ニューヨー句

1ニューヨーカーの1ニューヨーカーによる1ニューヨーカーのための1日1ニューヨー句

隣の子バイオリン弾くしぐれかな

2008年11月30日 | Weblog
墓裏記第五回。感謝祭で遊んで一日さぼった。夕べは酔っ払って七時に寝た。今朝は復活して、子供達をミスターEMFのレッスンに送る。Jアードカフェで飲むスープの真似をして作る。スパイスが決めて。

KTEの家でサンクスギビングディナー。KTEの夫の、弁護士のBBは去年クライアントが交通事故を起こして不在だったが、今年は一緒にお祝いできる。KTEの息子、有名な料理学校に通っているBBが今年もターキーを焼き、六時間かかってソースを煮込んでくれる。KTEの義父、83歳のBBは去年と同じく「あんた年いくつ? 世界大戦に参加したかい?」と欧介に聞く。BLCEの奥さんは会うたび若返る。それも半端でなく。最初は私の母くらいに見えたが、今回は私と同じくらいにしか見えない。民話の世界のようである。KTEの家はお母さんの設計であり、日本の建築雑誌に紹介されている。

5バスルーム。ガレージの上にジム。KTEは毎朝五時半にニュースを見ながらエクササイズするそうだ。ガレージ脇の工作室には卓球台、ピンボールマシン、ボクシングのサンドバッグも吊られ、スキーやホッケーやゴルフ道具が積み重ねられている。ロングアイランドにあるサマーハウスにはカヌーや釣り用の大型ボートもある。まっとうなアメリカ人の贅沢や楽しみを味わいつくすための家だなあと思った。
KTEは自分の通勤路(五番街)を自慢し、欧介の通勤路(十番街)を「ごみだらけ、どこの馬の骨だかわからん連中が屯ってる」とけなすので大笑いになる。KTEは五番街で毎朝のように有名人(ニュースキャスター)に間違われ声をかけられるそうだが、その番組をKTEの夫以外誰も知らなかった。
部屋ごとにこれでもかというほど消火器が置かれてあるのを欧介が見つけて聞くと、KTEの夫のBBは強迫神経症的に火の用心にこだわっているそうで、マンハッタンでルームシェアを始めた娘のアパートにも消火器をプレゼントした。ルームメイトが料理中に鍋の油に引火、娘が消火器を使って火事を防いだと、BBは自慢していた。

WAG家にて恒例ワインパーティー。アルザスの葡萄でちょっぴりドイツテイスト、という白ワインが素晴らしく濃く爽やか。その後の赤もまろやかで美味。欧介が驚愕したのはワインを漉す器具(我が家通称)「じょぼじょぼ」。それを通すだけで、ほどよくすばやく空気がまわり、時間をかけてデカンタしたのとほぼ同じ効果が得られる。最初は疑っていたが、実際に全く違った味わいになった。干し椎茸と生椎茸くらい違うのである。中世仏蘭西でこれ使ってたら完全に魔女だと思われ火あぶりになったかも知らん。昨日KTEんちで飲んだ(我が家が買って持って行った)ワインより千倍美味しかったので、ついたくさんいただく。
DSNYクルーズの話。欧介はDSNYアトラクションはこの世の地獄であると思っているのだが、KJさんの話の中途で一瞬目を輝かした。
「え? 飲みに行ったらプリンセスたちがいるんですか?」
子供を寝かして飲みに行ったらバーにプリンセスたちがいる。リトルマーメイドが止まり木で話し相手、シンデレラがカクテルを振り、眠れる森の美女がお酌したりする。ちょっとそれは倒錯的でいいかな、と欧介は思ったそうだが、よく聞いてみると、「ロビーに行ったらプリンセスたちがいる」であった。
帰り際に屋上で夕日を見る。そこにもサンドバッグが置いてある。子供達はボール投げをして遊ぶ。幼稚園時代を思い出す。



