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演出日誌:14「高く積み重ねられたミルクレープのような」

早いもので公演が終了して一カ月が過ぎてしまいました。
書こうと思っていたことは色々ありまして、
総括的な何かとか
キャラクターの裏エピソード的な何かとか
幻となったシーンだとか
そんなものを色々と小出しにしようかと思っておりましたが、
まあすっかりとタイミングを逸してしまった感があります。
やはり舞台は刹那的で、その日その場で
お客様に伝えたもの、お客様が受け取ったものが全てだと思い
ますので多くは語らぬが華というものでしょう。
決して面倒になったとかではありません。
決してです。
あ、ご無沙汰しております。
今更ですが、作・演出しました早川です。

改めまして、疾走人魚へのご来場、またはご声援、実際にお力
拝借などなど本当にありがとうございました。普段から芝居で
生活をしておりますが、改めて一人の力では舞台は作り上げ
られないものだと思い知らされ、また色々と勉強をさせて頂き、
しかも楽しく学ばせていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、思い返すと今回の芝居は、高さに挑戦したミルクレープの
ような芝居だったな、と思っております。
ミルクレープっちゅーのはアレです。
薄いクレープとクリームを延々と重ねてケーキにしたアレです。
ドトールとかによくあるアレです。

今回のお芝居の感想で
「環境問題」や「親子の絆」「妙齢の女性の生き様」などについての
感想なども頂いたりして、書いてる時にはとにかくお客様を飽きさせ
ないで楽しませる事だけで、そんな深いものなどをテーマにした
つもりのない自分としては驚きでした。

お客様というのは物語の中から色々なものを発掘していくのだな、
と感慨いです。
勿論、それぞれの事を全く考えないで書いた訳ではありません。
正に、薄いクレープのように、「ほんのちょっと」のニュアンスで
書いたものが、観る人によって「これがテーマだ」と思ったりするのだな、と。

突出して好きな台詞が思い浮かばない、と公演が終わった後に
出演者から聞きましたがそれは自分もそうでした。
今回の大人たちによる大人の芝居は年齢に合わせた重厚なもの
ではなく、あくまでも軽やかに、沢山の感情や状況を織り重ねて
ひとつの人物やひとつの物語を創り上げました。

ひとつの感情だけで人間が動くことは殆どなく、幾つもの気持ちを
重ねに重ねてひとつの台詞や行動になっていく。
そしてひとつの台詞や行動に対する反応が積み重なっていき、
ひとつの物語になっていく。
幾つもの発した言葉が積み重なり、キャラクターを作り上げていく。
どんな作品もそうかもしれませんが、今回は特に沢山の積み重なりが
幸せで素敵な物語を作り上げたのだと思っております。

滅亡寸前の悲劇を悲劇と思わない、ポジティブな人魚たち。
切羽詰まった状態でもどこか飄々とした拉致られサラリーマンたち。
大人と子供の境目にいる青年と別の境目でもがく女。
ひとりひとりの登場人物。
それを演じるひとりひとりの役者たち。
ひとつひとつのエピソード。
衣装、小道具、舞台セット。
照明、音響、舞台を監督する人。
お客様を迎え入れる人たち。
迎え入れる為のチラシを作ってくれた人。
迎え入れる為の劇場。
そしてお客様。

全てが積み重なった極上のミルクレープを味わう事ができて幸せでした。
前書きにも書きましたが、疾走人魚に関わって下さった全ての方に
愛と感謝をこめて。
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