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3丁目の夕日/教職課程講座

明日のための演習メモ

食に関する指導体制の整備について(答申)

2007-08-12 18:57:58 | Weblog
はじめに

社会の活力の源泉は,言うまでもなく社会を構成する人々の活力である。そして,人々の活力を支えるものは心身の健康である。

人々が生涯にわたってその心身の健康を保持増進していくためには,食事や運動,睡眠などにおける望ましい生活習慣の確立が不可欠であるが,中でも食習慣は,子どものころの習慣が成長してからの習慣に与える影響が殊更大きいものである。また,成長期である子どものころの望ましい食習慣は,心身の健全な成長に不可欠な要素でもある。子どものころから望ましい食習慣を身に付けることは,人々の心身の健康につながり,ひいては社会全体の活力を増進するための礎となる。

このように,子どものころからの望ましい食習慣の確立は極めて重要な社会的課題であり,平成13年4月11日の文部科学大臣からの「子どもの体力向上のための総合的な方策について」の諮問においても,食習慣を含む望ましい生活習慣の確立について,学校・家庭・地域社会の連携方策も視野に入れて検討することが求められている。

同諮問に対しては,平成14年9月30日に「子どもの体力向上のための総合的な方策について」として答申を行ったところであり,その中では,近年の社会環境の変化などに伴う食に関する健康問題に対応するため,望ましい食習慣や栄養バランスのとれた食生活を形成する観点から,学校における食に関する指導の重要性を指摘し,いわゆる「栄養教諭(仮称)」制度など学校栄養職員に係る新たな制度の創設を検討すべきことを提言した。

この提言に基づき,本審議会は,平成15年6月にスポーツ・青少年分科会の下に食に関する指導体制部会を設置して,食に関する指導の充実の具体的な方策について集中的に調査審議を重ねてきた。

本審議会は,このたび,栄養教諭制度の創設を柱とする食に関する指導体制の整備方策について結論を得たので,ここに答申を行うものである。本審議会としては,今後,本答申の趣旨を踏まえ,子どもが望ましい食習慣を身に付けられるよう,学校・家庭・地域社会の密接な連携の下で食に関する指導が進められることを強く期待している。なお,栄養教諭制度は義務教育段階を対象とするものであるが,幼児期や高等学校段階においても食に関する指導の重要性は変わるところはなく,各発達段階に応じた適切な指導がなされることを望むものである。


第1章 基本的な考え方
1 食に関する指導の充実の必要性 食は人間が生きていく上での基本的な営みのひとつであり,健康な生活を送るためには健全な食生活は欠かせないものである。しかしながら,近年,食生活を取り巻く社会環境の変化などに伴い,偏った栄養摂取などの食生活の乱れや,肥満傾向の増大,過度の痩(そう)身などが見られるところであり,また,増大しつつある生活習慣病と食生活の関係も指摘されている。このように,望ましい食習慣の形成は,今や国民的課題となっているともいえる。
特に,成長期にある児童生徒にとって,健全な食生活は健康な心身を育(はぐく)むために欠かせないものであると同時に,将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼすものであり,極めて重要である。しかし近年,子どもの食生活の乱れも顕著になってきており,例えば,平成9年の国民栄養調査によれば,20歳代の朝食欠食者のうち66.6%が高校卒業のころまでに朝食欠食が習慣化していることが明らかになっている。なお,平成13年の同調査では,20歳代男子の朝食欠食の割合は20.4%となっている。また,子どもだけで食事をとる孤食については,昭和57年には22.7%であったものが平成5年には31.4%に増加している。肥満傾向児(性別・年齢別に身長別平均体重を求め,その平均体重の120%以上の体重の者)も増加しており,学校保健統計調査によれば,小学6年生男子では,昭和52年に6.7%が肥満傾向であったものが,平成14年には11.7%とほぼ倍増している。栄養と脳の発達や心の健康との関係も指摘されている。
また,中央教育審議会答申「子どもの体力向上のための総合的な方策について」(平成14年9月30日。以下「平成14年答申」という。)において指摘したように,子どもの体力は低下傾向が続いており,体力の向上のためには,適切な運動と十分な休養・睡眠に,調和のとれた食事という,健康3原則の徹底による生活習慣の改善が不可欠である。
加えて,外食や調理済み食品の利用の増大により,栄養や食事のとり方などについて,正しい基礎知識に基づいて自ら判断し,食をコントロールしていく,言わば食の自己管理能力が必要となっている。特に,食品の安全性に対する信頼が揺らいでいる中,食品の品質や安全性についても,正しい知識・情報に基づいて自ら判断できる能力が必要となってきている。
このように,子どもの体力の向上を図るとともに,食に関する自己管理能力の育成を通じて将来の生活習慣病の危険性を低下させるなど,子どもが将来にわたって健康に生活していけるようにするためには,子どもに対する食に関する指導を充実し,望ましい食習慣の形成を促すことが極めて重要である。
また,健康と体力は今後の教育が目指すべき「生きる力」の基礎となるものであり,食に関する指導の充実は,子どもの「生きる力」を育(はぐく)んでいく上でも非常に重要な課題であるといえる。
さらに,食はそれぞれの国や地域の風土や伝統に根ざした,優れて文化的な営みであり,また,団欒(らん)などを通じた社会との接点としての側面も有している点を忘れてはならない。食に関する指導においては,「食文化」の継承や多様性の尊重,社会性の涵(かん)養といった効果も期待できる。
食に関する問題は,言うまでもなく家庭が中心となって担うものである。家族一緒の食事は,家庭教育の第一歩であるとともに,大切な家族のコミュニケーションの場でもある。当審議会としても「『新しい時代を拓(ひら)く心を育てるために』-次世代を育てる心を失う危機-」(平成10年6月30日答申)において,食生活は子どもの身体的発達のみならず精神や社会性の発達など,心の成長にも大きな影響を及ぼすものであり,家族が一緒に食事をとる機会を確保すべきことを提言した。他方,核家族化の進展,共働きの増加などの社会環境の変化や,外食や調理済み食品の利用の増加などの食品流通の変化等を背景として,食生活の在り様も大きく変化しつつあり,保護者が子どもの食生活を十分に把握し,管理していくことが困難になってきていることも現実である。このような状況を踏まえれば,子どもの食生活については,家庭を中心としつつ学校や地域社会が積極的に支援していくことが重要である。今後は学校が子どもの食について家庭に助言や働き掛けを行うことも含め,学校・家庭・地域社会が連携して,次代を担う子どもたちの食環境の改善に努めることが必要である。

2 学校における食に関する指導の現状
現在,学校における食に関する指導は,学級担任を中心として,給食の時間において学校給食そのものを生きた教材として活用した指導が行われているほか,教科指導や学級活動,「総合的な学習の時間」など,学校教育活動全体の中で広く行われている。具体的には,例えば家庭科,技術・家庭科においてはバランスのとれた食事の重要性などを,体育科,保健体育科においては望ましい生活習慣を身に付ける必要性などを指導している。食に関する指導においては,学校給食を活用することによって,見る・食べるといった行為を通じて楽しみながら児童生徒の興味・関心を引き出すことができ,高い教育的効果を得られるため,学校給食を有効に活用した取組も見られるところである。また,学校給食に地域の産物を使用したり,地域の伝統的な料理を提供することを通じ,地域の文化や伝統に対する理解と関心を深めるなどの取組も行われている。
さらに,保健体育審議会答申「生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方について」(平成9年9月22日)において,学校栄養職員の新たな役割として食に関する指導の必要性が提言され,各学校において学校栄養職員を活用した取組も進められているところであり,ティーム・ティーチングや特別非常勤講師制度を活用した学校内での指導活動は年々増加している。また,親子料理教室や給食だよりなどを通じて,学校が家庭や地域社会に働き掛けを行うなど,家庭・地域社会との連携を推進する取組も進められている。
しかしながら,食に関する指導については,これまで明確な体制整備がなされてこなかったため,地域や学校ごとに取組は区々であったというのが現状である。

3 食に関する指導体制整備の方向性 以上のように,これまでも学校栄養職員の活用を含め,学校における食に関する指導を進めるための取組は様々な形でなされているが,近年の子どもの食を取り巻く環境の変化は,これまでにないほど急速かつ激しいものである。子どもが望ましい食習慣と自己管理能力を身に付け,この変化に十分に対応して自らの健康を保持増進していくことができる能力を培っていくためには,より効果的な食に関する指導体制の整備が急務である。そのためにも,学校における食に関する専門家である学校栄養職員の専門性を,確実に指導面でも活用していけるような制度的担保が必要である。
食に関する指導体制の整備については,これまでも,平成9年9月22日の保健体育審議会答申「生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り方について」において,新たな免許制度の導入を含めた学校栄養職員の資質向上策の検討の必要性が指摘されているだけでなく,平成14年答申においては,「学校栄養職員については,食に関する専門家としての知識はもとより,児童生徒の成長発達やこの時期の心理の特性などについての正しい理解の上で,教育的配慮を持った食に関する指導を行うことが求められている」と指摘し,「いわゆる『栄養教諭(仮称)』制度など学校栄養職員に係る新たな制度の創設を検討し,学校栄養職員が栄養及び教育の専門家として児童生徒の食に関する教育指導を担うことができるよう食に関する指導体制の整備を行うことが必要である」とより具体的な提言を行っているところである。
現在の学校栄養職員は,栄養士又は管理栄養士の資格を有して学校給食に係る栄養管理や衛生管理を行っており,食に関する専門家ではあるが,教育的資質が担保されているとはいえない。食に関する専門性を指導面で十分に生かし,自ら責任を持って指導に当たっていくことができるようにするためには,現在の学校栄養職員の資質に加え,教育に関して必要な資質を身に付けた者が食に関する指導を担うことができるよう,栄養教諭制度を創設し,効果的な食に関する指導体制の整備を図る必要がある。その際には,食に関する指導が学校教育活動の様々な領域にまたがるものであることを踏まえ,栄養教諭がその高い専門性を生かし,食に関する指導を学校教育活動全体の中で推進していくための連携・調整の役割を果たすことができるような制度とすることが重要である。

