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3丁目の夕日/教職課程講座

明日のための演習メモ

学校給食費徴収状況調査

2007-08-06 11:30:01 | Weblog
4割強で未納あり

 文部科学省は、昨年11月から12月にかけて、学校給食費の徴収状況に関する調査を行った。それによると、計3万1921校中未納の児童生徒がいなかった学校は、全体の56・4%の1万8014校、未納の児童生徒がいた学校は、1万3907校となっており、4割強の学校では未納の児童生徒がいるという状況が報告された。

  この調査は、学校給食費未納問題について、各学校や市町村教育委員会等が対応に苦慮している事例が多く伝えられていることを受けて行われたもの。対象は、学校給食(完全・補食・ミルク給食)を実施している全国の国公私立の小・中学校(中学校には中等教育学校の前期過程を含む)で、平成17年度の徴収状況を調査した。

  未納の児童生徒がいる1万3907校のうち、小学校は9107校、中学校は4800校となっている。児童生徒の数でみていくと、小学校は全体の0・8%の6万865人が、中学校は1・3%の3万8128人が未納となっている。

  学校給食費の未納が現在なくなったという学校の対応事例についてみていくと、最も多い回答が「督促の継続・強化」で、小学校が1314校、中学校が484校、次に多い回答が「保護者との面談・家庭訪問」(小学校963校、中学校308校)となっている。

  学校の認識についての設問では、過去数年の未納の児童生徒数や未納額の推移について、「かなり増えたと思う」が小学校で1175校(12・9%)、中学校で639校(13・3%)とどちらも約1割だが、「やや増えたと思う」の回答が小学校で3296校(36・2%)、中学校で1710校(35・6%)となっており、この2つを合わせると、約半数が増えていると感じていることがわかった。

  保護者への対応については、今後の予定も含めると「電話や文書による保護者への説明、督促」が小学校8835校(97%)、中学校4658校(97%)と最も高い。わずかな数ではあるものの、「支払いを求める法的措置の実施」を行っている学校もある。そのほかにも、長期滞納者に対する分割納入の承認や、連帯保証人付きの誓約書の提出、保護者の勤務先との協力などといった対応も講じられている。

意義・役割の認識に向けて

 今回の調査を受け、文部科学省では、3つの留意事項を取りまとめた。まず第1には、望ましい食習慣を身に付けさせることなど、学校給食の意義や果たす役割を十分に保護者に認識してもらうとともに、一部の保護者の未納により、他者への負担が発生することなどを保護者に周知し、理解と協力を求めること。

  第2に、学校給食実施者等は、経済的な問題により未納している保護者に対して教育扶助や就学援助制度の活用を奨励するとともに、これら給付による学校給食費相当額については、必要に応じて学校長に交付することも一つの有効な方法と考えられることも踏まえて対応すること。

  第3に、学校長は学級担任等特定の者に過度の負担がかからないよう、学校全体としての取組体制を整えるとともに、学校給食実施者は、各学校の未納状況を随時把握し、当該学校の教職員と連携して未納問題の解消に努めること。
(一部抜粋)

きのくにチャレンジランキング

2007-08-05 11:24:07 | Weblog
「きのくにチャレンジランキング」は、 和歌山県内(わかやまけんない) の 小学生(しょうがくせい) 、 幼稚園児(ようちえんじ) 、 保育園児(ほいくえんじ) のみなさんがクラスの 友達(ともだち) と 協力(きょうりょく) していろいろな 運動(うんどう) に 取り組む(とりくむ) ことで、 運動(うんどう) する 楽(たの) しさや 達成感(たっせいかん) を 味(あじ) わってほしいという 願(ねが) いからつくられたものです。
このホームページで 多(おお) くの 学校・園(がっこう・えん) の 友達(ともだち) とチャレンジの 記録(きろく) を 交流(こうりゅう) しましょう!

2.障害者施策を巡る国内外の動向

2007-08-04 08:07:14 | Weblog
 近年、障害者施策を巡る国内外の状況は大きく変化してきている。

 国際的な動向としては、1993(平成5)年に、国際連合総会において、障害のある人がそれぞれの社会の市民として、その他の人々と同じ権利と義務を行使できることを確保することを目的として、「障害者の機会均等化に関する標準規則」が採択され、1994(平成6)年には、スペインのサラマンカで開催された「特別なニーズ教育に関する世界会議」において、障害のある子どもを含めた万人のための学校を提唱した「サラマンカ宣言」が採択された。
 また、1992(平成4)年に国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が決議した「アジア太平洋障害者の十年」の最終年に当たる2002(平成14)年には、ESCAP総会において我が国の主唱により、この「十年」がさらに10年延長され、同年10月に滋賀県で開催されたハイレベル政府間会合においては、インクルーシブでバリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた行動課題「びわこミレニアムフレームワーク」が採択された。
 さらに、2001(平成13)年には、国際連合総会において、「障害者の人権及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約」決議案が採択され、条約案策定のため、「障害者権利条約に関する国連総会アドホック委員会」が設置された。現在、障害者権利条約の策定に向けた審議が行われているところである。

 国内的な動向としては、「アジア太平洋障害者の十年」が始まることを契機として、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図ることを基本理念として、心身障害者対策基本法の一部改正により、平成5年12月に障害者基本法が公布された。障害者基本法は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進し障害者の福祉を増進することを目的としているが、平成16年6月に一部改正され、基本的理念として障害者に対して障害を理由として差別その他の権利利益を侵害してはならない旨が規定されたほか、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の積極的推進による相互理解の促進についても規定が設けられた。

 また、平成14年12月、平成15年度を初年度として10年間を見通した障害者関連施策の基本的な方向を盛り込んだ新しい「障害者基本計画」が閣議決定された。障害者基本計画は、1993(平成5)年度からおおむね10年間を計画期間とする「障害者対策に関する新長期計画」における「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」の理念を継承するとともに、障害者の社会への参加、参画に向けた施策の一層の推進を図るため、10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めたものであるが、この中において、障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うとともに、学習障害、注意欠陥/多動性障害、自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応することが基本方針として盛り込まれた。

 さらに、平成16年12月、発達障害に関し、早期発見や発達支援に対する国及び地方公共団体の責務を明らかにし、学校教育における支援や就労の支援等を定めた発達障害者支援法が成立し、平成17年4月1日に施行された。発達障害者に対する総合的な支援の充実が重要な政策課題となっている(注3)。

(注3)  発達障害者支援法及び同法の政省令における発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害、心理的発達の障害、行動及び情緒の障害とされている。
 これらには、従来から特殊教育の対象となっている障害が含まれるほか、小・中学校の通常の学級に在籍する児童生徒が有するLD、ADHD、高機能自閉症等も含まれる。

第1章 障害のある幼児児童生徒に対する教育の現状と課題

2007-08-03 07:16:27 | Weblog
1.現状と課題

 これまでの特殊教育においては、障害のある幼児児童生徒が自立し社会参加する資質を培うため、一人一人の障害の種類や程度に応じて、盲・聾・養護学校(幼稚部・小学部・中学部・高等部)並びに小・中学校の特殊学級及び通級による指導において、きめ細かな教育が行われてきた。近年、養護学校や特殊学級に在籍している児童生徒が増加する傾向にあり、通級による指導を受けている児童生徒も平成5年度の制度開始以降増加してきている。現在、特殊教育の対象となる幼児児童生徒は約22万5千人(全体の約1.4パーセント)であり、このうち、義務教育段階は約17万9千人(全学齢児童生徒数の約1.6パーセント)となっている。

 これまで小・中学部における訪問教育(通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対し、教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う教育)の対象となっていた障害の重い児童生徒の盲・聾・養護学校への受入れが進むとともに、盲・聾・養護学校(小・中学部)においては、現在、約43.3パーセント(肢体不自由養護学校においては約75.3パーセント)の児童生徒が重複障害学級に在籍している。こうした障害の重度・重複化に伴い、盲・聾・養護学校においては、福祉・医療・労働などの関係機関等と密接に連携した適切な対応が求められている。

 また、特殊学級に在籍する児童生徒や通級による指導の対象となっている児童生徒についても、関係機関と連携した学校全体での適切な対応や、障害のない児童生徒との交流及び共同学習の促進、担当教員の専門性向上などが課題となっている。

 さらに近年、医学や心理学等の進展、社会におけるノーマライゼーションの理念の浸透等により、障害の概念や範囲も変化している。平成14年に文部科学省が実施した全国実態調査では、小・中学校の通常の学級に在籍している児童生徒のうち、LD・ADHD・高機能自閉症により学習や生活の面で特別な教育的支援を必要としている児童生徒が約6パーセント程度の割合で存在する可能性(注2) が示されており、これらの児童生徒に対する適切な指導及び必要な支援は、学校教育における喫緊の課題となっている。

