goo blog サービス終了のお知らせ 

別館片隅

オールジャンルにテキスト書き殴り。中途半端上等。文法超無視。
コメントはご自由に。

悔やみすら エゴ

2007-07-30 23:55:37 | 
よもやついてくるなんて

思っていただろうか



犬の散歩に出るだとか 街までふらりと買い物に出るだとか
長い休みを利用して少しばかりの遠出をするだとか
都会へ出ていくだとか 隣国へ引っ越すだとか

そんなスケールの話じゃあない


次元の違う世界
空が頭上にあって、大地が足下にある。
1日は24時間。1時間は60分。1分は60秒。
朝陽は東から上り夕陽が西に沈む 
基本的な構造は同じ けれど違う世界。
比喩ではなく物質的な次元の違いを知る人間はそうそういないだろう。


そんな場所まで
ついてくるなんて
思っていただろうか…?



穏やかに寝息を遊ばせている弟のベッドの縁に腰掛け、彼を見下ろす。
眼下の彼は薄い月光にその寝顔を照らされていた。
悔恨など、その顔には僅かも無い。
悔恨は、この胸の内にこそある。彼には秘めているけれど。兄のこの胸にはある。



大切な人と次元を離れてまでこんな場所にまでついてくるなんて
1%も思っていなかった



「嘘だ」

エドワードは知っていた。
自分の胸中を知っていた。
知っていて いや、知っていたからこそ?

「俺は、」

ずるい人間だ と涙の交じった声を小さく落とした。

引き離せば彼の想いも弟の想いも通じなくなることを










エドワードは知ってしまっていたのだ。


「錬金術で電話口の相手を焼き殺す方法は無いものかな」(ロイアル)

2005-11-18 01:37:44 | 
いつぞやの己が科白を思い出して、ふと大佐は思案顔で耽った。
あれは今はもう亡き友人と交わした会話のひとつだったと未だに記憶している。

もしも、あれが可能ならば――

そう考えが及んだ時、思考を止める電話の音が書類で埋もれたデスク上で鳴り響いた。
受話器が電話機本体の上で飛び跳ねんばかりの勢いでジリリ、ジリジリと盛大に鳴り、また何か仕事関係の電話だろうかと思わず顔を顰めて大佐は受話器を取った。
「マスタングだ」
「大佐、外からお電話です」
電話口からは電話交換主である若い女性の声。
見事なブロンドは大佐の記憶に新しい。つい1、2ヶ月前に入ったばかりだと馴染みの交換手から情報は得ている。

外から、とはまた軍中枢部から仕事の催促電話だろうかと、増々、大佐の顔色は苦くなっていった。
そんな狸爺達と気疲れのする会話をするよりはブロンド美人と話す方がよっぽど楽しかろう。
それとなく雑談でも始めて、交換までの時間を長引かせてみようと口を開きかけるのだけれど、彼女に業務を教授する先達は余程に優秀なのか、大佐が軽口を叩く前にあっさりと外線に繋いでしまった。
大佐の口がついぶすりと尖る。
けれど、
「大佐?」
電話向こうからの聞き覚えがある声に不貞腐れる口元はすぐに緩まった。
「やあ、アルフォンス君。丁度良かった」
「え?何か御用事でした?」
「丁度、昔のことを思い出していてね」
「はあ…」
「そこから連想した他愛も無いことなんだがね、まあ聞いてくれたまえ」
電話をかけてきたのはアルフォンス側なのだから、彼にもきっと用事があっただろうに、そんなことお構い無しと大佐は勝手に話を進めていく。
アルフォンスも無理に止めたりしないものだから、大佐の口はするすると滑る。
「昔ね、電話口の相手を焼き殺す錬金術は無いかと考えたことがあるんだが、」
その時はまるで本気ではなく冗句だったのだけれど。
「それがもし可能なら、電話口の相手を今すぐ抱き締める方法は無いかと思ってね」
君のことを考えながら思い付いたんだ。
色香を含めた調子で大佐がそう続けるものだから、アルフォンスは電話口で固まった。鎧の体が硬直すれば、連鎖的にガチャン、と金属音がするものだから、その有り様は電話越しに大佐へも伝わってしまった。
忍び笑いをする大佐の声も、アルフォンスは真っ白な思考の中で聞いた。
「ひとつ、今からその方法を二人で考えてみないかね?アルフォンス君」
楽しそうだろう、と大佐はその後に言葉通り楽しそうな口調で囁いた。

