ヤミヒロは本来、闇雲に突っ走れない人間である
RPGやアクションゲームの難易度設定が三段階なら迷わず一番難しいhardを選択するが、そこにvery hardがあれば話は違う
ひとまず二番目に簡単なnormalをセレクトしクリアできたらhard、、、余裕だったらvery hardといった具合に沈着してしまうのだ
負けたくないから? いや違う、気は弱いくせにある程度のリアル派というか
一文で表すなら”好奇心旺盛な臆病者”といったところだろう
そう、、、臆病者なら、、、、あんなことにはならなかった、、、、
徐々に自覚し始めた”臆病者”というスキルを切り捨てたのが全ての元凶
キャラじゃなかったと笑い飛ばせればそれでもいいかなって、、、、 甘すぎだろナメてんのか
上辺だけの主張性をぶら下げて、言葉だけの劣等感に逃げ出して、結果・・・この様・・
一瞬の気の迷い
ペン回しなんて幻想でしかなかったと、、、、そう自分で自分を叱り付けるのが、今のヤミヒロができる最大限の罪滅ぼしであった
「・・・」
栄養不足で震える両手でなんとか鍵穴を捻ると、無言で靴を脱ぎ捨て玄関を跨ぐ
いち早く自分の部屋のベットで横になりたかったが、このままでは階段さえもろくに上れないので冷蔵庫から適当に食料を調達してから部屋に戻る
ようやく長い一週間が終わった
幾分か心がスッキリしたように思えるのだから、きっともう悩まなくていい
正真正銘、これで終わり 素晴らしいとは口が裂けても言えないがベストは尽くした
今にして思えばきっとこうする方法しかありはしなかったんだ
どこにいくにせよ全てを実行するのは俺なのだから当たり前のこと
だったら早く打ち明けられただけ幸運な方だと、疲労しきった身体で椅子へと座ると勉強机に食料を並べた
彩りのない背景とささやかに響くコウロギの音色
テレビをつけることもコンポから音楽を流すこともラジオを聴くこともない静寂の晩餐
一人っ子のヤミヒロにとってみても、ここまで静かな食事はあまり記憶になかったが、孤独感が味わえるのならそれでよかった
これから先のことを考えればなかなかに利口である
予習復習はしっかりしないと学校での孤独感にやられてしまうのだから耐性は付けとくに越した事は無い
・・・・・・・・・・・・・・
あまり思考するな 元に戻るだけだ 現実に
ブランクを埋める心理行動みたいなもの
心臓がおかしくならないように身体に水を当ててから冷たいプールへと入るようなもの
なんてことはない 当然の行動 普通の行動 よくある行動
そう言い聞かせて作ったネバ率300%の納豆と食パンを平らげると、冷たい麦茶を胃袋へと飲み干し布団に潜った
明日したから3連休
結露した窓ガラスに映る、いささか血の気が戻りつつある表情の自分を眺めながらこう独り言を呟いた
「明日でも・・・髪・・・・切りに行くか・・・」
・・・・
・・・
・・
・
ヤミヒロの朝は遅かった
ここ一週間ばかしロクに眠れなかったからか、昨日まともに食べた夕飯が効いたか、ぐっすりおよそ20時間ほどの爆睡を経て清清しい昼の太陽を浴びる。外は快晴で、丁度アスファルトとも温まりだした11月にしては心地いい陽気である
これは予定通り散髪しに行かなければと、チャッチャとシャワーを済ませてから軽く飯を食べた後、外に出た
散髪屋までは徒歩で15分程度の通いなれた商店街の中にある
道中、イチョウの枯れ葉を掃除するご老人や、暖かいカンコーヒーを大事そうに両手で包み込む中年男性を見ているともうすぐ年が明けることを今年初めて実感させられた
師走までもうすぐそこというのにこの鈍感さ、いくら冬が嫌いだからといって周りの景色まで目を背けるのはあまりよろしくない
「・・・冬が嫌いは、、、関係ないか」
自分でもよくわからない独り言を呟くと、もう目的の場所に着いていた
散髪屋 [MacBass]
散髪屋にしては美容院っぽい名前ではあるが、ヤミヒロ行きつけのお店である
まあ行きつけといっても単に安くて親にここしか行くなと強要されてるだけだけど
その中学生の筋力からすれば少しばかし重い肩扉を押しのけると、20代後半のいつもの男性店員から声がかかった
「へい らっしゃいなー」
「どうも」
「おう久しぶりじゃねーかヤッヒロ! もう3ヶ月くらいこねーからテッキリ他の店に乗り換えられたかと思ったぜ・・・・ってでも、、その髪の量みて安心したけどな はっはっはっ」
「それはどーも めんどくさくてなかなか行けなかったんですよ さすがに三ヶ月も切らないと貞子みたいになってきたんで来ましたが」
「おいおいダメだぞ少年 多感な少年期こそ身だしなみはしっかりしないとな、大人になってから頑張るのは至難の技だぞ」
「またその話ですか いいんですよ髪型なんてその気になればいつでも変えれるでしょ」
「ダメだな~ それがダメなんだよ そんな心意気だといつまで経っても一人身のままだぞ?」
「余計なお世話ですよ!いいから早く切ってください!!!」
ヤミヒロがそう言うと店員はリズミカルに笑いながら準備を始める
髪を切るスペースが二箇所しかないこじんまりとした店内にいるのはこの二人だけである
男性店員の名前はTETUYA これまたなんで散髪屋でその名前なのかといいたいが左胸に張ってある名札にそっくりそのままアルファベット表記(直筆)で書かれてあるのだからそういう体裁でやりたいのだろう
8年前からほとんどこの店で髪を切っている常連さんのヤミヒロにしてみれば、少々狭い店内も、本棚にゴルゴがないことも、妙にフレンドリーすぎるとこも、実にどうでもいいことである
準備ができたのか、手馴れた手つきでヤミヒロにヘアーエプロンを重ねていくTETUYA
「よっし じゃあ切るけど要望とかある?」
「いつもと同じ感じで」
「OKOK!」
「お願いします」
一変して仕事人の目になった店員は、伸びすぎたヤミヒロの前髪をピンで留めた後 またたくまにカットを始めた
縦横無尽に、しかし繊細に動く銀色のハサミ、そして舞い落ちる自分の髪の毛に儚さを覚える
