私は幼少時から「腹がゆるい」性質なんです.最近のCMなどの言い方では「腸のリズムが乱れている」というのでしょうか.思い返せば中学時代も試験前は必ず腹痛をかかえていました.「あぁやばい」と思うとさらに自分で自分を追い込んでしまうんですね.
サラリーマンになってからも通勤には苦労を重ねました.最寄の駅から中央線で東京駅までの駅構内のトイレの場所はすべて把握していましたし,込み具合もおおかたは分かっていました.個室の数が多ければ良いというわけでもないのです.大きなターミナル駅はたしかに場所は多いのですが,利用者も多いのです.また小さな駅は場所も少なく利用者も少ないのですが,もし埋まっている場合には時間が長くかかる場合が多いのです.いろいろ考えながら,また自分の体調も十分に考慮して途中下車をしなければならなかったのです.
一番重症の時は中央線の快速で中野から新宿までが不安でたまらず,中野で乗り換えて東中野,大久保,新宿と細かくきざまなければ電車に乗っていられないようになりました.会社にはほぼ毎日遅刻していました.運よくたくさん仕事をしていたためかそのことは全く咎められるようなことはありませんでした.しかしそんな生活を長く続けられるわけもありません.通勤が全ての原因ではありませんが,末期症状になってからほどなくその会社は辞めてしまいました.もう二度とラッッシュアワーには電車に乗ることはできないでしょう.
今でもたまに電車の遅延トラブルがニュースになっていますでしょ.駅と駅の間に停車したまま2時間もそのままだったとかも聞きます.ニュースを聞くだけで不安になるのですが,調子が悪くて救急車で運ばれた人のうち,残念ながら何人かは「一線を越えてしまった」人ではないでしょうか.だってそうなってしまったら救急患者にでもならないとダメでしょ.そこまでしなきゃ「あーしょうがないね.」とはならないじゃないですか.私にも今まで危機的な状況は数多くありましたが,幸いにも勝負に負けたことは正直ただの一度も無いのです.(真実)
最近どこのトイレもとてもきれいになりました.そこらへんの公園だってきれいなもんですよ.紙も備わってるしね.街の中でどこが一番きれいですかね.トイレにも人それぞれ好みがあるでしょ.私が落ち着くのは公共性の高いところです.駅や商業複合施設ですね.人の出入りの多い騒々しい場所でも全く気になりません.「雑踏から板一枚でしきられた空間でプライバシーを確保して尻を丸出しにしている奇跡.」が実感できるのです.よくデパートが落ち着くという方がいますが,私には合いません.飲食店やコンビニもダメです.その辺は徹底していてよっぽど危険域に入らない限りはNGな場所は使用しません.いくら腹が減っても嫌いなゴーヤは食べないのと同じです.この場合は出すほうですけど.
今はほぼ100%営業は車での移動です.その日は草加でした.予兆はあったんです.様子を見ながらいくつかの小さい波をやり過ごします.「次はいかんな.」と思った矢先のことです.来ました危険度80%の波.すぐに移動にとりかかります.余談ですけど私はトイレの場所を見つける感も鋭いのです.「トイレセンサー」があるのでしょうか.まさにニュータイプだと自覚せざるを得ません.これまでもこの感で数々の勝負をものにしてきたのです.国道などの大通が良いというわけでもないのです.工業団地内は非常に厳しいなど経験が必要です.カーナビの地図を見るとトイレが見えます.嘘です.最寄公共トイレも検索できれば良いのにね.
その時は駅に向かうことにしました.公園はやめました.草加市の公園事情はよく知らないのですが,となりの川口市の公園にはトイレの設備がないんです.もしかしたら草加も同じ恐れがあると思ったのです.最寄りの駅は東武伊勢崎線草加駅です.今まで利用したことはありません.私鉄は駅構内にしかトイレがないことが多いように思います.JRだと改札を出たところにもあることが多いのではないでしょうか.なるべく駅のそばのコインパーキングに車を止めました.とりあえず駅改札があるような場所を目指します.この時点で余力は「ひとり待ち」です.つまり個室が埋まっていても私の前に待っている人がいなければ大丈夫だろうというレベルです.ほどなく改札を発見.反対側に思ったとおり商業施設がありました.衣料品,雑貨,本屋,飲食店さんが入っているところです.こういうところは店舗ごとにトイレはなく,共用になっています.私好みの公共性の高い場所になるわけです.自動ドアを入ってすぐトイレのマークを確認!ここからは迷いはありません.一気に攻めに入ります.ここで若者なんかは「ちょっとお店をのぞいたんだけど欲しいものがないし,まぁせっかくだからトイレにでも行こうかな.」なんて芝居をいれてしまいそうなところです.それこそが若気の至りなのです.さぁ先に進みます.どうやら目標は入口からはちょうど反対側のようです.改札からトイレまでの人の流れを読んでの配置かもしれません.敵もなかなかやります.歩みをさらにはやめます.上目づかいに男女を確認し,すばやく右にターン.洗面台を通り過ぎ,小用をちら見もせず直進です.個室は一か所,扉は閉ってる.次に確認するのはカギ.「ブルーだー!!この勝負もらったー!」
扉を開けると30歳くらいでしょうか.スーツ姿のメガネ野郎が尻を丸出しにしてしゃがんでいます.「あーそう,こういうパターンね.大丈夫大丈夫.」