食育推進基本計画の概要

2007-08-12 18:54:33 | Weblog
はじめに
1.食をめぐる現状
 近年、健全な食生活が失われつつあり、我が国の食をめぐる現状は危機的な状況にある。このため、地域や社会を挙げた子どもの食育をはじめ、生活習慣病等の予防、高齢者の健全な食生活や楽しく食卓を囲む機会の確保、食品の安全性の確保と国民の理解の増進、食料自給率の向上、伝統ある食文化の継承等が必要である。


2.これまでの取組と今後の展開
 これまでも食育への取組がなされてきており、一定の成果を挙げつつあるが、危機的な状況の解決につながる道筋は見えていない。このため、平成18年度から22年度までの5年間を対象とする基本計画に基づき、国民運動として食育に取り組み、国民が生涯にわたり健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことができる社会の実現を目指す。



第1 食育の推進に関する施策についての基本的な方針
1.国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成
 健全な食生活に必要な知識等が年齢、健康状態等により異なることに配慮しつつ、心身の健康の増進と豊かな人間形成を目指した施策を講じる。


2.食に関する感謝の念と理解
 様々な体験活動等を通じ、自然に国民の食に対する感謝の念や理解が深まっていくよう配慮した施策を講じる。


3.食育推進運動の展開
 国民一人一人の理解を得るとともに、社会の様々な分野において男女共同参画の視点も踏まえ食育を推進する観点から、国民や民間団体等の自発的意思を尊重し、多様な主体の参加と連携に立脚した国民運動となるよう施策を講じる。


4.子どもの食育における保護者、教育関係者等の役割
 子どもの父母その他の保護者や教育・保育関係者の意識向上を図り、子どもが楽しく食を学ぶ取組が積極的に推進されるよう施策を講じる。


5.食に関する体験活動と食育推進活動の実践
 家庭、学校、地域等様々な分野において、多様な主体から食を学ぶ機会が提供され、国民が意欲的に食育の活動を実践できるよう施策を講じる。


6.伝統的な食文化、環境と調和した生産等への配意及び農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献
 伝統ある食文化の継承や環境と調和した食料生産等が図られるよう配慮するとともに、食料需給への国民の理解の促進と都市と農山漁村の共生・対流等により農山漁村の活性化と食料自給率の向上に資するよう施策を講じる。


7.食品の安全性の確保等における食育の役割
 食品の安全性等食に関する幅広い情報を多様な手段で提供するとともに、行政、関係団体、消費者等の間の意見交換が積極的に行われるよう施策を講じる。


第2 食育の推進の目標に関する事項
1.目標の考え方
 食育を国民運動として推進するため、これにふさわしい定量的な目標を掲げ、その達成を目指して基本計画に基づく取組を推進する。


2.食育の推進に当たっての目標値(平成22年度)
(1) 食育に関心を持っている国民の割合の増加
70パーセント(平成17年度)→90パーセント以上
(2) 朝食を欠食する国民の割合の減少
小学生4パーセント(平成12年度)→0パーセント
20歳代男性30パーセント、30歳代男性23パーセント(平成15年度)→いずれも15パーセント以下
(3) 学校給食における地場産物を使用する割合の増加
21パーセント(平成16年度、食材数ベース)→30パーセント以上
(4) 「食事バランスガイド」等を参考に食生活を送っている国民の割合の増加
60パーセント以上
(5) 内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)を認知している国民の割合の増加
80パーセント以上
(6) 食育の推進に関わるボランティアの数の増加
現状値の20パーセント以上増加
(7) 教育ファームの取組がなされている市町村の割合の増加
60パーセント以上
(8) 食品の安全性に関する基礎的な知識を持っている国民の割合の増加
60パーセント以上
(9) 推進計画を作成・実施している都道府県及び市町村の割合
都道府県100パーセント、市町村50パーセント以上



第3 食育の総合的な促進に関する事項
 国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。


1.家庭における食育の推進
○ 生活リズムの向上
 朝食摂取、早寝早起き等子どもの生活リズム向上のための普及啓発活動等
○ 子どもの肥満予防の推進
 栄養・運動両面からの肥満予防対策等
○ 望ましい食習慣や知識の習得
 学校を通じた保護者に対する栄養管理に関する知識等の啓発や家庭教育手帳の配付・活用
○ 妊産婦や乳幼児に関する栄養指導
 妊産婦等への栄養指導の充実、妊産婦の健康課題等についての調査研究、乳幼児等の発達段階に応じた栄養指導等
○ 栄養教諭を中核とした取組
 栄養教諭を中核とした食育推進、保護者や教職員等への普及啓発等
○ 青少年及びその保護者に対する食育推進
 青少年育成に関するイベントにおける普及啓発や情報提供


2.学校、保育所等における食育の推進
○ 指導体制の充実
 栄養教諭の全国配置の促進、学校での食育の組織的・計画的な推進等
○ 子どもへの指導内容の充実
 学校としての全体的な計画の策定、指導時間の確保、体験活動の推進等
○ 学校給食の充実
 学校給食の普及・充実と「生きた教材」としての活用、学校給食での地産地消の推進、単独調理方式の効果等の周知・普及等
○ 食育を通じた健康状態の改善等の推進
 食生活の健康等への影響の調査とこれに基づく指導プログラムの開発等
○ 保育所での食育推進
 保育計画に連動した組織的・発展的な「食育の計画」の策定推進等


3.地域における食生活の改善のための取組の推進
○ 栄養バランスが優れた「日本型食生活」の実践
 日本の気候風土に適した米と多様な副食から構成される「日本型食生活」の実践促進のための情報提供等
○ 「食生活指針」や「食事バランスガイド」の活用促進
 「食生活指針」の普及啓発、「食事バランスガイド」の浸透促進等
○ 専門的知識を有する人材の養成・活用
 管理栄養士・専門調理師等の養成と多面的な食育活動の推進等
○ 健康づくりや医学教育等における食育推進
 医療機関等での食育の普及啓発、健康状態に応じた栄養や運動の指導等
○ 食品関連事業者等による食育推進
 食品関連事業者等による体験活動の機会提供、情報や知識の提供等


4.食育推進運動の展開
○ 食育月間の設定・実施
 食育月間の設定(毎年6月)による重点的・効果的な運動等
○ 継続的な食育推進運動
 食育の日の設定(毎月19日)による継続的運動、キャッチフレーズの活用等
○ 各種団体等との連携・協力体制の確立
 団体等の全国的な連携確保、地方公共団体を中心とする協力体制の構築等
○ 民間の取組に対する表彰の実施
 民間の食育活動に関する表彰の実施
○ 国民運動に資する調査研究と情報提供
 食育に関する国民意識等の調査研究、食育に関する総合的な情報提供等
○ 食育に関する国民の理解の増進
 世代、健康状態等に応じた細やかな広報啓発活動、科学的知見に基づく正しい知識による冷静な判断の重要性への理解促進等
○ ボランティア活動への支援
 ボランティアによる取組の活発化、食生活改善推進員等による健康づくり活動の促進


5.生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等
○ 都市と農山漁村の共生・対流の促進
 グリーン・ツーリズム等を通じた交流促進のための情報提供、受入体制の整備等
○ 子どもを中心とした農林漁業体験活動の促進と消費者への情報提供
 子どもを中心とする農林水産物の生産における様々な体験機会の拡大のための情報提供、受入体制の整備等
○ 農林漁業者等による食育推進
 農林漁業者等の教育関係者との連携による体験活動の機会の提供等
○ 地産地消の推進
 地産地消を推進するための計画策定、人材の育成、施設の整備等
○ バイオマス利用と食品リサイクルの推進
 バイオマスの総合利用による地域循環システムの実用化、食品リサイクルの必要性に関する普及啓発等


6.食文化の継承のための活動への支援等
○ ボランティア活動等における取組
 食生活改善推進員等による親子料理教室等での郷土料理等の活用等
○ 学校給食での郷土料理等の積極的な導入やイベントの活用
 学校給食への郷土料理等の導入、各種イベント等での郷土料理等の紹介等
○ 専門調理師等の活用における取組
 高度な調理技術を備えた専門調理師等の活用
○ 関連情報の収集と発信
 食文化の普及啓発に関する全国各地の事例の収集・発信
○ 知的財産立国への取組との連携
 食文化の基盤となる調査研究、シンポジウム等による成果の発信等の促進


7.食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進
○ リスクコミュニケーションの充実
 リスクコミュニケーションの積極的な実施、効果的手法の開発
○ 食品の安全性や栄養等に関する情報提供
 食品の安全性等に関する情報の分かりやすい提供等
○ 基礎的な調査・研究等の実施
 国民健康・栄養調査等の実施、複数分野のデータの総合的な収集・解析、農林漁業、食料生産等に関する統計調査の実施等
○ 食品情報に関する制度の普及啓発
 食品表示制度の見直し、同制度の普及・定着等
○ 地方公共団体等における取組の促進
 地方公共団体や関係団体等による各種情報の収集・提供
○ 食育の海外展開と海外調査の推進
 食育の理念や取組の海外発信、「食育(Shokuiku)」の海外普及、海外での取組の調査等
○ 国際的な情報交換等
 海外研究者の招聘、海外調査の実施、国際的な連携・交流の促進等