「どうしたヤッヒロ いつもは即おねんねなのに・・・もしかしてお前も目覚めたか!?」
「なにいってるんですか 違いますよ。 睡眠はもう十分なんでボーっとしてただけですよ」
「ハッハッハッー そうかいそうかい ならそこにある雑誌でも見て待ってればいい」
「生憎 男性誌もスポーツ誌もカタログにも興味が沸かないんですよ」
そんなもんかねぇ、とお客用のカタログをペラペラ捲り始めたTETUYA
「あんたが興味津々か」
「いや~すまんすまん ついな うん、そのツッコミ今日のMVPだ!」
そういってカタログの一ページを開いて置くと仕事に戻る
「へー 綺麗な写真ですね 観光ブックとかに載ってても不思議じゃないですよ」
「だろ? カタログにも背景に拘ってるのって結構あるんだぜ 商品を引き立たせるための工夫だから自然といい写真になんだよ」
それはメタルブラック色をした端麗なボディのバイクと真っ赤なバラ畑が辺り一面に広がる壮大な写真であった
「ここは山形県にある有名な公園でな 一年前くらいにいったがやっぱいい場所だった」
「へぇ 行ったことあるんですか」
「もちろんバイクでな ああ、また店閉めて旅に出ちまうか!」
「まさか昔、休業してたのってそのためだったんすか?」
この店の入口に臨時休業の張り紙が貼られたのは今から一年前くらい
そのあまりの唐突さに、とうとう潰れたかと思っていたが、1ヶ月ほどで何事も無かったかのように営業は再開されていた
「ああそうさ ここは俺しかいねーし 問題なかろう?」
「俺しかって・・・・え・・・・っとなるとテッさん店長!?」
「きまってらー!」
常連八年目 驚愕の事実が発覚した瞬間である
「3年前に昔いた店長の事情でこの店任されちまってな それからずっと店長よ」
「それはまたご苦労なこって・・・てかテッさん それならもうこの店好きにできるんじゃないですか?」
「ん?」
「バイクの話です テッさん俺と知り合った当初からこの店はいつか辞めてバイク一筋で生きてく!って言ってたじゃないですか」
「ああその話か それは、無しになった」
「無しって・・・・夢じゃなかったんですか?・・・」
鏡越しにただ何も言わずに苦笑していたのが見えたヤミヒロは、もう少しだけ詰め寄ってみたくなった
「ああ、なるほど 前の店長になにか制約みたいなの結んじゃったとか? それじゃなきゃ単にバイクに興味が薄れたからですかね」
「ハッハッハッ~ どっちも違うな 今日のバットMVPだ!!!」
「じゃあなんなんですか」
「それは秘密だ 中学生なら自分で考えて自分で行動するのがいいに決まってる 失“敗”は失“格”にはならないって日本じゃ特権なんだぜ? でもヒントはやろうぞ少年 俺の指裁きどう思う?」
ヤミヒロの記憶には髪を切る人=テッさんしか思い浮かばない。テレビの特集なんかでちらほら見た気もするが、普通の人なら忘却されていくだけの映像である
だからその髪を切る指の動きはどのくらいすごいのかよくわからないのが正直な本音である
「どうって・・・速いんじゃないですか、けっこう」
「そうだ 音速だ音速! 体感の話な!!ハッハッハッ~」
その返答にもちろん嘆息しか出ないヤミヒロ
「じゃあな なんでこんな早く切ってるかわかるか?」
「気持ちいいからでしょ テッさんの顔見てたらわかります」
「おお よくわかってんじゃんかよ! お前今月のMVPにノミネートしとくからな」
激しくどうでもいいと細目を反射させるお客サイドだが案の定、なにも悟らない店員サイド
「でもな ヤッヒロみたいに俺の気持ちを理解してくれる人は少ないんだよ
もっと丁寧に切れ!とか耳が切れたらどうすんだ!とかいう糞クレームがくることくること
仕舞いには、早く終わらせたいだけだろ!とか決め付けられる始末で、、、あん時はマジこのハサミで刺してやろうかと思ったわ ハッハッハッ」
「サラッと怖いこというのやめてもらえませんかね・・・」
「まったく接客業の嫌なとこだよな やりたいようにできないっていうのは多かれ少なかれどこも一緒かもしれないけどさ 俺にとっちゃ猛スピードでバイク走行するのも髪を早く切るのと同じなわけよ
早く目的地まで着きたいわけじゃない 全ては気持ちいいから、爽快だから、熱くなれっからやってるわけ 自分本位かもしれないが散髪に至っては、その気持ちで納得いく髪型に仕上げられなかったときは一度もねーぜ?」
「そうですか・・・で、それと夢を諦めるのとなんの関係が?」
「諦めたわけじゃない 成るようになったって話さ 昔の俺は散髪屋よりバイクの方が楽しかったからそっちが夢だと勘違いしてた そんだけさ」
「なんですかそれ 言い訳にしかきこえ・・・・」
「そうとも取れる でもよヤッヒロ 夢っつーのは楽しくなきゃダメなんだぜ 自分の本当の理想ってんのを叶えてこそ、夢を掴んだって言えるんだ」
「自分の本当の理想・・・ですか・・・」
「そうさ 例えばヤッヒロがお金持ちになるのが夢だとしよう ありふれた夢だな
そんで将来 大金持ちになったとする どうだ夢は叶ったか?」
「叶ったでしょ」
「違うな少年 答えは”実際に将来大金持ちになってみなきゃわからない”だ
宝くじかなんかでも良くあるだろ、スポーツマン、政治家、世界の歴史に残る英雄だってそうだ。 大金を持ち地位や名誉を手に入れたとたん自分自身を滅ぼしてしまう奴 ・・そうなって苦しみながら生涯を終えるのなら、そいつの夢は大金持ちとは違ったってことだ」
「・・・つまりなんですか 今、叶えたい夢と本当の夢の中身は必ずしも一致しないと?」
「そういうことだ____っておい・・・ヒントだけのつもりが全部話しちまったじゃねーかよ! おいヤッヒロ 今年度のバットMVP・・・・覚悟しとけよ!!!」
だからバットMVPって聞いたことないフレーズはなんなんだよ・・・とつっこんでる余裕はなかった
首筋を締め付けるカットエプロンで自分さえも見えない手を強く握れば、たしかに手汗を掻いているのが実感できる