疑似セクロス(ロイアル+弟バカなエド)

2005-10-14 00:45:51 | 
「君の鎧の中に私が入れば、それは性交渉として成り立つのかね」
真顔で脈絡も無くそう告げた大佐にアルは返事をし兼ね、そしてその隣にいた兄は瞬間的に全身の毛を逆立て、次の時には掌底同士をパンッと勢い良く合わせて大佐に立ち向かった。
「こん…っの、セクハラ大佐ァァァァ!!!」
「む。鋼のが怒る理由は何もないではないか!」
「大アリだこの野郎ッ!」

「別れの儀式」(再放送@関西)視聴後:セリフウロ覚え

2005-10-02 04:40:01 | 
「…お気付きじゃなかったんですか?」
「…?」
「大佐は…、あの兄弟のこととなると冷静な判断に欠ける時がありましたから……」
中尉の言葉を聞きつつ、大佐は軍帽を静かに被り直した。
「……それで?」
「…それで?とは、なんだね、中尉」
今から自分が亡友を偲んでひっそりと頬に涙を伝わせる名シーンなのだが。
突如として冷ややかな声で横槍を入れた背後の中尉を大佐は斜視してみせた。
肩の向こうでは、口調通りにいつもの冷淡な表情のみを浮かべるリザ・ホークアイ中尉。軍内でも指折りの美人だ。そして女だてらに勇ましい。
そんなブロンド美女はすうっと口を開いた。
「大佐はあの兄弟のどちらが御本命なんでしょうか?」
ぎく、と大佐の左胸が弾んだ。
「どちら……とは?」
「お伺いしたいのは額面通りです」
兄・エドワードと弟・アルフォンスと、そのどちらを本当に好いているのか。大佐のプライベートにも何かと精通している彼女は、それが下世話な問いであるとは知りつつも敢えて尋ねてみせていた。
大佐は潔く振り返ったり、返答を述べたりはしない。
ただ彼女に背を向けたまま。その背中はどこが居心地悪そうにむずむずとしている様子と見てとれた。
「大・佐」
口調は少しキツめに。瞳も詰る体勢とばかりに少し眇めて。
視線を向ける男の背中はふと居心地の悪さをぴたりと止めて、
「…雨が降ってきたな」
そう言って空を仰いだ。
雨など一滴として降る筈のない、澄み渡った晴天を見上げながら。
「………」
…ごまかしやがった。
「…そうですね」
「ああ、雨だ」


夫婦同姓(ロイアル)

2005-09-21 01:15:40 | 
「アルフォンス・マスタング」
自分で呟いておいて、即座に大佐は頭を振った。

駄目だ、ちょっとゴロが悪い。

「ロイ・エルリック」
誰に呟けと指図された訳でもないのに呟いて、大佐はじわじわと苦虫を噛み潰した様な顔色に変わっていった。

明らかにこちらの方がゴロがいい。

「…アル・マスタング、ならゴロがマシなんだがな」
だがニックネームを通称にする訳にもいかず。うーんと大きく唸ってから、大佐は右斜め後ろを振り返った。
「どう思う。中尉」
「まず、責務を果たされたら宜しいかと」
机の上には無数の書類で鮮やかな稜線が出来上がっている。
「私は嫁に行く気は無いのだよ。あちらをこちらへ嫁に欲しいのだ」
中尉からの忠告も何のその。物事の上手くいかなささ加減に大佐は苛々を隠しきれない様子だった。
「大佐」
「なにか良策でも思い付いたかね」
「まずは、お仕事を」
聞き分けも無く、余所事にばかり意識を逸らす上司へ、中尉もまた苛々を募らせた。


やつあたり(ロイアル)

