震える・・・

　勝つのは決まっていた。そしてその通りのレース。本馬場に入った時から落ち着いて、でっかく見えていた。スタートでデットーリが仕掛けようとも武豊の信念に揺るぎはなかった。手首をガッチリと折って、押さえ込んで、最後方。向こう上面で遅過ぎるペースにも動じない。欅の向こうからはスーっと、本当にスーっとね、馬なりで１頭また１頭と交してゆく。バルクが頑張る。ドリームもね、ディープ以外には負けない。デットーリにも意地がある。ただ、ディープはね、何にも関係ない。彼と武とのランデブー。
　上がりは３３秒台後半。次元の違う走り。何回やってもディープの勝ちだろう。彼は武と気持ちよく走ってきた。そしてやっぱり翔んだ。少しだけ泪が出る。