心拍数も上昇し、下顎が微かに振動しているのも感じ取れる
なによりなんだ?・・・この胸の中をかき回される感覚は・・・・・・
そう、、、鏡に映るこの店員の発した言葉はヤミヒロの心を深く抉っていたのだ
ジワジワと、こじ開けるように左右へゆっくりゆっくり振り子のように揺らしながら・・・
・・・なんだ俺・・・・そんなに夢見がちなやつだったっけ・・・・
TETUYAが語った夢の話に、リアルをも凌駕するかの如く鮮明すぎるイメージで浮んだヤミヒロの理想郷というやつは、、、、、ヤミヒロが得るにはどうしようもなく時間が掛かりそうなほどvery hardのレアアイテムなのかもしれない
店を出て見知らぬ家のガラス窓を覗き込めば、昨日より視界の開けた自分がいた。もう前髪を分ける動作も必要ない。
「ありっしゃーした!」
「見送りとはまたご丁寧にどうも」
「俺ももはや店長だかんな 日々店のこと思って仕事してんだよ」
「楽しいですか?」
「愚問すぎるぞ少年 そんなキミには、この自作クーポン券β版を進呈しよう つまりカット代半額券だ! お互いご贔屓にな ハッハッハッ」
「小さい白文字で記載された使用期限一ヶ月という注意事項とわざわざβ版と分かり辛く換言した非保障形式とは、なかなか腰が据わるようになったじゃないですか新店長」
そしてこの店長はたった今、お客様に向かって舌打ちをかました。小さくなかった。綺麗に響いた。
「テッさん 一つだけいいですか?」
「なんだ悩める少年」
「なんか唐突で意味わかんないところがあるかもしれないんでそこは割愛してほしいんだけど」
「いいから早く言えって」
「もし、もしもの話、例えば自分が決めた道が楽しくも辛くもなかったらテッさんはどうしますか?」
「俺はとりあえず進むな そんでもって信じられなくなったら戻るし、どうしようもなくなっても進む 休むことはあっても止まりはしない」
「休むことは止まると同じでは?」
「ああ行動的にはな、俺の言ってる止まるってんのはここんこと___ココロのことだ。 ココロが止まってなきゃあ終わらねえ」
「戻ることも進むことも見出せず、ただなにも無いまま一生を終える可能性があってもですか?」
「なんだなんだ・・・・・・こっちか?(小指)」
「茶化さないでください」
「ハッハッ わりぃな___でもよ、ヤッヒロがいう”ただなにも無いまま一生を終える”なんてことはありはしないんだな~これが」
「なぜそう言い切れるんですか」
それは悩んでるからだぜ、と凛とした顔立ちで新店長は言った
「楽しくも辛くもなかったら人間、悩むようにできてる 不安になってくる それでこそ人だ
そんでもって悩むことっつーのは、プラスとマイナスの感情をゴチャゴチャに掻き混ぜてる状態___得られないから無になるんじゃない、元からある曖昧さを捨てるから無になる___俺なんかはそう思ってる
もう意味わかるか? 自分の道で止まらなければな、曖昧なまま死ぬことはあっても、何も無いまま死ぬことはないってことだ
ようはその曖昧の死と空っぽの死をどう解釈するか、それが極論的人生観ってやつかもな」
・・・ヤミヒロは少し黙考したあとさらに質問を重ねる
「・・・テッさんはその曖昧で死んでしまったらどう思います?」
カランコロンとドアに吊るされた鈴の音色が響いた。あとは自分で考えろということだろう
再び一人になったヤミヒロは、散髪で露になった額と首元に当たる夕風に身震いしつつ帰り道を歩いた
・・・・曖昧ねえ・・・・・・
家に帰ってもどうしようもなく暇なのは目に見えているので、歩幅をいつもより狭めてチマチマと歩く
さっそく新店長の言葉を自己に当てはめてみれば、あるのは曖昧さにもがく自分しかいなかった
無とはいったいなんなのだろう なにもやる気が起きないのだろうか
虚空に靄がかかる感じだろうか ただただ真っ白だろうか
一度失敗しているヤミヒロにとって、不始末を帳消しする魅力より戻る道がわからなくなるかもしれないことが最大の恐怖であった
・・・あああ、吐きそう吐きそう吐きそう・・・
嘘だ。吐き気なんて微塵も無いのに、ただそう呪文のように呟けば身体のモヤモヤが消えるんじゃないかと試してみるだけ。無論、よくなるはずがない。
自宅までの最後の曲がり角にそいつはいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ?(゜д゜)」
体長は自分と張り合えるくらい、こげ茶色の短い毛並みでシワシワの顔つき
近所の和菓子屋さんが作ってる芋大福を巨大化させたようなぽっちゃりというには厳しすぎるそのデブ体形
地域おこしができなった萌えキャラの如く残念すぎるバカでデカくてブサイクなバカ顔
しかし、明治時代に入ってから四国、土佐藩で闘犬用として作られた性格は大胆不敵、怖いもの知らず、闘争本能が強く攻撃的で女性が飼うのは難しいとされる、縄張り意識も強い危険犬種____言ってしまえば土佐犬まんまである
「・・・・・・・・だけどお前アホっぽくて全然怖くないよ?」
「・・・・ぐぐぅ~~ん」
・・・なんぞこいつ・・・
普通こういう状況は、まず可愛い声が聞こえて、周囲を探すと箱状の置物があって、見下ろすと小さな子猫がいた___という具合になると相場が決まってるんだ
・・・・ダンボールぺちゃんこじゃねーか・・・・
しかもハチマキみたいに巻かれた首輪らしきものの名前欄に”どうぞ”と暗号らしき文章が書かれている
ヤミヒロは立ち止まり書き記された暗号の解読に挑むと30分ほど黙考して経ってようやく
「お前捨てられたのか!?」
「・・・・・バウン!」
生で土佐犬の鳴き声を聞いたのはこれが初めてだったが、事態は深刻だ。咆哮と同時にこちらへと飛び掛ってきたのだ
土佐犬の平均体重はおよそ100キロ 一般中学生が受け止められる重量を当に超している
「ちょっ! しぬー・・・!!!」
いやだいやだ、十代で死ぬのもこのバカな顔したバカな土佐犬にバカみたい圧死されてバカに死ぬのも絶対にやだ!!!バカいやだ!!!!!
