おひがんまいり(2) 2005-09-23 12:04:22 | 私の思い出 ≪ NO3 お彼岸まいり ≫ (その2) お東の参道には同じような瀬戸物のお店がずらりと並んでいて、 買うつもりも無い冷やかしの客が「あらこれ一寸良いんじゃない」 なんて言いながらぐい飲みを一つ手に持って、隣に立つ友に話し掛けたりして。 お母ちゃんも本当は覗きたいんだけど 「お参りが先よね、楽しみは後で」 とばかりに通り過ぎる。 角を曲がると、綿菓子・一銭焼き・みたらし団子・ポン菓子・・・・ 色んな匂いが一緒くたになってドット流れてきた。 三角に折った新聞紙からソースがこぼれそうになったお好み焼きを 両手に持った男の子が走り過ぎる。 「ワッ良いな」 と私。 「後で後で」 お母ちゃんは素っ気無い返事しかしてくれない。 本殿でお賽銭を上げ両手を合わせるとお彼岸参りの儀式は此処まで。 後はイヨイヨお楽しみの始まり。 階段を下りた所の広場では毎年同じおじさんが、小鳥に運勢占いの 芸をさせている。 おじさんの掛け声がかかると、畳一畳分位の小さい舞台の上に作られた 神だなの扉を、器用に嘴で開き、中から一枚のおみくじを銜えて戻る。 お客は「どうもありがとう」 と神妙に押し頂いて、回りの見物客も 小鳥の妙技に手を叩く。 私は去年も見て知っているのに、何度見ても如何して小鳥に こんな事が出来るのかナ?と不思議でしょうがない。 「もう行くわよ」 お母ちゃんに促され渋々歩き出しながら、 もう一度振り返ってみたんだけど次のお客が無いらしく、 おじさんは所在なげに煙草に火をつけて一服中。 其れを見て気が済んで「そうだ綿菓子を買ってもらわなくちゃ」と お母ちゃんの後を追っかけた。 石灯籠の前に店開きしていたお団子屋の前を通りかかると、 お母ちゃんがちょっと小さな声になって 「みたらし団子いい匂いだね」 と立ち止まり「2本ちょうだいな。」 おみくじのくくり付けてある大きな樫の木の根方に座り込んで、 お母ちゃんも子供のように大口で頬張りながら、 「ホラホラ洋服を汚さないようになさい」 とお小言をくれる。 1っ本づつ片ずけたばかりだというのに、どうしても欲しいと駄々をこねて 買ってもらった綿菓子を片手に、迷子にならないように 反対の手でお母ちゃんが腕にぶら下げている木口をつかんで、 イヨイヨ瀬戸物市を冷やかしに・・・。 端から端まで眺め回した帰り道の途中で、毎年の事だけど、 お父ちゃんの好物の“中嶋や”のういろをお土産用に買い、 此れも何時ものことだけど其の先の古い昔からの酒屋で 此れはお母ちゃんの好物の酒粕を買う。 一歩前を歩いていた私が「お母ちゃんバスがきた」と振り向いた時、 お母ちゃんったら歩きながら木口の中の、今買ったばかりの 酒粕の紙袋に指を突っ込んでるだもの。 私に見つけられた事に気が付いて、一寸バツが悪そうに照れ笑い。 「ダメよ,つまみ食いは!」 私はいつもお母ちゃんに言われてるように言ってみて、 なんだかお母さんになったみたいで変な気持ち! 晩御飯の時、私がこのことをばらしちゃったもんだから皆大笑い。 お父ちゃんなんか笑いすぎて、お母ちゃんに睨まれちゃった。 楽しかったよ。 まりつき 2005-05-29 11:40:39 | 私の思い出 ≪ NO2 まりつき ≫ 「イチカケ ニカケ サンカケテ・・・・・」 あつい あつい 汗がポタポタ落ちてくる 「シカケ ゴカケテ・・」 何これ?? 「イチカケ ニカケ サンカケテ??」 何の事だろ?? 掛け算の話かな?? 私ね、掛け算は未だいいんだけど、割り算てチョッと苦手よ 1÷2 は1つのお林檎を2人で分ける事だって 先生が仰ってたけど それじゃ 5÷3 は5つの林檎を3人で分けるってことよね 5つの林檎を3人で分けるってどうやったら喧嘩せずに済むんだろ?? お姉ちゃんだったらきっと早い者勝ちで、さっさと2つ取っちゃうわよ!! 