ねこのにくきゅう

題詠100首と短歌のページ

信号 美

2006-11-22 | 拉致

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   信号




信号の青に許されつかの間をゼブラゾーンの春風となる(丹羽まゆみ)

郊外に住みいる友は信号を踏切などと言うがおかしき(西中眞二郎)

信号の赤を背負って立つひとの永遠なんて5時間でした(ハナ)

危険でも赤信号を突っ切って追いかけるほど君が欲しくて(ふしょー)

君らしくないことばかり増えてゆく信号待ちのあいだの口論(五十嵐きよみ)

持ち上げるとやっと手になるわたくしの信号はまだ点滅中の(水須ゆき子)

きみが今血を流したりまばたきをしたりしながら送る信号(西宮えり)

うなだれて横断歩道を引き返す信号の青を信じられずに(小原英滋)

信号が滲んで見える雨の日の草をふるわすようなくちづけ(ひぐらしひなつ)

着陸の機内にやがて映り出て手旗信号おもむろに招く(中村うさこ)

信号の点滅に息をととのえてコンバースには一対の星(村上きわみ)

点滅を繰り返してゐる信号の朝のひかりの中の孤独が(村本希理子)

雨降りの似合う橋なり信号の赤のことさらぼんやりとして(あいっち)


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しば漬は茄子のむらさきしんなりと今宵美し伊万里のうへに(春畑 茜)

美しく泣けるわけない美しく笑うことさえ 葉桜を待つ(ハナ)

美しい誤解の上に成り立った過去・今・未来のすべての恋は(五十嵐きよみ)

醜さを撮るため今日も人を撮る戦争はもう美しいから(本原隆)

さみしくて美しすぎるおもいでをもうこなごなにしてあげるから(飯田篤史)

冬の灯を消さうとするととめどなく美しく降るあのころの雪(斉藤そよ)

美しき日日も翳みて八十路なる義母(はは)は狂女のうすき眉ひく(みずき)

賛美歌をうたえば天使に会えるって信じてたのよ子どもの頃は (あいっち)

ああこんな美しい日に豚まんの底の薄紙はがしあぐねて(大辻隆弘)

美ら海になんくるないさと囁かれまた伏せておく青すぎる夏(星川郁乃)

美しき言葉遣いのひとに遇いしばし余韻に身をゆだねおり(文月万里)


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スカート 雨

2006-11-11 | 拉致

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  スカート




スカートにかくれんぼする子の背(せな)をそつと押し出す 桜の中へ(ほにゃらか)

スカートがゆれるやさしくたよりなくあなたのはるのかぜをまとって(飯田篤史)

ひらりひらり スカート脱いでジーンズに着替えるように 着替えられたら(素人屋)

回るたび少し遅れてついてくる青いスカートしたむきに咲く(秋野道子)

なせばなると信じてゐましたスカートの折り目正しき小娘でした(飛鳥川いるか)

長くても短すぎてもダメなのだ助手席すわるスカートの丈(ふふふふふふふ)

くりかえし君にしたしむ スカートをれんげの上にわんとかぶせて(村上きわみ)


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   雨





日照雨(そばえ)とはひかりの走り春先のひとり遊びに飽きたその頃(行方祐美)

ぬかるみを踏む足裏に春のこゑ 雨はやさしく大地やしなふ(丹羽まゆみ)

ワイパーは私を裏切らない今夜止まない雨を蹴散らしに行く(ハナ)

降り落ちる雨の匂いを吸いこんで春との距離を確かめている(佐田やよい)

死にたての匂いがすると猫の目が膨らむ そうね、雨になるわね(水須ゆき子)

今日、ひとつ嘘をつきます 川沿いのコーヒーショップはうっすらと雨(花夢)

(どれくらい ねえ、黙ってる) 少しだけずれた雨音聴いている夜 (素人屋)

花びらを空へ空へと開きゆく白蓮すこしうつむけば 雨(みあ)