第4 食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
1.多様な関係者の連携・協力の強化
 多様な関係者による連携・協力の強化に努める。


2.都道府県等による推進計画の策定とこれに基づく施策の促進
 都道府県等による推進計画の作成等に向け、国からの働きかけ等を行う。


3.積極的な情報提供と国民の意見等の把握
 食育に関する情報の分かりやすい形での提供と国民の意見等の把握・反映に努める。


4.推進状況の把握と効果等の評価及び財政措置の効率的・重点的運用
 施策の総合的かつ計画的な推進を図るとともに、推進状況の把握と効果等の評価を行う。また、予算の有効利用の観点から選択と集中の強化等の徹底を図る。


5.基本計画の見直し
 計画期間終了前であっても、必要に応じて見直しの必要性や時期等を適時適切に検討する

学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方

2007-08-11 07:14:12 | Weblog
1  体罰について
(1)  児童生徒への指導に当たり、学校教育法第11条ただし書にいう体罰は、いかなる場合においても行ってはならない。教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。


(2)  (1)により、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、蹴る等)、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。


(3)  個々の懲戒が体罰に当たるか否かは、単に、懲戒を受けた児童生徒や保護者の主観的な言動により判断されるのではなく、上記(1)の諸条件を客観的に考慮して判断されるべきであり、特に児童生徒一人一人の状況に配慮を尽くした行為であったかどうか等の観点が重要である。


(4)  児童生徒に対する有形力(目に見える物理的な力)の行使により行われた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではなく、裁判例においても、「いやしくも有形力の行使と見られる外形をもった行為は学校教育法上の懲戒行為としては一切許容されないとすることは、本来学校教育法の予想するところではない」としたもの(昭和56年4月1日東京高裁判決)、「生徒の心身の発達に応じて慎重な教育上の配慮のもとに行うべきであり、このような配慮のもとに行われる限りにおいては、状況に応じ一定の限度内で懲戒のための有形力の行使が許容される」としたもの(昭和60年2月22日浦和地裁判決)などがある。


(5)  有形力の行使以外の方法により行われた懲戒については、例えば、以下のような行為は、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものでない限り、通常体罰には当たらない。
○  放課後等に教室に残留させる(用便のためにも室外に出ることを許さない、又は食事時間を過ぎても長く留め置く等肉体的苦痛を与えるものは体罰に当たる)。
○  授業中、教室内に起立させる。
○  学習課題や清掃活動を課す。
○  学校当番を多く割り当てる。
○  立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる。


(6)  なお、児童生徒から教員等に対する暴力行為に対して、教員等が防衛のためにやむを得ずした有形力の行使は、もとより教育上の措置たる懲戒行為として行われたものではなく、これにより身体への侵害又は肉体的苦痛を与えた場合は体罰には該当しない。また、他の児童生徒に被害を及ぼすような暴力行為に対して、これを制止したり、目前の危険を回避するためにやむを得ずした有形力の行使についても、同様に体罰に当たらない。これらの行為については、正当防衛、正当行為等として刑事上又は民事上の責めを免れうる。


2  児童生徒を教室外に退去させる等の措置について
(1)  単に授業に遅刻したこと、授業中学習を怠けたこと等を理由として、児童生徒を教室に入れず又は教室から退去させ、指導を行わないままに放置することは、義務教育における懲戒の手段としては許されない。


(2)  他方、授業中、児童生徒を教室内に入れず又は教室から退去させる場合であっても、当該授業の間、その児童生徒のために当該授業に代わる指導が別途行われるのであれば、懲戒の手段としてこれを行うことは差し支えない。


(3)  また、児童生徒が学習を怠り、喧騒その他の行為により他の児童生徒の学習を妨げるような場合には、他の児童生徒の学習上の妨害を排除し教室内の秩序を維持するため、必要な間、やむを得ず教室外に退去させることは懲戒に当たらず、教育上必要な措置として差し支えない。


(4)  さらに、近年児童生徒の間に急速に普及している携帯電話を児童生徒が学校に持ち込み、授業中にメール等を行い、学校の教育活動全体に悪影響を及ぼすような場合、保護者等と連携を図り、一時的にこれを預かり置くことは、教育上必要な措置として差し支えない。

問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)

2007-08-11 07:13:37 | Weblog
18文科初第1019号
平成19年2月5日

各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国立大学法人学長 殿

文部科学省初等中等教育局長
銭谷 眞美

 いじめ、校内暴力をはじめとした児童生徒の問題行動は、依然として極めて深刻な状況にあります。
 いじめにより児童生徒が自らの命を絶つという痛ましい事件が相次いでおり、児童生徒の安心・安全について国民間に不安が広がっています。また、学校での懸命な種々の取組にもかかわらず、対教師あるいは生徒間の暴力行為や施設・設備の毀損・破壊行為等は依然として多数にのぼり、一部の児童生徒による授業妨害等も見られます。
 問題行動への対応については、まず第一に未然防止と早期発見・早期対応の取組が重要です。学校は問題を隠すことなく、教職員一体となって対応し、教育委員会は学校が適切に対応できるようサポートする体制を整備することが重要です。また、家庭、特に保護者、地域社会や地方自治体・議会を始め、その他関係機関の理解と協力を得て、地域ぐるみで取り組めるような体制を進めていくことが必要です。
 昨年成立した改正教育基本法では、教育の目標の一つとして「生命を尊ぶ」こと、教育の目標を達成するため、学校においては「教育を受ける者が学校生活を営む上で必要な規律を重んずる」ことが明記されました。
 いじめの問題への対応では、いじめられる子どもを最後まで守り通すことは、児童生徒の生命・身体の安全を預かる学校としては当然の責務です。同時に、いじめる子どもに対しては、毅然とした対応と粘り強い指導により、いじめは絶対に許されない行為であること、卑怯で恥ずべき行為であることを認識させる必要があります。
 さらに、学校の秩序を破壊し、他の児童生徒の学習を妨げる暴力行為に対しては、児童生徒が安心して学べる環境を確保するため、適切な措置を講じることが必要です。
 このため、教育委員会及び学校は、問題行動が実際に起こったときには、十分な教育的配慮のもと、現行法制度下において採り得る措置である出席停止や懲戒等の措置も含め、毅然とした対応をとり、教育現場を安心できるものとしていただきたいと考えます。
 この目的を達成するため、各教育委員会及び学校は、下記事項に留意の上、問題行動を起こす児童生徒に対し、毅然とした指導を行うようお願いします。
 なお、都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県知事にあっては所轄の私立学校に対して、この趣旨について周知を図るとともに、適切な対応がなされるよう御指導願います。



1  生徒指導の充実について
(1)  学校においては、日常的な指導の中で、児童生徒一人一人を把握し、性向等についての理解を深め、教師と児童生徒との信頼関係を築き、すべての教育活動を通じてきめ細かな指導を行う。また、全教職員が一体となって、児童生徒の様々な悩みを受け止め、積極的に教育相談やカウンセリングを行う。


(2)  児童生徒の規範意識の醸成のため、各学校は、いじめや暴力行為等に関するきまりや対応の基準を明確化したものを保護者や地域住民等に公表し、理解と協力を得るよう努め、全教職員がこれに基づき一致協力し、一貫した指導を粘り強く行う。


(3)  問題行動の中でも、特に校内での傷害事件をはじめ、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報し、その協力を得て対応する。


2  出席停止制度の活用について
(1)  出席停止は、懲戒行為ではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために採られる措置であり、各市町村教育委員会及び学校は、このような制度の趣旨を十分理解し、日頃から規範意識を育む指導やきめ細かな教育相談等を粘り強く行う。


(2)  学校がこのような指導を継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対し、正常な教育環境を回復するため必要と認める場合には、市町村教育委員会は、出席停止制度の措置を採ることをためらわずに検討する。


(3)  この制度の運用に当たっては、教師や学校が孤立することがないように、校長をはじめ教職員、教育委員会や地域のサポートにより必要な支援がなされるよう十分配慮する。
 学校は、当該児童生徒が学校へ円滑に復帰できるよう学習を補完したり、学級担任等が計画的かつ臨機に家庭への訪問を行い、読書等の課題をさせる。
 市町村教育委員会は、当該児童生徒に対し出席停止期間中必要な支援がなされるように個別の指導計画を策定するなど、必要な教育的措置を講じる。
 都道府県教育委員会は、状況に応じ、指導主事やスクールカウンセラーの派遣、教職員の追加的措置、当該児童生徒を受け入れる機関との連携の促進など、市町村教育委員会や学校をバックアップする。
 地域では、警察、児童相談所、保護司、民生・児童委員等の関係機関の協力を得たサポートチームを組織することも有効である。


(4)  その他出席停止制度の運用等については、「出席停止制度の運用の在り方について」(平成13年11月6日付け文部科学省初等中等教育局長通知)による。


3  懲戒・体罰について
(1)  校長及び教員(以下「教員等」という。)は、教育上必要があると認めるときは、児童生徒に懲戒を加えることができ、懲戒を通じて児童生徒の自己教育力や規範意識の育成を期待することができる。しかし、一時の感情に支配されて、安易な判断のもとで懲戒が行われることがないように留意し、家庭との十分な連携を通じて、日頃から教員等、児童生徒、保護者間での信頼関係を築いておくことが大切である。