残った3っつを弟と分けるんだったら、弟に2つ取られそうだし そうすると私は1つね 割り算すると、なーんだか私一人が損するみたいだわ!?!? でも今はそんな余計な事考えてられないわ チョッとでも他ごとに気を取られてよそ見したら、失敗してしまいそうなんだもの あつい あつい とうとう汗が目の中に入っちゃたわ デモ いま いそがしくて手が離せないの 「ハシヲカケ・・・」 フーン ハシヲカケ なのね あつい あつい 今、私はお姉ちゃんと毬つき競争の真っ最中 負けちゃったらお母ちゃんの言いつけで、お豆腐を買いに行かなければいけないの お母ちゃんが 「誰かお豆腐を買いに行って来て頂戴」って言ったので、 お姉ちゃんと毬つきをして負けたほうが行く事にしようって競争を始めたところなの なにしろ私は毬つきは一番の得意なのよ でも「イチカケ ニカケ サンカケテ」のあとクルリと足を回して毬をくぐらせる技は お姉ちゃんのほうが、私よりずっと上手なんですもの 此処で失敗するわけにはいかないわ 「サンカケテ・・」クルリ アッ出来た 良かった 次は「シカケ ゴカケテ ハシヲカケ」よね ここも上手に出来ますように それにしても此れは、何の事なのかしら? やっぱり掛け算の事? 「ハシノランカン コシヲカケ・・・」 あーー此処は解るわ 橋の欄干に腰を掛けるんでしょ? やっぱり疲れたから、一休みしたいのね 「ハルカ ムコウヲ ナガムレバ、十七・八ノ ネエサンガ、 ハナヤ センコウ テニモッテ、ネエサンドコイク タズネタラ ワタシハ九シュウ鹿児島ノ 西郷隆盛 ムスメデス え? 西郷隆盛?? 西郷隆盛ってどんな人? 東京上野と言う所の駅前に、凄くよく言うことをきく 犬をお供に連れた 西郷隆盛という人の銅像があるって、 前にお兄ちゃんが話してくれた事があるけど、 その銅像の子供ッてこと? 銅像の娘?? でも其れってチョッと変な話よね あつい あつい 汗がポタポタ・・・ クルリ 「明治十年三月ニ セップクナサレタ父上ノ オハカマイリニ マイリマス」 フーンお墓参りに行く所なんだ セップク? ・・・ セップク って?? 「オハカノ マエデ テヲアワセ 南無阿弥陀仏ト オガミマス」 フーン、あつい あつい クルリ 「モオウシ コノコガ オトコナラ シハンガッコヲ 卒業サセ、 イギリス言葉モ ナラワセテ」 わあー凄い 師範学校へ行くんだって ものすごく 頭がいいんだね イギリス言葉ってどんなんかなあー 私も大きくなったら学校で教えてくれるのかな? 今度お母ちゃんに聞いてみよう 「梅ニ鶯 止マラセテ ホウホケキョウト 鳴ナカセマス」 え? 無理やりに? かわいそう 「コレデ イッカン スミマシタ」 クルリ あーやっと終った 後は毬をトントン突いてから、両足の間をくぐらせてスカートの中の お尻のところで受けるだけ・・・ でもネ トントンと毬を突いて、足の間からスカートの中にくぐらせるって簡単に言うけどね 本当はものすごく難しいのよ スカートに引っかかったり、足にぶつかっちゃったりする事が良くあるの 此処までチャンとできたんだから、最後まで上手くいきますように!! ソラッ!! トントン チュウ アツ! 大変!!スカートに引っかかっちゃった!! あー あー 毬が転がって行っちゃう!! エッ!?!? お姉ちゃんはちゃんとスカートで毬を抱えてるーー! 残念!! 負けちゃった おつかいに行ってこなくちゃ・・・ 「おかあちゃーん!!」 モーパッサン 2005-02-19 15:13:46 | 私の思い出 ≪ NO1 「脂肪の塊」とお父ちゃん ≫ ねえお姉ちゃん、覚えていますか 今の家に建て直す前の、何代も続いたと言うあの古ぼけた家の母屋から 離れにつづく渡り廊下の突き当たりに、古びた板戸の納戸があったことを ギイギイと軋み音をたてる板戸を、力まかせに引っ張り開けると、 中にはなんだか要るのか要らないのか、訳の解らないような 雑多なものがギュウギュウ詰め込まれていて、 かび臭く、余り気持ちのいいものでは有りませんでした デモ、そういう所を探検すると言う事は、なんとなく胸がドキドキして、 妙に秘密くさく、チョッと微妙な気持ちに なってきたりして・・・・・ ・・・・・ 大好きでした 蝉がジージー煩いほど鳴いて、退屈な夏休みの昼下がり 「大事なものがあるんだから勝手に触るんじゃないのよ」・・・と 叱られるに決まっているから、見つかったら直ぐ逃げ出せるように 身体を斜めにして、半分だけ頭を薄暗い納戸の中に突っ込み、 何か面白い物無いかと、手の届く所手当たり次第にひっくり返していると、 棚の上の方から何冊かの古本に混じって雨漏りの跡が染みついた、 数冊の古ぼけた岩波文庫が出てきたのです そして、手にした中にあったモーパッサンの (確かモーパッサンだったと思うんだけど、違ってるかしら?) 