久しぶりの投稿です。
しばらく前ですが、風邪をひいて時間があったのでトマトの写真を撮影してみました。
トマト『麗妃』カメラを温室に持ち込んですぐ撮影したのでレンズが曇ってしまいました。果実を確認できるのが一段目(一般栽培では最も日が当たりにくい段)、連続摘芯栽培で表現すると第一基本枝の第一花房、そのすぐ下の黄色い帯状の段が二段目、さらにその下の黄色い帯が三段目になります。
トマト『麗妃』
トマト『麗妃』
2009年10月29日に投稿した基本枝は、H県の試験場が発表している低段密植栽培の様なやや水平方向に配置されています。今回は別ハウスで、施設の関係で主枝から約30cm離れた位置で垂直に下垂しています。
特徴としては下垂した各果房・花房(3段)の採光性(受光性)が非常に良い事(果房周辺の葉かきを行っていない時点でも)です。これらの遠景写真から、第一花房の多くの玉の花落ちが天井または天井から南方向へ向いている(*1)ことに気付かれた方もいらっしゃるかもしれません。
育種メーカーさんの説明では、
「極硬玉のトマト『麗妃』は、・・・・・、生産面でもこの硬さは真価を発揮します。収穫が多少遅れても硬さを維持し品質が低下しない事から、圃場でしばらくおいておくこともできます。従来品種では果実の色が回ると徐々に軟化が進むため収穫しなければなりませんが、『麗妃』は、生産者がある程度、出荷を調整することも可能です。・・・・・・」
との事です。
これをこちらなりに意訳すると(あくまでもこちらの勝手な解釈で、育種メーカーさんには文責はありません。)
「低温低日照の冬季に肩回りから着色し始めた後、花落ちまで着色するまでは時間がかかります。しかし極硬玉のトマト『麗妃』はそれまで待っても品質が落ちません。」
となります。
花落ちから着色し始める熟度判定の写真を見慣れた方には「一体この人は何を言っているのか?」ということになるかもしれません。
着色前の複数果房が露出する過激な葉かきをする方は「糖度も食味も変わらない。」「果実も光合成をする。」と言う方が多いような印象を受けます。こちらでも葉かきを行いますが、過激な葉かきは行いません。着色前の複数果房が露出する葉かきに抵抗感を感じる方には向いているかもしれません。
捻枝について:H県やこの写真の様な低段密植短期連続栽培(H県ほど密植はしていない。)、連続摘芯栽培では程度の差はあれ基本枝を下垂させることになります。この捻枝が導入に二の足を踏む要因の一つではないでしょうか?
こちらでの捻枝は、捻枝部分に大きな負荷がかからない方法を採用しています。一般的な連続摘芯栽培での捻枝作業は、捻枝後完全に下垂させずに途中までとして、自重で徐々に下垂させる方法がとられます。また、人によってはペンチを使っての捻枝を行われる場合もあります。どちらも可成りの緊張感を伴います。作業時間の制約もあります。一般的には晴天日の午後とされています。
ここでの捻枝作業は捻枝部に負担をあまりかけないまま、一気に垂直方向へ下垂させます。人によっては、連続摘芯栽培は捻枝部分に負荷が大きくかかることにメリットがあると考える方もいらっしゃいます。「基本枝の同化産物が捻枝部分の強い負荷によりほかへ移動しない。」という考え方のようです。下垂させるだけで充分な効果が期待できると考える方、作業時間の制約を受けたくない方(こちらでは雨でない限り午前も午後も捻枝させます。)、捻枝作業中の緊張感を無くしたい方には向いているかもしれません。
*1:もう少し正確に表現すると、天井または天井方向から南、さらにやや東または西方向・・・・といった感じでしょうか。南北チャンネルの二条植えなので必然的にこうなります。
今回H県という表現を使いました。以前とは随分異なっているとは思いますが、かつて試験場や研究機関の発表には時々問題がありました。大昔に勤めていた会社で、まるで社員のように自由に会社内を歩き回っている方がいました。上場の関係か当時の社長(最終学歴)とその方の出身校が同じだったからか分かりません。野X総研のその方は色々な試験場の研究結果を分析されていました。葉菜類(土耕で、移動ベンチではない)のある研究結果が気になって(収量が良いので)、あれこれ調べたそうです。研究者の単純ミスで悪意はなかったのかもしれませんが、通路が計算に入っていなかったそうです。小面積の試験結果を単純に一反当たりに換算したために起きたのかもしれません。この手の研究発表が非常に多いとの事でした。
研究機関の発表は60坪やそれ以下の面積で行った結果をそのまま生産規模に換算したり十分な検証実験(作業)が行われていない場合があります。
新技術や新しい装置を導入する場合は十分な確認を行うことが重要と思います。新しい技術や装置を導入しても、それで生産者の技術レベルが上がるわけではありませし。