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植物関連

VFT鈴木系は品種登録可能か? (Dionaea鈴木系、春及園系)

2020-07-01 20:40:09 | 

VFT鈴木系は品種登録可能か?

 

 始めに、春及園系と鈴木系を同義と認識しています。複数の方が葉柄と葉身(トラップ)の比率で春及園系から鈴木系を分離しているようですが、首を傾げます。この形質は質的形質ではなく量的形質です。彼らが春及園系とする個体郡の後代から彼らが言うところの鈴木系が出現します。「~系」というものは品種登録の定義に当てはまりません。ここ迄で既に結論を述べたように見えます。

 春及園も実家も多摩川を挟んで京浜急行沿いだったため、1974年からそして社会人になった以降も通っていた者としてこれを書きたいと思います。因みに就職した会社の小売り部門、アンテナショップ(ガーデンセンター)には春及園さんの委託販売コーナーがありました。ここでも春及園系(=鈴木系)は何十年も販売されました。

 

 VFTは他殖性植物です、雌雄異熟。誤解のない様に、他殖性植物とは絶対的自家不捻(absolute self-incompatibility)を意味する用語ではありません。その傾向を示す言葉です。その程度は植物によってまちまちです。近交系を確立出来たとしても、通常、純系は確立できません。近交系も何処まで近交度を高められるか分かりません。鈴木系に思い入れがある方々は個体内の遺伝的雑駁さ、集団内の遺伝的雑駁さ(現在の状況では難しい様です)に配慮すべきです。

 

 自殖性植物であれば、腕の良い育種家によって純系を確立できます。その純系は品種登録する事が出来ます。国内でもっとも審査レベルが高い「国」へ申請して登録されるでしょう。

 

 他殖性植物は特定のたった一つの個体とその栄養繁殖株でなければ登録できません。彼らの言うところの鈴木系は彼らの言うところの春及園系から申請者以外の所でも出現します。いい加減な団体に、詭弁を使って品種登録しても他で第三者が審査基準を基に区別できない個体が出現した場合、登録は抹消されなければなりません。

 

 「鈴木」、「春及園」はVFTの名前として既に認知されています。品種登録のルールとして新たに登録される品種にこれらの名前は使用出来ません。いい加減な団体がこれらの名前を使った品種登録を認めると、そのいい加減さを知らない人たちが自身の「鈴木系」「春及園系」をその名前で販売譲渡するときその行為が違法行為になってしまうと勘違いします。そんな事などを防ぐための基本的な品種登録のルールです。

 

 仮にVFT Suzuki又はVFT 鈴木が登録申請可能な栽培品種としましょう。育成者は誰でしょうか?「春及園系、鈴木系」を栽培する方々は他の血を入れないことに価値を見出だしています。つまり育成者は吉五郎さんと恒五郎さんです。申請するかどうかを決める権利も鈴木さん一族が持っています。

 春及園でも、三越、大船植物園そして勤めていた会社の小売り部門でも何十年も前に販売されました。登録申請が受理される前に販売譲渡しているので、この時点で品種登録を申請する権利は消失しています。

 誰が審査基準を作るのでしょうか?それができる人が国内に何人いるでしょうか?非常に難しい作業です。能力のある人が審査基準を作成し始めると、ある時点でVFT 鈴木を品種登録する事が困難であることに気付くでしょう。

 栽培品種登録するための、他のVFTにないcultivar status traitsをどの様に説明しますか?一部の愛好家でなければ区別できない様では品種登録に値しません。審査基準を基に仕分けできなければなりません。

 

結論、今まで通り「春及園系」「鈴木系」が適しています。また、これらの名前で優劣をつけるのは不適切です。恒五郎さんの謙遜を言葉通りに受け取るべきではありません。春及園を訪れる著者の様な多くの人々の好みを熟知しているための言葉でしょう。多数の他殖性植物の系統維持をすることが出来る人です。著者の様な人間が好みの個体を持って行ったぐらいでそれが無くならない事を知っているのです。

 

どうしても鈴木さんや春及園の名前を残して区別したい場合は「VFT鈴木系 誰々選抜A」などとしないと混乱を招くでしょう。ここで「系」を入れることが重要です。

 