Blce・P語録

2008年11月30日 | 語録
「二人教師」
道子と町子が二人の先生にチェロを習っているという話をすると、KTEが「混乱しない?」と聞いた。その答えを、子供達に代わってBlceが出した。
「教師が生徒の能力を引き出すものであるならば、もともと彼女らが持っている宝物を一人の先生はこちら側から掘り出し、別の先生は反対側から掘り出すというだけではないかな」

よその猫にもシリウスの光かな

2008年11月28日 | 欧介
バイトである合唱団の指揮をすることになった。今生で指揮者になれるとは思っていなかった。
私は小さいころからずっと指揮者になりたかった。かっこいいとか、人を指図したいとか、そういうことでは無い。コンサートに行ったり、レコードを聴いていても、私ならここはこうする、というアイデアがどんどん出てきて、それに理屈ではない絶対の自信を持っていた。今でも持っている。その点は俳句と同じだ。俳句は、どう考えても、いくら客観的に見ても、自分の句が頭抜けて優れているのに、まったく他人に評価されない。しかし音楽では、高校のオーケストラ、その後の室内楽、最近では子供らのチェロを通して、私のちょっとした、しかし決定的なアイデアが、いかに音楽をすばらしいものにするか、いかにそれが共感されるか、人を興奮させるかを知っている。
きっかけは、ニューヨーク大学の日本人学生向けのメーリングリストで、指揮者募集の宣伝が流れてきたことだった。私がコロンビア大の学生だったころに登録したままになっていた。ニューヨーク大には音楽部もあるので、おそらくプロの指揮者の卵に向けたものだったのだろう。彼らとの競争上私には、指揮や音楽の教育を受けていない、合唱については何も知らないし歌った経験もない、しかも歌はどう主観的に見ても下手という不利な点がある。したがって私は、まずは自分がどのような指揮者なのか、その合唱団の指揮者として能力があるかどうかテストして欲しい、と提案した。そのテストの場で、団員の心をつかむことができれば、私は採用されるだろうし、特に印象を与えなければ、キャリアの無い私は採用されないだろう。それしか私が採用される道は無いだろう、と考えたのだ。
テストは先週の火曜日に行われ、昨晩、採用の知らせがあった。

猫のため小買ひ物して冬ぬくし

2008年11月28日 | Weblog

渡辺ついに一勝する。羽生が二度も震えたのにそれをしのいで勝った。次の先手番もこの勢いで勝つとすれば、竜王戦の行方はわからなくなる。どっちが勝っても嬉しいような悔しいような。どっちも好きでどっちかに決められない。こんな気持ち久しぶりだ。

今日はKTEのうちで三時から感謝祭ディナー。チェロ一台にビオラを持って行く。BLCもピア二ストの兄弟を連れてくるのでカルテットができるかもしれない。

墓裏記第四回。

道子の二等賞の表彰状。 


冬木立犬の喧嘩のすぐ終はり

2008年11月26日 | Weblog

墓裏記連載三回目。

貧乏暇無し。忙しいときに限ってTEAちゃんが犬のようにまとわりついて抱っこ抱っこいう。そのまま寝てしまう。

TVジャパンニュースで「おでん車」を見る。乗りたいような乗りたくないような。

町子のトリオとカルテットの発表会が近いことを失念していた。急きょまともな黒服を買わねばならん。

午後私の健康診断。町子の健康診断の結果、スカリオシスの心配があるので専門医に見てもらうことになる。欧介も欧介のおばさんたちもみなその気があるので、深刻ではないと思う。

