ねこのにくきゅう

題詠100首と短歌のページ

揺 親 

2006-08-23 | 拉致
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  揺


揺るぎない自信を持って高く跳べ靴底の土振りとばすほど(佐田やよい)

5円玉を揺らさばおまへは眠くなり夜泣きの理由(わけ)を語りたくなる(ほにゃらか)

灰皿に丸め置かれる便箋のひかりの中に揺れるさよなら(佐原みつる)

三月の黄色い風にまだ咲かぬ桜の枝が揺れている窓(遠山那由)

窓際のパキラが緑の葉を揺らし生きたいと云うしにたい朝に(なかた有希)

さみしさを薄めるために落ちてきた揺れている君のまえがみの汗(みち。)

揺れたくて揺れている水 ちぢまつて 表面張力たのしんでいる(斉藤そよ)

きらきらと金魚の尾ひれ どろどろの柿の匂いをさせつつ揺れる(西宮えり)

誰も居ぬ春の公園夕風が乗りてブランコかすかに揺らす(まゆねこ)

振動が激しくなってすっと逝く洗濯機って揺れて生きてた(ワンコ山田)

園庭のふらここに高く揺るる子の瞳に映る雲とたんぽぽ(宮沢耳)

震度計としての悲壮な決意みせ蛍光灯の紐は揺れてる(沼尻つた子)

もう誰も遊びにこない公園で思い出なぞり揺れるブランコ(如月綾)



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  親 



夭折の子を持つ親のかなしみを湛へて届く賀状もありて(髭彦)

幼子はすみれ摘む手に迷い来し 蟻の親子をじっと見ており(はこべ)

からだじゅういくつも穴があいている奇妙な親子が散歩している(aruka)

春まだき日溜りに座し死にし子の毛づくろひする親猿の背(せな)(丹羽まゆみ)

子を抱く温みがときに恋しくて親の都合で抱きしめてをり(ほにゃらか)

ひどく甘いココアを飲めば口元に泣きだす前の親指がある(佐原みつる)

からからのふうせんかずらの実のなかでとっくに親をはなれてる種(おとくにすぎな)

その広き背中がいつしか折れてきて父親が逝く雪の降る朝(翔子)

寂しいと寂しくないの境界線ずうっと引かないでいる親友(田丸まひる)

親も子もつまも暮らしもないことばちりばめてある星雲がある(斉藤そよ)

性格の違いあらわなメール2通父親からと母親からの(Ja)

春ですね私の足の親指に求愛行動繰り返す亀(林本ひろみ)

背に眠る子の重たさを揺り上げてまだ年若き父親は笑む(瑞紀)

17歳。親には言えない泥濁を、ぬるい風呂場で掻き回している。(癒々)

泣く人の一切合財を包みこみ四月の海ははつか親めく(和良珠子)

のぞまれてのぞむさみしさ 啼きながら雲雀は空と親密になる(村上きわみ)

うつしみの親子一世の契り終え吾が子二十歳の骨のちひさき(黄菜子)

生まれなければよかつたと言ふA男には望まぬ子と言ふ親しかをらず (桑原憂太郎)

親となりその子となるをいにしえに契り交して我らは出会う(落合朱美)

母親としばしの別れに涙する登園の子をそつと抱きしむ(宮沢耳)

親を煮て生まれてこない子でとじる なんか残酷 親子丼って(しょうがきえりこ)

母親の小さな三面鏡の中こころの中でぽつり謝る(湖雨)


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