毒舌の日々

なかなか人前で言えないことをぶちまけます。

『極夜行前』 角幡唯介

2020-06-28 13:18:20 | 読書
『極夜行前』 角幡唯介
¥1,750+税 文藝春秋 2019/2/15発行
ISBN978-4-16-390974-5

もんのすっごく面白かった『極夜行』の前日譚。
極夜探検を描いた『極夜行』だけでも恐ろしくスリリングでドラマティックだったが、それを準備するための段階でもやはり山あり谷あり、それだけで一冊本が書けちゃうほどだったのですね。いやたしかにこれは書かなきゃ惜しいわ。

『極夜行』と『極夜行前』、二冊合わせて読むべき。

はーっ、読書の喜び、堪能した!!

『スタインウェイ戦争』 髙木裕・大山真人

2020-06-10 22:03:55 | 読書
『スタインウェイ戦争 誰が日本のピアノ音楽会をだめにしたのか』 髙木裕・大山真人
¥740+税 洋泉社(洋泉社新書y) 2004/8/21発行
ISBN4-89691-842-8

髙木裕の著作を何冊か読んで、どれもたいへん面白いので、つぎつぎ追いかけているところ。
これはライターが他にいるし、髙木裕の主観でない客観的な文章も読めるかなと思ったのだけど…。

髙木裕の主観以上に主観だった。
めっちゃ感情的なんですけど。
これが真実であるにしろそうでないにしろ、読後感はよくない。

『江戸の災害』 フレデリック・クレインス

2020-06-02 21:38:44 | 読書
『オランダ商館長が見た 江戸の災害』 フレデリック・クレインス・著 磯田道史・解説
¥960+税 講談社(講談社現代新書) 2019/12/20発行
ISBN978-4-06-518179-9

鎖国時、出島のオランダ商館では毎年商会長が新たに着任し、江戸参府するのが恒例だった。
そのタイミングで明暦の大火に出くわしてしまった商館長ワーヘナール。炎に追われて逃げ惑う。
古地図が掲載され、火の手がどう進んだか、人々がどう逃げたか、解説が分かりやすい。そうか、明暦の大火ってこんな感じだったんだ。臨場感がある。
「将軍の御殿の後ろ側の三の丸に会った、小判で覆われていたイルカのある美しい塔は見えなかった」
金のしゃちほこをイルカと呼ぶワーヘナール。なぜイルカ。

元禄地震に見舞われた直後の江戸に参府したのはタント、宝永地震についての見聞を残したのはメンシング、備前長崎地震で怯えまくったハルトヒ、京都天明の大火にはファン・レーデ…。
毎年長崎と江戸を往復してれば、そりゃ当時の日本の大方の災害にはなにかしらの形で接するよな。

皆が口をそろえて言うのは、日本人の明るさ。
火事の最中、地震のさなかはもちろん日本人も泣き叫んで逃げ惑うのだけど、小康状態でオランダ人たちが神に祈って震えているときに、日本人は面白おかしく笑い話にするのだという。災害とともに生きるしかない、笑うしかない日本人のメンタリティをオランダ人たちは驚き、感心している。

そして彼らの日記はオランダをはじめヨーロッパで読まれ、日本は災害大国として知られていたのだという。
この頃からかー。


『コンビニ外国人』 芹澤健介

2020-05-24 23:45:35 | 読書
『コンビニ外国人』 芹澤健介
¥760+税 新潮社(新潮新書) 3028/5/20発行
ISBN978-4-10-610767-2

コンビニの仕事は多岐にわたる。
正直、私はコンビニで働く自信はない。
それを母国語でない言葉を操って仕事をこなす外国人スタッフたちは、すごい。
常々感心しきりである。

そんな外国人労働者についてのルポ。
労働者及び留学生、ですね。

しかしなー。
この手の本は読めば読むほど日本の制度の不備を感じるね。
遠くない将来、日本は外国人労働者たちからそっぽ向かれるんじゃないかね。
労働力不足は分かってるのに、なんでこうかな。
ていうかね、不足してるのは労働力なんじゃなくて、「安くて使い捨てできる働き手」なんだよ。労働力自体は減少傾向といってもそこまで急カーブじゃない。それは求職人口を見てもわかる。
正社員の口を求めて未だ非正規労働に甘んじる就職氷河期世代はまだ山ほどいる。労働力はある。
人件費を安く抑えないと競争力が落ちるというのは、適正な価格じゃないのだと思う。
高い商品では客に買ってもらえないというのは、客に購買力がないからだ。その昔、フォードが従業員の給与を高くして、購買力をつければ車が売れるとしたのは正しいと思う。今の日本はごく一部の富裕者層が富を寡占して、まあまあやっていけてる中流がいて、ワーキングプアがどんどん増えている。これは外国人でも日本人でも変わらない。ついでに言うなら日本だけでなく世界中で同じ傾向が続く。

労働に対して適正な報酬が与えられれば、その結果の適正な価格の商品を購入する購買力も与えられ、結果、経済は正しく回る。理論的には。

ここで抜け駆け的に安価な労働力を採用する企業があるとバランスが崩れる。今はこの状態。これを世はグローバル化と呼ぶ。労働搾取の別名。

『紙幣は語る』 中野京子

2020-05-19 23:34:34 | 読書
『紙幣は語る』 中野京子
¥700+税 洋泉社(新書y) 2001/9/21発行
ISBN4-89691-564-X

>  住人のほぼ90%が男性という世界がある。紙幣著名人肖像ワールドだ。
>  そのいびつな世界で、男たちから選ばれた女性、 つまり男たちも一目置かざるを得なかった「偉い女性」というのは、いったいどんな女性たちだろう?(3頁 まえがき)

第一部では世界各国の肖像を紹介。羅列、という感じで説明も浅いし、紙幣の写真もないしで正直つまらん。途中で読むのやめようかなーと思った。
しかし第二部で一人一人の女性の人となりをプチ伝記ばりに説明する文章が、いきいきとして急におもしろい! 名前を聞いたこともなかったインドネシアの独立運動の英雄、誰もが知ってるクララ・シューマン、藤井棋士以来注目のマリア・モンテッソーリ、等々。短い紙幅でよくここまでうまいことまとめたな、と感心するほど。

第二部だけででいいよ、この本www。