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からっぽ
嬉しさも悲しみも知る年月の記憶の残るからっぽの瓶(上田のカリメロ)
約束はからっぽだった毎日に小さなマルをつけさせたりする(小軌みつき)
浅春に風を生みつつからつぽの終バスが夜のぬばたま運ぶ(丹羽まゆみ)
蓮まさにひらかむとする躬のうちに精いつぱいのからつぽを持つ(謎彦)
からっぽの心で母はなにを待つ老人だけの部屋の片隅(しゃっくり)
無防備でいてもいいよね からっぽのままのこころじゃ泣くこともない(暮夜 宴)
携えるもの残るもの何もないからっぽの手に歌だけ持って(愛観)
夕間暮れからっぽ公園ちぎれ雲 影まで夜に帰り始める(ぱぴこ)
だからもうからっぽだって夏空に力の限り打てばかがやく(ひぐらしひなつ)
肺の中からっぽになるまで言ってみろ お前が生きたいと思う理由を(KARI-RING)
からっぽのドロップス缶何度でも振り続けてるような さよなら(田丸まひる)
子らがまた巣立ちてあとのからっぽの部屋に残れるポスターの跡...(堀 はんな)
からっぽでいっぱいになるごみ袋 軽い軽くて泣きそうだ もう(みち。)
からつぽであるここちよさ壜のごとひかりを充たすひかりを反す(萱野芙蓉)
げんこつを吐き出すようにからっぽになるまで泣いて泣いて果てたい(睡蓮。)
からっぽの胃に泡盛をつめこんで父の孤独に近づいてみる(舞姫)
くだらない意地はさておきからっぽの私を埋める恋をしようか (ベティ)
からっぽはからっぽなりにかんがえたこたえをいっしょうけんめいに言う(癒々)
そしてようやくからっぽはやってくるだろう つぎつぎ孵るものの背後に(村上きわみ)
からっぱにすればアタリが見えるかも 人生の泡無理して飲み干す(折口弘)
からっぽは切なかったかそうなんかと細長い箸持ち母を拾う(和良珠子)
からっぽになったわたしのぬけがらが空を塞いだ自意識に舞う(内田誠)
からっぽのうつわに水をそそぐやうにわれを抱きたる肌のしめりし(黄菜子)
砂時計見つめています からっぽの部分に過去が満ちてゆきます(cocoa)
からっぽの上り列車に乗り込んでからっぽの部屋へ帰るのでしょう(なまねこ)
からっぽのドロップ缶をのぞきこみ旅の終わりのような一日(ハル)
からっぽにしたはずなのにわたしにはまだ君がいて前が見えない (あいっち)
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噛
一枚も二枚も噛めど三枚は噛まば奈落ぞブッシュの戦に(髭彦)
禁煙とその挫折との繰返し今日は朝からガム噛みていぬ(西中眞二郎)
するめなど炙り噛みいるふたりなりただ黙々とテレビを見つつ(原田 町)
校庭の角で唇噛みしめる天下無敵の鉄棒少女(野良ゆうき)
なにくわぬ顔で嘘つくその口を 噛んでみたいと思えてならん (みゆ)
噛むことに よって味わう やりかたに 異論あるのは 飴玉だろう(改行やたら好きな人)
噛みきれず飲み込んだけどあの言葉まだ異物です心の隅で(まつしま)
噛み終えたガムを譜面の一枚に包んで放り投げる日曜(佐原みつる)
するめ噛む生まれながらの歯は健在七十五歳の酒うまし春(方舟)
噛み痕をあかく残した手の甲でつめたい頬を拭ってくれた(ひぐらしひなつ)
噛みしめるようなさみしさいつの日もやさしくふるだけの花のなか(飯田篤史)
あと五分経ったら帰ろう 味のないガムを噛みつつ携帯にぎる(凛)
噛み合わぬハナシが面倒くさくなり四捨五入してOKとする(Ja)
ふたりして一生懸命ガム噛んで 風船作って旅に出ようか(村上はじめ)
孫のことなれば意見の噛みあひてデジタルビデオの品定めする(中村うさこ)
日に三回キシリトール噛みながら心でくちゃくちゃ人噛み殺す(夢眠)
爪を噛む癖ある児(こ)の言ふ「ママおらん」ほつれ下げ髪結ひ直しやる(yurury**)
噛みつくがごとき口調で反発す 十二歳の心の深き淵見る...(湯山昌樹)
磨り減つてゐるのでせうね 噛みあはぬ歯車だからゆつくり止めた(村本希理子)
夜叉だとか母神ではなく親なんて所詮は噛ませ犬に過ぎない(和良珠子)
園服の袖噛みながら参観にまだ来ぬ母を探す眼のあり(内田かおり)
餓え死んだ同胞の肉噛み千切る仔犬を見たり途上国にて(橋都まこと)
きみの吐くことばにわたし噛みつかれ 傷ついてない 泣いてない。ふり。(長沼直子)
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クリーム
夕暮れの街で五人の助教授がアイスクリームを必死に食べてる(aruka)
脳味噌に生クリームをぶちこんでとろとろすぎる恋を頬張る(ハナ)
デザートのアイスクリームを食べ終えて白いベールの花嫁は笑む(ドール)
シュークリームは靴墨の意と友言いぬ高校時代の晴れし日の午後(西中眞二郎)
肌に塗るひとつの束縛真っ白な世界に指を埋めたしクリーム(紫女)
ざらついた心を見透かされそうであちこちに塗るニベアクリーム(暮夜 宴)
体液と思えば更に耀(かがよ)いて生クリームの角(つの)の脆さよ(水須ゆき子)
誰とでもなめらかになるクリームを持ったあなたを羨んでいた(丘村トモエ)
「君だってころんだじゃない」無事だったソフトクリームとおくまで雪(おとくにすぎな)
君と住む部屋のイメージ決めかねてクリーム色のカーテンを買う(ぱぴこ)
カスタードクリーム色の月は満ち 今日はこちらにお泊まりします(西宮えり)
溜息のひとつと半分ほど取ってハンドクリーム腕まで伸ばす(佐原みつる)
計画は未遂に終わりはみだしたクリーム避けて雑踏が過ぐ(ひぐらしひなつ)
銃声はコンビにまでは届かない。クリームパンは平和の味だ。(みち。)
埋めるべく空白もなく本日はクリームパンのごとき一日(斉藤そよ)
ちょんちょんとクリーム付ける指先を風呂上りの手が並んで待ちぬ...(堀 はんな)
ほほにつく クリーム拭かずに ペロペロと そんなペコちゃん 実は還暦(よっきゅん)
かさかさの手にクリームをぬるように君が必要しみこんで来て(睡蓮。)
君ったらおもいがけなく笑いだすシュークリームが破れるように(飛鳥川いるか)
クリームを乗っけたような雲ひとつ青空に立つ鉄塔の上(林本ひろみ)
無理矢理にホイップされたピーナッツクリームなのね ともかく笑ふ(村本希理子)
果てるまで見届けてやる アイスクリーム道に落としたこどもみたいに(和良珠子)
そうだね、クリームがかったやわらかなバリアをつぶしたんだ、自立は(いづみ)
傷つけた償いもせず傷ついたものも癒せずクリームをぬる(わたつみいさな。)
ぐずぐずと溶けてしまっていいのかと あなたを前にクリーム吠える(池田潤)
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