明日KTEんちのサンクスギビングお呼ばれのためワイン三本買う。明後日AYちゃんちのプールパーティーのため、おつまみを考える。二日間楽しもう。

MM先生の姉上、バレリーナのEM先生が出ておられるCMは、天文ファンには有名な会社。欧介も昔天文小僧であった。


献立を考えてゐる冬ぬくし

2008年11月26日 | Weblog
墓裏記連載第二回目。毎日がエキサイティングで新鮮。なぜこれを早くやらなかったかなあと思う。

火曜バレエ。数回休んでいた間にピアノのレパートリーが増えている。くるみ割りに合わせてクッペ、パドブレ、クッペ、ソーテ、アラベスク左右。むかし私も発表会で弾いたクシコスポストで、フラッペ、プティバットマン乱打、パッセ。懐かしいなあ。楽しいなあ。来てよかった。16ドル安いもんだ。しかし来る前はかなり迷った。一日30ドル以下で育ち盛りの子供二人三猫を含む七人家族の食料を買っているのが、そのうち16ドルバレエに使ったら痛い。しかも今日はTEA用の猫缶も買わんならん。よっぽどmm先生に、スターバックスカードで払ったらだめでしょうか? とお頼みしようかどうしようか悩んだが、そりゃやっぱりいかんと思い、潔くキャッシュで払った。そういうのを一度認めると、こんだ古い着物かなんか持ってきて、「先生これでレッスンさして下さい」という人も出るかもしれんので、そりゃやっぱ悪い前例を作っちゃいかんのである。mm先生も若い身空でふんばっておられるのだから。チキンと葱だけ買って今夜は焼き鳥丼。

深夜、夫も私も三猫もすうすう寝ていると電話が鳴る。ミスターEMFの声だが、うわんうわん反響して、何を言ってるかまるでわからない。風呂で喋っているような声。
「遅くて悪いけど明日の四時と五時にレッスンできるからね」
「では明日よろしくお願いします」
電話を切ってすぐ寝る。しかし猫がみな起きてしまい、かわりばんこにトイレを使うのでその始末に結局また起こされる。
今バレエから戻ると、EMF先生からまた留守電が入っている。悪いが今日は駄目になったと言っているらしいのだが、やはり、うわんうわん言ってなんだかわからない。ワイフがうわんうわん、車がうわんうわん、ベリーソーリー、土曜にうわんうわん……。しかたないのでお隣のMZさんを呼んできて聞いてもらおうかと思ったがあいにくのお留守である。で、欧介に携帯電話して、留守電を聞いてもらう。結局欧介が先生にかけ直してくれて、土曜の十時と十一時にリスケジュールできる。けっきょくこれでサンクスギビング後の土日もレッスンが詰まってしまったが、いまが成長時なので、しんどくてもふんばったらきっと伸びる。渡辺も黒海もふんばれ。

勝負することを決めたる寒さかな

2008年11月25日 | Weblog

いつか私の祖母の一生を題材にした小説を書いてみようと思っていたが、壮大な長編にしたいと願うあまり、とりかかっては頓挫を重ね、いつまでたっても完成しない。構想を練るのがへたならばいっそ行き当たりばったり、出たとこ勝負で、新聞小説みたいに毎日連載にして書いてみれば、と欧介にいわれ目が覚めた。のんべんだらりと書いてもだめだ。成功の秘訣は背水の陣、とはイチローの言葉だが、本当にその通りだ。今朝アマが、「まず楽しもうと思った」と、決勝戦の感想を言うのをTVで見た。真剣勝負しなればだめだ。まず楽しむのではなく、死に物狂いでやったら結果楽しかった。これしかない。というわけで、綱渡り的実験ブログ小説「墓裏記」の、連載第一回目をスタートさせたので、どうぞ読んで下さい。ご感想ご意見も歓迎します。

欧介もある挑戦を近々行うことになっている。その「あるバイト顛末記」はそのうち(どちらかが)書くつもりである。

ミスターRSNのレッスンの最後に、先生の携帯の充電を待つ間に世間話をして、RSN先生に一男一女のあることが発覚する。前のチェロの先生ミスターLより、「RSN先生に家族はいない」と聞かされていたので、天涯孤独の(バッハの無伴奏二番プレリュードのような)老人のイメージを勝手にふくらませていた。まあ妻子と同居してるかどうかはどうでもいいことで、子供さんを語る先生の表情が素晴らしいと思った。娘はね、君の行くだろう高校の今度三年生になるんだよ、きっと世話をしてくれると思うよ。私の伴奏はしてくれないが、君が頼めばしてくれるかもね、頼んでごらん。息子はジャズギタリストでよい演奏をするんだ。誇りに思っている。今度大学を見にモントリオールへ一緒に行くんだよ。