(2)  体罰がどのような行為なのか、児童生徒への懲戒がどの程度まで認められるかについては、機械的に判定することが困難である。また、このことが、ややもすると教員等が自らの指導に自信を持てない状況を生み、実際の指導において過度の萎縮を招いているとの指摘もなされている。ただし、教員等は、児童生徒への指導に当たり、いかなる場合においても、身体に対する侵害(殴る、蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならない。体罰による指導により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあるからである。


(3)  懲戒権の限界及び体罰の禁止については、これまで「児童懲戒権の限界について」(昭和23年12月22日付け法務庁法務調査意見長官回答)等が過去に示されており、教育委員会や学校でも、これらを参考として指導を行ってきた。しかし、児童生徒の問題行動は学校のみならず社会問題となっており、学校がこうした問題行動に適切に対応し、生徒指導の一層の充実を図ることができるよう、文部科学省としては、懲戒及び体罰に関する裁判例の動向等も踏まえ、今般、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」(別紙)を取りまとめた。懲戒・体罰に関する解釈・運用については、今後、この「考え方」によることとする。

教育基本法

2007-08-10 07:43:06 | Weblog
<前文>★★★
 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

第1章 教育の目的及び理念

<第1条>(教育の目的)★★★
 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

<第2条>(教育の目標)★★★
 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
(1)幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
(2)個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
(3)正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
(4)生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
(5)伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

<第3条>(生涯学習の理念)★★
 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

<第4条>(教育の機会均等)★★★
(1)すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
(2)国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
(3)国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

第2章 教育の実施に関する基本

<第5条>(義務教育)★★★
(1)国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
(2)義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
(3)国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
(4)国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

(比較)→日本国憲法第26条

<第6条>(学校教育)★★★
(1)法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
(2)前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。

<第7条>(大学)★
(1)大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。
(2)大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。

<第8条>(私立学校)★
 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

<第9条>(教員)★★★
(1)法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
(2)前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。

<第10条>(家庭教育)★★★
(1)父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
(2)国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

<第11条>(幼児期の教育)★
 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

<第12条>(社会教育)★★★
(1)個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
(2)国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

<第13条>(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)★★
 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

<第14条>(政治教育)★★
(1)良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
(2)法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。

<第15条>(宗教教育)★★
(1)宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。
(2)国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。

第3章 教育行政

<第16条>(教育行政)★★★
(1)教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
(2)国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
(3)地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
(4)国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

<第17条>(教育振興基本計画)★
(1)政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
(2)地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

第4章 法令の制定

<第18条>★
 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

食育基本法(平成十七年法律第六十三号)

2007-08-09 07:21:02 | Weblog
目次
  前文
  第一章 総則(第一条―第十五条)
  第二章 食育推進基本計画等(第十六条―第十八条)
  第三章 基本的施策(第十九条―第二十五条)
  第四章 食育推進会議等(第二十六条―第三十三条)

附則
二十一世紀における我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と身体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすることが大切である。

子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。

一方、社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎日の「食」の大切さを忘れがちである。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。

こうした「食」をめぐる環境の変化の中で、国民の「食」に関する考え方を育て、健全な食生活を実現することが求められるとともに、都市と農山漁村の共生・対流を進め、「食」に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上に寄与することが期待されている。

国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深めつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全な食生活を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、地域等を中心に、国民運動として、食育の推進に取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である。さらに、食育の推進に関する我が国の取組が、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献することにつながることも期待される。

ここに、食育について、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団体及び国民の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、近年における国民の食生活をめぐる環境の変化に伴い、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむための食育を推進することが緊要な課題となっていることにかんがみ、食育に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定めることにより、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来にわたる健康で文化的な国民の生活と豊かで活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。

 (国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成)
第二条 食育は、食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現することにより、国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成に資することを旨として、行われなければならない。

(食に関する感謝の念と理解)
第三条 食育の推進に当たっては、国民の食生活が、自然の恩恵の上に成り立っており、また、食に関わる人々の様々な活動に支えられていることについて、感謝の念や理解が深まるよう配慮されなければならない。  

(食育推進運動の展開)
第四条 食育を推進するための活動は、国民、民間団体等の自発的意思を尊重し、地域の特性に配慮し、地域住民その他の社会を構成する多様な主体の参加と協力を得るものとするとともに、その連携を図りつつ、あまねく全国において展開されなければならない。  

(子どもの食育における保護者、教育関係者等の役割)
第五条 食育は、父母その他の保護者にあっては、家庭が食育において重要な役割を有していることを認識するとともに、子どもの教育、保育等を行う者にあっては、教育、保育等における食育の重要性を十分自覚し、積極的に子どもの食育の推進に関する活動に取り組むこととなるよう、行われなければならない。  

(食に関する体験活動と食育推進活動の実践)
第六条 食育は、広く国民が家庭、学校、保育所、地域その他のあらゆる機会とあらゆる場所を利用して、食料の生産から消費等に至るまでの食に関する様々な体験活動を行うとともに、自ら食育の推進のための活動を実践することにより、食に関する理解を深めることを旨として、行われなければならない。

(伝統的な食文化、環境と調和した生産等への配意及び農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献)
第七条 食育は、我が国の伝統のある優れた食文化、地域の特性を生かした食生活、環境と調和のとれた食料の生産とその消費等に配意し、我が国の食料の需要及び供給の状況についての国民の理解を深めるとともに、食料の生産者と消費者との交流等を図ることにより、農山漁村の活性化と我が国の食料自給率の向上に資するよう、推進されなければならない。  

(食品の安全性の確保等における食育の役割)
第八条 食育は、食品の安全性が確保され安心して消費できることが健全な食生活の基礎であることにかんがみ、食品の安全性をはじめとする食に関する幅広い情報の提供及びこれについての意見交換が、食に関する知識と理解を深め、国民の適切な食生活の実践に資することを旨として、国際的な連携を図りつつ積極的に行われなければならない。  

(国の責務)
第九条 国は、第二条から前条までに定める食育に関する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。  

(地方公共団体の責務)
第十条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、食育の推進に関し、国との連携を図りつつ、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
 

(教育関係者等及び農林漁業者等の責務)
第十一条 教育並びに保育、介護その他の社会福祉、医療及び保健(以下「教育等」という。)に関する職務に従事する者並びに教育等に関する関係機関及び関係団体(以下「教育関係者等」という。)は、食に関する関心及び理解の増進に果たすべき重要な役割にかんがみ、基本理念にのっとり、あらゆる機会とあらゆる場所を利用して、積極的に食育を推進するよう努めるとともに、他の者の行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。
2 農林漁業者及び農林漁業に関する団体(以下「農林漁業者等」という。)は、農林漁業に関する体験活動等が食に関する国民の関心及び理解を増進する上で重要な意義を有することにかんがみ、基本理念にのっとり、農林漁業に関する多様な体験の機会を積極的に提供し、自然の恩恵と食に関わる人々の活動の重要性について、国民の理解が深まるよう努めるとともに、教育関係者等と相互に連携して食育の推進に関する活動を行うよう努めるものとする。  

(食品関連事業者等の責務)
第十二条 食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体(以下「食品関連事業者等」という。)は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自主的かつ積極的に食育の推進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する食育の推進に関する施策その他の食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。  

(国民の責務)
第十三条 国民は、家庭、学校、保育所、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。  

(法制上の措置等)
第十四条 政府は、食育の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。  

(年次報告)
第十五条 政府は、毎年、国会に、政府が食育の推進に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。    

第二章 食育推進基本計画等
(食育推進基本計画)
第十六条 食育推進会議は、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食育推進基本計画を作成するものとする。
2 食育推進基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。  
  一 食育の推進に関する施策についての基本的な方針
  二 食育の推進の目標に関する事項
  三 国民等の行う自発的な食育推進活動等の総合的な促進に関する事項
  四 前三号に掲げるもののほか、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 食育推進会議は、第一項の規定により食育推進基本計画を作成したときは、速やかにこれを内閣総理大臣に報告し、及び関係行政機関の長に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。
4 前項の規定は、食育推進基本計画の変更について準用する。

(都道府県食育推進計画)
第十七条 都道府県は、食育推進基本計画を基本として、当該都道府県の区域内における食育の推進に関する施策についての計画(以下「都道府県食育推進計画」という。)を作成するよう努めなければならない。
2 都道府県(都道府県食育推進会議が置かれている都道府県にあっては、都道府県食育推進会議)は、都道府県食育推進計画を作成し、又は変更したときは、速やかに、その要旨を公表しなければならない。  

(市町村食育推進計画)
第十八条 市町村は、食育推進基本計画(都道府県食育推進計画が作成されているときは、食育推進基本計画及び都道府県食育推進計画)を基本として、当該市町村の区域内における食育の推進に関する施策についての計画(以下「市町村食育推進計画」という。)を作成するよう努めなければならない。 2 市町村(市町村食育推進会議が置かれている市町村にあっては、市町村食育推進会議)は、市町村食育推進計画を作成し、又は変更したときは、速やかに、その要旨を公表しなければならない。    

第三章 基本的施策  
(家庭における食育の推進)
第十九条 国及び地方公共団体は、父母その他の保護者及び子どもの食に対する関心及び理解を深め、健全な食習慣の確立に資するよう、親子で参加する料理教室その他の食事についての望ましい習慣を学びながら食を楽しむ機会の提供、健康美に関する知識の啓発その他の適切な栄養管理に関する知識の普及及び情報の提供、妊産婦に対する栄養指導又は乳幼児をはじめとする子どもを対象とする発達段階に応じた栄養指導その他の家庭における食育の推進を支援するために必要な施策を講ずるものとする。  