その想いが通じたか、予想したよりも激しい衝撃とはならず、ヤミヒロは地面に軽く尻餅をつく程度に収まる
「加減はできるようだな・・・・ってうわっやめろ!!!ペロペロすんな!!!!」
一難去ってまた一難 ヤミヒロの頭をアイスクリームのように舐めまわす土佐犬なのであった
・・・
・・
・
あれから如何ほどの時間が経過しただろう
暇だ暇だと嘆いていたがまさかこういう形で暇つぶしできるとは、いや正確には犬の玩具にされただけだけど___まあいい
散々舐めまわしてご満悦なのか、例の土佐犬は満足そうに潰れたダンボールに座り込むと こちらを見つめるものの暢気に欠伸なんかかくほどヤミヒロへの興味は削がれていた
飼い主に捨てられた犬がヤミヒロを捨てる
飼い主もヤミヒロも同じ人間であることには変わりないわけで、因果応報という言葉の意味が少しわかった気がする彼なのであった
「じゃあな」とその一言だけを最後にダンボールから離れていく
犬派か猫派かの以前に、ヤミヒロは動物にはまったくといっていいほど興味がなかった
というかどう接していいかわからなかったからだ
小学校の遠足で動物園に行った時から苦手意識はあった
周りの皆がかわいいかわいいいいながらモルモットを手にとったり撫でたり愛でたりする中、俺は一人触れ合いコーナーの片隅でそのみんなが可愛いといってる奴から出たフンを枝で突いて遊んでた。ホント、そんくらい動物などどうでもいい存在なんだ
だが家の目の前にたどり着き只ならぬ気配に振り向けば、さも当然のようにヤツはいた
・・・・ついてきちゃったよ・・・
そう、見紛う事なきさっきの土佐犬である
媚びるような声も上げなければ瞳を潤ますことも尻尾も振りはしない、ただただ何も言わずについてきて、自分が立ち止まると犬も止まる
ヤミヒロは急にしゃがみ込むと前方の虚空を仰いだ
「、、、、無反応かよ・・・・これだから動物はわからないんだ」
「・・・・」
「お前は独りなのか」
「・・・・」
「友達はいるのか?」
「・・・・」
「なんだよなんか言えよ」
「グググゥ~ン」
「gggじゃない」
「・・・」
「俺は一人じゃない、家に帰れば家族が待ってる幸せものだ」
「・・・・」
「俺はお前とは違う」
「・・・・グルルルル・・・」
「grrrrじゃない。そんなの知らない。俺には飯だってちゃんとあるんだ」
「・・・・」
「じゃあな」
「・・・・」
「なんだ さよならもできないのか」
「・・・・」
「わかるか?俺と家族しかウチに住むことは出来ないんだ」
「・・・・」
「なにか言ったらどうだ」
「・・・・」
「「「「「じゃあお前・・・・・
・・・俺の家族になるか?」」」」」」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
●
割愛するには惜しすぎる重量100キロ(全自動自立駆動式)の密輸計画は、なんとか親に見つからず自分の部屋へと運び込み、事無きを得た
本当に奇跡だった 奇跡の無駄遣いもいいとこだった
ともあれ今は、筋肉痛確実の手足を使って、なんとかこの土佐犬を寝かしつけているところである
「・・・もう一度いう。。。クソ犬が寝ないことには、おちおち風呂にもいけないんだよわかるな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワオン?」
「いいから寝ろよっつってんの!!!もう夜中の3時だぞ!!!!」
「・・・グゥ~ン」
いっとくが動物が好きになったわけじゃない、幼い頃から育て上げられた動物拒絶の根はそう簡単に引っこ抜けるほど柔じゃないのだ。
・・・なにがグゥ~ンだ、もうちょっと可愛く鳴けないのかよお前・・・・
動物嫌いな俺が言うのもあれだがこいつ__圧倒的に世渡りが下手なタイプだ
けれども当然のことだが、元飼い主の無責任さは看過できない。いかなる理由にせよ土佐犬などという国が指定した危険種を野に放つなど言語道断___そこら辺の苛立ちも含めてヤミヒロはある意味二重で苦しんでいるのかもしれない
暖房の人工風が窓ガラスを撫でると、結露で浮き出た小さな雫が滴り落ちる
・・・やっと・・・・寝た・・・・よ・・・・
ふぅ・・・と鼻だけで空気を吐くとようやく、その涎まみれ毛まみれの衣類をひん剥き風呂場へと向かった
・・・
「くぅ~~~ 沁みるぜぁ~」
アゴを天井の白いタイルまでしゃくり、今日の疲れをはきだすように開口高
並々といれたお湯が全身を包み込み、表面はうねりをあげて排水溝へと流れ落ちる。ぽかぽかと広がる半透明の湯気がまたたくまに室温を上げればもう、このまま眠ってしまっても不思議ではない極楽空間ができあがっていた
ここ最近、ロクに食事もせず、風呂もシャワーだけの簡易なものになっていた反動もあり、今日の風呂はこれまた格段に気持ちいい
・・・やっぱ日本人は・・・風呂だよなぁ・・・・
汚れた皮脂を洗い流し、綺麗になった身体に滲みこむお湯の温かさはじんわりと心地よい感覚で精神さえも潤わしてくれる
えり○か事件からおよそ一ヶ月半経った今まで、本当に心が休まる時はなかった
そりゃその時は楽しかったかもしれない。でも楽しさはエネルギーを生み出すが、エネルギーだけじゃ熱はでない。ガソリンだけでは火はつかないのと一緒さ。楽しいければ疲れてしまうが人間というやつだ。精神力が芳しくないヤミヒロにとってみたらなおさらである。
・・・・・・・・・ホント・・・・・バカな俺・・・・・・・・・・・・・・・・
余裕の出来た心の隙間には、いつだって悩みや悔やみ、苦しみっといった感情が先行チケットを持って入り込む
・・・・
・・・
・・
・
真相を話す