(3)公立学校施設整備費負担金・補助金の在り方

2007-08-02 07:06:50 | Weblog
○  平成16年11月の政府・与党合意「三位一体の改革について」において「公立文教施設費の取り扱いについては、義務教育のあり方等について平成17年秋までに結論を出す中央教育審議会の審議結果を踏まえ、決定する」とされており、公立学校施設整備費の扱いについても審議を行った。

ア 公立学校施設整備費負担金・補助金

○  公立学校施設の整備は、設置者である地方自治体が行っているが、教育の機会均等を担保し、全国的な教育水準の維持向上を図る観点から、国は、地方自治体に小・中学校等の設置義務を課すとともに、義務教育諸学校施設費国庫負担法及び地方財政法第10条等に基づき、新増改築について所要経費の一定割合を進んで負担しなければならず、加えて、耐震補強等について所要の補助を行っている。


○  地方六団体委員からは、以下の理由により、公立学校施設整備費負担金・補助金を廃止し、一般財源化するべきであるとの意見が出された。 ・  公立学校施設整備費負担金・補助金の額は、当初予算ベースで年々減額されており、負担金・補助金があるからといって、安定的に必要額が確保され、施設整備が進んでいるという状況にはなっていない。


・  義務教育は自治事務ということであり、公立学校施設の整備については、当該地域の児童・生徒数や配置の現状、将来の見込み、教育の方針等を踏まえつつ、各地域が自主的、計画的に整備していくものである。全国的に経常的に行われる公立学校施設の整備については、より幅広い地域のニーズに応えるため、税源移譲を行い、地方自治体が自らの判断で計画的に整備できるようにする必要がある。


・  その際の財源措置として、地方に確実に税源移譲をするとともに、個別の地方自治体に対しては、地方債と地方交付税により万全の措置を講じる必要がある。


・  施設整備費が建設国債を財源としていることは税源移譲の障害とはならない。


・  負担金・補助金の現状について、金額算定の基礎となる建築単価が現実と乖離していることや、対象となる施設部分が限定されていることから、多くの地方自治体では、制度上の補助率を大きく切り込んだ補助金しか受け取ることができず、地方の超過負担が大きい、国による事業採択時期が地方自治体の事業計画と合わない、全国で画一的な補助基準であるため住民のニーズに十分応えられない、補助申請に係る手続きが煩雑である、などの問題がある。


○  これに関しては、  義務教育における機会均等を実質的に担保するためには、公立学校施設が確実に整備されることが重要であるが、法律上一定の財源措置が担保されている負担金等について一般財源化すれば、公立学校施設の整備に優先的に使われる担保がない、


 公立小・中学校施設の耐震化率などにみられるような地方自治体間の格差については、国の責務として是正する必要がある、


 税源移譲のほか、一般財源化した場合の財源の一つとして考えられている地方交付税については、その総額は将来的に抑制傾向にあり、例えば公立高等学校の改築事業の償還財源に充てられていた事業費補正に係る地方交付税措置が平成17年度以降廃止されたことにみられるように、地方交付税措置による財源確保は安定的とはいえない、


 地方交付税とともに、一般財源化した場合の財源の一つとして考えられている起債については、長期にわたって償還が続くことになることから、長期間にわたる償還や金利の上昇が、将来的に地方財政を圧迫することが予想される、


 補助対象の限定や煩雑な補助手続き等の課題は、制度の改善によって解決すべきである、

 などの理由から、国が公立学校施設の整備に目的を特定した財源を保障することが適当である。


○  なお、公立学校施設整備費負担金・補助金においても、地方の自由度を拡大し、公立学校施設を整備するインセンティブを高める観点から、義務教育費国庫負担制度における総額裁量制のように地方の裁量を拡大するための改革を行うべきである。

イ 学校施設の耐震化

○  公立学校施設は、重要な教育基盤であり、子どもの生命の安全に直結するとともに、地域住民の応急避難場所ともなるものであるが、公立小・中学校施設で耐震性が確認されている建物は半数程度にすぎず、その耐震性の確保を図ることが喫緊の課題となっている。


○  地方六団体委員からは、耐震化について、以下の理由により、一般財源化すれば地方自治体の判断による計画的な施設整備が進むはずであるとの意見が出された。 ・  公立学校施設整備費負担金・補助金の予算額が足りないため、補助金待ちが生じている。


・  現在、施設整備に対する負担・補助制度のない公立高等学校と、負担・補助制度のある公立小・中学校を比較した場合、耐震診断実施率と耐震化率は、ともに高等学校が上回っている。


○  これに関しては、 耐震化が進まないのは補助金待ちというよりむしろ、地方財政の硬直化により、地方自治体の自主財源が教育関係に回っていない実態があるためであり、目的が特定されている財源がなくなれば、従来以上に財源の確保が困難になる、


都道府県と市区町村の間に大きな財政力格差があるのに、市区町村が設置する公立小・中学校と都道府県が設置する公立高等学校の耐震診断実施率、耐震化率を比較してもほとんど変わらず、その耐震化の進捗状況に大差がないが、これは公立小・中学校施設への負担・補助制度によるところが大きい、

 などの理由から、一般財源化により耐震化が急速に進捗することにはならず、公立学校施設の整備に目的を特定した財源を国として保障し、その耐震化は国が責任を持って推進することが適当である。


○  なお、膨大な公立学校施設の早急な耐震化を図るためには、改築(全面建て替え)からコストの安い改修への転換など、より効率的な整備手法に重点を移すとともに、国が耐震化のための整備方針を示した上で、期間を定めて重点的・計画的な整備を進めることが必要であり、国としてもそのための十分な財源を確保すべきである。

(4)教科書無償給与制度の在り方

○  義務教育の教科書については、憲法第26条に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するものとして、我が国の将来を担う児童生徒に対し、国民全体の期待をこめて、国民の負担によって無償給与されている。
 この制度に対しては、これまでも財政制度等審議会から貸与制の導入を含め有償化の実現に向けた検討を進めるべきなどとする指摘がなされてきている。


○  教科書については、一部の教科を貸与とすることについて議論の余地があるが、予習・復習など家庭学習においても使用し、教師の指導上、様々な創意工夫を可能とすることから貸与ではなく自分自身の教科書を所有することが求められ、保護者に新たな負担を課すことなく、家庭の経済力に係わらず無償給与される必要がある。


○  義務教育教科書の無償給与制度については、教科書の質の向上を図りながらコストを下げる努力をしつつ、義務教育無償の精神から今後とも国による義務教育に係る費用負担の重要な施策として必要である。

(2)義務教育費国庫負担制度の在り方

2007-08-01 07:06:27 | Weblog
ア 義務教育費国庫負担制度の概要とこれまでの経緯

○  現在、全国的な義務教育水準の維持向上と教育の機会均等を保障するため、公立義務教育諸学校の基幹的職員の給料・諸手当に係る経費については都道府県が負担することとされており(以下、これらの教職員を「県費負担教職員」という。)、国は都道府県が負担する経費の二分の一を負担する義務を負うという「義務教育費国庫負担制度」が設けられている。
 この国庫負担制度を規定する「義務教育費国庫負担法」は、「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(人材確保法)及び義務標準法と相まって、義務教育の水準確保の機能を果たすとともに、国による義務教育費の最低保障の基礎をなしてきた。


○  教職員の確保と適正配置という目的を達成するため、義務教育費国庫負担制度においては、昭和15年の制度創設以来、義務教育の経費の大半を占める教職員給料と諸手当を一貫して負担対象としている(終戦後の昭和25~27年度にシャウプ勧告により一時的に廃止されたが、全国知事会からの要請もあり昭和28年度に復活)。
 その間、国と地方の役割分担、国と地方の財政状況等を踏まえて、国庫負担の対象の見直しが行われてきた。昭和18年度に旅費が、昭和23年度に退職手当が、昭和28年度に教材費が、昭和31年度に恩給費が、昭和37年度に共済費が、それぞれ国庫負担の対象として追加されている。その後、昭和60年度の旅費及び教材費の一般財源化、平成元年度の恩給費の一般財源化等を経て、最近では平成15年度の共済費長期給付等の一般財源化(平成16年度に所得譲与税による財源措置)、平成16年度の退職手当等の一般財源化と税源移譲予定特例交付金による財源措置が講じられた。平成17年度には、その年度限りの暫定措置として4,250億円の減額が行われ、減額相当分が税源移譲予定特例交付金で措置されている。


○  平成16年度には、人件費のうち中核をなす給料と諸手当については、その二分の一負担を根幹としつつ、国が総額を確保した上で地方の裁量を拡大する「総額裁量制」が導入されている。
 平成13年度から学級編制の弾力的運用が可能になったことにより、平成15年度には30道府県で少人数学級が実施されていたが、総額裁量制の導入等により、その傾向がさらに進み、平成16年度には42の道府県に、平成17年度には45の道府県に広がっている。