2005-09-11 18:03:31 | 
地上へと降り立った彼を一番に出迎えたのは、機嫌が芳しくなさそう乍らも敬礼のポーズをした中尉だった。
「おかえりなさいませ」
そう言う声も非常に刺々しくて、思わずマスタングは苦笑で返した。
「…あら?」
敬礼を改めた中尉は不意にそう零して小首をことりと傾げた。そりゃあ、首も傾げたくなるだろう。
「大佐、アルフォンス君達はご一緒じゃないんですか?」
何しろ、彼はエルリック兄弟の救援に行ったにも関わらず、一人で帰ってきたのだから。
予想どおりの問いかけに、マスタングは無言のまま、つかつかと足早に中佐の脇を通り抜けた。すぐに小走りで中尉が後に続く。
「マスタング大佐?」
背後からの呼びかけに、ぴたりと足を止める。
「ホークアイ中尉、軍部に保管されているありとあらゆる火器を準備してくれ」
「…は?」
「直ちに門が開かれた地下都市へ向かう。火器もそこへと運び込め」
「……あの、大佐?何にお使いになるつもりで?」
不審気に問う中尉へと、ゆったりと大佐は振り向いた。
振り向いたその顔は、それはもう不機嫌極まりなく、泣き止んだ赤子も再度泣き出すであろう凶相で。
そんな顔付の男は、無理矢理に片笑みを浮かべて口を開いた。
「八つ当たりだ」

映画のあのシーン(notアルエド)

2005-08-06 19:04:14 | 
悔しさに襲われて、顔が歪むのが解った。


門を開けたのは、ただ兄をこの世界に戻したくて。唯一残っていた記憶そのものである兄の傍に居たくて。
巻き込むつもりの無かった友の犠牲を、巻き込むなんて思いもしなかった多くの人間すらも巻き込んで門を開けたのはただ兄の為だけだった。


絶望に次に襲われた。涙が滲む。身を翻し機内に入っていこうとする兄の姿が薄んだ。

漸く会えたのに。また、離れる。離れてしまう行ってしまう。目の前から風が強い日の煙みたいに消えてしまう。
手も伸ばせない。体は押さえ込まれてしまっている。 



行ってしまう。



もう一度悔しさ。そして怒り。
兄は全ての気持ちをまた一人で勝手に背負い込んで、そして向こうへ行ってしまう。



いやだ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。

悲しみ。ただ只管悲しい。 行ってしまう。門はもうきっと開けられない。目の前の距離は駆け出せばすぐに追い付ける距離なのに。
生きている兄との永遠の別離。そんなの、きっと死別するより酷なこと。諦めも何も、相手が生きているのならば着けられない。亡くなっているのなら思い出の中で生き続けさせられる。偲ぶことができる。
けれど、生きているのなら。生きて、どこかで暮らしているのなら、どうしたって会いたくなる。また再会を願ってしまう。

身は押し留められている。強い力で、向こうへ行かせずにしている。
どうして、誰も彼も、この身を押止めようとするの。この身ばかり押しとどめて、どうして誰も兄を止めてはくれないの。

どうして。
どうして行ってしまうの。
どうして置いていくの。どうして、一緒に連れていってくれないの。



行ってしまわないで。向こうになんて帰らないで。
もうきっと会えないのに、どうして振り返って見てくれないの。どうして思い留まってはくれないの。

どれだけ。どれほど。長い時間、探し求めて、思い返すことをしてきたと思っているのだろう。
どれ程、追い求めてきたと思っているの。






場所なんてどこでもいい。ただ、またあの時を過ごしたいだけなのに。









この望みは、一体、何と同等の価値があるの。何と交換すれば等価と見なされるの。















「兄さん!」


  行かないで

ひどいはなし。(ロイエドに見せ掛けつつもやっぱりロイアル)

2005-08-01 23:59:22 | 
何か支えが欲しくて、伏臥するベッドの縁に右手をかけたら、迂闊にも金属音が小さく鳴った。
背後からは手に取るように不愉快そうな雰囲気がひしひしと伝わってくる。
「不粋だな、鋼の」
「すーいませんねェ、大佐。何しろ右手左足が鋼鉄製なもんで」
「言い訳は聞かない」
「はいはい」
声だけは気丈な様子で返すけれど、縁を握った手は震えていた。
後ろの男は生身の左半身と生殖器しか触らない。何せ少年は承知の上で代用に成り下がっているものだから。
今の状況を頭の中で振り返って、酷い話だと自嘲の笑みがシーツの間近で浮かんだ。
「金属音以外に声にも気をつけたまえ。喘ぐ声以外は一切禁止だ」
何しろ少年は弟が生身に戻るまでの代用品なのだから。
後ろから触れてくる男は少年の伏臥する背中を見ているふりをしながらその少年自身なぞ見ていない。彼が見ているのはこの体と背格好の似たまた別の少年の姿だ。彼は夢想している。彼は妄想している。
体のいいダッチワイフ。これはセックスでは無く、ただ彼の為のマスターベーションでしかない。
「了解したらただ頷けばいい」
わかった、と返事をしようとした出鼻をそんな冷たい言葉で挫かれ、スケープゴートのこの身が一体何との等価交換なのだろうかと、本当はその理由を悟り乍らも、長い金髪を背に散らばらせた少年は言われた通りに小さく首を縦に下ろした。

