―ほしいものはにんげんのし―

2017-12-30 | うた

私が死んでいても生きていても誰も気がつかない。

 

たとえば、空き家だと聞いていた家に明かりが毎日点いていたら?

恐ろしいと思うのは異常だろうか。そう、言われたんだ。

屋根に大岩でも落ちたようなものすごい音がしたんだと言ったら、

あなた霊感でもあるの?と言われた。

身の危険を感じるのは異常だろうか。それとも本当に隕石が落ちたんだ。きっと。

恐ろしいと感じる感覚が薄れてしまった。

恐れるから1秒先を生き延びられるのに。

 

武器を使わない為に武器を持つ。

不本意だが持たねばならない。1秒先を生きねばならない。

ここで生きる理由などと稚拙なことは問わない。生まれ落ちたら死ぬまで走る。

力がないので重い武器はだめだ。軽くて、長くて、先っぽに鋲でもつけて。

力がないから叩くより切り裂くほうがいいだろう。近づきたくはないが、

恐ろしいので先を想像しておく。いちばんいいのは恐ろしいものが武器の間合いに入る前に退散してくれることだが、愚かな人間共は引かないから先に切り裂かねばならない。

持ち手が軽くても、先っぽに重さを置いてもいい。力はないがその重さでもって振り回し、

狙うは頭は素人には難しいからまず脇腹。腹を叩かれればうずくまるからそこを頭にズドンと一発。

飛び散る頭など気にしない。ミミズを潰したことがあるだろう?あれと一緒だ。

大事なのは一発入ったからといって、様子を見ない。

二手三手は続けてどうぞ。足は靴に守られていて案外ダメージが少ないから

膝がしらを潰す。地面に手をついたら手を潰す。手は特に痛い。感覚能力がいちばん優れているから。

どこを潰すにしても力のない私にはとにかく難しい。

だから武器は使いたくない。しかし他者に我が命を脅かされるのはもっとも許せないので武器を持つ。

人は火すら恐れない。火炎放射器は人には役に立たない。気づいた時には黒焦げ、消失。

火も光も音も恐れない人間達。さあ、どうやって打ち勝てばよいか?

延々と考える。恐れない愚か者たちだが、一度切り裂けばたとえささくれ程度の傷でも絶叫するのだ。

大事なのはそこだ。先の一手を自分がいれる。恐れない者達を恐れさせるのだ。

 

疲れた。誰もきづかない私の生死だけれど、

こんなにも必死に毎日闘っている。辛い。自分の為だけに生きるのはしんどい。

今はただ、武器を的確に命中させることだけを考えている。

先の一手がはずれたら、そんなことは起きてはならないから。

こんな命、私しか守ってやれないから。