ねこのにくきゅう

題詠100首と短歌のページ

椅子 桜

2006-08-24 | 拉致
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  椅子 



われの身とわが負荷を載せ耐へきれず壊れたり朱のまぼろしの椅子(船坂圭之介)

慣れていたあの椅子がないこの部屋の赤い光が俺を拒否する(新井蜜)

春だねと言いつつ客の入り来ぬ床屋の椅子にまどろみおれば(西中眞二郎)

ゆり椅子を揺らせる陽炎ゆれながら千まで数えるおお祖母の声(行方祐美)

屋上にぼくのロンリープラネタリウムもうきみは亡き白い丸椅子(小軌みつき)

椅子ひとつ運び出されし教室にもどれぬ心が闇に座す昼(ほにゃらか)

みちばたに座る若者立ち上がれ地球はきみの椅子じゃないから(かっぱ)

公園の捨てられた椅子に陽はこぼれひかりの子どもの遊び場となる(文月万里)

赤ライト無言でみつめひたすらに生還祈る黒い長椅子(翔子) 

放課後にお前の椅子を蹴り倒す鉄の匂いに沈む復讐(ぱぴこ)

亡くなった祖母の代わりに出勤を見守ってくれる車椅子の青(みにごん)

くちびるがふと近づいて来てそして  待合室の椅子が軋んだ(花夢)

足のなき椅子が座椅子となるやうに軽くいふなよ頑張れなんて(みの虫)

人魚らは虹の先まで行けるよう回転椅子に正しく座る(西宮えり)

駅前で空気椅子してまだ5分 早く来てくれ(いろんな意味で)(夢麿)

木の香り漂わせたままあてがわれる椅子 私はここにいてもいいんだ(KARI-RING)

彼女の椅子はいま校舎の脇、供えられた花束と消える、(kitten)

足長い椅子にまたがり背もたれを抱きしめたまま朝を迎える(睡蓮。)

ダイニングの椅子ひとつ持ち屋上の真ん中に置いて今日は戦争(ざぼん)

窓のないカウンセリング室の椅子で今日も誰かが森を見ている(そばえ)

ぱたぱたと折り畳まれるパイプ椅子みんなだれかの夢でできてる(なかはられいこ)

野に置けば野の椅子として待つでしょう わたしにどうぞおすわりなさい(村上きわみ)

朽ち果ててゐるのだ椅子は唐草に覆はれもはや人をゆるさず(村本希理子)

ため息を吐き出しながら沈み込む椅子とひとつになりそうな夜(いちぼん)

素直にはそう簡単になれなくて椅子の下からのぞいてるねこ(長沼直子)

その椅子にわたくしBを座らせてわたくしAはしばらく夢を(星川郁乃)

このまま座り続けていては体ごと椅子のかたちに滅びてしまふ(cocoa)

病院の廊下で一人車椅子に座りて雲を見ている老女...(智理北杜)

あのひとが選んだ椅子や壁の絵に目撃させるためのセックス(しょうがきえりこ)

椅子の背を蹴ってサヨナラ言うような一瞬先見て言訳を聴く(湖雨)


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  桜



うら若きジーパンの娘(こ)が大胡座(おおあぐら)かいて桜の樹の下にあり(西中眞二郎)

さくらんぼふくめば太宰の苦わらいうつし世にまた桜桃忌来る(小軌みつき)

逢ひたくて逢へざる人を想ふとき夜の桜はかうも哀しく(ほにゃらか)

生薬としての桜皮(あうひ)は収斂や鎮咳などに効ありと云ふ(謎彦)

桜など関係なくて薬局でバンドエイドを20枚買う(ハナ)

仇桜 無常の裸形を知ろ示し 惰眠の衆生を喚起せしめん(Yosh)

吹雪く風 桜ちるひら 綺麗やわ 花びら早う お猪口においで(改行やたら好きな人)

梅雨空に届いた知らせ不明死や兄は桜の頃に出掛けし(しゃっくり)

桜咲く隣家の下駄が飛んできて晴れだと子どもが前歯見せをり(紫女)

緋を含むつぼみ育ちし桜枝の あおいろ薄き空に映ゆるも(鈴雨)

僕達は何を卒業するんだろう桜はいまだつぼみのままで(史之春風)

桜待つはやる発情プレピンク梅の可憐と桃の挑発(田崎うに)

愛されることにためらったりしない桜ひとりで見ない ぜったい(田丸まひる)

もうべつにどうでもいいやと顔をあげ見たこともない桜、発見。(みち。)

染井野に降り積もりゆく花びらは死者を慰む桜色の雪(濱屋桔梗)

樹木にはついになれずにぼくたちは桜にしろい喉をさらして(村上きわみ)

春はやき胸に桜樹のひろがりて枝の先までともるともしび(村本希理子)

どうしても消せない誰かの悲しみをそっと受けとり桜が散った(内田誠)

見上げるだろうちいさな骨になるころは桜はなびらはらはらと散れ(和良珠子)

一年中カメラの前で咲き誇る桜みたいな林家パー子(びっきい)

寿ぎにほわっとひらく桜茶をめでて味あう倭の国(酒童子)

満開の桜の下(もと)に集い来て匂いたつなり黄泉のうたびと(小籠良夜)

白無垢を愛でて華やぐ桜湯のほのかに香る親族の部屋(落合朱美)

はらはらと散る桜花浴びるよう 貴方の心を眺めてました(やな)

夜桜もケーキ屋もない坂道で甘みを感じ上を向く 月(瀧口康嗣)

(みんなみんな桜の道を行ったきり…)獄舎の闇に月を産むひと(岩井聡)

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