(学校、保育所等における食育の推進)
第二十条 国及び地方公共団体は、学校、保育所等において魅力ある食育の推進に関する活動を効果的に促進することにより子どもの健全な食生活の実現及び健全な心身の成長が図られるよう、学校、保育所等における食育の推進のための指針の作成に関する支援、食育の指導にふさわしい教職員の設置及び指導的立場にある者の食育の推進において果たすべき役割についての意識の啓発その他の食育に関する指導体制の整備、学校、保育所等又は地域の特色を生かした学校給食等の実施、教育の一環として行われる農場等における実習、食品の調理、食品廃棄物の再生利用等様々な体験活動を通じた子どもの食に関する理解の促進、過度の痩身又は肥満の心身の健康に及ぼす影響等についての知識の啓発その他必要な施策を講ずるものとする。  

(地域における食生活の改善のための取組の推進)
第二十一条 国及び地方公共団体は、地域において、栄養、食習慣、食料の消費等に関する食生活の改善を推進し、生活習慣病を予防して健康を増進するため、健全な食生活に関する指針の策定及び普及啓発、地域における食育の推進に関する専門的知識を有する者の養成及び資質の向上並びにその活用、保健所、市町村保健センター、医療機関等における食育に関する普及及び啓発活動の推進、医学教育等における食育に関する指導の充実、食品関連事業者等が行う食育の推進のための活動への支援等必要な施策を講ずるものとする。  

(食育推進運動の展開)
第二十二条 国及び地方公共団体は、国民、教育関係者等、農林漁業者等、食品関連事業者等その他の事業者若しくはその組織する団体又は消費生活の安定及び向上等のための活動を行う民間の団体が自発的に行う食育の推進に関する活動が、地域の特性を生かしつつ、相互に緊密な連携協力を図りながらあまねく全国において展開されるようにするとともに、関係者相互間の情報及び意見の交換が促進されるよう、食育の推進に関する普及啓発を図るための行事の実施、重点的かつ効果的に食育の推進に関する活動を推進するための期間の指定その他必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、食育の推進に当たっては、食生活の改善のための活動その他の食育の推進に関する活動に携わるボランティアが果たしている役割の重要性にかんがみ、これらのボランティアとの連携協力を図りながら、その活動の充実が図られるよう必要な施策を講ずるものとする。  

(生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等)
第二十三条 国及び地方公共団体は、生産者と消費者との間の交流の促進等により、生産者と消費者との信頼関係を構築し、食品の安全性の確保、食料資源の有効な利用の促進及び国民の食に対する理解と関心の増進を図るとともに、環境と調和のとれた農林漁業の活性化に資するため、農林水産物の生産、食品の製造、流通等における体験活動の促進、農林水産物の生産された地域内の学校給食等における利用その他のその地域内における消費の促進、創意工夫を生かした食品廃棄物の発生の抑制及び再生利用等必要な施策を講ずるものとする。  

(食文化の継承のための活動への支援等)
第二十四条 国及び地方公共団体は、伝統的な行事や作法と結びついた食文化、地域の特色ある食文化等我が国の伝統のある優れた食文化の継承を推進するため、これらに関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。  

(食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進)
第二十五条 国及び地方公共団体は、すべての世代の国民の適切な食生活の選択に資するよう、国民の食生活に関し、食品の安全性、栄養、食習慣、食料の生産、流通及び消費並びに食品廃棄物の発生及びその再生利用の状況等について調査及び研究を行うとともに、必要な各種の情報の収集、整理及び提供、データベースの整備その他食に関する正確な情報を迅速に提供するために必要な施策を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、食育の推進に資するため、海外における食品の安全性、栄養、食習慣等の食生活に関する情報の収集、食育に関する研究者等の国際的交流、食育の推進に関する活動についての情報交換その他国際交流の推進のために必要な施策を講ずるものとする。    

第四章 食育推進会議等  

(食育推進会議の設置及び所掌事務)
第二十六条 内閣府に、食育推進会議を置く。
2 食育推進会議は、次に掲げる事務をつかさどる。  
  一 食育推進基本計画を作成し、及びその実施を推進すること。  
  二 前号に掲げるもののほか、食育の推進に関する重要事項について審議し、及び食育の推進に関する施策の実施を推進すること。  

(組織)
第二十七条 食育推進会議は、会長及び委員二十五人以内をもって組織する。  

(会長)
第二十八条 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。  

(委員)
第二十九条 委員は、次に掲げる者をもって充てる。  
  一 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって、同項の規定により命を受けて同法第四条第一項第十七号に掲げる事項に関する事務及び同条第三項第二十七号の三に掲げる事務を掌理するもの(次号において「食育担当大臣」という。)  
  二 食育担当大臣以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者  
  三 食育に関して十分な知識と経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
2 前項第三号の委員は、非常勤とする。  

(委員の任期)
第三十条 前条第一項第三号の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 前条第一項第三号の委員は、再任されることができる。  

(政令への委任)
第三十一条 この章に定めるもののほか、食育推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。  

(都道府県食育推進会議)
第三十二条 都道府県は、その都道府県の区域における食育の推進に関して、都道府県食育推進計画の作成及びその実施の推進のため、条例で定めるところにより、都道府県食育推進会議を置くことができる。
2 都道府県食育推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。  

(市町村食育推進会議)
第三十三条 市町村は、その市町村の区域における食育の推進に関して、市町村食育推進計画の作成及びその実施の推進のため、条例で定めるところにより、市町村食育推進会議を置くことができる。
2 市町村食育推進会議の組織及び運営に関し必要な事項は、市町村の条例で定める。    

附 則  
(施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。  

(内閣府設置法の一部改正)
第二条 内閣府設置法の一部を次のように改正する。   

第四条第一項に次の一号を加える。   
十七 食育の推進を図るための基本的な政策に関する事項   
第四条第三項第二十七号の二の次に次の一号を加える。   
二十七の三 食育推進基本計画(食育基本法(平成十七年法律第六十三号)第十六条第一項に規定するものをいう。)の作成及び推進に関すること。
  
第四十条第三項の表中「少子化社会対策会議 少子化社会対策基本法」
を「 食育推進会議    食育基本法
  少子化社会対策会議 少子化社会対策基本法」 に改める。

1 教育課程をめぐる現状と課題

2007-08-08 05:53:38 | Weblog
(1)  学校教育の目的


○  教育の目的は、一人一人の国民の人格形成と国家・社会の形成者の育成の2点であり、このことはいかに時代が変わろうとも普遍的なものである。


○  子どもたち一人一人が、人格の完成を目指し、個人として自立し、それぞれの個性や能力を伸ばし、その可能性を開花させるための基礎を培うことは、学校教育の重要な役割である。また、我が国が、変動の激しいこれからの時代において、世界に貢献する品格ある文化国家として発展するためには、国家・社会の形成者として、それぞれの分野で存分に活躍することのできる基盤を、学校教育を通じて培う必要がある。教育課程の検討に当たっては、こうした目的を、グローバル化や社会の多様化等の状況の中で各学校段階の教育を通じて適切に具現化していくことが求められる。


○  義務教育については、国民が質の高い教育を等しく受けることができるよう、憲法に定められた機会均等、水準確保、無償制という義務教育の根幹を堅持することは、国の責務とされている。特に、現代社会では、すべての国民に地域格差なく一定水準以上の教育を保証する義務教育制度の充実は、国の持続的発展や社会の存立にとって不可欠なものとなっている。


○  また、高等学校教育については、中学校における教育の成果を更に発展・拡充させて、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うことなどが目標とされている。現在、高校進学率は約97パーセントとなり、生徒の興味・関心、能力・適性、進路等は多様化しているが、このように国民的な教育機関となっている高等学校の卒業生たちは、これからの我が国の社会・経済・文化の水準の維持・向上に極めて大きな役割を果たすものである。


○  幼稚園教育については、子どもの基本的な生活習慣や態度を育て、道徳性の芽生えを培い、学習意欲や態度の基礎となる好奇心や探究心を養い、創造性を豊かにするなど、小学校以降における「生きる力」の基礎や生涯にわたる人間形成の基礎を培う上で重要な役割を担っている。


○  学校教育については、教育をめぐる様々な課題を克服し、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指すため、国として全国的な教育の機会均等や教育水準の維持向上のために必要な役割を果たしつつ、同時に、地方自治体や学校の自由度を高めその創意工夫を生かすことにより、国家戦略として世界最高水準の教育の実現に向けて学校教育の改革と充実に取り組むことが求められている。


○  文部科学大臣からは、中央教育審議会に対して、今日変化する社会の中で、子どもを取り巻く環境が大きく変わってきていること、子どもの学力に低下傾向が見られること、学習にも職業にも無気力な子どもが増えていること、規範意識や体力にも低下傾向が見られることなど、現在の子どもをめぐる種々の課題意識が示されている。




(2)  現行の学習指導要領の考え方


○  急速かつ激しい変化が進行する現代の社会を、一人一人の人間が、主体的・創造的に生き抜いていくために、教育に求められているのは、子どもに、基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」をはぐくむことである。


○  「生きる力」の重要性とその育成は、平成8年の中央教育審議会答申(「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」)において提唱されたものである。


○  平成14年4月から順次実施されている現行学習指導要領においては、このような考え方に立って、知識や技能を単に教え込むことに偏りがちな教育から「生きる力」を育成する教育へとその基調を転換するため、教育内容の厳選、選択学習の幅の拡大、「個に応じた指導」の充実、「総合的な学習の時間」の創設などを行ったところである。


