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And This Is Not Elf Land

The Great Gatsby Ⅲ

私の好きな「グレート・ギャツビー」chapter 6のlast paragraph。

Daisyの中に自分の夢を具現化させたGatsby。
Daisyが夢そのものになっていったときのことを、あまりに感傷的に語るGatsbyにNickは違和感を覚えはしたものの、そこに共有する感覚が存在するのを感じるのです。

《原文》
Through all he said, even through his appalling sentimentality, I was reminded of something--an elusive rhythm, a fragment of lost words, that I had heard somewhere a long time ago. For a moment a phrase tried to take shape in my mouth and my lips parted like a dumb man's, as though there was more struggling upon them than a wisp of startled air. But they made no sound and what I had almost remembered was uncommunicable forever.

《直訳…してみました》
彼が語っているあいだ、それはあきれるほど感傷的なものであったが、私は遠い昔、どこかで耳にしたことのある何かを思い出していた。つかまえどころのないリズム、失われた言葉の一片。ちょっとの間、私の口の中で言葉が形をとろうとし、私の唇は口のきけない人のそれのように開いた。そこに、驚きの息の一吹きではなく、(言葉を口にするのに)努力しなければならないものがあるように。しかし、それらは声にはならず、私が思い出しかけていたものは永遠に伝わらなかった。

《野崎訳》
彼の話を聞き終ると、それは不快な感傷に彩られていたとはいうものの、ぼくは何かを思い出した-遠い昔、どこかで耳にしながら聞き流していた音楽のリズム、忘れていた言葉の断片。一瞬、ある言葉がぼくの口の中で形をとりそうになり、ぼくの口は唖の口のように開いて、一塊の空気の振動ばかりでなく、そのうえ何かを生みそうだった。しかし、そこから音は生まれなかった。そしてぼくが思いだしそうになったものは、永久に他に伝わらぬままに終わったのである。

《村上訳》
ギャツビーのそんな話に耳を傾けているあいだ、そのあまりの感傷性に辟易しながらも、僕はずっと何かを思い出しかけていた。捉えがたい韻律、失われた言葉の断片。遥か昔、僕はどこかでそれを耳にしたことがあった。ひとつの台詞が口の中でかたちをとろうとして、僕の唇は聾唖者の唇のようにしばし半開きになっていた。驚きの空気を外に吐き出すという以上の何かをそれは希求し、あえいでいた。しかし結局声にはならなかった。思い出しかけていたものは意味のつてを失い、そのままどこかに消えてしまった。永遠に。

ここは、この作品の最も重要な部分のひとつだと思う


Nickは「何」を思い出したんだろう?


二人の故郷である西部の空気か…。El Grecoの夜の情景に象徴されるような、冷たく孤独で退廃的な東部の地にあっても、Nickは中西部の素朴な道徳観を持ち続け、Gatsbyは一途な開拓者の魂を持ち続けていました。

そこなのだろうか?
それではちょっと…どうなのかな?という気もする
それよりも、さらに深いところに、もっと根源にあるもの…?

Gatsbyの死後、Nickは西部に戻る決心をします。東部の生活は馴染めないものでした。最後の夜、Long Island 入江を眺めながら、かつて初めてこの地に降りたった人たちに思いを馳せるNick。

最終章から

《原文》
for a transitory enchanted moment man must have held his breath in the presence of this continent, compelled into an aesthetic contemplation he neither understood nor desired, face to face for the last time in history with something commensurate to his capacity for wonder.

《とりあえず直訳っぽく…》
束の間の何かに魅せられたひと時、人はこの大陸の存在に息を呑んだに違いない。自身が理解もしていなければ求めもしていなかった美的な期待に引き込まれながら。歴史の中で最後となる、人間の驚嘆を受け容れる力と釣り合う何かと直面しながら。


新大陸を初めて目にした人たちが驚嘆したのは、新大陸そのものであったというよりは、その地によって無意識のうちに抱かせられた夢であったのだとNickは思います。そして、その感動はその後もずっと新大陸に生きる人たちに脈々と受け継がれてきたものでした。

Gatsbyの夢はDaisyという形をとりました。それを聞いていたNickは、それは自分の中にもある「夢」や「理想」と究極の部分ではルーツを同じくするものであると感じ取ったのではないでしょうか。

to be continued
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