ショートなはなし

実際に体験したことをもとに、ショートな話をお聞きください。

ぼくたちの失敗

2021-01-15 04:39:51 | 日記
抗うことに疲れていた

僕は、朝、家を出て
彼女の住むアパートへ向かう

電車は鈍い音をたてて
僕をさらに弱らせる

駅前の老婆が営んでいる酒屋で
フォアローゼズの黒を買う

決して癒えることのない傷を
舐めあうように
僕らは身を寄せる

過ぎていく時間に
二人は怯えていた

もうひとつの愛の暮らしは
求めあうことで
隙間を埋めようとするけど
虚しさだけが残った

ただ、その場所から
抜け出せずにいた

堕ちていく
そう感じていた

森田童子の
ぼくたちの失敗が
ラジオから流れていた