さて,これから,RFコイルを用いて,どのように回路を構成して,NMR信号を検出するかに関して説明する前に,RFコイルの基礎的なことをおさらいしておきましょう.
RFコイルは,上に示すように,タンク回路と呼ばれる,同調回路を形成することによって使用されます.
この回路を形成するRFコイルは,インダクタンス(自己誘導係数)という回路定数で特徴づけられます.
インダクタンスLは,
V=-L・dΦ/dt
という式で定義されます.ここに,Φ(ファイ)はコイルを貫く磁束,tは時間,Vは,コイルの両端に誘起される誘導起電力です.
「コイルを貫く磁束」という言葉は,一見,簡単な言葉のように思えますが,ループコイル(円形コイル)のように,始点と終点が接近している場合は,解釈しやすいのですが,ソレノイドコイルの場合には,始点と終点が離れており,どこからどこまでの磁束が含まれるのか,解釈が難しい場合もあります.
また,リード線のインダクタンス,銅板のインダクタンスなど,閉回路を形成していない場合のインダクタンスも,しばしば出てきます.
ですから,より一般的には,コイルが周囲の空間に発生する磁場HのエネルギーをUとするとき,
U=L・I^2/2
と定義されます.
すなわち,コイル(あるいは回路素子一般)のインダクタンスは,その素子に電流を単位電流を流したときに,どれだけのエネルギーが磁場のエネルギーとして空間に蓄えられるか,ということを表しています.
つまり,インダクタンスが大きいということは,一定の電流で,磁場のエネルギーをたくさん蓄えることができるということです.Houltの理論と,どこかに接点がありそうですね.
以上が,インダクタンスの物理的な定義であり解釈です.
ただ,これも分かりにくいですね.次回では,さらに,これに解説を加えていきましょう.
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