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スカート
スカートにかくれんぼする子の背(せな)をそつと押し出す 桜の中へ(ほにゃらか)
スカートがゆれるやさしくたよりなくあなたのはるのかぜをまとって(飯田篤史)
ひらりひらり スカート脱いでジーンズに着替えるように 着替えられたら(素人屋)
回るたび少し遅れてついてくる青いスカートしたむきに咲く(秋野道子)
なせばなると信じてゐましたスカートの折り目正しき小娘でした(飛鳥川いるか)
長くても短すぎてもダメなのだ助手席すわるスカートの丈(ふふふふふふふ)
くりかえし君にしたしむ スカートをれんげの上にわんとかぶせて(村上きわみ)
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雨
日照雨(そばえ)とはひかりの走り春先のひとり遊びに飽きたその頃(行方祐美)
ぬかるみを踏む足裏に春のこゑ 雨はやさしく大地やしなふ(丹羽まゆみ)
ワイパーは私を裏切らない今夜止まない雨を蹴散らしに行く(ハナ)
降り落ちる雨の匂いを吸いこんで春との距離を確かめている(佐田やよい)
死にたての匂いがすると猫の目が膨らむ そうね、雨になるわね(水須ゆき子)
今日、ひとつ嘘をつきます 川沿いのコーヒーショップはうっすらと雨(花夢)
(どれくらい ねえ、黙ってる) 少しだけずれた雨音聴いている夜 (素人屋)
花びらを空へ空へと開きゆく白蓮すこしうつむけば 雨(みあ)
「食べなよ」とお皿に乗せた太陽にケチャップの雨かけて言うきみ(ざぼん)
今だって全速力で雨のなか駆け抜けられると信じているはず(富田林薫)
こいびとを雨にあずけておわかれのれんしゅうをする らなうよさはで(村上きわみ)
虹となる場所を探している雨が僕らを置いて夏を急いだ(内田誠)
すれ違う君と僕との関係が雨と虹との様であればと(折口弘)
朽ち樋のような子どもの死のかたち外廊下だけ雨が止まない(岩井聡)
霧雨に薄れる坂の苦しみがじっとり肌にしがみついてく(帯一 鐘信)
ざんざんとキューピッドの矢が降り注ぐ大雨の日に出逢ったのです(遠藤しなもん)
心には時効などなく冬の雨降れば会いたくなるひとがいる(あいっち)
しかも雨ならばもうだうしやうもなく昨日の卵を抱いてゐたのだ(大辻隆弘)
傘を持つ人のいない町でしたからっぽの空に雨雲はなく(ゆづ)
海に降る雨を見たくて歌ふうた けふは水の日あしたは木の日(春村蓬)
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