Kaorism

演劇・映画感想&稽古場・スタジオ日誌

ブラック・スワン

2011-05-15 20:11:52 | Weblog
やられました・・・滅茶苦茶面白い・・・。


すごく痛いです、いろんな意味で。
視覚的痛さは、かなり私が苦手な「刺さる!」「剥がす!」系で、どっかで観た覚えが・・・と思っていたら、監督のダーレン・アロノフスキーさんは「レスラー」の監督でブレイクしたんですね。痛さの共通項がばっちりでした。


視覚的にだけでなく、演者の「痛み」がものすごく浮き彫りにされた映画でした。
オーディションから役の発表までの痛み、稽古に入ってからの痛み、自分が持っていないものを持っているライバルへの痛み、役が掴めない痛みなどなど・・・。バレリーナ、ダンサーでなくとも、役者、音楽家、多分画家や作家にも共通する痛みかもしれません。


ナタリー・ポートマンは子供の時にバレエをやっていて、今回過酷な訓練をしてこの役に挑んだそうですが、その点だけでなく、アカデミー賞主演女優賞納得の演技でした。(プロのバレエダンサーから見たらどう見えるのかわかりませんが)文句なく彼女の繊細さや生真面目で硬質な部分の持ち味と化け感が上手く融合された役どころでした。


ヴァンサン・カッセルのコリオグラファーも、演劇界でも「こういう演出家、多かれ少なかれ雰囲気わかるな~」と言う感じで良かったです。ライバル役のミラ・クニスの対照的な自由奔放さ、母親役のバーバラ・ハーシーもとてもよかったです。


人が褒めてくれても、自分が納得できないと「いい演技」とは言えない気持ち、よくわかります。逆に万人に褒められなくても、大切な「演技」もあると思います。「ブラック・スワン」と「レスラー」の2作品を観て、この監督はそういう演者の繊細な心理をよくわかっているんだなとすっかりファンになりました。
次回作もぜひ観たいと思ってます。


いや~、本当に面白かった!


最近の映画と本

2011-05-12 23:13:06 | Weblog
・・・と言っても結構前に観たのもありますが・・・。


※「ザ・ファイター」
マーク・ウォルバーグが4年半かけて制作・主演で実現に漕ぎ着けた映画、実在のプロボクサー、ミッキー・ウォードを描いた作品です。
観終わった感想は・・・これがアカデミー賞作品賞でも納得だなあ、でした。
「英国王のスピーチ」は演劇的な台本(最初は戯曲として書かれていたそうなので当然ですが)でしたが、こちらは映画でしか描けない世界観で、無骨な世界観で真逆なタイプの映画でした。

ミッキー・ウォードの実家は、アメリカの低所得者層のアイリッシュ一家ですが、母親役のメリッサ・レオに度肝を抜かれました。主演のマーク・ウォルバーグよりたった11歳年上、ということは51歳!!?前に彼女がアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた「フローズン・リバー」という映画を観たのですが、その時も貧しい家庭環境の母親役で、そのなんとも言えないクタビレ感に驚きました。今回はクタビレてはいません。すごいアグレッシブなお母さんでした。助演女優賞うなずけました。

恋人役のエイミー・アダムスも今までになくアグレッシブ。喧嘩の売り方、買い方が素晴らしく、好感持ちまくり。

助演男優賞受賞のクリスチャン・ベール、すごい演技でした。でもでも・・・風貌も雰囲気も誰かを思い出す・・・友人のイギリス人俳優にそっくりでちょっとびっくり・・・クリスチャン・ベールの顔はすごく好みなのですが、友人は個人的には好きですが特に好みではなかったのに・・・何か同じテイストがあるのかな・・・?


※「戦火のナージャ」
二キータ・ミハルコフ監督の名作「太陽に灼かれて」の続編。全作と同じキャストですが、ナージャの、あの無茶苦茶可愛かった監督のお嬢さんが20代の女性に成長。正直ちょっと「あれれ~、成長すると微妙だな~」と思ったのですが、ラストシーンの彼女はとても綺麗でした。・・・と言っても、これ、三部作なので続編があるそうなのですが。
「プライベート・ライアン」を彷彿とさせる戦闘シーンの合間合間に、すごく演劇的な、思わず笑ってしまうやり取りやエピソードがあったり、見ごたえのある映画でした。


※「ブルーバレンタイン」
アカデミー賞主演女優賞に、ミシェル・ウィリアムズがノミネートされた作品。共演はライアン・ゴスリング。冷めてしまった夫婦が何とか愛を取り戻そうとする物語ですが・・・役者の演技はすごくいいのに、今ひとつ話が面白くない。「レボリューショナリー・ロード」のほうがグッと来たので、ついつい比べてしまいました。



本は今、スティーブン・キングの新作「アンダー・ザ・ドーム」の下巻を読んでいます。
中学時代から夢中なキングの本は、お高いな~と思いつつ、本屋で見つけると、即効買ってしまいます。キングの得意な、逃げ場の無い小さな町での話しで、昔のホラー映画のごとく、登場人物たちが行ってはいけない方向に行ってしまうのに最初はもう気が重くてしかたがなかったのですが、段々ハマるにつれて、登場人物たちが愛しくなってきて、一気に読むのがもったいなく、毎晩ちょっとずつ楽しみにして読んでます。読み終わってしまうのがもったいなくて・・・。でももうすぐ終わっちゃう・・・。