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ペンネーム牧村蘇芳のブログ

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蟲毒の饗宴 第15話(1)

2025-03-27 20:43:37 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>完
 ケイト、ドール、フランソワの三人が辿り着いた所は、
 ヴェスターとライガが侵入したスラムの奥地。
 入口付近は建物の倒壊や人同士が争った形跡が見受けられる。
 二人があれだけ派手に暴れたのだから当然のこと。
 それでもケイトたちの表情に驚きの色は無い。
 父さんも相変わらずのデストロイヤーよね。
 一緒にいるライガって人に迷惑かけてないかしら。
 正体不明の地に乗り込む父さんを心配している・・・とは言い難い。
 心配の方向性が明らかにズレていた。
「お姉様、斥候はお任せ下さい。」
 フランソワの足元からシュルリと金色の蛇が現れ、
 先に地下へと入っていく。
 続いてフランソワが先頭に立った。
 次にケイト、殿をドールが歩く。
 しばらく歩いていくと、長い下り階段が見えた。
 錆び付いているが、金属製の階段に太い手すり、間違いない。
「稼働式階段・・・。」
「え、お姉様、今なんて?」
「・・・城下町の北東門を出て少し歩いた先にある廃墟レイ=ス。
 その中心にあるオベリスクって巨大遺跡の中に、
 これと同じ階段があったわ。
 遺跡では動いていたけど、ここのは錆び付いて動かないみたいね。」

 廃墟レイ=ス。
 凶悪な魔物がどこからともなく湧いて出ると言われている、
 史上最悪の遺跡群。
 上級冒険者でも全滅が有り得る超危険地帯だが、
 希少金貨など価値の高い物が数多く見つかっており、
 一攫千金目当てに挑む冒険者も少なくない。
 ケイトは昔、師ポーラの依頼で廃墟の調査団に合同した事があり、
 その時に同じ階段を見たのだという。

「古の遺産がこんなスラムにも・・・?」
 フランソワは驚いているが、見慣れていたケイトはそれほどでもない。
 ドールに至っては無感情のまま。
「動けば降りるの楽なんだけどね。
 動かないんじゃ仕方ないか。
 ゆっくり降りていきましょ。」
「はい。」
 金色の蛇の姿は見えない。
 かなり先行しているようだ。
 それは即ち安全に降りられる事を意味している。
 数体の遺体が転がっていたけど、父さんの剣戟じゃないわね。
 巨大な打撃系の武器みたい。
 ライガが今も僧侶の装備をしているなら、
 フレイルかモーニングスターかしら。
 とんでもない破壊力ね。
 階段を降り切ると、蛇が待っていた。
 目の前には「S11」と書かれた巨大な扉がある。
 少し開けたままになっており、侵入は可能だ。
「ご苦労様。」
 フランソワはそう言って使い魔の蛇を下がらせ、自身が中へと入る。
 蛇は扉の前に残って監視役。
 続けてケイトとドールが入った。
 そこは何も物が無いガランとした大きな空洞のような部屋。
 奥に扉が三つ見え、左側の扉のみ開いたままになっている。
「開いている扉が一箇所だけ・・・。
 殺した奴から目的の扉を聞いたのかしらね。」
 ドールがジッと開いている扉を見つめる。
「罠の可能性もあります。」
「罠なら面白いんだけどねー。
 ま、いつも通りにいきますか。」
 ケイトはそう言うと使い魔の黒猫フレイアを呼び出した。
「仕事よフレイア。
 派手に暴れてきなさい。」
 ニャーオ。
 黒猫フレイアは一声鳴くと、開いている左側の扉に入っていった。

 ケイトは、開かれた扉に何か描かれているのに気付く。
「獣の絵?」
 獅子の頭と山羊の頭と龍の頭を有し、猛獣の身体に尾は毒蛇。
「これって典型的なキマイラ(合成魔獣)よねえ。
 魔獣でも信仰しているのかしら。」
 ケイトがブツブツ言っている中、フランソワが真ん中の扉を開けて確認。
「お姉様、この扉には虫が描かれています。
 蜘蛛と蜂ですね。」
 猛毒系の代表格か。
「右の扉は?」
 こちらはドールが確認。
「人です。
 おそらく女性の後ろ姿。
 階段を上っている絵ですね。」
「なんか、暗号って感じじゃあなさそうね。
 なんらかの意図は感じるけど、ちょっと分かんないなー。」
 そう言いながらもケイトは一つ気付いていた。
 遺跡のような場所なのに、絵だけは極端な古さを感じない。
 いいところ数十年前だろう。
 罠などではない、何かがある。
「フレイアから連絡がくるまで、残り二つの扉の奥を調べてしまいましょ。」
「はい。」

 いよいよリディア失踪の核心に近付いてゆく。
 たぶん。

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