イ 地方案を活かす方策と義務教育の在り方

○  地方六団体「国庫補助負担金等に関する改革案」(平成16年8月)においては、義務教育費国庫負担金に関し、「第2期改革(平成19~21年度)までにその全額を廃止し税源移譲の対象とすることとした上で、第1期改革(平成16~18年度)においては、中学校教職員の給与等に係る負担金を移譲対象補助金とする」とされている。
 さらに、「併せて実施・検討すべき」事項として以下をあげている。 ・  国は、義務教育における地方公共団体との適切な役割分担を踏まえ、その責務を法律上明記するとともに、都道府県間において教育費の水準に著しい格差が生ずることのないよう法令に明記するなどの措置についても考慮すべきであること


・  地域の実態に即した義務教育の推進のため、運営全般について、小中学校の設置者である市区町村の意向を十分に尊重するとともに、市区町村の義務教育に関する権限と役割の拡大を推進すること


・  義務教育等に対する財源確保のため、企業から寄せられる教育・文化等に係る寄付金について、非課税措置を拡大すること


○  なお、地方六団体案には、義務教育費国庫負担金の一般財源化への反対意見又は慎重論に関する13都県の知事の意見が掲載されている。


○  平成16年11月の政府・与党の合意に基づき、中央教育審議会では、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討するとともに、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討することとされている。そして、平成17年秋の中央教育審議会の答申を得て、平成18年度において恒久措置を講ずることとされている。


○  こうした経緯を受けて、本審議会において、地方六団体委員から義務教育費国庫負担金に関して以下のような説明がなされた。 ・  地方六団体は、平成18年度までの三位一体の改革として概ね3兆円規模の国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるように政府から要請され、平成16年8月24日に内閣総理大臣に「国庫補助負担金等に関する改革案」を提出している。


・  義務教育費国庫負担金の全額一般財源化により、地方が自主的・自立的な教育を実施することを提案する。その際、平成18年度までの第1期改革においては中学校教職員の給与等に係る負担金を一般財源化する。


・  地方案の提案の背景の一つは、平成5年の衆・参両議院における「地方分権推進に関する決議」を契機にして、地方分権が時代の大きな流れとなり、平成12年の地方分権一括法の施行により、義務教育に関する事務についても自治事務になったことがあげられる。


・  また、昭和60年以降、文部科学省も、義務教育財源の一般財源化を推進している。国の一方的な都合により、なし崩し的に、しかも必ずしも税源移譲を伴わない形での一般財源化(税源移譲のない地方交付税の振替)よりも、税源移譲で義務教育財源を確保する方が確実である。


・  政府・与党合意に沿って、地方案を活かす方策を検討するべきであり、地方自治、住民自治を尊重し、地方を信頼する、財政力格差については地方交付税で対応するということを前提にした上で、義務教育費国庫負担金を税源移譲した場合に、どのような問題があるか、仮にあるとすれば、それをどう解決するのか、そういう方向で議論する必要がある。


○  義務教育に関する事務が自治事務になったことについては、以下の観点から、自治事務の在り方と費用負担は直接関係しないことに留意する必要がある。 ・  地方分権一括法が地方分権の推進に果たした役割は評価されるべきであるが、公立小・中学校の設置管理は、戦後一貫して市区町村の事務であり、地方分権一括法の前後で、市区町村の事務ということが変わったわけではない。


・  「自治事務」とは、「法定受託事務」を除く様々な性格を有する事務の総称であり、地方公共団体がどのような裁量をもつか、その処理に国がどの程度関与するか、国と地方の経費負担の在り方をどうするかは、それぞれの事務の性格によって判断されるものであることなどから、「自治事務」であることと、その費用を誰が負担するかは直接には関係しない。


・  平成10年5月に閣議決定された地方分権推進計画において、地方公共団体の担う事務に要する経費については、その地方公共団体が全額負担することが原則とされている。一方、同計画においては、真に国が義務的に負担を負うべきと考えられる分野として義務教育があげられている。


○  なお、平成17年度には1,044市区町村(全国の市区町村の47パーセント)の議会から義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見書が提出されている(10月25日現在)。これは平成16年度から通算すると全国の市区町村の65パーセントに達する。


○  地方の意見に関して、三位一体の改革により地方が真に税源移譲を求めているのは、配分に当たって国の裁量が大きく地方の主体性を阻害しているもの、国の補助基準に合わせるために無駄な事業を招いているもの、国に陳情をして配分を求める必要があるものなどであって、教職員給与費のための義務的経費である義務教育費国庫負担金のようなものではないとの意見が出された。


○  政府・与党合意は、義務教育制度に関して、その根幹の維持と、国の責任の堅持を大きな前提としており、中央教育審議会も、このことを審議の全体を通じて優先すべき理念と位置づけている。
 さらに、政府・与党合意は、費用負担についての地方案を活かす方策と、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方の検討を中央教育審議会に求めている。これらの検討は、「義務教育制度の根幹の維持と国の責任の堅持」という優先すべき理念の中で行われる必要があり、中央教育審議会では、その前提で義務教育費国庫負担制度に関する検討を行った。
 義務教育費国庫負担制度の検討に当たっては、大きく3つの観点に着目した。

ウ 義務教育費国庫負担制度の検討に関する3つの観点からの議論の概要

【観点1:教育の質の向上】

○  義務教育の根幹である無償制、機会均等、水準の維持向上を具体的に保障するには、地方が学校を設置管理し、国が学習指導要領により全国的な教育水準を明らかにした上で、その水準を維持・向上するための資質・能力を備えた教職員を確保することが必要である。
 多くの委員から、義務教育費国庫負担制度は、こうした教職員を確保するための最も確実な財源保障制度であり、我が国の質の高い義務教育を支える前提となっているとの意見が出された。


○  地方六団体委員からは、義務教育費国庫負担金の一般財源化による教育上の効果として、公立小・中学校が地方の税によって運営されることになると、住民は自分の納めた税の使途である学校をより厳しい目で見ることとなる、児童生徒・保護者だけでなく、地域全体への責任を実感することにより、教職員の自覚が高まり、ひいては教師の質の向上にもつながる、との意見が出された。
 また、地方六団体委員から、国庫負担制度と義務教育の根幹を維持するということは関係ない、現在、義務教育費において国が負担している割合が3割にも満たず、これを税源移譲して一般財源化してもなんら影響はない、国庫負担金制度を廃止しても、税源移譲と地方交付税により確実に財源を確保できるのであるから、義務教育の根幹は維持される、との意見が出された。


○  この議論に関しては、住民が学校を厳しい目でみるかどうか、あるいは教職員の自覚が高まるかどうかといった議論は、学校の組織運営の見直しや、教師の質の向上によって可能になるものであり、義務教育費国庫負担金の一般財源化により生じるものではない、例えば、義務教育費について地方が負担している割合が7割を超えている現在でも、住民意識が高いと言えないのであれば、残り3割弱を一般財源化して住民意識が高まることになるのか、むしろ、住民は国庫負担事業かどうかに関わらず学校に厳しい目を向けているのではないか、住民税のフラット税率化により住民の学校を見る目が高まるということの必然性が明らかでなく、むしろ、地方で教育目的税を導入した方が、自らの税で学校が運営されているということがわかりやすくなるのではないかとの意見が出された。


○  地方六団体委員からは、義務教育費国庫負担金の一般財源化による教育上の効果として、以下のような意見が述べられた。 ・  地域住民の間では学校まかせという意識が低くなり、地域ぐるみで教育を支えようという意識が高まり、開かれた学校、開かれた教育が実践されることになる。


・  家庭、地域、学校が、それぞれの立場を尊重しながら、連携を深めていくこと、また、地域の資源や伝統行事などを教育活動の場としたり、地域の人材を実技指導員等として学習活動に参画させることにより、総合的な教育が展開できる。


○  これに関して、以下のような意見が述べられた。 ・  現時点でも、地域と密接に連携した活動を行っている学校は多く、義務教育費国庫負担制度が、地方が目指している教育上の効果の実現に対する妨げになっているということはない。


・  例えば、多くの地域で取り組まれている少人数指導やティーム・ティーチングなどのきめ細かい指導方法は、現行制度でも行われており、一般財源化の教育上の効果として新たに生じるものではない。


・  地方六団体からは、義務教育費国庫負担金の一般財源化による教育上のメリットや、地方における教育のあるべき姿について、財源とそれ以外の問題を整理した上で、説得力のある説明がなされていない。



