額に血を滲ませながら・・・
その男は肩で扉を開けながら・・・入って来た。
「ここのビール銘柄は・・な・なに・・・」
扉の外をしきりに気にしながら・・・囁くように聞いてくる。
「瓶のビールはキリンです」
「そ・・そう・じゃ、2本頂戴」
「それより、額が切れてますよ。喧嘩ですか」
「あっ、ほんと・・・ティ・ティッシュもくれる」
「やっちゃってさ・・・あ・相手は2人・・・チンピラとマッポ」
言ってることが解からない。しゃべっている間もずーっと表を気にしている。
「飲んでる場合じゃないんじゃないですか」
「う・うん・・・でも2本だけ」「カラオケある・・・」
「ええ、でも唄なんか唄ってていいんですか」
「そ・そう・・・追われてるからな・・・」
「484のブルース」
男はがなるように唄い、外を気にしながらも2本のビールを飲み干す。
「い・いい店だな。マ・マスターも面白い」
会話なんかはないのだ・・・空気だけが澱んでいく。
「行かなきゃ・・・」初めてしっかりとはっきりした口調になった。
「いくら?」答える前に・・・3000円を投げてよこす。
「ご・ごちそうさん」入って来た時と同じように肩で扉を押しながら、外を窺いながら・・・出て行く。
瞬間・・・片目をつぶってみせる・・・15年前・・・梅雨時の・・・幽霊。
その男は肩で扉を開けながら・・・入って来た。
「ここのビール銘柄は・・な・なに・・・」
扉の外をしきりに気にしながら・・・囁くように聞いてくる。
「瓶のビールはキリンです」
「そ・・そう・じゃ、2本頂戴」
「それより、額が切れてますよ。喧嘩ですか」
「あっ、ほんと・・・ティ・ティッシュもくれる」
「やっちゃってさ・・・あ・相手は2人・・・チンピラとマッポ」
言ってることが解からない。しゃべっている間もずーっと表を気にしている。
「飲んでる場合じゃないんじゃないですか」
「う・うん・・・でも2本だけ」「カラオケある・・・」
「ええ、でも唄なんか唄ってていいんですか」
「そ・そう・・・追われてるからな・・・」
「484のブルース」
男はがなるように唄い、外を気にしながらも2本のビールを飲み干す。
「い・いい店だな。マ・マスターも面白い」
会話なんかはないのだ・・・空気だけが澱んでいく。
「行かなきゃ・・・」初めてしっかりとはっきりした口調になった。
「いくら?」答える前に・・・3000円を投げてよこす。
「ご・ごちそうさん」入って来た時と同じように肩で扉を押しながら、外を窺いながら・・・出て行く。
瞬間・・・片目をつぶってみせる・・・15年前・・・梅雨時の・・・幽霊。