○  小学校・中学校で現行学習指導要領が全面実施されて既に4年が経過しようとしているところである。しかし、この間、平成15年10月の中央教育審議会答申(「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(答申)」)が指摘するように、各教科等の指導においては、指導に必要な時間が確保されていない事例や、総合的な学習の時間で身に付けさせたい資質や能力等が不明確なままで実施している事例、子どもの主体性や興味・関心を重視する余り、教師が子どもに対して必要かつ適切な指導を実施せず、教育的な効果が十分上がっていない取組など、学習指導要領のねらいを十分に踏まえた指導がなされていない取組も見受けられたところである。(平成15年12月には、同答申に基づき学習指導要領の一部改正が行われた。)


○  このように、各学校において、学習指導要領のねらいを踏まえた取組とそうでないものに分かれている状況がみられるのは、国や各教育委員会において、現行学習指導要領のよって立つ背景や、これを踏まえて学習指導要領が基本的なねらいとしている点等について、各学校や国民に対する周知が結果として不十分であったことが、その一因であると考えられる。


○  また、現行学習指導要領実施後の各種調査に基づき、子どもの学力や学習状況を見たとき、基礎的・基本的な知識・技能を徹底して身に付けさせ、自ら学び自ら考える力を育成するというねらいが必ずしも十分に達成できていない状況が見られる。中央教育審議会としても、教育課程の構造の在り方やその示し方、授業時数の在り方についても検討すべき課題ととらえている。


○  今後の社会においては、大きな歴史的変動の潮流の中で既存の枠組みの再構築が急速に進むものと考えられる。また、子どもの学習や生活の状況をめぐっては、読解力の低下、学習意欲や学習習慣が十分でないという問題、学習や職業に対する意欲、規範意識や体力の低下など様々な課題が提起されている。


○  こうした状況にあって学校教育の果たすべき役割を考えたとき、基礎・基本を徹底し、自ら学び自ら考える力などを育成することにより、「確かな学力」をはぐくみ、「豊かな人間性」やたくましく生きるための健康や体力なども含め、どのように社会が変化しても必要なものとなる「生きる力」の育成を進めることがますます重要となってきている。中央教育審議会には、その実現のための手立てを講じることが求められている。


○  我が国の教育は、国際的な学力調査でも全体としては上位にある。また、学力低下への懸念にこたえるべく各学校において基礎的事項を徹底する努力が行われ、一定の成果が現れ始めている。我が国の学校、教師、子どもは、大きな力を持っていると考えられる。学校、教師、子どもが本来有している力を十分に発揮することができるようにするとの観点に立ち、学習指導要領全体の見直しを進めることとしたい。




(3)  現行の学習指導要領下の学校教育の状況と検討課題

ア 子どもの学力と学習状況


○  子どもの学力の現状については、平成15年に実施された国際的な学力調査の結果から、全体としては国際的にみて上位にはあるものの、成績中位層が減り、低位層が増加していることや、読解力、記述式問題に課題があることなど低下傾向が見られた。


○  また、平成16年に実施された国立教育政策研究所の教育課程実施状況調査の結果からは、学校における基礎的事項を徹底する努力等により一定の成果が現れ始めているが、国語の記述式の問題について正答率が低下するなどの課題が見られた。


○  こうした調査で問われている、知識・技能を活用し、考えたり、表現したりする力を育成することは、平成14年4月から順次実施されている現行学習指導要領がねらいとするものであるが、必ずしも十分実現していない状況にある。


○  また、上記調査では、教科が好きかどうか、家でどのくらい勉強するかなどについても調査しているが、学習意欲、学習習慣・生活習慣などは、若干の改善は見られるが、引き続きの課題である。なお、基本的な生活習慣が身に付いているとうかがえる子どもは、調査問題の得点が高い傾向にある。


○  義務教育答申でも指摘しているとおり、工業化社会から知識基盤社会へと大きく変化する21世紀においては、単に学校で知識・技能を習得するだけではなく、知識・技能を生かして社会で生きて働く力、生涯にわたって学び続ける力を育成することが重要である。


○  これからの社会においては、主体的・積極的に考え、総合化して判断し、表現し、行動できる力を備えた自立した社会人を育成することがますます重要となることを踏まえれば、基礎的・基本的な知識・技能を徹底して身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「確かな学力」を育成し、「生きる力」をはぐくむという現行学習指導要領の基本的な考え方は今後も維持することが適切である。


○  先述の子どもの学力と学習状況を踏まえると、義務教育答申が指摘するように、現行学習指導要領のねらいを実現するための手立てに関し、課題があると考えられる。




イ 子どもの心と体の状況


○  子どもの学ぶ意欲や生活習慣の未確立、後を絶たない問題行動、規範意識や体力の低下など、教育をめぐる社会状況には深刻なものがある。


○  例えば、生活習慣については、「義務教育に関する意識調査」では、平日の24時以降に就寝する割合は小学校第6学年で約1割、中学校第2学年で約5割、同第3学年で約6割、毎日朝食を食べている子どもは学年が上がるにつれて低下し、小学校第4学年で約9割なのが、中学校第1学年で約8割、同第3学年で7割に低下、休日にテレビやビデオ・DVDを3時間以上視聴する子どもは小学生で約4割、中学生で約5割となっている。


○  自分に自信がある子どもが国際的に見て少なく、学習や職業に対して無気力な子どもが増えている。また、人間関係をつくる力が十分でないとの指摘もある。


○  子どもの問題行動等の現状については、平成16年度においては、不登校児童生徒数、暴力行為の発生件数、いじめの発生件数が全体的には減少しているものの、小学校の暴力行為などが増加し、不登校児童生徒も依然として約12万人という相当数に上っている。また、平成17年度においても子どもによる重大な問題行動が続くなど、憂慮すべき状況にある。


○  子どもの心身の発達については、社会環境や生活様式の変化が、様々な影響を与えている。体力・運動能力調査の結果などから具体的には、積極的に運動する子どもとそうでない子どもの二極化、子どもの体力低下などが深刻な問題となっているところである。




ウ 社会の各分野からの要請


○  現在、我々の社会は、環境問題への対処、少子・高齢社会における福祉の在り方など、持続可能な社会の発展のために、国民が参加・協力して対処すべき大きな課題に直面している。また、金融の自由化など社会や経済の各分野での規制緩和の進展に伴い、国民が自己責任を負うべき場面が増加したり、司法制度改革の一環としての裁判員制度の導入などの新しい仕組みが設けられたりしている。


○  こうした社会経済システムの高度化・複雑化が顕著な現代において、将来の社会を担う子どもたちには、新しいものを創り出し、より良い社会の形成に向け、主体性を持って社会に積極的に参加し課題を解決していくことができる力を身に付けることが求められる。


○  また、国際化、情報化、科学技術の発展の中で、社会や経済のグローバル化が急速に進展し、異なる文化・文明の共存や持続可能な発展に向けての国際協力が求められるとともに、人材育成面での国際競争も加速しており、科学技術教育や外国語教育など、学校教育においても国家戦略として取り組むべき課題の存在が指摘されている。




エ 学校教育に対する国民の意識


○  「義務教育に関する意識調査」では、保護者の学校に対する総合的な満足度は70パーセント(「とても満足している」、「まあ満足している」の計)に達している。


○  他方で、特に、肯定・賛成(「とてもそう思う(賛成)」、「まあそう思う(まあ賛成)」の計)が60パーセントを越える意見としては、「総合的な学習の時間は、教師の力量や熱意に差があり指導にばらつきが出る」(肯定65.3パーセント)、「年間の授業時間を増やす」(賛成67パーセント)、「放課後や土曜日、夏休みなどに補習授業を行う」(同61.4パーセント)、「小学校から英語活動を必修にする」(同66.8パーセント)、「将来の職業や生き方についての指導を行う」(同62.7パーセント)、「地域での体験活動やボランティア活動を行う」(同63.7パーセント)、「複数担任制や少人数による指導を行う」(同80.9パーセント)などがあった。


○  また、文部科学省が実施したスクールミーティングでも、学習内容や授業時数の減少、基礎学力の低下や塾通いの状況が気になるといった意見があった。その一方で、子どもが外で遊ばなくなり発達に応じた遊びや体験がない、コミュニケーションが取れなくなったといった子どもの変化を指摘する声も多く、子ども同士の「群れ遊び」などの交流、あいさつ運動、マナーアップ運動が有効との意見があった。


○  このように学校教育に対する国民の意識は多様であるが、子どもたちがよく学びよく遊び、心身共に健やかに育つことを目指して、高い資質・能力を備えた教師が自信を持って指導することにより、「確かな学力」を確実に定着させることや将来の職業や生き方について見通しを与えることを期待するとともに、学校と家庭が連携しながら発達の状況に応じた遊びや体験をさせたり、コミュニケーション能力を育成することを求める声が多い。




(4)  学校や教育行政の在り方についての検討課題


○  学力低下への懸念や塾通い等、特に公立学校に対する不満も少なくない。それらは時代や社会の変化に起因するものもあるが、学校教育、教育行政が十分対応できなかったことも否めない。


○  学校の問題としては、学校教育において子どもが身に付けるべき力やその力を具体的にどのようにしてはぐくむかという道筋について、子どもや保護者、地域との間で必ずしも共通の認識がなされず、教育の成果や課題が不透明で見えにくいといった点を挙げることができる。


○  その一方で、子どもや保護者も変化しており、教師の仕事もこれまで以上に多岐にわたっているとの現状も指摘されている。教師が子どもと向き合って教育活動を展開するためには、学校における組織的な対応や教師を支える仕組みの必要性も指摘されている。