「脂肪の塊」と言う・・・・・・・、馬車で乗り合わせた娼婦が、 ある街を無事通過させてもらう代償として、乗客の皆のため 犠牲になって、敵方将校に体を無理やり提供させられる ・・・・・・・ と言う一冊が私の興味を引いたのです その頃の私は未だ12・3才の、読む事が大好き、何でもかんでも 活字でさえあれば一日中でも読み漁っているような読書好きな女の子でした そしてその日も、何の事か皆目意味など解らないまま、 そのスリルなストーリーが、けっこう面白く腹ばいになって 足をバタバタさせながら読みふけっている所へ、おとうちゃんが 通りかかり、本の表紙に気が付くと、ものも言わずにそれを取り上げ 「子供の読むものではない!」と 強い口調で怒ったのよ 普段おとうちゃんのお気に入りで、そんな大声で叱られた事など 無かった私は、その時はなんで叱られてるのか訳が解らなかったんだけど、 今になって思い出してみると、なんとなくおとうちゃんのドギマギが 察せられ、可笑しくなってしまうの 暑い夏と、おとうちゃんの暑苦しそうな困ったような顔・・・ 懐かしい幼い日の夏の思い出 記事一覧 | 画像一覧 | フォロワー一覧 | フォトチャンネル一覧
まりつき 2005-05-29 11:40:39 | 私の思い出 ≪ NO2 まりつき ≫ 「イチカケ ニカケ サンカケテ・・・・・」 あつい あつい 汗がポタポタ落ちてくる 「シカケ ゴカケテ・・」 何これ?? 「イチカケ ニカケ サンカケテ??」 何の事だろ?? 掛け算の話かな?? 私ね、掛け算は未だいいんだけど、割り算てチョッと苦手よ 1÷2 は1つのお林檎を2人で分ける事だって 先生が仰ってたけど それじゃ 5÷3 は5つの林檎を3人で分けるってことよね 5つの林檎を3人で分けるってどうやったら喧嘩せずに済むんだろ?? お姉ちゃんだったらきっと早い者勝ちで、さっさと2つ取っちゃうわよ!! 残った3っつを弟と分けるんだったら、弟に2つ取られそうだし そうすると私は1つね 割り算すると、なーんだか私一人が損するみたいだわ!?!? でも今はそんな余計な事考えてられないわ チョッとでも他ごとに気を取られてよそ見したら、失敗してしまいそうなんだもの あつい あつい とうとう汗が目の中に入っちゃたわ デモ いま いそがしくて手が離せないの 「ハシヲカケ・・・」 フーン ハシヲカケ なのね あつい あつい 今、私はお姉ちゃんと毬つき競争の真っ最中 負けちゃったらお母ちゃんの言いつけで、お豆腐を買いに行かなければいけないの お母ちゃんが 「誰かお豆腐を買いに行って来て頂戴」って言ったので、 お姉ちゃんと毬つきをして負けたほうが行く事にしようって競争を始めたところなの なにしろ私は毬つきは一番の得意なのよ でも「イチカケ ニカケ サンカケテ」のあとクルリと足を回して毬をくぐらせる技は お姉ちゃんのほうが、私よりずっと上手なんですもの 此処で失敗するわけにはいかないわ 「サンカケテ・・」クルリ アッ出来た 良かった 次は「シカケ ゴカケテ ハシヲカケ」よね ここも上手に出来ますように それにしても此れは、何の事なのかしら? やっぱり掛け算の事? 「ハシノランカン コシヲカケ・・・」 あーー此処は解るわ 橋の欄干に腰を掛けるんでしょ? やっぱり疲れたから、一休みしたいのね 「ハルカ ムコウヲ ナガムレバ、十七・八ノ ネエサンガ、 ハナヤ センコウ テニモッテ、ネエサンドコイク タズネタラ ワタシハ九シュウ鹿児島ノ 西郷隆盛 ムスメデス え? 西郷隆盛?? 西郷隆盛ってどんな人? 東京上野と言う所の駅前に、凄くよく言うことをきく 犬をお供に連れた 西郷隆盛という人の銅像があるって、 前にお兄ちゃんが話してくれた事があるけど、 その銅像の子供ッてこと? 