いつかどこかで聞いた雑学(ロイアル)

2005-07-29 21:25:46 | 
執務室の上等な椅子に身を沈ませ乍ら、大佐は唐突に口を開いた。
「私の名前をフルネームで言えるかね」
はぁ、と曖昧に相槌を返してから、焔の錬金術師として広く名が知れ渡っている彼の名前をアルは口に出した。すぐ脇の3人掛けの客用ソファでは兄が高鼾を上げて熟睡している。
「ロイ・マスタング、ですよね?」
「そうその通り。では、”ロイ”にどんな意味があるかは知っているかね?」
「さあ…そこまでは僕はちょっと」
申し訳なさそうな声音が鎧の装甲を振動させて部屋に響く。
そんな鎧の少年へとすぐに返事はやらず、机の端に積まれていた書類を一枚摘んで、そこに書かれている内容を一瞥してから大佐は手を離し、腰を上げて口を開いた。
「君を元の体に戻すのは鋼のがやる。だが、元の姿を取り戻した君を頂戴するのはこの私だ」
威丈高な様子で片手を腰に当て、小さく笑みを浮かべた後に、「ロイとは支配者という意味だ」と大佐は嘯いた。

映画後(ロイアルなようなエドアルのような)

2005-07-25 02:09:48 | 
ミュンヘンに弟が来てから、兄は憂鬱そうな顔を時折した。
「お前さ、こっちに来たこと後悔してない?」
「してないよ」
「でも…あっちに戻れる保証はないんだぜ?」
キ、と兄が腰掛ける椅子の背もたれが小さく鳴る。
「…戻れないでしょ。こっちの扉は兄さんが壊したし、向こうの方は大佐が壊してくれたし」
「だったら、尚更…!」
後悔は無いのか、と兄が強い口調で言った。微笑を浮かべて弟は視線を下げた。
「だから、尚更、だよ。後悔も、後腐れもない」
「…もう、大佐とは会えないんだぞ?」
「……わかってる」
「電話も手紙も届かないんだぞ?」
「わかってるよ、兄さん」
弟の口調は一定して穏やかだった。逆に兄の方が顔を顰める。
「そんな程度の気持ちだったのかよ」
「そうじゃないよ」
顔を上げて兄を見てから、弟は静かに目を伏せた。
穏やかすぎて、その様が兄にはすごく不可解な姿に見えて仕方が無かった。

「すごく好きだから、最後に声が聞けて、触れられて……」
それが出来たから満足なんだ。弟は尚も穏やかな風貌のままでそう告げた。
どうしてそんな顔が、もう今生では会えない相手を思い浮かべて言えるのか、兄はやはり不可解な気持ちに駆られた。
「でも、それだけだろ…?」
「それだけ…だけど……………その、最後にキスも……でき、たし……」
「なにいいいいいいいいいい!?」
がったーん、と大きな音で叫んで兄の椅子が真後ろへと盛大に倒れた。その大音響に弟も思わず焦った顔で面を上げた。
「お、おま、許さないぞ、俺はあんな男っ!」
「に、兄さん、言ってることが矛盾してない…?」
さっきは後悔してないのかと聞いていたくせに。
兄は頭から沸騰して忙しい薬缶みたいに湯気を立ち上らせて、怒気から赤い顔。
「第一、俺の方に飛び移るまでにそんな時間無かっただろ!?ウソだな?ウソだと言えアルッ!」
「う、うそじゃないもん!そんなキツいのしてたわけじゃないしっ!」
兄さん何想像したの!?と逆にきつい口調で咎められて、違う意味で兄の顔色はより濃い赤色で染まった。
「そ、そ、そりゃ、その…なんつうか、だ、だってお前と大佐ってそういう仲だっただろうが…っ!」
「すっごい軽い程度だよ!」
「そんな軽いのが最後でお前は後悔してないのか…っ!!」
「だーかーらー……」
はあ、と一息吐き出してから、アルは満面の笑みを兄へと浮かべた。
「兄さんについてきたこと、後悔してる筈がないでしょ?」