情緒的に書くと、

鈴木さんのVFT を葉柄と葉身の比率で「それは鈴木系、それは鈴木系と名乗ってはならない。」等と議論している人達は、吉五郎さん恒五郎さん春及園の顔に泥を塗っているのです。ある国際会議で英国の著名な動物学者が「パンダはあまりに政治的な動物なのでこのまま絶滅させてしまえ」と発言したそうです。今の鈴木系の議論を聞いているとVFT の世界でもこんな事を言い出す人が現れてくるかもしれません。鈴木さんのVFTが今後も愛されていく価値があるならば、春及園と同じ程度の雑駁さは無理にせよ出来るだけ近づける努力が必要でしょう。現在の状況はその様な協力関係は望めないので、植物ではなく人間の世代交代を待たなければならないのかも知れません。

 現在「鈴木系」を栽培しこの名前で価値を高め、この名前の虎の威を借る的なことで鈴木さんの顔に泥を塗るような行為をしている人達は鈴木さんや春及園の名前を外し自分の名前で誰々系のみとすべきです。譲渡を受けた人から由来を聞かれたら「春及園、鈴木さん由来」と答えれば良いのです。

 

 会誌7月号にアーカイブとして初期の会誌4号(1950.11)に掲載された鈴木吉五郎さんの記事「ディオネア漫語」が載る予定のようです。皆これを読んで少し気持ちを落ち着かせ、鈴木系とは何なのか考え直しましょう。


KSVの食虫性について2

2014-07-22 00:05:48 | 

今回はKimberley Sandstone Violet cv. Mimi(キンバリーサンドストーンヴァイオレット ミミ)の植物体内を吸収産物が移動する様子を撮影しました。

試料:赤く染色した赤虫(染色後再乾燥)

The KSV pooling effect 1では赤虫の内部が溶けてKSVに吸収される様子を細かく撮影しています。撮影機材の制限(ガラスのくもり)で適温より低い温度で撮影しました。適温・適湿度だと約90時間で終了する反応です。

The KSV pooling effect 2ではたくさんの分泌液が出る様子と植物体内を吸収産物が移動する様子をご覧いただけます。染色した赤虫の方が激しく反応しているように見えますが、これは葉身により触れているためです。詳しくは「KSVの食虫性について」をご覧ください。立場上「消化酵素」について言及できませんが、研究者による研究発表があり次第ご報告します。


Fantasy Flora Time-Lapse 3 The KSV pooling effect 1

https://www.youtube.com/watch?v=WMiMDXXaAvw

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Fantasy Flora Time-Lapse 4 The KSV pooling effect 2

https://www.youtube.com/watch?v=Vqp9qLZQHWI

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KSVの食虫性について

2013-09-03 22:27:33 | 

 このブログの中で「食虫」という言葉を使用しないように決めていたのですが、すでにトップページでその禁を破りました。今回はさらにかなりグロテスクな写真がありますので御注意下さい。
 KSVの食虫性について観察しました。科学的な実験ではなく、単なる観察です。

 Kimberley Sandstone Violet cv. Mimiの繁殖はこちらでは組織培養を利用していますので、特に問題はないのですが、Mimiを入手された方がご自身の楽しみのために繁殖する方法をあれこれと探っていました。現在、Mimiは種苗法の保護下にありますが、入手された方がご自身のために繁殖することは制限されていません。下の写真のようにプラボトルを利用して、挿し床にはオアシス育苗培地を利用しました。部屋は日中40度を簡単に越えてしまいます。南側の窓辺で午前中スリガラス越しに僅かに日光を浴びます。密閉した容器内は恐ろしい温度になっていると思いますが、KSVはとても元気です。
P9010025

これらの根付いた苗の葉に乾燥赤虫(魚の餌)を与えました。腺毛の先端に置くようにしたものと葉身に直接触れるように置いたものの二通りで観察しました。
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22時間後観察すると下の写真のような状態になりました。腺毛の先端に置いたものは粘液と分泌液(?)を吸ってパンパンに膨れています。そして、葉身に直接触れるように置いたものは分泌液のプールにどっぷりと浸かる様な状態になりました。
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P9020038trimming20130902_09175705
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この分泌液の中に食虫植物で知られているような消化酵素が含まれるのか、未知の酵素が含まれるのか、それとも防御反応なのか、近い将来専門家によって解明される予定です。
そして驚いた事に46時間後を観察すると、早いものはすでに放出された分泌液が葉の中に吸収されています。
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そして70時間後には、早期に吸収の始まったものはもともとの乾燥赤虫とはかけ離れた姿になりました。そして、他のものも吸収が始まり、赤虫がつぶれ始めました。
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Kimberley Sandstone Violet cv. Mimi

2013-05-31 00:54:44 | 

Kimberley Sandstone Violet cv. Mimi (KSV cv. Mimi)
キンバリーサンドストーンヴァイオレット ミミ

(KSV cv. Mimi)