ローゼン先生語録

2008年11月25日 | 語録
「スペシャライズ」
「チェロ教師がspecialized、 specialized というが、私はspecializeなどしない。だって私がspecialなんだからspecialized の必要がどこにある?」

白息をまた吸ひこみて走りけり

2008年11月24日 | Weblog
イッツナットマイデイ。ついてない日。道子のBCN面接に遅れたくないのでタクシーに乗る。すると道子が車内にセルフォンを置き忘れる。とりあえず面接を受けに道子はBCNへ入る。その間に私はチャイナタウンの病院に先日の乳癌検診のフィルムを取りに行く。地下鉄でばったり知り合いに会う。学校移転問題を話しながら一緒に電車を降りたら、一つ前の駅だったので、もう一電車待って乗り直す。チャイナタウンのいつもの出口がわからないで迷う。病院の受付では、手違いでフィルムは届いていないから後で送ると言われる。電話してから行けばよかったのに、と欧介の声が聞こえるようだ。地下鉄で引き返すのに、日曜で電車が来ない。駅からBCNへ走って向かうとちゅう、家に電話してみると道子はもう帰っている。電話で連絡を取れないので、待ち合わせができなかった。カーネギーでぶんどったのど飴がポケットにあったので、舐めながら北風を吸い込んで走ったら胸が冷たくなり、息が止まりそうになる。帰り道、電話屋さんに行くと日曜で閉まっている。別の電話屋さんに行くと、T-Mでないとだめですと言われる。帰ってT-Mに電話すると、テープ声に指図され、わけわからない。欧介が電話してくれてようやくサービスを止める事ができる。欧介は昨日一日ジーンズをはいたせいで胆石が痛んでいたのをしゃんしゃん言わず、道子がセルフォンを何度もなくすので機嫌悪い。道子の面接ははかばかしくない。在校生によるグループ面接だったそうで、黒人の在校生は黒人の受験生にばかりナイスにして、道子に厳しいことを言ったらしい。呪われた日のせめて最後は気分よく終えたい。今日はこれからミスターRSNのレッスンだ。


猫達の静かに騒ぐ霜夜かな

2008年11月23日 | Weblog
マイナス四度。道に塩を撒いて初雪への備えをしている。ふくら雀が鼠みたいにちょろちょろしている。あまりの寒さにスカーフを頭から被って出る。町子が「ジプシーみたい」と言う。Jアードの玄関にて、NYPのバイオリニストが娘さんを送ってこられるのとご一緒する。きれいにお化粧されて、着ぶくれなどしておられぬ。お昼にカフェでMDさんにお会いする。ARSちゃんもレッスンを終えて来られる。寒いのにまた夕方も来られるという。NYシティバレエのナッツクラッカーをいっぺん見たいが、今年も余裕なし。指揮棒13ドル。欧介と子供二人のセーター60ドル。ミートソース・スパゲティーの材料20ドル。カフェでピザ、スープ、パン、おやつ10数ドル。
ホゼーが、「サンクスギビングに料理する?」と聞く。「ノー、オーブンは使わない」と答えるとほっとした顔。なぜかというと、オーブンのニューを入れてくれる夏からの約束がまだ果たされていないから。ホゼーのいう料理とは、オーブンでターキーを焼くかという意味。まだ自分で焼いたことは無い。来年いっぺん焼いてみるか。

予防接種。道子二本、町子三本。道子を待つ間に町子泣きだす。看護婦さんが「あたしも必ず泣いたっけ」と笑う。去年は道子も泣いた。注射だけはまだ怖いのだ。