昨日、俺たち3人は祐天寺で2時間ほど飲み食いをしてから、新宿三丁目のカジュアルバーに辿りついていて、占いというものについて話をしていた。土曜日の19:30頃というホットな時間帯、新宿三丁目はどこも人で溢れかえっていた。店に入ろうとするも、店員に、ごめんなさい、満員なんですよ、と全然申し訳なくなさそうな顔で門前払いを食らってしまう、そんなことを三回くらい繰り返して、やっと辿りついたのが、焼きカレーと北九州の食材を使ったメニューが売りのカジュアルバー、"G's Bar"だったんである。しかし、祐天寺でさんざん飲み食いをしたあとだったので、焼きカレーも九州の食材を使ったメニューも本当にどうでもいいと、我々は考えていたのだった。とりあえず酒が飲めて、軽くつまめればいいという基準で店を選んだので、カレーは必要なかったし、使っている食材が九州産だろうと、北海道産だろうと、もっといってしまえば、タイ料理だろうとなんでもよかったのだから。そして俺たちは、カレーとか北九州の話にはほとんど触れないで、自然と占いの話をしはじめたのだった。
まずはじめに断っておきたいのだが、俺は占いについて話をしたことがほとんどない。なぜなら、占いというものを基本的に信じていないので、占いを受けたことがないからであり、受けたことがないから、話をすることができないからだ。しかし、そのG's Barにおいては、自然と占いの話をしてしまうのだった。なにも店に占い師がよく使うような水晶玉が置いてあるとか、そういうわけではない。なぜなら、その店は占いを売っていたからである。

2000円で占い師"山ちゃん"が占ってくれるとのことだった。"山ちゃん"というネーミングもどうなんだと思った。俺が知っている占い師といえば細木数子くらいのものだが、ただでさえ細木数子に占ってほしくなんかないのに、もし細木数子が"かずちゃん"というネーミングだったらどうなんだ。

どうなんだと言われてもあれなのだが、やっぱり"かずちゃん"には占ってほしくないよ、"ちゃん"っていうのがちゃらちゃらしてるしさ、当たるとか当たらないとか以前にさ、ちょっときついっていうかさ、かずちゃんていうのはさ、みたいなことを考える人が大半なのではないだろうか。しかしこの店が売っているのはかずちゃんではなくて、山ちゃんなのである。俺たちは山ちゃんについて話をしていた。
すごい興味はあるんだけどさ、でもこの占い師山ちゃんってのはどこにいるんだろう?
きっとさ、この新宿三丁目の辺りの居酒屋一帯と契約している占い師なんじゃねーの?
新宿にそんな店ってあったっけ?2000円で占い売ってるなんてメニュー置いてあるとこ他に?でもそんなんだったら仮に占い頼んでも、時間かかったりするんじゃないの。山ちゃん一人で大変じゃん。
でさ、なかなか来なくて、店員にまだこねーのかよ、なんて言うと、店員も面倒くさくなってきて、今さっき出ましたなんて嘘いって、そこから30分くらい待たされるの。
蕎麦屋の出前じゃねーんだよ、って。
でも、この1ドリンク付きって気になるよね。これって、頼んだ人が飲めるのかな。それとも山ちゃんの1ドリンク?
それってキャバクラと同じようなシステムじゃん。占いしてる途中に酒が切れて、もう一杯だけ、テキーラが飲めれば、もっとあんたの将来がはっきりと見えるのだが…、うーむ、もう一杯頼んでくれれば、なんて言ってきたりして。
あんまり覚えてないのだけど、そんなことを話していて、ある時に、山ちゃんがまさに俺の真後ろに座っていることに、俺の正面に座っている友人が気が付いたのだった。後ろを振りむくと山ちゃんは座っていた。しかもやる気がなさそうに足を組んでボケ―っとしていたのだった。占い師がどう座っているべきなのかは俺は良く知らないが、足を組んでいるのはちょっとなぁと考えていた。まぁ貧乏揺すりをしている占い師よりは足を組んでいる占い師の方がマシなのは確かではある。占いということは、自信を持って行われなくてはならない。なぜなら人は占いを信じて、実際に行動に移すのであり、もしその宣託を行う人間が妙にそわそわしていて、貧乏揺すりなんかをしていたら、説得力に欠ける。かといって足を組んでいるのもどうかとは思うが。とにかくも、さんざん本人がいる目の前で占いの話をしてしまって、キマリの悪い気持ちを覚えたことは確かではあり、占いをしないと、この場が収まらないと思って、占いをすることにしたのだった。もちろん聞く内容は恋愛について、これしかないと俺は思った。
1ドリンクは結局占いを受ける側の人間のもので、俺はアーリータイムスのロックを飲みながら山ちゃんの前に座っていた。山ちゃんが生業としているのはタロット占いであり、入念にシャッフルした山の中から、ランダムに一枚のカードを取り出した。

