3丁目の夕日/教職課程講座

明日のための演習メモ

和歌山県としての改善に向けた基本的な考え方

2007-09-02 18:05:29 | Weblog
(1) 教育ビジョンの構築
○ 義務教育は、子どもが成長・発達していく上で必要とされる基礎的な学力、
体力、道徳性を養う責任を担っており、教育行政は地域住民に対して、機会均
等、水準確保、無償制を担保しながら、時代のニーズに応じたサービスを提供
する責務がある。義務教育に対する地域社会の期待には大きなものがあり、学
校は具体的な教育活動を通して、このような保護者や地域の期待に応えていか
なくてはならない。
○ 学校が魅力ある教育活動の営まれる場として、また活力みなぎる学舎として、
学校改革と教育実践にどう取り組んでいくべきか、教育委員会と学校関係者は
真剣に考えなくてはならない大切な時期に来ていることを自覚する必要があ
る。
○ 時代の変化に対応し、義務教育に対する県民の期待に応えるためにも、県教
育委員会は教育関係者はもちろん、県民にとってわかりやすい明確な教育ビジ
ョンを早急に示すべきである。
○ 県教育委員会が策定する教育ビジョンを基に、市町村教育委員会と学校とが
協働して、新しい教育方法の開発に積極的に取り組んでいくなど、和歌山が持
っているチャレンジ精神を発揮していくことが望まれる。
○ 各学校が多くの具体的な実績を積み重ねることにより、目に見える形で県民
にアピールしながら、和歌山県としての学校教育のステータス(社会的地位)
(4)小・中学校において、1学級を複数学年によって編制している学級。その規模については、二
個学年複式の場合は小学校16人(第1学年を含む場合は8人)、中学校8人と「公立義務教育諸
学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務教育諸学校標準法)により定められて
いる。
(5)平成16年度学校基本調査報告書による。
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を獲得していく努力を期待する。
○ これからの時代は、教育立県により、人を呼び込める時代といわれる。子ど
もを宝として大切に育てる風土の確立は、新たな和歌山の魅力を創造する。和
歌山の教育を受けさせたいと思われる学校づくり、魅力ある教育システムの構
築に教育行政は責任を持って取り組む必要がある。
○ なお、地方分権が進む中、教育ビジョンの策定に際しては、県民や教育関係
者の力を結集した上で策定していくというプロセスが重要であることはいうま
でもない。
(2) 義務教育改善の方向
○ 学力や学習意欲の低下、後を絶たない問題行動、集団の中での社会性の習得、
保護者の多様な教育観への対応、地域との連携強化といった課題が山積するな
ど、学校のおかれている状況には厳しいものがある。小・中学校は、子どもの
社会的自立を支え、「確かな学力」等を基盤として、一人ひとりの多様な力と
能力を引き出すとともに、様々な課題を持つ子どもに対してきめ細かく対応で
きなければならない。
○ このため学校は、これまでのスタイルにとらわれない、新しい感覚や手法を
取り入れた学校教育そのものの改革に取り組むことが求められている。また保
護者や地域社会の信頼を獲得するために、教育活動の状況や結果を公開し、そ
の評価に基づいて教育内容を改善していくといった、組織マネージメントの考
え方を学校経営に積極的に取り入れるなど、学校の活力をどのように維持・発
展させるかについて検討する必要がある。
○ また少子化の進行により、県内の小・中学校は近年、急激な小規模化が進行
してきており、子どもたちの学力や生活力の育成といった教育効果の面で課題
も生じてきている。こうした中、県教育委員会は今後、和歌山の子どもたちを
どのように育てるのか、どのような個性ある教育を和歌山で提供できるかとい
った視点から、魅力ある教育を創造するための議論をしていくことが求められ
る。また、そのような魅力ある教育の創造を支えるための活力ある教育環境の
整備、例えば小・中学校の適正規模の実現や、教職員のスキルアップ、学校組
織の見直しについて検討していくことが急務であると考える。