パックンを怖がらせ、今後のNPC妨害を抑止するため行われた通称、真夜中戦
その終盤で事件は起きた
包み隠さず、最初にはっきりといっておく
ヤミヒロは、ドンマロの利き手である右手に危害を加え、右手首亀裂骨折全治2ヶ月の重症を負わせた
そう、あの二階からプールにダイブしたのが原因である
あの時俺がしっかりと、自分の意思で跳んでいればドンマロの手首にヒビが入ることはなかった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
見るからに痛々しい包帯を巻きながら痕が残るかもしれない腫れがあるってさ・・・。
手首を回すと、悶絶するほどの痛みが体中を駆け巡るってさ・・・。
動かすと痛いってさ・・・。
何もしなくても、ズキズキ痛みがあるってさ・・・。
時々指を動かすと手首に響くように痛いってさ・・・。
痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさいってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさいってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ
こんなもんじゃない 全然足りない。 俺が反芻させた自責の単語はここ一週間で一万回は唱えた___だからどうした__そんなこと____、ドンマロの受けた苦しみはこんなもんじゃない
もっと残酷で、酷虐で、苛酷なものだったはずだ。口に出さずとも分かりきってる。だって彼女は・・・・
だって彼女はスピナーだから。。。。
ペン回しをこよなく愛するペンスピナーだから。。。
こんな無慈悲な事件あってはならない。。。。
たかだかお遊びじゃないか、、、、二ヶ月で治るならいいじゃん、、、、
そんな周りの連中の励ましは、侮辱にさえ聞こえた。。。NPCメンバーなら決してそんなことは言わない
中学生なんだぞ 来年度は3年生なんだ
貴重なんだよこの中学二年という時期は、自分のやりたいことがあるのなら皆と全力で楽しむ時期なんだよ
来年は受験だ、高校生になったら会う機会も減るし、色恋沙汰もあるだろう。大学生にもなったら人間関係に忙しくなる 社会に出たらなおさらだ
今なんだよ・・・・本当に今が大事なんだよ・・・・。
もし自分の時間を食パンみたいに千切って渡せるなら、俺は今すぐにでもドンマロの自宅に押掛けて一斤まるまる渡す。
・・・でもいかんせん、そんなことはできるはずもないのだから悩んでいた
そして、、、時きたりと、、、、、、、、
ドンマロが右腕を曲げながら登校するようになって5日後、第二の事件が起きた
それが、俺の___ペン回し用のペンの紛失だ
いいキッカケだった。
だから辞めた。
NPCを。
リーダーを。
・・
・
●
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RPGやアクションゲームの難易度設定が三段階なら迷わず一番難しいhardを選択するが、そこにvery hardがあれば話は違う
ひとまず二番目に簡単なnormalをセレクトしクリアできたらhard、、、余裕だったらvery hardといった具合に沈着してしまうのだ
負けたくないから? いや違う、気は弱いくせにある程度のリアル派というか
一文で表すなら”好奇心旺盛な臆病者”といったところだろう
そう、、、臆病者なら、、、、あんなことにはならなかった、、、、
徐々に自覚し始めた”臆病者”というスキルを切り捨てたのが全ての元凶
キャラじゃなかったと笑い飛ばせればそれでもいいかなって、、、、 甘すぎだろナメてんのか
上辺だけの主張性をぶら下げて、言葉だけの劣等感に逃げ出して、結果・・・この様・・
一瞬の気の迷い
ペン回しなんて幻想でしかなかったと、、、、そう自分で自分を叱り付けるのが、今のヤミヒロができる最大限の罪滅ぼしであった
「・・・」
栄養不足で震える両手でなんとか鍵穴を捻ると、無言で靴を脱ぎ捨て玄関を跨ぐ
いち早く自分の部屋のベットで横になりたかったが、このままでは階段さえもろくに上れないので冷蔵庫から適当に食料を調達してから部屋に戻る
ようやく長い一週間が終わった
幾分か心がスッキリしたように思えるのだから、きっともう悩まなくていい
正真正銘、これで終わり 素晴らしいとは口が裂けても言えないがベストは尽くした
今にして思えばきっとこうする方法しかありはしなかったんだ
どこにいくにせよ全てを実行するのは俺なのだから当たり前のこと
だったら早く打ち明けられただけ幸運な方だと、疲労しきった身体で椅子へと座ると勉強机に食料を並べた
彩りのない背景とささやかに響くコウロギの音色
テレビをつけることもコンポから音楽を流すこともラジオを聴くこともない静寂の晩餐
一人っ子のヤミヒロにとってみても、ここまで静かな食事はあまり記憶になかったが、孤独感が味わえるのならそれでよかった
これから先のことを考えればなかなかに利口である
予習復習はしっかりしないと学校での孤独感にやられてしまうのだから耐性は付けとくに越した事は無い
・・・・・・・・・・・・・・
あまり思考するな 元に戻るだけだ 現実に
ブランクを埋める心理行動みたいなもの
心臓がおかしくならないように身体に水を当ててから冷たいプールへと入るようなもの
なんてことはない 当然の行動 普通の行動 よくある行動
そう言い聞かせて作ったネバ率300%の納豆と食パンを平らげると、冷たい麦茶を胃袋へと飲み干し布団に潜った
明日したから3連休