あなたは四月三日生まれなのですね。このカードは大まかなあなたの運勢を占うカードであります。あなたは生年月日からすると、完全星に生まれついた人間なのです。ま、一言でいってしまえば、秘密主義な人間であるわけです。何事も完全になるまでは口に出さない、完全でないと気が済まないので、そうなってしまうわけであります。このカードはタロットカードの最後のカードであり、完成といったことを表しております。パズルのピースがはまるように、物事が完結していくんですね。あなたの星から考えて、きっと恐らくは完全な形で物事が完結していくでしょう。
山ちゃんは再び残ったカードをシャッフルして、11枚のカードを机に並べた。

はぁはぁ、ふーむふーむ、ひっひっ、このカード(手前真ん中)とこのカード(真ん中左から2番目)の組み合わせは、あなたは近いうちに恋人が見つかることを意味しておりますな。そこでこのpast liveのカード(真ん中一番左)を見てください、これはね、前世との深いつながりを意味するんですよ、恐らくは前世で夫婦であったとか、そういう前世で深い仲にあった人と恋に落ちるんでしょうなぁ。
このadventureってカード(真ん中一番右)は一体なんですか?
これはね、そのまんま冒険を意味するカードでね、もしかしてあなたは、普段仲の良い人としかつるまないんじゃないかね?ほら当たった、図星だろう?そこでね、このカードは、普段のコミュニティを抜け出して、新しい世界に踏み込んでいくことで、恋人をゲットできることを意味しているんですよ。趣味は?え、映画鑑賞ですか?はっはぁ~ふっふっふぅ、それなら、あれですな、映画の意見を交換するとか、そういったサークルに飛び込んでゆくことですな、あなたの新しい出会いはまさにそこにあるんじゃないかとタロットは暗示しているんですよ!
とまぁ山ちゃんの占いはこんな感じであった。「普段仲の良い人としかつるまない」と言われて確かに図星だったが、そもそも大体の人が普段仲の良い人とつるむのだろうし、よくつるむからこそ仲がいいと言えるのであり、それは悪いことではないと思った。ちなみに聞いた話によると、山ちゃんのタロット占いはインド仏教的な考えを取り入れているらしい。西洋のタロットとは違うということを力説していたのだけど、そもそも西洋のタロット占いも良く知らないので、インド仏教を取り入れてようが、北九州産の仏教を取り入れていようが自分には違いがよく分からないのが、歯がゆいと思った。
そういえば、焼きカレーに北九州産の食材に、インド仏教を取り入れたタロットと、よく分からない組み合わせの店ではあったのだけど、それ以上に違和感を覚えていたのが、流れている音楽が総じてEARTH WIND & FIREのSEPTEMBERとかLET'S GROOVEといったブチ上げのディスコミュージックであったことである。とにかく踊り出したくなる最高な音楽であることは認めるのだが、それは、北九州の食材とも焼きカレーともマッチしないし、ましてはインド仏教を取り入れたタロット占いの醸し出すスピリチュアルなイメージとはいちばん遠いところにある。
まずはじめに断っておきたいのだが、俺は占いについて話をしたことがほとんどない。なぜなら、占いというものを基本的に信じていないので、占いを受けたことがないからであり、受けたことがないから、話をすることができないからだ。しかし、そのG's Barにおいては、自然と占いの話をしてしまうのだった。なにも店に占い師がよく使うような水晶玉が置いてあるとか、そういうわけではない。なぜなら、その店は占いを売っていたからである。

2000円で占い師"山ちゃん"が占ってくれるとのことだった。"山ちゃん"というネーミングもどうなんだと思った。俺が知っている占い師といえば細木数子くらいのものだが、ただでさえ細木数子に占ってほしくなんかないのに、もし細木数子が"かずちゃん"というネーミングだったらどうなんだ。