【観点2:財源確保の確実性・予見可能性】

○  義務教育費国庫負担制度は、義務教育費国庫負担法により、都道府県が教職員給与費として実際に支出した額の二分の一を国が負担することを義務づけているものである。また、地方財政法第10条は、教職員人件費を、国と地方の相互の利害に関係があり、国が進んで経費を負担するものとして位置づけている。
 このことから、多くの委員から、義務教育費国庫負担金は、国の責任で必ず予算措置されるものであり、一般財源化するよりも、財源確保の確実性・予見可能性が高いとの意見が出された。


○  地方六団体委員からは、以下の意見が出された。 ・  義務教育費国庫負担金については、その100パーセントが税源移譲され、地方財政全体で財源不足は生じない、地方公共団体によっては、国庫負担金に見合う税収が税源移譲では確保されないところもあるので、そうした団体に対しては、地方交付税により適切な財源調整がなされる。このことは総務省の説明にもあったとおりである。


・  内閣総理大臣も、平成17年2月22日の衆議院本会議における質疑の中で、「三位一体の改革においては補助金を廃止して税源移譲を行う場合であっても、個人住民税の税率をフラット化することなどにより税源分布の偏りを緩和するとともに、地方交付税の財政調整機能によって地域間の財政力格差に対応する考えであります」「地方交付税の財源保障機能については、その全般を見直し、縮小する一方、地域間の財政力格差を調整し、一定水準の行政を確保する機能は今後とも必要としております」と答弁している。


・  国庫負担法があっても、昭和60年度以降負担率の引下げなどで義務教育費国庫負担金はカットされてきている。


・  今後、教職員人件費が推計通り増大するとしてもピーク時においても7パーセント程度の伸びでしかなく、かつ、地方財政計画全体の規模の中で0.7パーセント程度を占めるに過ぎないことから、十分吸収可能である。また、現実には、退職者が生じても、そのすべてを新規採用でまかなうことはせずに、退職者の再任用や嘱託の制度を活用することで人件費を抑制するので、将来推計のような人件費の増加は生じない。


・  義務教育費国庫負担金の一般財源化は、地方交付税ではなく税源移譲によって行われ、国庫負担金と同額が税源移譲されること、各都道府県ごとの国庫負担金の減少額と税源移譲額との過不足は地方交付税により調整されること、したがって地方交付税総額を変える必要がないことから、地方交付税総額に関する将来の不安は義務教育費国庫負担金の一般財源化とは関係がない。


○  この議論に関しては、以下の意見が出された。 ・  「三位一体の改革」は、国庫補助負担金、税源移譲を含む税源配分、地方交付税の在り方を一体的に見直すことである。国から地方への税源移譲を基本とすると同時に各地方公共団体の税源移譲の不足分を地方交付税で補うことを前提としている。しかしながら、その地方交付税の総額は、将来的に抑制される方向であり、今後、教職員人件費の増額が見込まれる中で、教育費が確保されるか懸念がある。


・  義務教育費国庫負担制度について「カットされてきている」と言うが、制度創設以来、教職員を必要数確保するために必要な財源のうちその大半を占める給料・諸手当については、国が一貫して負担してきている。


・  義務教育費国庫負担金が一般財源化されれば、これまで現金で地方に届いていたお金が地方税と交付税と地方債でまかなわれることになるが、基準財政需要額に占める地方債の元利償還費の割合が増加している。平成16年度には地方交付税と臨時財政対策債をあわせた金額が2兆8,600億円、対前年度比で12パーセントも減少しており、今後もそうしたことが生じない保障がない。地方交付税が「瀕死の重傷」であるとの意見もある。


・  基準財政需要額は、実際の支出と乖離があり、必ずしも実際の地方における支出を反映していないので、基準財政需要額に算入することでは財源保障にはならない。


・  教職員の給与費については、国庫負担金が100パーセント税源移譲されたとしても、他の国庫補助負担金の中には全額税源移譲されないものもあるため、全体のやりくりの中で、教育費の削減が生じかねない。


・  義務教育費国庫負担金を一般財源化すると財政力の弱い県ほど地方交付税依存度が高まり、将来、地方交付税が削減された場合の打撃が大きくなる。


・  現在計画中の中期財政ビジョンでは、地方財政の総額が将来的に減少する見込みであり、その状況で、今後増大が見込まれる教職員人件費の増額が保障される担保はない。


・  むしろ、義務教育費については、全額国庫で負担することがもっとも確実な財源保障制度である。



【観点3:地方の自由度の拡大】

○  多くの委員からは、義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等とその水準の維持向上を図ることを目的とするものであり、地方における教育活動に関して制約を課すものではない、義務教育費国庫負担制度の運用については、総額裁量制の導入によりかなり柔軟なものになっている、地方六団体が目指している地方における教育の裁量の拡大は、現行の負担金制度の下でも実現されているとの意見が出された。


○  地方六団体委員からは、義務教育費国庫負担金を一般財源化することにより、国の予算に頼ることなく、独自の教育競争をやっていこうという意識改革の観点から三位一体の改革を進めようとしている、地方公共団体によっては、国庫負担金に見合う税収が税源移譲では確保されないところもあるので、そうした団体に対しては、地方交付税により適切な財源調整がなされる、一般財源化により、地方では、義務標準法などの国の基準を満たしつつ、当事者意識を持って、地域の教育環境や児童生徒の実情に応じた学校配置や弾力的な学級編制、教職員配置が可能となるとの意見があった。
 また、一般財源化により地方の裁量が拡大する例として、教職員の配置や学級編制に関して国の基準を満たした上で、多種多様な取組が促進される、教職員給与に限らず、教育効果の高い外部人材の活用や外部委託、教材の購入・開発、教育関係施設の整備等のさまざまな取組に財政資源を効果的に配分できるとの意見があった。


○  この議論に関しては、国庫負担は、都道府県の実支出額の二分の一を国が後払いするものであり、都道府県の予算編成の自由を奪っているかのような主張はあたらない、教育行政で、学校やその設置者である市区町村が拘束性を感じているとすれば、それは教育内容や教職員配置等の他の法令によるものであり、国庫負担金とは関係のないものである、一般財源化で拡大する自由として具体的にあり得るのは、地方において教育費を“減らす自由”だけである。しかしながら、義務的経費である教職員給与費の一般財源化で自由度は拡大せず、結局、地方六団体の主張する教育行政の在り方には具体性がないものと解さざるを得ない、との意見が出された。

エ 地方案を活かす方策の検討

○  以上、3つの観点に関する検討を通じて、義務教育の主たる経費である教職員の給与を保障する方法として、全額を国庫負担する制度、現行の国庫負担制度のように国と地方が負担割合を法定し、それにより給与費の全額が保障される制度、全額一般財源化により、地方が全額を負担する制度、などが考えられる。


○  義務教育の機会均等と水準の維持向上を図ることは国の存立に関わるもっとも重要な基本政策である。義務教育の成果は、一地方にとどまらず、国全体に関わるものであり、義務教育の経費はこの観点から考えられなければならない。また、教育の質の向上のためには、教職員が安心して職務に従事できる基盤の保障と強化が重要である。


○  このような観点からは、本来は、義務教育費の全額保障のために、必要な経費の全額を国庫負担とすることが望ましいと言える。


○  義務教育の構造改革を推進すると同時に、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するためには、国と地方の負担により義務教育の教職員給与費の全額が保障されるという意味で、現行の負担率二分の一の国庫負担制度は、教職員給与費の優れた保障方法であり、今後も維持されるべきである。
 その上で、地方の裁量を拡大するための総額裁量制の一層の改善を求めたい。例えば、国庫負担における対象職種の拡大や、小中盲聾学校と養護学校の二本立てとなっている現行の国庫負担制度を一本化し、教職員配置の弾力化を図ることなどが考えられる。


○  中学校に係る国庫負担金を対象から外すという考え方については、同じ義務教育である小学校と中学校の教職員の取扱いを分けることになり、合理性がなく、適当ではない。


○  教材購入費や図書購入費など教育環境整備に不可欠な経費は、現在、地方の一般財源により措置されており、その措置実績が国の基準を下回っている、あるいは地域ごとに格差が生じている状況にある。今後、国と地方の協力により、その総額が確実に確保されるよう努める必要がある。


○  地方六団体が目指す教育の実現についての提案は、本答申を貫く一つの理念として十分尊重されている。学校や市区町村が、特色ある教育活動、柔軟な学級編制などを行い、それぞれの地域の伝統や独自の文化を生かし、個性ある多様な人材を育てることが重要である。それは、学校とその設置者である市区町村の裁量権限と自由度の拡大を進めることにより実現されるものであり、義務教育費国庫負担金や公立学校施設整備費負担金等を通じ国がその財源を担保することが重要であると考える。