○  また、学校教育を支え、その成果に対して責任を負う教育行政についても、学校教育の現状や課題について十分にその現実を把握できているか、保護者をはじめとする国民や住民に対して十分に説明責任を果たしているか、学校を支えるための条件整備を十分に行っているかなど、改善すべき課題を抱えている。


○  こうした中、義務教育答申においては、学校の教育力(学校力)を強化し、教師の力量(教師力)を強化し、それを通じて、子どもの「人間力」の豊かな育成を図ることを改革の目標としている。


○  特に義務教育システムについて、
 目標設定とその実現のための基盤整備を国の責任で行うこと、その上で、
 市区町村・学校の権限と責任を拡大する分権改革を進めるとともに、
 教育の結果の検証を国の責任で行い、義務教育の質を保証する構造に改革すべきであるとし、国の責任によるインプット(目標設定とその実現のための基盤整備)を土台にして、プロセス(実施過程)は市区町村や学校が担い、アウトカム(教育の結果)を国の責任で検証し、質を保証する教育システムへの転換を図ることが求められていると提言している。


○  また、同答申では、教育の中心的な担い手は学校であり、国は義務教育の根幹保障の責任を、また、都道府県は域内の広域調整の責任を十全に果たした上で、市区町村、学校が教育の実施主体として、より大きな権限と責任を担うシステムに改革する必要があるとしている。




(5)  学校の役割と家庭・地域・社会の役割


○  子どもたちを取り巻く環境の変化として、家庭や社会の教育力の低下が指摘されている。スクールミーティングの結果からは、保護者の価値観が多様化していることなどにより学校の教育活動が難しくなっているという意見や、家庭で基本的な生活習慣を身に付けさせてほしい、しつけをしっかりやってほしいという意見が多く示された。


○  学力の向上をはじめ子どもの健全な育成のためには、睡眠時間の確保、食生活の改善、家族のふれあいの時間の確保など、生活習慣の改善が不可欠である。子どもの育成の第一義的責任は家庭にあり、教育における保護者の責任を明確化することが必要である。


○  大人が家庭や地域で子どもの教育に十分役割を果たせるようにするためには、大人の働き方の問題がかかわっており、企業の協力も必要である。男女共同参画社会において、子育てと職業が両立できるようにするための行政や企業の取組や環境づくりが求められる。


○  他方、今日、朝食をとっていない子どもの問題など、家庭や地域の教育力が依然として不十分な現状、あるいは今後更にそれらの教育力が低下する懸念、格差拡大の懸念などを背景として、学校と家庭、地域との役割分担の在り方が改めて議論されている。


○  教育課程部会においては、本来家庭や地域が果たすべき機能を学校に持ち込むのではなく、家庭や地域がその責任を果たすことが必要であるとの意見、家庭の教育力が低下しているからといって学校の役割を拡大しても、子どもの心の満足は得られず、家庭の教育力は学校で代替できる性質のものではないとの意見などがある。


○  特に、心と体の育成については、家庭教育の自覚が強く求められる。「早寝早起き朝ごはん」といった提案を出発点として、家庭教育の充実を具体的に進めていく必要がある。


○  この点については、後述するように、学校教育の到達目標を明確にする際に、基本的な生活習慣などについて家庭教育で取り組むべき目標を示していく必要があるのではないかとの意見があった。


○  地域社会の大人の役割も重要である。学校外の人材(地域の人材や専門家など)が、地域の子どもの教育や学校教育に積極的に参画することが求められる。


○  学校は、教育の専門機関として、「確かな学力」の育成などを通じて、国家・社会の形成者の育成について大きな責務を担うものであり、この役割を徹底して果たすことが望まれる。


○  家庭や地域における子どもの実態に目を向けたとき、本来、家庭が第一義的な責任を負うべき問題についても、教育機関としての学校、教育者としての教師が、その補完的な機能を果たしている、また果たさざるを得ない現状がある。社会や行政は、こうした現実を直視し、必要な協力や支援を行うことが求められる。

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会 審議経過報告(概要)

2007-08-07 05:49:45 | Weblog
○  中央教育審議会教育課程部会は、文部科学大臣の検討要請を受け、昨年4月以来、学習指導要領全体の見直しについて審議を行っている。


○  学習指導要領の見直しについては、昨年10月の中央教育審議会「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」において、基本的な考え方が提示されたところ。教育課程部会はそれを踏まえ、検討を行っている。



1 教育課程をめぐる現状と課題

(1)  学校教育の目的
○  学校教育の目的は、一人一人の国民の人格形成と国家・社会の形成者の育成。
○  教育をめぐる様々な課題を克服し、心豊かでたくましい日本人の育成を目指すため、国家戦略として世界最高水準の教育の実現に向けて学校教育の改革と充実に取り組む必要。


(2)  現行の学習指導要領の考え方
○  基礎的・基本的な知識・技能を徹底し、自ら学び自ら考える力を育成するという現行学習指導要領のねらいが必ずしも十分達成できていない状況が見られる。
○  学習指導要領のねらいとするところの実現のための具体的な手立てが必要。


(3)  現行の学習指導要領下の学校教育の状況と検討課題


 ア 子どもの学力と学習状況
○  国際的な学力調査等の結果から、読解力や記述式問題に課題があることなど低下傾向が見られた。
○  国の教育課程実施状況調査の結果からは、基礎的事項を徹底する努力等により一定の成果が現れ始めているが、国語の記述式問題が低下するなどの課題が見られた。
○  上記調査では、学習意欲、学習習慣、生活習慣などは、若干の改善が見られるが、引き続きの課題である。


 イ 子どもの心と体の状況
○  意識調査では、就寝時刻が遅い、朝食をとっていない子どもがいる、テレビ等の視聴時間が長いなどの課題がある。
○  自分に自信がなく、学習や職業に対して無気力な子どもが増えている。
○  問題行動が相当数に上る、規範意識、体力などに課題がある。


 ウ 社会の各分野からの要請
○  環境問題、少子・高齢社会など、社会の変化の中で、国際化、情報化、科学技術の発展などに対応した人材の育成が課題。


 エ 学校教育に対する国民の意識
○  意識調査やスクールミーティングなどでは、多くの国民は、確かな学力を確実に定着させることや将来の職業や生き方について見通しを与えること、発達に応じた遊びや体験、コミュニケーション能力の育成を期待。


(4)  学校や教育行政の在り方についての検討課題
○  学校においては、教育の成果や課題が見えにくい点が問題。
○  教育行政においては、学校教育の現状や課題の把握、国民への説明責任、学校の条件整備などが課題。
○  国における目標設定や評価の仕組み、学校現場の主体性や創意工夫を活かすための手立てなどが課題。


(5)  学校の役割と家庭・地域・社会の役割
○  学校、家庭、地域の三者が互いに連携し、適切に役割を分担し合うことが必要。
○  特に、心と体の育成については、家庭の自覚が強く求められる。
○  学校は、「確かな学力」の育成などを通じて、国家・社会の形成者の育成に大きな責務を負う。



2 教育内容等の改善の方向

(1)  人間力の向上を図る教育内容の改善


 基本的な考え方


 ア 言葉や体験などの学習や生活の基盤づくりの重視
○  生活習慣、学習習慣、読み書き計算、学習や生活の目標を持たせることなど学習や生活の基盤づくりが重要。
○  その際、言葉の重視、体験の充実が重要との指摘が多数示されている。
○  国語力の育成や自然体験、社会体験などの充実が求められる。
○  人間力の向上については、社会の側からの視点に立って、必要な力を明確にすることが必要であり、その方向で検討。


 イ 確かな学力の育成
○  知識・技能と考える力を総合的に育成することが必要。
○ 基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させることが基本としつつ、知識・技能を活用する力を重視し、課題探究活動を通じて、自ら学び自ら考える力を高めることが重要。
○  九九や都道府県名などについては、反復学習等が重要。
○  知識・技能を確実に定着させるためにも、実生活での活用が重要。
○  概念、法則、暗黙知なども、知識の理解や活用を促進する上で重要。
○  教科横断的な力を育成するために、体験から感じ取ったことを表現する力、情報を獲得し、思考し、表現する力、知識・技能等を実生活で活用する力、構想を立て、実践し、評価・改善する力などが重要。


 ウ 子どもの社会的自立の推進
○  豊かな心と健やかな体をはぐくみ、社会的自立への基礎を培うことが重要。
そのためには、基本的な生活習慣、規範意識の確立、芸術やスポーツに親しむ習慣や態度が重要。
○  個性や能力を伸ばし、主体性・自律性を育成することが重要。そのためには、自己理解や自己責任の考え方を調和した形で身に付けさせることが課題。目標に挑戦し達成する体験を重視する必要。


 エ 社会の変化への対応
○  情報や環境といった現代的課題については、教科では真に必要な知識・技能を、総合的な学習の時間では所要の力を育成。


 具体的な教育内容の改善の方向


1) 国家・社会の形成者としての資質の育成等


 ア 国家・社会の形成者としての資質の育成
○  社会・国家・国際社会の一員としての自覚を育成することが重要。
○  我が国の伝統や文化、歴史に関する教育が重要である。
○  都道府県の位置と名称、民主主義の概念など、基本的な事項の定着を重視。
○  新聞記事等から必要な情報を読み取るなどの力を育成することが重要。