結露した窓ガラスに映る、いささか血の気が戻りつつある表情の自分を眺めながらこう独り言を呟いた
「明日でも・・・髪・・・・切りに行くか・・・」
・・・・
・・・
・・
・
ヤミヒロの朝は遅かった
ここ一週間ばかしロクに眠れなかったからか、昨日まともに食べた夕飯が効いたか、ぐっすりおよそ20時間ほどの爆睡を経て清清しい昼の太陽を浴びる。外は快晴で、丁度アスファルトとも温まりだした11月にしては心地いい陽気である
これは予定通り散髪しに行かなければと、チャッチャとシャワーを済ませてから軽く飯を食べた後、外に出た
散髪屋までは徒歩で15分程度の通いなれた商店街の中にある
道中、イチョウの枯れ葉を掃除するご老人や、暖かいカンコーヒーを大事そうに両手で包み込む中年男性を見ているともうすぐ年が明けることを今年初めて実感させられた
師走までもうすぐそこというのにこの鈍感さ、いくら冬が嫌いだからといって周りの景色まで目を背けるのはあまりよろしくない
「・・・冬が嫌いは、、、関係ないか」
自分でもよくわからない独り言を呟くと、もう目的の場所に着いていた
散髪屋 [MacBass]
散髪屋にしては美容院っぽい名前ではあるが、ヤミヒロ行きつけのお店である
まあ行きつけといっても単に安くて親にここしか行くなと強要されてるだけだけど
その中学生の筋力からすれば少しばかし重い肩扉を押しのけると、20代後半のいつもの男性店員から声がかかった
「へい らっしゃいなー」
「どうも」
「おう久しぶりじゃねーかヤッヒロ! もう3ヶ月くらいこねーからテッキリ他の店に乗り換えられたかと思ったぜ・・・・ってでも、、その髪の量みて安心したけどな はっはっはっ」
「それはどーも めんどくさくてなかなか行けなかったんですよ さすがに三ヶ月も切らないと貞子みたいになってきたんで来ましたが」
「おいおいダメだぞ少年 多感な少年期こそ身だしなみはしっかりしないとな、大人になってから頑張るのは至難の技だぞ」
「またその話ですか いいんですよ髪型なんてその気になればいつでも変えれるでしょ」
「ダメだな~ それがダメなんだよ そんな心意気だといつまで経っても一人身のままだぞ?」
「余計なお世話ですよ!いいから早く切ってください!!!」
ヤミヒロがそう言うと店員はリズミカルに笑いながら準備を始める
髪を切るスペースが二箇所しかないこじんまりとした店内にいるのはこの二人だけである
男性店員の名前はTETUYA これまたなんで散髪屋でその名前なのかといいたいが左胸に張ってある名札にそっくりそのままアルファベット表記(直筆)で書かれてあるのだからそういう体裁でやりたいのだろう
8年前からほとんどこの店で髪を切っている常連さんのヤミヒロにしてみれば、少々狭い店内も、本棚にゴルゴがないことも、妙にフレンドリーすぎるとこも、実にどうでもいいことである
準備ができたのか、手馴れた手つきでヤミヒロにヘアーエプロンを重ねていくTETUYA
「よっし じゃあ切るけど要望とかある?」
「いつもと同じ感じで」
「OKOK!」
「お願いします」
一変して仕事人の目になった店員は、伸びすぎたヤミヒロの前髪をピンで留めた後 またたくまにカットを始めた
縦横無尽に、しかし繊細に動く銀色のハサミ、そして舞い落ちる自分の髪の毛に儚さを覚える
「どうしたヤッヒロ いつもは即おねんねなのに・・・もしかしてお前も目覚めたか!?」
「なにいってるんですか 違いますよ。 睡眠はもう十分なんでボーっとしてただけですよ」
「ハッハッハッー そうかいそうかい ならそこにある雑誌でも見て待ってればいい」
「生憎 男性誌もスポーツ誌もカタログにも興味が沸かないんですよ」
そんなもんかねぇ、とお客用のカタログをペラペラ捲り始めたTETUYA
「あんたが興味津々か」
「いや~すまんすまん ついな うん、そのツッコミ今日のMVPだ!」
そういってカタログの一ページを開いて置くと仕事に戻る
「へー 綺麗な写真ですね 観光ブックとかに載ってても不思議じゃないですよ」
「だろ? カタログにも背景に拘ってるのって結構あるんだぜ 商品を引き立たせるための工夫だから自然といい写真になんだよ」
それはメタルブラック色をした端麗なボディのバイクと真っ赤なバラ畑が辺り一面に広がる壮大な写真であった
「ここは山形県にある有名な公園でな 一年前くらいにいったがやっぱいい場所だった」
「へぇ 行ったことあるんですか」
「もちろんバイクでな ああ、また店閉めて旅に出ちまうか!」
「まさか昔、休業してたのってそのためだったんすか?」
この店の入口に臨時休業の張り紙が貼られたのは今から一年前くらい
そのあまりの唐突さに、とうとう潰れたかと思っていたが、1ヶ月ほどで何事も無かったかのように営業は再開されていた
「ああそうさ ここは俺しかいねーし 問題なかろう?」
「俺しかって・・・・え・・・・っとなるとテッさん店長!?」
「きまってらー!」
常連八年目 驚愕の事実が発覚した瞬間である
「3年前に昔いた店長の事情でこの店任されちまってな それからずっと店長よ」
「それはまたご苦労なこって・・・てかテッさん それならもうこの店好きにできるんじゃないですか?」
「ん?」
「バイクの話です テッさん俺と知り合った当初からこの店はいつか辞めてバイク一筋で生きてく!って言ってたじゃないですか」
「ああその話か それは、無しになった」
「無しって・・・・夢じゃなかったんですか?・・・」
鏡越しにただ何も言わずに苦笑していたのが見えたヤミヒロは、もう少しだけ詰め寄ってみたくなった
