岸のDaisyの邸宅にある緑の灯に手を伸ばしていた。「緑の灯」はgreen light。Green lightは「GO!」のサイン。Gatsbyはそこに到達できると信じていた。



Gatsbyが富を得た方法というのは、はっきりとは書かれていないが、かなり胡散臭い方法であったであろうと想像できる。一方、Daisyや夫のTomは、退屈することだけを怖れていればいい何不自由のない生活。Tomは享楽的な恋愛遊戯にふけり、偉そうに政治や社会を語るも、それは狭量で偏見に満ちたものでしかない。

すべてを手に入れた者は荒んでいて「夢を持つ」ことさえできない。Gatsbyの実像は謎も多く、その生き方としては決して褒められない部分も目についたが、それでもNickには、彼の中にあるinnocence、そして、人として歪みのない姿を見てとることができた。彼の夢の航海とともにあった塵芥と、航海をしたGatsbyという人間そのものを分けて見えるようになってきていた。

Nickは最後にGatsbyに言う…

"They're a rotten crowd," …"You're worth the whole damn bunch put together."
(奴らは腐りきっているよ。…君には奴らをみんな一緒にしたのと同じくらいの価値があるよ。)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Books」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2021年
2020年
人気記事