第4章 確固とした教育条件を整備する

2007-07-31 07:05:07 | Weblog
-教育の質の向上、財源確保の確実性・予見可能性、地方の自由度の拡大-

(1)教育条件整備に関する共通理解

○  義務教育を支える教育条件の整備に関しては、以下の2点を大きな前提として具体的な在り方を考えていく必要がある。  義務教育は、国全体を通じての最重要事項であること ・  義務教育は国全体を通じての最重要事項であり、その質の向上のため、国と地方が協力して、教職員配置、設備・教材、学校の施設など教育を支える条件整備を確固たるものとする必要がある。


 義務教育に必要な財源を確実に確保する必要があること ・  義務教育費は全ての予算において最優先すべき経費であり、教職員給与費をはじめとする必要な教育費は、確実に確保される必要がある。



○  また、義務教育の質の向上のためには、学校の施設、設備・教材、教職員配置等の条件整備が十分充実していることが肝要であり、特に、義務教育への投資の在り方について、多くの委員から以下の意見が出された。 ・  OECDの調査によれば、1995年から2001年の6年間における公財政による教育費支出の変化を国際的に比較すると、多くの国が教育費支出を伸ばしている中で、我が国の公財政支出は微増にとどまっている状況にある。
・  また、初等中等教育について、OECD平均(2001年)では対GDP比3.5パーセントが公財政支出に充てられているのに対して、我が国は2.7パーセントにとどまっている。
・  今後とも我が国が教育立国としての地位を確保し続けるために、また、保護者の経済的格差が子どもたちの教育環境の格差につながらないようにするために、公財政支出を一層拡充する必要があると考える。
・  また、教育に対する公財政支出の拡充のためには、公債発行対象経費である投資的経費に比べて、消費的経費が大半を占める教育支出が増えにくい財政制度や公財政支出構造の仕組みを見直すことが必要である。
・  なお、公財政支出の拡充について、国民の理解を得るためには、教育の成果についての評価を行うことや、必要な効率化を図ることも併せて検討する必要がある。


○  さらに、教育条件の整備に関連しては、以下も重要である。 ・  教育の分権改革を推進するため、教育内容、学級編制、人事、予算の執行等について、できる限り市区町村や学校の裁量を拡大する必要がある。
・  地方・学校現場の裁量に委ねつつ、教職員配置の改善を通じて、少人数教育を一層推進する必要がある。
・  教職員給与費は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)に基づいて算出される人数に対応して、所要額が確保される必要がある。
・  学校の教材、図書等の整備や、司書の配置など、子どもたちの教育環境を充実させる必要がある。
・  条件整備の状況を把握するための学校の評価制度の導入を検討する必要がある。評価の具体的な実施方法については、学校の序列化などの弊害を生じさせないよう十分な配慮が必要である。


○  なお、費用負担の在り方を検討する際には、義務教育の経費の7割以上を占める教職員人件費(給料・諸手当に、退職手当、共済費などを加えたもの)の将来の動向を踏まえるべきであるとの観点から一定の前提条件の下に推計を行った。
 これによると、平成16年度の公立義務教育諸学校の教職員人件費は5兆8,900億円と見込まれるが、今後、教職員の定期昇給や退職手当、共済費の負担の増大等のため、教職員配置基準を現状のまま改善しない場合でも、平成18年度には6兆円を超え、平成26年度には6兆3,200億円とピークを迎えることが推測される(平成30年度には6兆2,000億円)。これに公立高等学校の分を加えると、教職員人件費の合計は、平成16年度の8兆2,400億円が、平成28年度には8兆8,600億円(平成16年度比6,200億円増)でピークを迎え、平成30年度においても8兆8,400億円となる。平成16年度から平成30年度までの負担増の累積は6兆4,300億円に達することが推測される。

第3章 地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高める

2007-07-30 06:43:45 | Weblog
-学校・教育委員会の改革-

(1)学校の組織運営の見直し

ア 学校の自主性・自律性の確立

○  学校が主体的に教育活動を行い、保護者や地域住民に直接説明責任を果たしていくためには、学校に権限を与え、自主的な学校運営を行えるようにすることが必要である。
 現状でも、校長の裁量で創意工夫を発揮した特色ある教育活動を実施することが可能であるが、人事面、予算面では不十分な面がある。
 権限がない状態で責任を果たすことは困難であり、特に教育委員会において、人事、学級編制、予算、教育内容等に関し学校・校長の裁量権限を拡大することが不可欠である。


○  教職員の人事について校長の権限を拡大することが必要である。人事権を有する教育委員会において、例えば、教員の公募制やFA(フリー・エージェント)制などを更に推進することが求められる。


○  学級編制を含めた指導方法の工夫改善については、各学校がそれぞれの実情に応じて個別に判断することが適当である。このため、各学校が個別に学級編制を行うなど学校の判断が尊重されるよう現行の学級編制の仕組みを見直す必要がある。


○  教育内容に関する学校の裁量を拡大するとともに、予算面で、学校の企画や提案に基づいた予算の配分や、使途を特定しない裁量的経費の措置など、学校裁量の拡大を更に進めることが必要である。このため、学校の設置者である教育委員会においては、教育委員会規則の改善や学校予算の配分方法の工夫などを一層進めることが求められる。


○  以上のように、学校の裁量を拡大し、地域や学校の特色を生かした多様で個性的な教育が展開されるようにするためには、その土台として、確固とした教育条件が整備されていることが不可欠である。次章で述べるように、教職員、学校施設、教科書という教育の最も基本的な条件の整備は、特に確実に行われることが必要である。


○  学校運営を支える機能の充実のため、教頭の複数配置を引き続き推進したり、主任が機能するよう更にその定着を図ることが重要である。それとともに、今後、管理職を補佐して担当する校務をつかさどるなど一定の権限を持つ主幹などの職を置くことができる仕組みについて検討する必要がある。
 また、事務の共同実施や共同実施組織に事務長を置くことを検討するなど、学校への権限移譲を更に進めるための事務処理体制の整備を進めることが必要である。


○  機動的な学校運営のため、前述の教頭の複数配置や主任制、主幹制なども活用しつつ、校長が、その権限と責任において決定すべき事項と、職員会議等を有効に活用することがふさわしい事項とを区別して学校運営に当たることが重要である。
 これによって、学校の意思決定が、校長のリーダーシップの下に、高い透明性を確保し、公平・公正に行われることが重要である。また、決定した事項についての教育委員会や校長等の説明責任が常に意識されることが重要である。


○  教師が以前に比べ多忙になり、子どもと触れ合う時間が確保できないという指摘がある。今後、学校が処理する事務・業務の見直しや、国・都道府県・市区町村が行う調査等の精選により、学校の負担軽減を図ることが必要である。

イ 学校・地方自治体の取組の評価

○  学校や地方自治体の裁量を拡大し主体性を高めていく場合、それぞれの学校や地方自治体の取組の成果を評価していくことは、教育の質を保証する上でますます重要となる。また、近年の学校教育の質に対する保護者・国民の関心の高まりに応えるためにも、学校評価を充実することが必要となっている。


○  現在、学校評価は、学校が教育活動の自律的・継続的な改善を行うとともに、「開かれた学校」として保護者や地域住民に対し説明責任を果たすことを目的として、自己評価を中心に行われている。また、この評価は、教職員のほか、保護者、地域住民、学校評議員などが参加して行われており、これらの者が情報や課題を共有しながら学校の改善を進めていく上で重要な役割を果たしている。その一方で、各学校における実施内容のばらつきや、評価結果の公表が進んでいないなどの課題も見られる。


○  今後、更に学校評価を充実していくためには、学校・地方自治体の参考に資するよう大綱的な学校評価のガイドラインを策定するとともに、現在、努力義務とされている自己評価の実施とその公表を、現在の実施状況に配慮しつつ、今後全ての学校において行われるよう義務化することが必要である。


○  また、自己評価の客観性を高め、教育活動の改善が適切に行われるようにしていくためには、公表された自己評価結果を外部者が評価する方法を基本として、外部評価を充実する必要がある。設置者である市区町村の教育委員会は、各学校の教育活動を評価するとともに、学校に対する支援や条件整備など自らの取組について評価し、どのような対応が必要なのかを明らかにしていくことが必要である。国は、評価に関する専門的な助言・支援を行うとともに、第三者機関による全国的な外部評価の仕組みも含め、評価を充実する方策を検討する必要がある。


○  なお、学校評価の実施に当たっては、学校の序列化や過度の競争、評価のための評価といった弊害が生じないよう、実施や公表の方法について十分に配慮する必要がある。また、評価に関する事務負担を軽減するための工夫や支援も重要である。全国的な外部評価の仕組みの検討に当たっても、地方自治体の役割と国の役割を十分整理しながら、我が国の事情に合った方法を開発していく必要がある。