「ああ、なるほど 前の店長になにか制約みたいなの結んじゃったとか? それじゃなきゃ単にバイクに興味が薄れたからですかね」
「ハッハッハッ~ どっちも違うな 今日のバットMVPだ!!!」
「じゃあなんなんですか」
「それは秘密だ 中学生なら自分で考えて自分で行動するのがいいに決まってる 失“敗”は失“格”にはならないって日本じゃ特権なんだぜ? でもヒントはやろうぞ少年 俺の指裁きどう思う?」
ヤミヒロの記憶には髪を切る人=テッさんしか思い浮かばない。テレビの特集なんかでちらほら見た気もするが、普通の人なら忘却されていくだけの映像である
だからその髪を切る指の動きはどのくらいすごいのかよくわからないのが正直な本音である
「どうって・・・速いんじゃないですか、けっこう」
「そうだ 音速だ音速! 体感の話な!!ハッハッハッ~」
その返答にもちろん嘆息しか出ないヤミヒロ
「じゃあな なんでこんな早く切ってるかわかるか?」
「気持ちいいからでしょ テッさんの顔見てたらわかります」
「おお よくわかってんじゃんかよ! お前今月のMVPにノミネートしとくからな」
激しくどうでもいいと細目を反射させるお客サイドだが案の定、なにも悟らない店員サイド
「でもな ヤッヒロみたいに俺の気持ちを理解してくれる人は少ないんだよ
もっと丁寧に切れ!とか耳が切れたらどうすんだ!とかいう糞クレームがくることくること
仕舞いには、早く終わらせたいだけだろ!とか決め付けられる始末で、、、あん時はマジこのハサミで刺してやろうかと思ったわ ハッハッハッ」
「サラッと怖いこというのやめてもらえませんかね・・・」
「まったく接客業の嫌なとこだよな やりたいようにできないっていうのは多かれ少なかれどこも一緒かもしれないけどさ 俺にとっちゃ猛スピードでバイク走行するのも髪を早く切るのと同じなわけよ
早く目的地まで着きたいわけじゃない 全ては気持ちいいから、爽快だから、熱くなれっからやってるわけ 自分本位かもしれないが散髪に至っては、その気持ちで納得いく髪型に仕上げられなかったときは一度もねーぜ?」
「そうですか・・・で、それと夢を諦めるのとなんの関係が?」
「諦めたわけじゃない 成るようになったって話さ 昔の俺は散髪屋よりバイクの方が楽しかったからそっちが夢だと勘違いしてた そんだけさ」
「なんですかそれ 言い訳にしかきこえ・・・・」
「そうとも取れる でもよヤッヒロ 夢っつーのは楽しくなきゃダメなんだぜ 自分の本当の理想ってんのを叶えてこそ、夢を掴んだって言えるんだ」
「自分の本当の理想・・・ですか・・・」
「そうさ 例えばヤッヒロがお金持ちになるのが夢だとしよう ありふれた夢だな
そんで将来 大金持ちになったとする どうだ夢は叶ったか?」
「叶ったでしょ」
「違うな少年 答えは”実際に将来大金持ちになってみなきゃわからない”だ
宝くじかなんかでも良くあるだろ、スポーツマン、政治家、世界の歴史に残る英雄だってそうだ。 大金を持ち地位や名誉を手に入れたとたん自分自身を滅ぼしてしまう奴 ・・そうなって苦しみながら生涯を終えるのなら、そいつの夢は大金持ちとは違ったってことだ」
「・・・つまりなんですか 今、叶えたい夢と本当の夢の中身は必ずしも一致しないと?」
「そういうことだ____っておい・・・ヒントだけのつもりが全部話しちまったじゃねーかよ! おいヤッヒロ 今年度のバットMVP・・・・覚悟しとけよ!!!」
だからバットMVPって聞いたことないフレーズはなんなんだよ・・・とつっこんでる余裕はなかった
首筋を締め付けるカットエプロンで自分さえも見えない手を強く握れば、たしかに手汗を掻いているのが実感できる
心拍数も上昇し、下顎が微かに振動しているのも感じ取れる
なによりなんだ?・・・この胸の中をかき回される感覚は・・・・・・
そう、、、鏡に映るこの店員の発した言葉はヤミヒロの心を深く抉っていたのだ
ジワジワと、こじ開けるように左右へゆっくりゆっくり振り子のように揺らしながら・・・
・・・なんだ俺・・・・そんなに夢見がちなやつだったっけ・・・・
TETUYAが語った夢の話に、リアルをも凌駕するかの如く鮮明すぎるイメージで浮んだヤミヒロの理想郷というやつは、、、、、ヤミヒロが得るにはどうしようもなく時間が掛かりそうなほどvery hardのレアアイテムなのかもしれない
店を出て見知らぬ家のガラス窓を覗き込めば、昨日より視界の開けた自分がいた。もう前髪を分ける動作も必要ない。
「ありっしゃーした!」
「見送りとはまたご丁寧にどうも」
「俺ももはや店長だかんな 日々店のこと思って仕事してんだよ」
「楽しいですか?」
「愚問すぎるぞ少年 そんなキミには、この自作クーポン券β版を進呈しよう つまりカット代半額券だ! お互いご贔屓にな ハッハッハッ」
「小さい白文字で記載された使用期限一ヶ月という注意事項とわざわざβ版と分かり辛く換言した非保障形式とは、なかなか腰が据わるようになったじゃないですか新店長」
そしてこの店長はたった今、お客様に向かって舌打ちをかました。小さくなかった。綺麗に響いた。
「テッさん 一つだけいいですか?」
「なんだ悩める少年」
「なんか唐突で意味わかんないところがあるかもしれないんでそこは割愛してほしいんだけど」
「いいから早く言えって」
「もし、もしもの話、例えば自分が決めた道が楽しくも辛くもなかったらテッさんはどうしますか?」
「俺はとりあえず進むな そんでもって信じられなくなったら戻るし、どうしようもなくなっても進む 休むことはあっても止まりはしない」
「休むことは止まると同じでは?」
