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役者シリーズ8「鈴木浩之インタビュー」

鈴木:こんにちは、課長・常田総一郎です。
のの:へ? 常田さん、総一郎さんだったんだー。
鈴木:はい。(笑)
のの:あっという間に過ぎてしまいましたねー。もう初日からひとつきですよ。
鈴木:ねえ…。毎回満席の観客の前で芝居できたのは本当に幸せなことでした。
ご来場くださったお客さまには心より感謝を申し上げます。
のの:あらたまっちゃって…どしたの?
鈴木:いや、何となく。緊張しちゃって…インタビューっていうから。
のの:(笑)私とすーさんの仲じゃないですか。
鈴木:20年ぶり二度目の共演。(笑)
のの:お互いいい役者になったよねぇ…あのころとは大違い(笑)…いや、成長してなきゃ今も役者続けてないんですけど! まあいろいろと大変な中、愚痴一つこぼさず楽しんでくれていた様子だったのが何より励みになりましたよ。
鈴木:いや、ほんと楽しかったよ。ののさんの身体やのどへの気の遣いようはすごく立派だと思った。その成果がちゃんと舞台に出てるし。いろいろな声の表情を使い分けてきれいに聞かせているのはさすがののさんです。(笑)
のの:ありがとうございます。すみません、持ち上げてもらって。(笑)でもきょうはズバズバ本音、聞かせてもらいますよー。
鈴木:お手柔らかにお願いしまーす。

のの:何か、終わってから今回いつもと違うことがあったとか。
鈴木:うん、台本を読み返したこと。
のの:公演終幕してから?
鈴木:そう。これまでもう数え切れないほどの芝居に出演してきたけど、公演が終わってから台本を開いて読み返すなんてことはまずなかった。かなりの月日が経ってから読み返すことはあったとしても……ところが今回はもう打ち上げた翌日にどういわけか無性に台本が読みたくなって、一気に読んだ。仕事の行き帰りにもまたまた電車の中で読んだという。
のの:もうセリフ覚えなくても、芝居のこと考えなくても誰も文句言わないのに(笑)…なんで?
鈴木:よくわかんないけど、どんどん面白くなっていった芝居の立体的な残像が新しいうちに、活字としての台本を冷静に読んで、そのギャップを感じたかったのかも。紙の上の文字と観客の反応とを重ねながらほくそえんだり…。
のの:楽しかった。
鈴木:これは楽しかったね。予想通りにはうけなかったり、思いもよらず反応があったり…。
のの:台本、演出、役者、スタッフ、そして最後はお客さまが芝居を作る!
鈴木:それを感じることができた幸せを噛みしめるために、終わってからも台本を持ち歩いたのかな。

のの:予想だにしなかったお客さまの反応といえば?
鈴木:芝居のラスト近く、世界が元に戻り、阿佐倉くんが人魚や卵があっちの世界に戻ったんだと言うのを受けて、常田が「タイコも・・・」と一言発するところ。毎回かならず一拍おいてドドっと笑いが来る。
のの:なんともおいしいシーンになってたよね!
鈴木:作演のあゆさんもそういうつもりは全くなかったって。ここは、情を交えた相手を……
のの:なんか言葉にすると生々しいね。(笑)
鈴木:(笑)だね。まあその相手を失った哀しみやあきらめをボソっとつぶやく真剣なセリフなんだけど、実際にお客さまの前でやってみると毎回同じように笑いが起こる。うれしい誤算だった。
のの:お客さまにはそれまでの常田の行動がひとつにつながって思わず吹き出す、ということが起こっていたんだと思う。
鈴木:とてもうれしいうれしいことで…。初日にこの発見をして、次の回からも絶対に欲をかかずいつもどおり真剣にボソっとつぶやくことに徹して、毎回起こる笑いに心の中でガッツポーズをして、それでもその喜びをけっしておくびにも出さず、冷徹な殺し屋のようにつとめました。
のの:常田さん殺し屋じゃないけどね。(笑)
鈴木:だから芝居はやめられません!

のの:そんな哀愁とコミカルさを合わせ持つ「常田」さんですが、常田さんの哀愁の源となるものは何だったのかな?
鈴木:まさにそのことに確たる自信が持てないでいたのよ。でも、とあるセリフがストンと自分の身体に入ってきたことがきっかけとなって迷わなくなった。
のの:なになに?
鈴木:珠代ちゃんが去った後に阿佐倉くんが「・・・面倒なのも全部ひっくるめて、別にいいかって思うんだよ・・・」と彼女への思いを言うセリフ、あれを受けて……
のの:常田さんが「それを言ってやればよかったろう」とつぶやく、あそこ?
鈴木:人生には、これを言ってやればよかったとか、なんであの時言わなかったんだろうとか、あんなこと言わなきゃよかった、なんてことが大きな傷になっていたり後悔になっていたりするもんでしょ。阿佐倉くんと珠代ちゃんの言い合いを見つめながら、常田さんは自分の一言が足りないばっかりに逃げていってしまった奥さんとのことを重ねてしまう。
のの:なるほど。
鈴木:「それを言ってやればよかったろう」──阿佐倉に言っているけど、ほんとは自分自身にも拳骨くらわしてる、そんな風に自然に思えた瞬間があって。そこから、俺、常田いける、と思った。(笑)
のの:腑に落ちる瞬間ってそうだよね。(笑)
鈴木:おかげで最後まで楽しく哀しく芝居することができました。

のの:ほかに好きなシーンは?
鈴木:稚魚が阿佐倉の書類を破る手を止めたかと思いきや再び破るところ、この笑顔がなんとも!
のの:S度MAX!(笑)
鈴木:それからラストシーンで稚魚の、卵が「動いてた」「動いてたの」というセリフ。なんとも絶妙なトーンで驚きとか不思議とか喜びが出ていて大好き。
のの:このラストシーンは本番直前まで細かいダメ出し入ってたもんね。セリフの言い方、そのスピードまで。「・・・バンバさん」まで含めて私も大好き。
鈴木:ほかにも言葉にはできない小さなマニアック的なおもしろさ、バカバカしさ溢れるポイントが個人的にはたくさんあるよ。こうやって後夜祭的なことを展開しているせいだけじゃなく長く余韻に浸れるってのは……
のの:そうあることじゃない?
鈴木:うん。演出のあゆさん、共演した役者の方々、皆さまからはたくさんの触発をされながら最後までこれたと思ってます。この出会いに感謝をしつつ、いつかどこかでまたの機会を願って……
のの:次の機会にはがっつり絡みたいね。ありがとうございました!
鈴木:ありがとうございました。こんなんで大丈夫なのかなぁ~
のの:だいじょぶだいじょぶ!


男2(トキタ)役・鈴木浩之
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