ウ 保護者・地域住民の参画の推進

○  地域に開かれ信頼される学校を実現するためには、保護者や地域住民の意見や要望を的確に反映させ、それぞれの地域の創意工夫を生かした特色ある学校づくりを進めることが不可欠である。それと同時に、保護者や地域住民が、学校に要求するばかりでなく、学校とともに地域の教育に責任を負うとの認識のもと、学校運営に積極的に協力していくことも求められる。学校が責任を果たすことは当然であるが、これからの時代に求められる教育の実現のため、保護者や地域住民には、学校教育に積極的に参画することが重要であるという意識を持つことが期待される。


○  このため、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)や学校評議員制度の積極的な活用を通じて、保護者や地域住民の学校運営への参画を促進する必要がある。その際には、校長との権限関係を明確にすることや、委員に適材を得ることが必要である。また、国や地方自治体は、保護者や地域住民の学校運営への参画に関する取組の成功例について幅広く情報提供を行うなど、その促進のための支援策を講じることが必要である。


○  学校運営への保護者や地域住民の参画は、学校運営が透明性を高め、公平・公正に行われるようにするとともに、教育活動等についての評価及び公開を通じ十分な説明責任を果たすという民主主義のルールに基づいて行われるようにする上で重要な意義を有するものである。


○  学校施設の地域への開放や余裕教室の有効利用により、学校が地域住民の活動の場となり、学校が拠点の一つとなって地域づくりが進められていくことも必要である。

(2)教育委員会制度の見直し

ア 教育委員会の設置の在り方

○  教育委員会制度の在り方については、平成16年3月の諮問「地方分権時代における教育委員会の在り方について」以来、地方教育行政部会において審議が行われ、平成17年1月に部会まとめが出されている。


○  教育委員会制度は、首長からの独立、合議制、レイマン・コントロールにより、政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映を図るものとして我が国に導入され、地方教育行政の基本的な制度として定着している。


○  一方、現在の教育委員会の現状については、会議が形骸化している、国の示す方針に従う縦割りの集権型の仕組みになっている、合議制のため責任の所在が不明確となっている、迅速な意思決定ができない、などの問題が指摘されている。
 これらを理由として、教育委員会の設置を地方自治体の選択に委ねるべきとの意見、その際の代替措置として教育に関する審議会を設置するという意見、特に小規模な町村でその必要があるなどの意見が出された。


○  しかし、教育行政における政治的中立性や継続性・安定性の確保、地方における行政執行の多元化(首長に権限が集中することへの危惧)、首長が広範な事務を処理する中で専門の機関が教育を担当することのメリット(安定した行政執行)、義務教育実施の確実な担保などの重要性を踏まえると、教育委員会の設置は選択制にすべきではなく、必要な運用や制度の改善を図ることが必要であると考えられる。特に、今後、後述するように、教職員人事や学級編制など義務教育に関する市区町村の権限と責任が拡大することを考慮すると、市区町村の教育行政における政治的中立性の確保や教育行政の専門性の発揮、行政執行の多元化等の要請は一層強まり、教育委員会の機能の強化が求められると考えられる。また、指摘される問題の多くは、首長や議会の在り方に起因するものであり、教育委員の選任などについて首長や議会が本来期待されている権能を行使すれば解決できるとの意見も出された。


○  したがって、教育委員会制度の今後の在り方については、全ての地方自治体に設置することなど現在の基本的な枠組みを維持しつつ、それぞれの自治体の実情にあわせた行政が執行できるよう制度をできるだけ弾力化するとともに、教育委員会の機能の強化、首長と教育委員会の連携の強化や教育委員会の役割の明確化のための改善を図ることが適当である。


○  なお、教育委員会の機能の強化については、平成17年1月の地方教育行政部会の部会まとめにおいて様々な方策が指摘されているところであり、特に、教育委員に適材を確保するための選任の改善、教育委員会が責任を持って意思決定できるようにするための教育委員会会議の工夫や公開、住民の意向や教育現場の実情の把握、指導主事など事務局体制の強化、市町村教育委員会の事務処理の広域化等を進めることが重要である。

イ 教育委員会の組織の弾力化

○  教育委員会の組織や運営は、自治体の種類や規模等にかかわらずほぼ一律のものとなっている。しかし、自治体は人口規模や行政資源が多様であることから、その状況に応じ、例えば委員の数などについて各自治体が選択できるよう弾力化することが適当である。また、前項で述べたように、教育委員の選任方法や教育委員会会議の運営等について、各自治体が地域の実情に応じ主体的に工夫改善することが重要である。

ウ 首長と教育委員会の権限分担の弾力化

○  教育委員会は、学校教育のほか、社会教育、文化、スポーツ、生涯学習といった幅広い事務を所掌している。今後、地域づくりの総合的な推進をはじめ、他の行政分野との連携の必要性、さらには政治的中立性の確保の必要性等を勘案しつつ、首長と教育委員会との権限分担をできるだけ弾力化していくことが適当である。このため、教育委員会の所掌事務のうち、文化(文化財保護を除く)、スポーツ、生涯学習支援に関する事務(学校教育・社会教育に関するものを除く)は、地方自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにすることが適当である。また、高等教育機関である高等専門学校については、首長が所管できるようにすることが適当である。


○  首長は、現行制度でも、教育関係の予算の編成・執行の権限を持つなど、教育行政に大きな責任を負っているところであり、教育委員と首長との協議会の開催など、首長と教育委員会との連携を強化していくことが重要である。特に、自治体の判断で、文化、スポーツ、生涯学習支援に関する事務を首長が担当することとする場合、首長と教育委員会との連携を十分図る必要がある。

エ 教育委員会と教育長との関係

○  教育委員会の使命は、地域の教育課題に応じた基本的な教育の方針・計画を策定するとともに、教育長及び事務局の事務執行状況を監視・評価することであることを制度上明確化する必要がある。また、教育委員会と教育長及び事務局が適度な緊張関係を保ちながら教育事務を執行する体制を実現することが必要である。このため、教育長が教育委員の中から教育委員会によって選ばれるような現在の教育長の位置づけ・選任方法は見直すことについて、今後引き続き検討することが適当である。

(3)国と地方、都道府県と市区町村の関係・役割

ア 基本的な考え方

○  義務教育の実施にあたって、ナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための諸条件を担保する観点から、国は、学校制度の基本的な枠組みの制定や教育内容に関する全国的な基準の設定を行い、その上で、地方は、それぞれの地域の実情に応じ、主体的に教育の質を高め、ローカル・オプティマム(それぞれの地域において最適な状態)を実現するとともに、国、都道府県、市区町村それぞれが必要な財源措置を行っていくことが必要である。


○  教育行政における国、都道府県、市区町村の関係・役割については、平成10年の本審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」において整理がなされ、それをもとに、教育長の任命承認制度の廃止や、国や都道府県の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し等、教育行政における地方分権改革が行われた。


○  現在、国は、教育制度の枠組みの設定や、学習指導要領等の基準の制定、地方自治体に対する財源保障を行っている。また、都道府県は、教職員の給与負担をするとともに、広域で人事を行い、市区町村は、小・中学校を設置しその管理運営に当たるなど義務教育の直接の実施主体となっている。
 義務教育については、地方自治体が学校の設置管理を行うなど直接的な責任を負っている一方、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持向上といった義務教育の根幹の保障については国が責任を負っている。


○  義務教育については、今後の分権改革の重点は、都道府県から市区町村への分権、教育委員会から学校への権限移譲であると考えられる。
 地方の中でも、義務教育の直接の実施主体である市区町村や学校に権限の移譲を進めるとともに、市区町村が設置者としてその地域の状況に応じて独自の教育方針や基準を設定するなど、地域の実情に応じた教育を実現できるようにしていくことが必要である。これに対応し、都道府県は、広域人事など市区町村間の調整や小規模市町村に対する支援にその役割を一層重点化し、市区町村の自主性を尊重しつつ、義務教育の質の保証・向上に責任を果たしていくことが求められる。
 このように、都道府県から市区町村へ権限を移譲した上で、国、都道府県、市区町村が協力しながら、その責任と役割を果たしていくことが重要である。

イ 地方の主体性を生かした教育行政の推進

○  教育行政に関しては、文部科学省、都道府県教育委員会、市区町村教育委員会の間で、上意下達の中央集権的な行政になっており、地方の創意工夫を阻害しているとの指摘がある。


○  義務教育の機会均等や水準確保などの根幹の保障は国の責任であり、その責任を果たす上で、都道府県や市区町村に対し必要な指導・助言や援助を行うことは必要である。
 一方、教育行政における国と地方の関係については、これまでも、指揮監督による権力的な作用よりは、指導・助言や援助による非権力的な作用によって、地方の主体的活動を促進することが基本となっており、今後も、この方針を重視していく必要がある。
 さらに、国の定める教育内容、教職員配置、学級編制などに関する基準を、できる限り大綱化・弾力化したり、最低基準性を明確にするなど、地方の裁量を拡大することが必要である。