Photo1

P8310021

P8310053

すでに「このScrophulariaceae種は食虫植物ですか?」http://princeofwalesfeathers.blogzine.jp/blog/で紹介した植物の栽培品種が出来ましたのでお知らせします。

 「このScrophulariaceae種は食虫植物ですか?」に追記してありますが、この記事を書いた時点でFloraBase the Western Australia Flora (Department of Environment and Conservation Western Australia Herbarium)はこの種をScrophulariaceae(科)としていました。その後、Linderniaceaeと変更しています。

学名)Lindernia cleistandra W.R.Barker リンデニア クリサンドラ (デは少し”デー”と伸ばす様に発音すると通じ易いようです。)。農林水産省はリンデルニア クレイスタンドラ とカタカナ表記します。通じない場合はリンデニア クリサンドラ を試して下さい。

栽培品種Mimi: 

アレン ラウリーさんとの共同育種によって生まれました。品種登録申請済 受理番号27515号(官報で公示済み)。大輪である事、腺毛が濃く長いことが一見して区別できる特性です。

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KSV cv. Mimi 総合案内は

http://blog.goo.ne.jp/lechenaultia/d/20140706

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 下の写真の右側がcv. Mimiです。

Photo2_2

Photo3_2 

 @KSVはオーストラリア北部のキンバリー台地からアーネムランド周辺が故郷です。砂岩で出来た岩山で、クレバスなどの垂直の壁面にある亀裂などに自生しています。全体が腺毛と腺液で覆われ、たくさんの花を咲かせる美しい生きた宝石(Living Jewel)のような植物です。

 @美しい園芸植物であるばかりでなく、植物学的にも大変興味深い繁殖に関わる、3つの不思議な動きを観察する事が出来ます。

  ・垂直の壁面に出来た亀裂で繁殖するための花茎の動き、日本のPinguicula ramosa コウシンソウと比べると非常に活発な動きです。詳しくは動画(YouTube)をご覧下さい。

  ・自殖を避け、他殖を優先する雌蕊の動きと、捕らえた花粉を逃さないための柱頭の動き(ビデオ中の最後の花)、ポリネーターが花冠に進入する時は受粉可能でポリネーターがその植物個体の花粉を付けて出てくるときは受粉しないための動き、一度捉えた花粉を逃さないためにしっかりと花粉を掴み、雨などで濡れないように隠れる動き、詳しくは動画 (Youtube)をご覧下さい。

 @品種名Mimiについて、Mimiは北部オーストラリアのアボリジニの人々に伝わる民話に登場する妖精のような存在です(有名な、岩壁に描かれたX-ray paintingにも登場します。)。Mimiはアボリジニの人々へカンガルーの狩りの仕方、その肉の調理方法などを教えたとされています。人間のような外観ですがとても細長く強い風などで体が壊れてしまうので、ほとんどの時間を砂岩の岩山のクレバスなどで過ごしています。まさしくそこがKSVの故郷です。

栽培方法:日照条件以外はTropical Byblis と同じです。多年草ですが、耐寒性はありません。こちらでは10℃~15℃を最低温度としていますが、推奨の最低気温は20℃以上です。低温管理ほどリスクが大きくなります。

 Tropical Byblisとの違いは、

1:用土は水はけの良い混合土が適しています。

2:施設内(フレーム、ワーディアンケース、水槽、温室など)で上からの灌水を避け腰水管理とします。南側の窓辺でタンブラーや水槽に入れて楽しむ事も出来ます。10月から5月中旬までは直射日光の当たる場所で、5月下旬から9月下旬までは50%から70%の遮光資材の下で栽培して下さい。環境にもよりますが、概ね45℃ぐらい(通常はそれ以上)まで問題なく生育します。梅雨明け直後の東京都心のうだる様な蒸し暑さを栽培場の一角に設けるわけです。こんな環境でKSVは爆発的に成長生育します。一方ですずしげな草姿で栽培者に一服の清涼感を与えてくれます。

3:根詰まりを起こすと生育が鈍ります。長い間維持するためには常に異なった生育ステージのバックアップを栽培します。挿し芽で簡単に増やす事が出来ます。なお、Mimiは現在種苗法の保護下にあります。販売・譲渡・交換目的での繁殖は出来ません。ご自宅で楽しむ範囲の繁殖に止めて下さい。なお、国外へ送られたり、持ち出されると民事請求を受けるだけでなく、刑事罰を科せられる場合があります。

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YouTube: Fantasy Flora Time-Lapse 2

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YouTube: Fantasy Flora Time-Lapse 1