「食べなよ」とお皿に乗せた太陽にケチャップの雨かけて言うきみ(ざぼん)

今だって全速力で雨のなか駆け抜けられると信じているはず(富田林薫)

こいびとを雨にあずけておわかれのれんしゅうをする らなうよさはで(村上きわみ)

虹となる場所を探している雨が僕らを置いて夏を急いだ(内田誠)

すれ違う君と僕との関係が雨と虹との様であればと(折口弘)

朽ち樋のような子どもの死のかたち外廊下だけ雨が止まない(岩井聡)

霧雨に薄れる坂の苦しみがじっとり肌にしがみついてく(帯一 鐘信)

ざんざんとキューピッドの矢が降り注ぐ大雨の日に出逢ったのです(遠藤しなもん)

心には時効などなく冬の雨降れば会いたくなるひとがいる(あいっち)

しかも雨ならばもうだうしやうもなく昨日の卵を抱いてゐたのだ(大辻隆弘)

傘を持つ人のいない町でしたからっぽの空に雨雲はなく(ゆづ)

海に降る雨を見たくて歌ふうた けふは水の日あしたは木の日(春村蓬)


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せせらぎ 医

2006-11-03 | 拉致


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  せせらぎ


逆光に釣り上げられて束の間をせせらぎの上(へ)に魚が歪めり(春畑 茜)

ゆるされて今流れ出す雪解けの海へと向かうせせらぎを聞く(ドール)

わさび田へ続く水辺のせせらぎをたゆたう草に心憩いて(佐田やよい)

せせらぎの中にあっては蟹・魚 生まれ死んでく流されながら(島田久輔)

先生の声もノートを取る音もせせらぎと化す春の教室(ぱぴこ)

春色に爪染めて今日せせらぎにらららと歌えばるるると流る(黄菜子)

色紙で作る紫陽花さみしがる人はせせらぎでさえ溺れる(和良珠子)


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 医



中庭の金魚の池がまず暮れて鈴木小児科医院しずまる(水須ゆき子)

家族以外馴れないウサギを獣医師に見せれば顔をそっと背ける(新野みどり)

深海の魚は動かず 真夜中の医局の隅に浮くあばら骨(ひぐらしひなつ)

それだけを覚えていようと見つめてた やたらと白い医務室の壁(癒々)

峠ふたつ越えし町より群青の影つれてくる馬医とその妻(村上きわみ)

医務室のベットで君はまごころを抱えるように眠り続ける(内田誠)

水は澄む 外科医の赤いくちびるがひとの運命を軽く告げても(和良珠子)

延命を望まぬ祖母を正しいとうなづく医者がヒトに見えた日(わたつみいさな。)

分類上医薬品にもなれぬまま神の名をもつ薬用ミューズ (青山みのり)

脈をとる医師の指先感じつつまぶたの裏の夕焼けを見る(春村蓬)


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歌集

2006-11-02 | 題詠100首
もう投稿は止めようと諦めたマラソン
でも締め切りが近づいてきたら、やっぱり走ってしまった
締め切りの日、歌の内容は置いておいて、完走出来たことが素直に嬉しかった
そして、マラソンの終了と同時に発表された歌集出版の事
ん~…。ん~…。「自薦」と言うことがひっかかる
自薦。自分でこれは!って自信を持って提出出来るのが見当たらない
もう何人か参加される書き込みをされているけど さて、どうしよう…
自分が作り出した物が形になって残るって素敵だろうな
でも、こんな歌、一緒に掲載させてもらっても良いのだろうか
みなさんはどうやって自薦されるんだろう
う~ん…。

完走報告(小太郎)

2006-11-01 | 題詠100首
締め切り間近で先ほどようやく完走いたしました
素晴らしい場所をくださった五十嵐さま
素晴らしい歌に触れさせてくださったみなさま
本当にありがとうございました。







追記として

素敵だと思った方々のお歌の言葉を、
気づかぬ間に使ってしまった歌が、多々あった事を
ここに深くお詫びいたします。

            
               小太郎