○  地方の主体性により義務教育の質の向上を図るためには、その基盤となる財源保障が安定的で確実であることが重要である。
 義務教育費国庫負担制度が、地方や学校の創意工夫の発揮を妨げ、国からの指示待ちの状態を招き、主体的に行政執行しようとする意識改革を阻害している、あるいは、特色ある教育活動の実施や人材の活用、教材の開発などにおける地方の独自の取組を阻害しているとの意見が少数ながら出された。しかし、現在も、学習指導要領や義務標準法などの基準・法令を遵守した上で、地方の独自性を活かした取組を行うことが期待されている。次章で述べるように、現在認められている以上に地方独自の創意工夫を活かすためには、義務教育費国庫負担制度に基づく確実な財源保障の下で、学習指導要領や義務標準法などの基準・法令を地方の自由度を高める方向で見直すことが必要である。


○  市区町村教育委員会や学校に対して、都道府県教育委員会から過度の関与が行われているとの指摘もある。義務教育に関しては、市区町村の権限と責任を拡大し、都道府県教育委員会から、瑣末な部分にまで及ぶ指導の行き過ぎが行われないようにすることが必要である。
 さらに、義務教育の実施主体である市区町村の側において、教育委員会が教育行政の責任ある担い手として、地域の教育課題に主体的に取り組むなど、市区町村教育委員会の機能の強化を図る必要がある。また、首長が、教育委員への適材の選任など、本来期待されている機能を果たし、市区町村教育委員会が自立し主体性を発揮することが重要である。

ウ 市区町村への教職員人事権の移譲

○  現在、県費負担教職員の給与負担(給与の支出責任)と人事(任命)権は、基本的に都道府県にあるが、例外的に政令指定都市については人事権が、中核市については人事権のうち研修に関する実施義務のみが、都道府県から移譲されている。


○  これについて、義務教育諸学校は、市区町村が設置し教職員も市区町村の職員でありながら、給与負担と人事権が都道府県にあるため、県費負担教職員が地域に根ざす意識を持ちにくくなっていること、また、より教育現場に近いところに権限をおろすべきであることなどから、人事権についても都道府県から義務教育の実施主体である市区町村に移譲する方向が望ましいと考えられる。


○  とりわけ、中核市については、既に研修実施義務が移譲されており、これに加えて人事権全体についての移譲を求める意見が強かった。また、大都市周辺部等には、中核市相当やそれに準ずる規模を有する市区も多いことなど、一定の規模を有する市区町村についても人事権の移譲を求める意見があった。


○  一方、とりわけ町村には小規模なところも多く、給与や人事権の行使に伴う負担には耐えられないとの意見や、中核市など大規模な市区町村抜きでの広域の人事異動は考えられないなどの意見、また、県内に一又は複数の人口50万人程度の広域連合による「教育機構」を作るなどの意見があった。


○  これらの意見を踏まえ、教職員の人事権については、市区町村に移譲する方向で見直すことが適当である。
 一方、現在の市区町村の事務体制で人事関係事務を処理できるか、離島・山間の市町村を含めた広域で人材が確保できるかにも留意する必要がある。
 このため、当面、中核市をはじめとする一定の自治体に人事権を移譲し、その状況や市町村合併の進展等を踏まえつつ、その他の市区町村への人事権移譲について検討することが適当である。
 また、人事権の移譲に伴い、都市部と離島・山間部等が採用や異動において協力し、広域で一定水準の人材が確保されるような仕組みを新たに設けることが不可欠である。
 なお、教職員人事権を市区町村に移譲する場合には、その財源保障は安定的で確実なものであることを前提に、人事権者と給与負担者はできる限り一致することが望ましく、人事権移譲に伴う給与負担の在り方も適切に見直すことを検討する必要がある。


○  さらに、人事権が移譲されない市区町村でも、現在、構造改革特別区域において行われている市町村費負担教職員任用事業の全国化により、市区町村独自の教職員の任用を可能とすることが適当である。

エ 教職員配置の改善と市区町村、学校への学級編制に係る権限の移譲

○  義務教育のナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための諸条件を整備する観点から、国が学級編制及び教職員配置についての基準を明確にすることは重要であり、早急に次期定数改善計画を策定する必要がある。これにより、少人数教育の一層の推進や、学習指導や特別支援教育の充実、養護教諭、栄養教諭、事務職員、司書教諭の配置充実、外国人児童生徒への支援の充実など、今日的な教育上の課題に迅速かつ適切に対応した教職員配置の改善を進める必要がある。


○  その上で、今後は学校の判断により地域や学校の実情に合わせた指導形態・指導方法や指導組織とするため、現行制度を見直し、学級編制に係る学校や市区町村教育委員会の権限と責任を拡大する必要がある。
 例えば、義務標準法による教職員の標準定数について都道府県ごとの算定から市区町村ごとの算定に改めることや、学校や市区町村教育委員会の判断で学級編制が弾力的に実施できるようにすることなど現行の学級編制の仕組みを見直す必要がある。
 また、学校や市区町村教育委員会の判断で少人数学級編制を可能とすることができるよう、これまで例外的な措置とされていた40人学級を下回る学級編制が自由に選択できる制度とする必要がある。
 その際、各都道府県に対し教育上の特別な事情に基づきさらに必要とされて加えられる定数(いわゆる教職員定数の加配定数)について、その配分と運用ルールの見直しを検討すべきである。

第2章 教師に対する揺るぎない信頼を確立する

2007-07-29 07:24:30 | Weblog
(1)あるべき教師像の明示

○  人間は教育によってつくられると言われるが、その教育の成否は教師にかかっていると言っても過言ではない。国民が求める学校教育を実現するためには、子どもたちや保護者はもとより、広く社会から尊敬され、信頼される質の高い教師を養成・確保することが不可欠である。


○  優れた教師の条件には様々な要素があるが、大きく集約すると次の3つの要素が重要である。


教職に対する強い情熱
 教師の仕事に対する使命感や誇り、子どもに対する愛情や責任感などである。
 また、教師は、変化の著しい社会や学校、子どもたちに適切に対応するため、常に学び続ける向上心を持つことも大切である。


教育の専門家としての確かな力量
 「教師は授業で勝負する」と言われるように、この力量が「教育のプロ」のプロたる所以である。この力量は、具体的には、子ども理解力、児童・生徒指導力、集団指導の力、学級作りの力、学習指導・授業作りの力、教材解釈の力などからなるものと言える。


総合的な人間力
 教師には、子どもたちの人格形成に関わる者として、豊かな人間性や社会性、常識と教養、礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション能力などの人格的資質を備えていることが求められる。また、教師は、他の教師や事務職員、栄養職員など、教職員全体と同僚として協力していくことが大切である。


(2)信頼される教師の養成・確保

ア 基本的な考え方

○  教師の質の向上のためには、養成、採用、研修、評価等の各段階における改革を総合的に進める必要がある。これらの改革に当たっては、教師を励ますような方向で進めるとともに、教職員の処遇の改善が図られるなど、教職や学校が魅力ある職業、職場となるようにすることが重要である。
 教職が魅力あるものとなるためには、教職員の地位や処遇が安定したものであって安心して子どもたちの教育に取り組めることは特に重要であり、資質能力を備えた教職員を安定的に確保するための確実な条件整備が欠かせない。
 そうした土台と合わせて、以下に述べるように、教員養成・免許制度の改革や教員評価の充実等により、教師が常に自己研鑽に努める環境整備が必要である。


○  現在の教師の年齢構成を見ると、大量採用期の40歳代から50歳代前半の層が多くなっており、今後、この世代が退職期を迎えることになることから、量及び質の両面から優れた教師を養成・確保することに十分留意する必要がある。特に、このような時期こそ、養成段階における教職課程の改善・充実を図ること、採用段階でより優れた教師を確保するための採用選考方法の工夫・改善を図ることは極めて重要となる。


○  教師の質の向上のためには、職場の同僚同士のチームワークを重視し、全員のレベルを向上させる視点と、個々の教師の能力を評価し、向上を図っていく視点の両方を適切に組み合わせることが重要である。その際には、校長のリーダーシップ及び学校を支える教育委員会の役割が重要である。