 イ 豊かな人間性と感性の育成
○  基本的な価値観、自主的・実践的態度、豊かな情操が重要である。
○  自他の生命を尊重し、健全な自尊感情を育てる必要。
○  基本的な生活習慣の確立、最低限の規範意識を確実に定着させる必要。
○  あいさつや社会的マナーなど人間関係を形成する力が必要。
○  文章や詩歌の音読・暗唱を通じ、自然や芸術の美しさの実感的な理解を重視。
○  算数・数学でねばり強く考え抜くことによる達成感や自信も重要。


 ウ 健やかな体の育成
○  幼いころから、生涯を通じて運動に親しむための意欲や身体能力の育成や、自他の健康や安全のための知識の習得。
○  適切な性教育。発達段階を考慮し、保護者や地域の理解を得ることが重要。
○  食事の重要性、食物を大事にし、生産等にかかわる人々に感謝する心、食文化など食育を推進。


2) 国語力、理数教育、外国語教育の改善


 ア 国語力の育成
○  小学校では、読むことを体験的に理解するため音読や朗読・暗唱が重要。
○  漢字の読み書きなど、反復学習による定着が重要。
○  国語の知識を活用するために、描写・要約・説明の力などを確実に定着。
○  A4・1枚(1,000字程度)で自分の考えをまとめるなど、読解・論述力の育成が重要。
○  相手の気持ちを理解しながら、聞いたり、話したりする力の育成を重視。


 イ 理数教育の改善
○  数や計算、図形などの基礎・基本を反復学習等で確実に定着する必要。
○  子どもが自然事象に接する機会が少なくなっていることから、体験的な理解を重視する必要。生活科における科学的認識の充実を検討。
○  理科に対する国民的な理解を高めるため、子どもの知的好奇心を駆り立てる内容、実生活に密着した内容、著名な発見や原理の理解が重要。
○  学問的な系統性だけでなく、発達や学年に応じた反復の中で確実に定着させる必要。
○  観察・実験、探究的な活動を一層充実し科学的な思考力を育成する必要。
○  基本的な概念を実生活に活用する、様々な数量的なデータを分類整理し比較する、論理的に思考し適切に表現するなどの力を育成することが重要。


 ウ 外国語教育の改善
○  小学校段階における英語教育を充実。
○  義務教育としての機会均等を確保するため、仮にすべての小学校で共通に指導するとした場合の指導内容を検討中。
○  これまでのところ、英語のスキルを重視する、国際コミュニケーションを重視する、2つの考え方があり、両者をどう組み合わせるかが課題。
○  国語力の育成との関係、中・高等学校の英語教育との関係、条件整備の面での課題を念頭において検討中。
○  具体的な教育目標や内容、開始学年、教材や指導者の確保等の条件については、外国語専門部会で、さらに検討。本年度中を目途に外国語専門部会からの報告を予定。
○  高等学校を中心に、英語以外の外国語教育の在り方を検討。


3) 総合的な学習の時間などの改善


 ア 総合的な学習の時間の改善
○  総合的な学習の時間の必要性・重要性については、共通の理解。
○  教科、特別活動、選択教科等との関係を整理し、ねらいを明確化することが必要。
○  授業時数について、ねらいの明確化などを踏まえ、今後具体的に検討する。
○  運用面で、先進事例の提供、教員の研修等の支援を充実する。


 イ 中学校における選択教科
○  教育課程の複雑化を避けるため、必修教科を重視すべきとの指摘も踏まえ、検討中。


 ウ 部活動の取扱い
○  部活動を学習指導要領に位置付ける方向で検討することを求める意見を踏まえ、検討中。


(2)  教育課程の枠組みの改善


 指導方法、授業時数の見直し等


 ア 指導方法の改善
○  きめ細かな指導のため、少人数指導や習熟度別指導を推進。
○  学習に対する基本的な姿勢を身に付けること、学習習慣確立のための宿題を適切に課すことが重要。ICTの活用等を重視。


 イ 授業時数の見直し
○  国語力、理数教育については、教育内容を充実することが必要。全体の見直しの中で、授業時数の在り方についても、今後具体的に検討。
○  総授業時数は、教育内容の見直しと併せて検討。特に小学校低学年については、幼児教育の実態を考慮して検討する必要との指摘。


 発達や学年の段階に応じた教育課程編成や指導の工夫
○  幼・小の具体的な連携方策を充実。
○  小・中の接続については、小学校低・中学年から高学年へ、高学年から中学校へという発達の段階に応じて、教育内容を重点化。


 学校週5日制の下での学習機会の拡充
○  学校週5日制は国の仕組みとしてこれを維持すべきとの意見が大勢。
○  学校週5日制の下での土曜日や長期休業日については、家庭や地域社会との連携を促進する方向で、活用方策を検討する必要。



3 学校教育の質の保証のためのシステムの構築

(1)  基本的な考え方
○  中教審答申(17年10月)に示された義務教育の構造改革という観点を踏まえて、学校教育の質の保証を図ることが重要。


(2)  学校教育の質の保証


 ア 学習指導要領における到達目標の明確化
○  知識・技能については、例えば、実生活に直接かかわる内容の例示を検討。
○  能力面については、例えば、A4・1枚で表現する力など、例示や目指すべき水準の明示を検討。


 イ 情報提供その他の基盤整備の充実
○  教育内容・方法に関する情報提供を充実することが必要。
○  学校のICT環境の整備が必要。
○  義務教育の構造改革による学校や教師の力の向上のための基盤整備が必要。


 ウ 教育課程編成に関する現場主義の重視
○  国として全国的な教育の機会均等や教育水準の維持向上のために必要な役割を果たしつつ、地方自治体や学校の自由度をいかに高めるかという観点を重視。
○  各教科等ごとの授業時数の弾力化、研究開発学校制度の見直しなど。


 エ 教育成果の適切な評価
○  子どもたちの学習成果の評価の改善、学校評価の推進が重要。
○  全国的な学力調査については、平成19年度に、小学校6年、中学校3年で国語、算数・数学について実施する。文科省に設置された専門家会議において具体的な実施方法などについて検討中。


 オ 評価を踏まえた教育活動の改善
○  教育成果の評価を教育活動に反映させ、教育の質の向上を図ることが重要。


(3)  教育行政の在り方の改善
○  学校教育の現場の状況の把握や国民に対する説明責任を重視。


終わりに
○  特に、高等学校教育、幼稚園教育、特別支援教育などについては、関係の部会等での検討状況も踏まえて、さらに深める必要。

学校教育における道徳教育の意義及び位置付け

2007-08-06 15:35:12 | Weblog
1 学校教育における道徳教育の意義及び位置付け
 道徳教育は,児童生徒が人間としての在り方を自覚し,人生をよりよく生きるために,その基盤となる道徳性を育成しようとするものです。

幼稚園では…
 各領域を通して総合的な指導を行い,道徳性の芽生えを培います。


小・中学校では…
 「道徳」の時間(年間35単位時間)をはじめとして,各教科,特別活動,総合的な学習の時間のそれぞれの特質に応じて,学校の教育活動全体を通じて行います。


高等学校では…
 人間としての在り方生き方に関する教育を,「公民科」や「特別活動」のホームルーム活動などを中心にして,学校の教育活動全体を通じて行います。


2 小・中学校において指導する道徳の内容
 児童生徒の道徳性を次の4つの視点から分類整理し,道徳の内容項目を示して,指導を行うこととしています。

「主として自分自身に関すること」
「主として他の人とのかかわりに関すること」
「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」
「主として集団や社会とのかかわりに関すること」

懲戒と体罰 文科省が「考え方」通知

2007-08-06 11:30:50 | Weblog
携帯の一時預かり「教育上の措置」

 いじめによる子どもの自殺や校内暴力が続いている事を受けて、文科省は問題を起こす児童生徒に毅然とした指導をするよう学校現場に要請。そのため学校現場が自信を持った指導できるよう、懲戒と体罰の違いと体罰の禁止などを改めて確認する文書をまとめた指針を作成し、2月5日に教育委員会などを通じて通知した。

 文書は「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」(=「考え方」)。今後の懲戒・体罰に関する解釈・運用の指針としている。どこまでが懲戒なのか、体罰が機械的に判定できないため「教員が自らの指導に自身を持てない」、「実際の指導で過度に萎縮」しているなどの声に応えたもの。

  体罰かどうかの判断について「考え方」では、「児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある」との前提を提示。子ども本人や保護者の主観ではなく、これらの条件を客観的に考慮して判断するよう求めている。

  「考え方」が明確に体罰とするのは1)身体を侵害する懲戒(殴る、蹴る)、2)肉体的苦痛を与える懲戒(長時間にわたる正座・直立など特定の姿勢)など。一方、体罰に当たらないのは1)放課後等に教室への居残り(用便の禁止や食事時間を過ぎる長時間の留置きなど肉体的苦痛を与えるものは体罰)、2)授業中、教室内に立たせる、3)学習課題や清掃を課す、4)当番を多く割り当てる、5)勝手に立ち歩く子どもを叱って席に着かせるなど。また対教師暴力からの防衛や他の児童生徒に被害を及ぼす暴力行為を制止したり危険を回避するための「有形力の行使」は体罰にあたらないとする。

  その他、授業・学習の妨げになるなどの理由で子どもを教室から退去させるのは「教育上必要な措置」。単に遅刻や学習を怠けた等の理由で教室を退去させる場合は、授業に代わる指導を別途行うのなら差し支えないとする。さらに授業中に携帯電話でメールするなど、学校全体の教育活動に悪影響を及ぼすような場合、保護者等との連携を図った上で携帯電話を一時的に預かることは「教育上必要な措置として差し支えない」としている。