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吉野万理子「青い羽ねむる」

2020-05-15 03:04:00 | 吉野万理子


夕方に車を運転している時にカーラジオでかかっていた、NHKのラジオドラマ。

聞くとはなく聞いていたら、何だかとても切ない物語だったので、心に残ってしまい、きちんと作品全体を知りたくなったので、後で調べて探してみることにした。

その作品が吉野万理子の「青い羽ねむる」。

登場人物というより、登場鳥の名前が印象的だったので、見つけやすかった。



しかし、読んでみると、ラジオドラマとはお話の展開が違ったので、調べてみたら、ラジオドラマの方はこの『ロバのサイン会』に収録されている「青い羽ねむる」を脚色したものらしい。

小説の方が分量も少なく、話も短いが、それぞれの良さがある感じである。

大学院生の蓮くんが飼っていたセキセイインコのパピプーが、命を終える話。

それをインコの側からの語りで述べてゆく。

動物が喋るお話は数多くあると思うが、インコが語り手というのは、珍しいかもしれない。

インコの語りで、死を語ることによって、大切な存在との別れを描いているのだろう。

動物の側から描くことによって、人間の考え方を相対化しているようなところがある。

それにしても切ない話であるが、今の私には少し厳しい。

ただ、それでも「死」というものの受け止め方が優しいので、スッと心に入ってくる。

作品には明示されていないが、おそらく「母との別れ」をインコの死は象徴しているのではないだろうか?

パピプーはオスだけれども。

登場する朝ドラはおそらく架空のものだろう。

インコの名前がパピプーなのは、なぜなんだろう?

何か意味があるのか。

こうなったら、ラジオドラマの脚本の方も読みたくなってきた。

この短編集は連作短編らしいので、他の作品も読んでみることにする。














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