イ 教員養成・免許制度の改革

○  一般大学学部と教員養成系大学学部とが、それぞれの特色を発揮しつつ教員養成を行う「開放制」の原則は、幅広い視野と高い専門的知識を兼ね備えた人材を広く教育界に求める上で意義があり、今後とも尊重する必要がある。
 また、子どもの人格形成にかかわる教師には総合的な人間力が求められることを踏まえ、教員養成を担う大学においては、哲学、倫理学、歴史学等の人文科学や基礎科学等を幅広く履修し、広く豊かな教養を身に付けた人材を育成することが求められる。
 一方、国際的に質の高い教育を実現するためには、質の高い教師が養成されるよう、大学における教員養成の質の維持・向上を図る必要がある。また、教員免許状についても、教師としての資質能力を確実に保証するものとなるようにする必要がある。


○  大学での養成段階は、教師として最小限必要な資質能力を身に付けさせる段階であり、学校の実態やニーズも踏まえた資質能力の育成を含め、カリキュラム編成や成績評価の改善・充実を図ることが重要である。また、(1)で述べたようなあるべき教師像に示された教師を養成するという使命の重大さにかんがみ、教職課程認定の際の審査の在り方や、外部機関等が教職課程を事後評価する仕組みについても検討する必要がある。


○  高度な専門性と実践的な指導力を有する教師の養成や、現職教師の再教育の充実を図っていくため、学部段階における教員養成の着実な改善・充実とともに、とりわけ大学院段階における教員養成・再教育の格段の充実を図ることが必要である。このため、学校の様々な課題に即した実践的な教育を高度なレベルで行う教員養成分野における専門職大学院制度を創設する方向で検討することが適当である。その際には、現行の大学院修士課程との関係や、社会人を含めた幅広い分野からの入学者の受入れ等について検討する必要がある。


○  教師が、国民や社会から尊敬と信頼を得られるような存在となるためには、教員免許状が、教職生活の全体を通じて、教師として必要な資質能力を確実に保証するものとなるようにする必要がある。このため、まず、免許状の授与の段階で、大学で養成すべき教師として必要な資質能力を確実に保証するものとなるよう、教員免許制度の在り方について見直すことが必要である。


○  また、教員免許状を取得した後も、社会状況の変化等に対応して、その時々で求められる教師として必要な資質能力が確実に保持されるよう、定期的に資質能力の必要な刷新(リニューアル)を図ることが必要であり、このための方策として、教員免許更新制を導入する方向で検討することが適当である。なお、我が国の教師の指導力が高いことについて正当な評価がなされないまま、教師に対する不信感のみから教員免許更新制を導入するのであれば、教師の意欲を喪失させる恐れがある。このため、教師の意欲を高める視点が必要であり、教員免許更新制の導入により、教師への人材登用の途を狭めることや、教師の身分を不安定にしたり、過剰な負担感を与え教職の魅力を低下させることのないよう留意する必要がある。

ウ 採用、現職研修の改善・充実

○  採用や初任者研修、10年経験者研修等の現職研修を通じて、実力ある教師の確保・育成を図ることが必要である。
 採用については、教師としての確かな指導力や総合的な人間力を見極めるため、人物評価を一層重視するとともに、大学の成績やボランティア等の諸活動の実績を評価する選考方法の改善を進めるなど、採用段階でより優れた教師を確保するための積極的な工夫・改善が必要である。また、今後、大量採用時代を迎えることが見込まれるため、民間企業経験者や退職教員等、多様な人材を登用するための工夫・改善も必要である。


○  研修については、校内研修や任命権者等が実施する研修といった体系的な研修と教師の主体性を重視した自己研修の双方の充実が必要である。また、国として、各地域において中核的な役割を担う教師等を一堂に集めて行う研修や、喫緊の重要課題に関する研修について、今後とも、一層の充実を図るとともに、都道府県教育委員会等に対する指導・助言・援助の機能も一層充実・強化する必要がある。研修の在り方については、講義形式だけでなく、実践的な指導力を向上させるとともに、内容・方法の工夫・改善を図ることが必要である。また、大学と教育委員会や学校との一層の連携を図っていくことが重要である。


○  教員養成・免許制度の改革が検討される中で、初任者研修や10年経験者研修等については、これまでの実績を検証し、研修内容・方法や受講者の評価の在り方も含め、一層の改善・充実を図ることが必要である。


○  教師の優れた指導実践を蓄積し、他の教師に継承していくことで、教師全体の指導力の向上を図ることができるような方策についても検討する必要がある。

エ 教員評価の改善・充実

○  学校教育や教師に対する信頼を確保するために、教員評価への取組が必要である。教師の評価は、民間企業で行われるような成果主義的な評価はなじみにくいという教師の職務の特殊性等に留意しつつ、単に査定をするのではなく、教師にやる気と自信をもたせ、教師を育てる評価であることが重要である。


○  教員評価に当たっては、主観性や恣意性を排除し、客観性をもたせることが重要であり、教師の権限と責任を明確にし、それに基づいて行うことが効果的である。


○  優れた教師を顕彰し、それを処遇に反映させたり、教師の表彰を通じて社会全体に教師に対する信頼感と尊敬の念が醸成されるような環境を培うことが重要である。


○  高い指導力のある優れた教師を位置づけるものとして、教育委員会の判断で、スーパーティーチャーなどのような職種を設けて処遇し、他の教師への指導助言や研修に当たるようにするなど、教師のキャリアの複線化を図ることができるようにする必要がある。


○  多くの教師は、教育活動や自己研鑽に熱心に努めているが、一方で、熱意や指導力の不足、必要な人格的資質の欠如など、問題のある教師がいることも事実である。安心し、信頼して子どもを託すことのできる学校を実現するためには、これら問題のある教師に対し毅然と対処することが重要である。また、各教育委員会に設置されている相談窓口を通じ、教師に関する保護者の意見や苦情に対応していくことが必要である。

オ 多様な人材の学校教育への登用

○  優れた知識・技能と社会経験を持つ学校外の多様な人材を学校教育に積極的に登用していくことは、子どもたちに実社会と触れる機会を与え、社会とのかかわり方を身に付けさせるとともに、学校の活性化につながるものであり、有意義である。
 このため、特別非常勤講師制度や特別免許状制度を積極的に活用したり、学校ボランティアとして多様な外部人材の協力を得ることが重要である。


○  多様な人材の登用に当たっては、優れた指導力を有する退職教員を含む教職経験者や、企業等において種々の専門的な知識・技能を有する職業人、教員志望の学生など、地域や学校の実情に応じて様々な人材に協力を得る工夫が考えられる。
 その際、例えば、学校が中心となって組織を作ったり、活動の場を積極的に提供することなどによって、学校の教育活動にこれらの人材の協力を得ていくことが重要である。


○  校長や教頭といった管理職に人を得ることは肝要である。教頭については、管理職として民間企業等で培った経営感覚を生かすことが期待されることから、校長と同様に民間人などを登用できるよう、資格要件を緩和することが適当である。

第Ⅱ部 各論

2007-07-28 21:31:53 | Weblog
序章 義務教育の質の保証・向上のための国家戦略

○  資源に恵まれない我が国は、教育を通じて人材育成を充実することが何より重要である。
 国際的な大競争時代の今日、どの国においても義務教育の質の保証・向上が国家戦略の中核に据えられている。我が国においても、諸外国に遅れをとることなく、世界最高水準の教育を目指し、人材育成の基盤である義務教育の質の向上に国家戦略として取り組む必要がある。


○  第部で述べた新しい義務教育の創造に向けた構造改革の方向を具体的な改革策として整理すると、以下の4つの教育国家戦略になる。そこで、第部では、以下の戦略に即して、義務教育の改革策を述べたい。


教育の目標を明確にして結果を検証し質を保証する
 義務教育の到達目標を明確化し、教育内容の改善を図るとともに、質の高い教科書を確保する。また、実際に教育の成果が上がっているか結果を評価・検証するための方策を講じる。これらにより、すべての子どもたちに質の高い教育を保証する。


教師に対する揺るぎない信頼を確立する
 教師に対して児童生徒・保護者・国民から尊敬と揺るぎない信頼が得られ、国際的にも教師の質が高いものとなるよう、国の責任で、教員養成の質的な水準を高め、採用後も教師の質が常に向上するような仕組みの充実を図る。


地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高める
 地方・学校の主体性と創意工夫によって教育の質の向上を図るため、国がナショナル・スタンダードを設定しそれが履行されるための財源保障など諸条件を整備した上で、市区町村が行うべきことは市区町村が、学校が行うべきことは学校が担うシステムを確立する。学校は、自主性・自律性の確立のため、権限と責任を持つとともに、保護者・住民の参画と評価で透明性を高め説明責任を果たすシステムを確立する。


確固とした教育条件を整備する
 義務教育の質の保証・向上を図るため、教職員配置、学校施設、設備、教材など教育の実施を支える財源などの教育条件の整備については、国際的にも誇れる確固たるものとなるよう、国の責任でその確立に万全を期す。