義務教育を取り巻く課題と改善に向けた基本的な考え方

2007-09-01 18:03:39 | Weblog
1 小・中学生の実態と教育課題
○ 物があふれ社会に多様な価値観が生まれる中で、子どもたちの生活や学習状
況を見ると、学習離れ、学力低下、就業意欲の喪失など様々な教育課題がみら
れる。
○ 何のために学習するのかという“めあて”が社会構造の変化の中で明確に提
示できなくなったことなどから、子どもたちの中でもそれが曖昧となり、学習
に取り組む意欲が全体的に低下してきている。
○ 平成16年度に県内すべての小学校4年生から6年生、中学校全学年の児童
生徒を対象として基礎的・基本的な学力の定着状況を測定するために和歌山県
学力診断テストを実施した。その結果から、小学校は概ね良好といえる状況で
あったが、中学校は社会科、数学科、理科に課題があるなど概ね良好とはいえ
ない状況であることが明らかになった。(1)
○ このように、基礎的・基本的な学力の低下が懸念されると同時に、調べる力、
書き留める力、思考する力、表現する力、人の話を聞く力、自分の考えを述べ
る力などの「生きる力」として求められている能力も十分身に付いていない(2)
状況がある。
○ 小・中学生の学力の状況は二極化の傾向が進んできている。県学力診断テスト
と併せて実施した生活実態・学習意識等の調査からみると、保護者などとの豊
かな会話が成立している家庭や、朝食をきちんととる家庭の子どもは学力が高
い傾向にあるなど、家庭での教育力、親の教育力と子どもの学力とが密接につ
ながっている。
○ 小学校での学力差は、中学校入学後も大きく影響を及ぼすことが多く、生徒
指導上の問題や中学校1年生で不登校問題が急増するといった、いわゆる「中
1ギャップ」の一つの要因にもなっている。
○ 集団で学び合うことや話し合うことが苦手で、対人関係の持ち方や集団の中
での行動の仕方にとまどいを感じている子どもが多い。個人主義に基づく身勝
手で感覚的な行動が目立ち、自分とは関わりが無いことに関しては無気力・無
関心となる傾向がある。
○ 情報化の進展や道路事情の改善により、県内においては都市部であっても、
山村であっても、子どもの状況に大きな差異はなくなってきている。むしろ、
子どもが急激に減少してきている山村の方が、集団生活の基礎を築く上で必要
な、子ども同士が群れ遊ぶことなどが十分にできない状況も生じてきている。
○ 日常生活や経済社会のあらゆる活動において情報への依存がますます高まる
中、テレビやコンピュータからの一方的な情報に頼ったり、ゲームなどによる
仮想現実の世界に陥ってしまったりする危険性が生じてきている。氾濫する情
(1)平成16年度和歌山県学力診断テスト実施報告書による。
(2)平成10年に告示された現行の学習指導要領の中で、児童生徒が育むこととされているもの。自
ら学び自ら考える力を育成するとともに、基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り、個性を生か
す教育の充実に努めることを重視した。
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報を適切に判断し利用する力を子どもたちに養う必要がある。
2 学校がおかれている現状と課題
○ 校長のリーダーシップを発揮した学校の個性化がいわれているが、依然とし
て、学校は教育委員会の指導のもと、自ら工夫・改善していくといった主体性
に欠け、横並び的な発想での学校づくりにとどまっている傾向がある。
○ 学習指導要領の中に「新しい学力観」が打ち出されてから、子どもの興味・
関心を重視した考えさせる授業づくりに取り組まれてきたが、教師の中には、
旧態依然とした指導方法から抜け出せていない者もいる。
○ 保護者の要求が多様化してきており、学校は個々のニーズの全てに応えてい
くことが困難な状況にある。世間一般の教育に対する考え方が、個々の児童生
徒や保護者のニーズを優先する対人サービス化の傾向をみせており、保護者の
学校に対する期待と学校ができることとの間にギャップが生じている。
○ 社会的な高学歴指向に、保護者の高学歴化もともなって、子どもの学力に対
する保護者の関心や要求は高くなってきている。しかし、学力向上に関しては
塾等の学校外教育への期待度が高く、結果として多様な教育課題に取り組んで
いる学校への信頼感を低下させている側面がある。
○ 地域社会の教育力の低下が叫ばれる中、学校と地域社会の連携を強めるため
の取組は広がりを見せている。しかし、地域社会の大人は子どもを大切にする
姿勢を持っているものの、子どもが抱える現代的な問題を十分認識できていな
い面がある。このことが、家庭や学校への批判となり、協働的な視点での学社
連携が機能しない結果となっている。学校との連携を視野に入れつつ、子ども
の教育に対して独自の役割を果たせるような地域社会としての成熟が望まれ
る。
○ 開かれた学校づくりといわれているが、まだまだ学校の扉は重く、固い。地
域に開かれた信頼される学校づくりのためにも、広い視野に立った考え方に基
づく教師の意識改革が必要である。