銅像の娘?? でも其れってチョッと変な話よね あつい あつい 汗がポタポタ・・・ クルリ 「明治十年三月ニ セップクナサレタ父上ノ オハカマイリニ マイリマス」 フーンお墓参りに行く所なんだ セップク? ・・・ セップク って?? 「オハカノ マエデ テヲアワセ 南無阿弥陀仏ト オガミマス」 フーン、あつい あつい クルリ 「モオウシ コノコガ オトコナラ シハンガッコヲ 卒業サセ、 イギリス言葉モ ナラワセテ」 わあー凄い 師範学校へ行くんだって ものすごく 頭がいいんだね イギリス言葉ってどんなんかなあー 私も大きくなったら学校で教えてくれるのかな? 今度お母ちゃんに聞いてみよう 「梅ニ鶯 止マラセテ ホウホケキョウト 鳴ナカセマス」 え? 無理やりに? かわいそう 「コレデ イッカン スミマシタ」 クルリ あーやっと終った 後は毬をトントン突いてから、両足の間をくぐらせてスカートの中の お尻のところで受けるだけ・・・ でもネ トントンと毬を突いて、足の間からスカートの中にくぐらせるって簡単に言うけどね 本当はものすごく難しいのよ スカートに引っかかったり、足にぶつかっちゃったりする事が良くあるの 此処までチャンとできたんだから、最後まで上手くいきますように!! ソラッ!! トントン チュウ アツ! 大変!!スカートに引っかかっちゃった!! あー あー 毬が転がって行っちゃう!! エッ!?!? お姉ちゃんはちゃんとスカートで毬を抱えてるーー! 残念!! 負けちゃった おつかいに行ってこなくちゃ・・・ 「おかあちゃーん!!」
モーパッサン 2005-02-19 15:13:46 | 私の思い出 ≪ NO1 「脂肪の塊」とお父ちゃん ≫ ねえお姉ちゃん、覚えていますか 今の家に建て直す前の、何代も続いたと言うあの古ぼけた家の母屋から 離れにつづく渡り廊下の突き当たりに、古びた板戸の納戸があったことを ギイギイと軋み音をたてる板戸を、力まかせに引っ張り開けると、 中にはなんだか要るのか要らないのか、訳の解らないような 雑多なものがギュウギュウ詰め込まれていて、 かび臭く、余り気持ちのいいものでは有りませんでした デモ、そういう所を探検すると言う事は、なんとなく胸がドキドキして、 妙に秘密くさく、チョッと微妙な気持ちに なってきたりして・・・・・ ・・・・・ 大好きでした 蝉がジージー煩いほど鳴いて、退屈な夏休みの昼下がり 「大事なものがあるんだから勝手に触るんじゃないのよ」・・・と 叱られるに決まっているから、見つかったら直ぐ逃げ出せるように 身体を斜めにして、半分だけ頭を薄暗い納戸の中に突っ込み、 何か面白い物無いかと、手の届く所手当たり次第にひっくり返していると、 棚の上の方から何冊かの古本に混じって雨漏りの跡が染みついた、 数冊の古ぼけた岩波文庫が出てきたのです そして、手にした中にあったモーパッサンの (確かモーパッサンだったと思うんだけど、違ってるかしら?) 「脂肪の塊」と言う・・・・・・・、馬車で乗り合わせた娼婦が、 ある街を無事通過させてもらう代償として、乗客の皆のため 犠牲になって、敵方将校に体を無理やり提供させられる ・・・・・・・ と言う一冊が私の興味を引いたのです その頃の私は未だ12・3才の、読む事が大好き、何でもかんでも 活字でさえあれば一日中でも読み漁っているような読書好きな女の子でした そしてその日も、何の事か皆目意味など解らないまま、 そのスリルなストーリーが、けっこう面白く腹ばいになって 足をバタバタさせながら読みふけっている所へ、おとうちゃんが 通りかかり、本の表紙に気が付くと、ものも言わずにそれを取り上げ 「子供の読むものではない!」と 強い口調で怒ったのよ 普段おとうちゃんのお気に入りで、そんな大声で叱られた事など 無かった私は、その時はなんで叱られてるのか訳が解らなかったんだけど、 今になって思い出してみると、なんとなくおとうちゃんのドギマギが 察せられ、可笑しくなってしまうの 暑い夏と、おとうちゃんの暑苦しそうな困ったような顔・・・ 懐かしい幼い日の夏の思い出 記事一覧 | 画像一覧 | フォロワー一覧 | フォトチャンネル一覧