どうなんだと言われてもあれなのだが、やっぱり"かずちゃん"には占ってほしくないよ、"ちゃん"っていうのがちゃらちゃらしてるしさ、当たるとか当たらないとか以前にさ、ちょっときついっていうかさ、かずちゃんていうのはさ、みたいなことを考える人が大半なのではないだろうか。しかしこの店が売っているのはかずちゃんではなくて、山ちゃんなのである。俺たちは山ちゃんについて話をしていた。
すごい興味はあるんだけどさ、でもこの占い師山ちゃんってのはどこにいるんだろう?
きっとさ、この新宿三丁目の辺りの居酒屋一帯と契約している占い師なんじゃねーの?
新宿にそんな店ってあったっけ?2000円で占い売ってるなんてメニュー置いてあるとこ他に?でもそんなんだったら仮に占い頼んでも、時間かかったりするんじゃないの。山ちゃん一人で大変じゃん。
でさ、なかなか来なくて、店員にまだこねーのかよ、なんて言うと、店員も面倒くさくなってきて、今さっき出ましたなんて嘘いって、そこから30分くらい待たされるの。
蕎麦屋の出前じゃねーんだよ、って。
でも、この1ドリンク付きって気になるよね。これって、頼んだ人が飲めるのかな。それとも山ちゃんの1ドリンク?
それってキャバクラと同じようなシステムじゃん。占いしてる途中に酒が切れて、もう一杯だけ、テキーラが飲めれば、もっとあんたの将来がはっきりと見えるのだが…、うーむ、もう一杯頼んでくれれば、なんて言ってきたりして。
あんまり覚えてないのだけど、そんなことを話していて、ある時に、山ちゃんがまさに俺の真後ろに座っていることに、俺の正面に座っている友人が気が付いたのだった。後ろを振りむくと山ちゃんは座っていた。しかもやる気がなさそうに足を組んでボケ―っとしていたのだった。占い師がどう座っているべきなのかは俺は良く知らないが、足を組んでいるのはちょっとなぁと考えていた。まぁ貧乏揺すりをしている占い師よりは足を組んでいる占い師の方がマシなのは確かではある。占いということは、自信を持って行われなくてはならない。なぜなら人は占いを信じて、実際に行動に移すのであり、もしその宣託を行う人間が妙にそわそわしていて、貧乏揺すりなんかをしていたら、説得力に欠ける。かといって足を組んでいるのもどうかとは思うが。とにかくも、さんざん本人がいる目の前で占いの話をしてしまって、キマリの悪い気持ちを覚えたことは確かではあり、占いをしないと、この場が収まらないと思って、占いをすることにしたのだった。もちろん聞く内容は恋愛について、これしかないと俺は思った。
1ドリンクは結局占いを受ける側の人間のもので、俺はアーリータイムスのロックを飲みながら山ちゃんの前に座っていた。山ちゃんが生業としているのはタロット占いであり、入念にシャッフルした山の中から、ランダムに一枚のカードを取り出した。

あなたは四月三日生まれなのですね。このカードは大まかなあなたの運勢を占うカードであります。あなたは生年月日からすると、完全星に生まれついた人間なのです。ま、一言でいってしまえば、秘密主義な人間であるわけです。何事も完全になるまでは口に出さない、完全でないと気が済まないので、そうなってしまうわけであります。このカードはタロットカードの最後のカードであり、完成といったことを表しております。パズルのピースがはまるように、物事が完結していくんですね。あなたの星から考えて、きっと恐らくは完全な形で物事が完結していくでしょう。
山ちゃんは再び残ったカードをシャッフルして、11枚のカードを机に並べた。

はぁはぁ、ふーむふーむ、ひっひっ、このカード(手前真ん中)とこのカード(真ん中左から2番目)の組み合わせは、あなたは近いうちに恋人が見つかることを意味しておりますな。そこでこのpast liveのカード(真ん中一番左)を見てください、これはね、前世との深いつながりを意味するんですよ、恐らくは前世で夫婦であったとか、そういう前世で深い仲にあった人と恋に落ちるんでしょうなぁ。
このadventureってカード(真ん中一番右)は一体なんですか?
これはね、そのまんま冒険を意味するカードでね、もしかしてあなたは、普段仲の良い人としかつるまないんじゃないかね?ほら当たった、図星だろう?そこでね、このカードは、普段のコミュニティを抜け出して、新しい世界に踏み込んでいくことで、恋人をゲットできることを意味しているんですよ。趣味は?え、映画鑑賞ですか?はっはぁ~ふっふっふぅ、それなら、あれですな、映画の意見を交換するとか、そういったサークルに飛び込んでゆくことですな、あなたの新しい出会いはまさにそこにあるんじゃないかとタロットは暗示しているんですよ!
とまぁ山ちゃんの占いはこんな感じであった。「普段仲の良い人としかつるまない」と言われて確かに図星だったが、そもそも大体の人が普段仲の良い人とつるむのだろうし、よくつるむからこそ仲がいいと言えるのであり、それは悪いことではないと思った。ちなみに聞いた話によると、山ちゃんのタロット占いはインド仏教的な考えを取り入れているらしい。西洋のタロットとは違うということを力説していたのだけど、そもそも西洋のタロット占いも良く知らないので、インド仏教を取り入れてようが、北九州産の仏教を取り入れていようが自分には違いがよく分からないのが、歯がゆいと思った。
そういえば、焼きカレーに北九州産の食材に、インド仏教を取り入れたタロットと、よく分からない組み合わせの店ではあったのだけど、それ以上に違和感を覚えていたのが、流れている音楽が総じてEARTH WIND & FIREのSEPTEMBERとかLET'S GROOVEといったブチ上げのディスコミュージックであったことである。とにかく踊り出したくなる最高な音楽であることは認めるのだが、それは、北九州の食材とも焼きカレーともマッチしないし、ましてはインド仏教を取り入れたタロット占いの醸し出すスピリチュアルなイメージとはいちばん遠いところにある。