暗闇検校の埼玉県の城館跡

このブログは、主に、私が1980年代に探訪した中近世城館跡について、当時の写真を交えながらお話しするブログです。

こいしつ 肥塚氏館跡(熊谷市)

2018-02-26 13:30:08 | 城館跡探訪
過去行ったことのある城館跡について、今さらながらしつこく再訪するということでやっております、

「こいしつ」ですが、今回は肥塚氏館跡について書いてみました。

調査は、2018.02.08に行いました。

こいしつは、従来、遺構がない、または所在地がつまびらかではない城館跡については、立地する地域の自然条件等を

積極的に読み込んでいくことで、城館跡の再検討をしようとしております。



肥塚氏館跡は、利根川氾濫原にできた、細長い中州状ないしは半島状の自然堤防上にあります。

この自然堤防は、カメラのキタムラ熊谷店附近を東端とし、妻沼街道・報恩寺付近まで東西に400m近くの長さがあります。


写真は、1980年代初期頃の肥塚氏館跡があったとされる地域です。『埼玉の館城跡』記載のデータに基づいて、

記載された民家前を直接的撮影したものです。



多くの城郭ファンが肥塚氏館のレポートを出していますが、何れも、直接的に遺構を確認できたものはなく、

肥塚公民館裏の竹やぶに遺構があるのではないかと指摘するにとどめております。


以上のような調査者の意見を踏まえて、今回は自然地形の確認を重視し、関連遺跡の確認を通じて、

上述の自然堤防全体を肥塚氏館域として、調査する方針を立てました。


肥塚氏館のある自然堤防をカメラのキタムラ前の通り=東側から入ります。



館跡とは関係がありませんが、いきなり、特徴のある水路の合流点がありました。

非常に面白い施設だと思います。

さて、自然堤防の東端には熊野神社、辛神社があります。







辛神社・・・これは珍しい名前の神社だと思います。千葉県の茂原市に同じ名前の神社があるようですが、

関係は不明です。茂原の辛神社の名の由来は、創建の宝亀二年が辛亥であったことにあるそうで、この要領ならば、

どこでも辛神社は成立します。



熊野神社も合祀されています。

元の道に戻って、西へ直進すると、肥塚氏供養塔のある成就院墓所があります。

肥塚氏の供養塔はこの墓所の脇にある道を入って奥にあります。







板石塔婆が2基あります。







昔に比べて随分整備が進みりっぱになったという印象です。

私が訪ねてきた頃は、墓所の隅に申し訳なさそうに建っていました。

さて、肥塚氏に所縁のある成就院にたどり着きました。





昔は石垣のみのあけっぴろげな雰囲気の寺で、本堂ももっと古かった気がしました。

成就院の境内には、付近の古墳より出土した石棺と、その古墳上に祀られていた祠が安置されています。








さて、成就院周辺の地形を確認します。



上の写真は門前の様子を写したものです。寺の周辺は宅地開発が進んでいますが、もとは低湿地で、

成就院は自然堤防上の南側ギリギリの位置に建てられていたことがわかります。



写真左側に宅地がありますが、この住宅の南側はさらに低い低地です。









ここがすごいと思うのは、自然堤防直下を流れる水路のわきに、溢水防止用の土嚢が積まれている点で、

コンビニの駐車場側は相当な低地なのです。

中世のころ、この自然堤防が地域において特異な意味を持っていたことが想像できます。

中世武士の所領経営にとって、コントロール可能な水が非常に重要であったことは、久下氏、熊谷氏の境界線論争のあった

熊久地区の項でも述べた通りです。ここでも、周囲の豊富な水を利用した農業生産が行われていたことは想像に

難くありません。






成就院の近くに、肥塚伊奈利神社があります。この神社は神社合祀の過程で創建された新しいものであり、

肥塚氏と直接の関係は見出しがたいです。


さて、自然堤防の南側をよく確認したので、今度は館跡の周辺の調査に入ります。

遺構の確認の出発点は、結局、成就院真裏のここになります。




祠がありました。肥塚氏に所縁があるものかと思い確認しましたが・・。











あるいは、肥塚伊奈利神社は、元々、ここにあったのかもしれません。





路地を歩き回りました。


遺構状の土地の高まりや溝を探していると、ここで、思わぬものを発見いたしました。

基点としていた民家裏に大きな土塁があったのです。これは本当にたまげました。

住宅開発によって木々が取り払われ、丸見え状態になっていたのです。








実際、肥塚氏館跡の遺構は、未だ個人宅内に残存しているという推測はかねてからあったわけですが、

やはり、本当にあったのですね。

これは思いもよらぬ成果でした。

もっと、周囲の地形について突っ込んだ調査をすればよかったと、本記事を書きながら思いました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