「ノルウェイの森」
永沢役 玉山鉄二
「感情の表現に苦労」
ワタナベ(松山ケンイチ)に、むなしいと思うなら、なぜ女あさりをやめないのかと問われて、永沢が言う。
「彼女たちは“何か”を求めていて、お前はその“何か”を与えることができる。自分に能力があって、それを発揮できる場所がある。なのにお前は黙って通り過ぎるのか?」
頭脳明晰(めいせき)で冷徹、揺るぎない価値基準を持った男、永沢を印象深く演じた。
「まだ20歳そこそこなのに、社会の仕組みと自分の影響力をよく分かっている。不安や孤独は絶対に表に出さない。爬虫(はちゅう)類のような男だと思う」
暗がりで、たばこの煙ごしにこちらを見つめる永沢の姿は、非常に力のある映像だ。トラン・アン・ユン監督は「永沢は常にエレガント。笑っているのか、悲しいのか分からない独特の笑みを浮かべてほしい」と玉山に求めた。
「頭ではイメージできるけれど演じるのは難しい。一歩間違うと単なるプレーボーイになってしまう。なるべく演技に強弱をつけながらも、感情は平坦(へいたん)に表すようにしていました」
トラン監督独特の演出には、玉山も驚かされたようだ。
「僕が座ってるシーンで突然、『その肘の角度は永沢じゃない!』って怒り出した。びっくりしていろいろ試したら、今度は『トレビアーン!』って叫ぶ。毎日、どうやればトラン監督のトレビアンが聞けるかだけを考えていましたね」
さらに、本番中にもかかわらず、「右にいけ」「左にいけ」「窓の外を見ろ」と玉山に指示を飛ばす。「もうリモコン状態。だけど、モニターを見たら、何とも言えない永沢の憂いが写っていた。トラン監督は揺るぎない美意識を持っていて、永沢に似ているかもしれない」
永沢を演じたことは、玉山に大きな影響を与えた。
「今後、僕が仕事や恋愛など、人生でいろいろな物事を決断するとき、この作品での経験が何らかの影響を及ぼす気がする。観客のみなさんも、きっと何かを持って帰れる作品だと思う」と語った。
(msn産経ニュース)
ワタナベ、キズキ、永沢。
美しく刻印された男たち。
素敵でした。
ときに氷のなかに閉じ込めておきたくなるような、
他人を寄せ付けない、孤高、あるいはひとりぼっち。
ひとりぼっちから孤高へと、
迷いなく生き切ってゆくのが永沢ですね。
その永沢を、
>不安や孤独は絶対に表に出さない。
>爬虫(はちゅう)類のような男だと思う」
そう言い切ってしまえるのが凄いと思います。
>僕が座ってるシーンで突然、『その肘の角度は永沢じゃない!』って怒り出した。
トラン監督、エピソードには事欠かない監督さんですね。
当初、静かに淡々と撮影が進む監督なのかなあと思っていたんですが、
肘の角度とか、ワタナベの転び方とか、
尋常じゃないと思いました(笑)
それにしても玉山さんはただそこに座っているだけで完璧な絵になる方ですね。
しかし、そこに至るまでには肘の角度のご苦労もあったわけで(笑)
>トラン監督は揺るぎない美意識を持っていて、永沢に似ているかもしれない
永沢にたいする印象と同じく、
トラン監督にもなるほどなあと思います。
トラン監督がちょっと怖くなるような???記事でした^^