ショートなはなし

実際に体験したことをもとに、ショートな話をお聞きください。

若き母の一言

2021-01-25 14:15:10 | 日記
スーパーマーケットに
買い物に来た

いつも利用している
大手のスーパー
家から車で5分くらい

週末は結構混むけど
平日はそうでもない

3才くらいの子供が
店内を走り回っている
ときどき、奇声を発したり
している

厄介だなと思う

得てして、こういう子供の親は
注意などしない

その代わり、、、
必ずと言っていいほど
こう言う

怒られるから辞めなさい

怒られるから?、、、
誰に?

何かへン。。。

走って来た子供が
僕の足に激突する

ほら、だから、言ったじゃない
怒られるよ

怒らないよ
悲しいよ

あんたが、子供を叱れよ

そして、まず、
すみませんでした
くらい、

言ってください

悲しいよ
怒らないけど
切ないよ

おかあさん。。。



真冬の怪奇

2021-01-21 13:43:29 | 日記
とても寒い日だった

風も冷たく
凍えてしまいそうな日

ダウンを着て出かけた

改札を抜けて
ホームで電車を待っていると
半袖短パン
素足にスニーカー
の男が、近くに来た
50才くらいだろうか
もう少し、若いのかもしれない

違和感を感じたので
彼から、少し離れた

リュックを背負い
髪は肩より長く
薄い
半袖のTシャツはピチピチで
お腹は丸く膨れ上がり
裾は託し上がっていた

電車が来て
彼が乗る車両を避けて乗る

電車が動き出すと
彼は僕が乗っている
車両に移ってきた

僕の前に来て
何か叫んでいる

僕はただじっと
彼が立ち去るまで待とうとした

換気のため
少し開いていた窓に
てを翳す

ゴミを捨てたのかも知れないし
何かの呪術のようなものかも知れない

彼の膨らんだお腹が
僕の鼻先にある

恐ろしくて、身が縮こまる

大きな声をあげて
彼は、僕の前から去った
何て言っているのかはわからない

水木しげるの漫画にでてくる
妖怪に似ていて
自分がいる場所が
現実でないようにも思われた

病気なのかもしれない

だけど
病気だとしたら
身近な方がフォローして欲しい

申し訳ないけど
ちょっと、恐い


武蔵小杉の黄昏

2021-01-20 13:02:19 | 日記
予備校に通っているとき
仕送りだけでは
食べていくことができず

大学の生協でアルバイトをした

訛りがとれない僕は
家電コーナーで寡黙に働いた
学生相手に電化製品を売る仕事

アルバイトを始めて何日か経ったある日
新しい女の子がバイトに入った
世田谷にある大学の一年生

美しいひとだった
今までに見たことがないほど

学生たちが、彼女に群がる
偏差値の高いことを武器に
たくさんの男が言い寄った

僕は遠目にそれを見ていた
本当に美しいひとだった

彼女は、徐々に、
うんざりとした表情を見せるようになる
男たちのエゴは、凄まじい

彼女を初めて見た日から
数ヶ月が経ったある日
バイトへ向かう電車の中で
僕の名前を呼ぶひとがいた

彼女である

電車の音に会話を邪魔されながらも
僕らはいろいろなことを話した

キャンパスの中を
肩を並べて、話ながら歩いた
夢のような時間だった

それからも、ときどき、
電車の中で、一緒になった
美しすぎて、彼女の顔を
直視することはできなかったけれど
肩を並べて歩くことは
僕をこの上なく、幸せな気分にさせた


半年の契約だった僕は
彼女より一足先に
バイトをやめることになる

みんなに挨拶して
帰ろうとしたとき
彼女が僕の名前を呼んだ

肩を並べて
銀杏並木を歩く
青い葉が、少し黄く色づき始めていた
夕暮れどき

電車の中でも、いろいろな話をした

乗り換えの駅で
僕らは手をふり、別れを告げる
また会う約束を、僕はできずにいた
彼女のいる場所が
僕のいる場所と、あまりに
かけ離れていたからだ

地下鉄の乗り換えのため
改札口に向かおうとしたとき
彼女は僕の名前を呼んだ
彼女の方に顔を向けると
彼女は唇を噛み締めていた

何か話そうとしている

僕は彼女の言葉を待つ

あのぉ・・・
次の言葉が出てこない
僕は少しの期待を胸に
彼女の言葉を待った

やっぱり、いいんです
彼女はそういうと
小走りに去っていってしまった

僕は佇んだ

彼女は初めて僕に敬語を使った


数日、もやもやとした気持ちが
消えずにいる

僕は、武蔵小杉の駅のホームに
立っていた
彼女が武蔵小杉の駅を利用していることは
彼女から聞いていた

それから、何度か、
彼女の言葉を探しに
武蔵小杉まで出掛けた

オレンジ色に染まるホームで
僕は幾度となく
彼女の姿を探した
黄昏どきまで待つ
最終まで、待つこともあった

けれど、彼女には会えなかった

翌年、彼女の通う大学を
受験しようとも考えたが
やめておいた

黄昏が、暗闇になってしまうことを
懸念した








ぼくたちの失敗

2021-01-15 04:39:51 | 日記
抗うことに疲れていた

僕は、朝、家を出て
彼女の住むアパートへ向かう

電車は鈍い音をたてて
僕をさらに弱らせる

駅前の老婆が営んでいる酒屋で
フォアローゼズの黒を買う

決して癒えることのない傷を
舐めあうように
僕らは身を寄せる

過ぎていく時間に
二人は怯えていた

もうひとつの愛の暮らしは
求めあうことで
隙間を埋めようとするけど
虚しさだけが残った

ただ、その場所から
抜け出せずにいた

堕ちていく
そう感じていた

森田童子の
ぼくたちの失敗が
ラジオから流れていた




father's son~コンビニ~

2021-01-09 13:11:52 | 日記
プリンターが壊れたので
コンビニで、プリントアウトした

用紙を手にし
出口に向かおうとすると

足元に男性用のムースの缶が
転がってきた

コンビニの中を走り回っている
子供が落としたのだ

それを拾い上げて
棚に戻そうとしたとき
もうひとりの子供抱えた
父親と目があった

すみません
とか
ありがとうございます
とか

そんな言葉を待っていたら

ほら、だから走り回るなって
言ったじゃん
と、一言

まさに
Father's son