「ああ行動的にはな、俺の言ってる止まるってんのはここんこと___ココロのことだ。 ココロが止まってなきゃあ終わらねえ」
「戻ることも進むことも見出せず、ただなにも無いまま一生を終える可能性があってもですか?」
「なんだなんだ・・・・・・こっちか?(小指)」
「茶化さないでください」
「ハッハッ わりぃな___でもよ、ヤッヒロがいう”ただなにも無いまま一生を終える”なんてことはありはしないんだな~これが」
「なぜそう言い切れるんですか」
それは悩んでるからだぜ、と凛とした顔立ちで新店長は言った
「楽しくも辛くもなかったら人間、悩むようにできてる 不安になってくる それでこそ人だ
そんでもって悩むことっつーのは、プラスとマイナスの感情をゴチャゴチャに掻き混ぜてる状態___得られないから無になるんじゃない、元からある曖昧さを捨てるから無になる___俺なんかはそう思ってる
もう意味わかるか? 自分の道で止まらなければな、曖昧なまま死ぬことはあっても、何も無いまま死ぬことはないってことだ
ようはその曖昧の死と空っぽの死をどう解釈するか、それが極論的人生観ってやつかもな」
・・・ヤミヒロは少し黙考したあとさらに質問を重ねる
「・・・テッさんはその曖昧で死んでしまったらどう思います?」
カランコロンとドアに吊るされた鈴の音色が響いた。あとは自分で考えろということだろう
再び一人になったヤミヒロは、散髪で露になった額と首元に当たる夕風に身震いしつつ帰り道を歩いた
・・・・曖昧ねえ・・・・・・
家に帰ってもどうしようもなく暇なのは目に見えているので、歩幅をいつもより狭めてチマチマと歩く
さっそく新店長の言葉を自己に当てはめてみれば、あるのは曖昧さにもがく自分しかいなかった
無とはいったいなんなのだろう なにもやる気が起きないのだろうか
虚空に靄がかかる感じだろうか ただただ真っ白だろうか
一度失敗しているヤミヒロにとって、不始末を帳消しする魅力より戻る道がわからなくなるかもしれないことが最大の恐怖であった
・・・あああ、吐きそう吐きそう吐きそう・・・
嘘だ。吐き気なんて微塵も無いのに、ただそう呪文のように呟けば身体のモヤモヤが消えるんじゃないかと試してみるだけ。無論、よくなるはずがない。
自宅までの最後の曲がり角にそいつはいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ?(゜д゜)」
体長は自分と張り合えるくらい、こげ茶色の短い毛並みでシワシワの顔つき
近所の和菓子屋さんが作ってる芋大福を巨大化させたようなぽっちゃりというには厳しすぎるそのデブ体形
地域おこしができなった萌えキャラの如く残念すぎるバカでデカくてブサイクなバカ顔
しかし、明治時代に入ってから四国、土佐藩で闘犬用として作られた性格は大胆不敵、怖いもの知らず、闘争本能が強く攻撃的で女性が飼うのは難しいとされる、縄張り意識も強い危険犬種____言ってしまえば土佐犬まんまである
「・・・・・・・・だけどお前アホっぽくて全然怖くないよ?」
「・・・・ぐぐぅ~~ん」
・・・なんぞこいつ・・・
普通こういう状況は、まず可愛い声が聞こえて、周囲を探すと箱状の置物があって、見下ろすと小さな子猫がいた___という具合になると相場が決まってるんだ
・・・・ダンボールぺちゃんこじゃねーか・・・・
しかもハチマキみたいに巻かれた首輪らしきものの名前欄に”どうぞ”と暗号らしき文章が書かれている
ヤミヒロは立ち止まり書き記された暗号の解読に挑むと30分ほど黙考して経ってようやく
「お前捨てられたのか!?」
「・・・・・バウン!」
生で土佐犬の鳴き声を聞いたのはこれが初めてだったが、事態は深刻だ。咆哮と同時にこちらへと飛び掛ってきたのだ
土佐犬の平均体重はおよそ100キロ 一般中学生が受け止められる重量を当に超している
「ちょっ! しぬー・・・!!!」
いやだいやだ、十代で死ぬのもこのバカな顔したバカな土佐犬にバカみたい圧死されてバカに死ぬのも絶対にやだ!!!バカいやだ!!!!!
その想いが通じたか、予想したよりも激しい衝撃とはならず、ヤミヒロは地面に軽く尻餅をつく程度に収まる
「加減はできるようだな・・・・ってうわっやめろ!!!ペロペロすんな!!!!」
一難去ってまた一難 ヤミヒロの頭をアイスクリームのように舐めまわす土佐犬なのであった
・・・
・・
・
あれから如何ほどの時間が経過しただろう
暇だ暇だと嘆いていたがまさかこういう形で暇つぶしできるとは、いや正確には犬の玩具にされただけだけど___まあいい
散々舐めまわしてご満悦なのか、例の土佐犬は満足そうに潰れたダンボールに座り込むと こちらを見つめるものの暢気に欠伸なんかかくほどヤミヒロへの興味は削がれていた
飼い主に捨てられた犬がヤミヒロを捨てる
飼い主もヤミヒロも同じ人間であることには変わりないわけで、因果応報という言葉の意味が少しわかった気がする彼なのであった
「じゃあな」とその一言だけを最後にダンボールから離れていく
犬派か猫派かの以前に、ヤミヒロは動物にはまったくといっていいほど興味がなかった
というかどう接していいかわからなかったからだ
小学校の遠足で動物園に行った時から苦手意識はあった
周りの皆がかわいいかわいいいいながらモルモットを手にとったり撫でたり愛でたりする中、俺は一人触れ合いコーナーの片隅でそのみんなが可愛いといってる奴から出たフンを枝で突いて遊んでた。ホント、そんくらい動物などどうでもいい存在なんだ
だが家の目の前にたどり着き只ならぬ気配に振り向けば、さも当然のようにヤツはいた
・・・・ついてきちゃったよ・・・
そう、見紛う事なきさっきの土佐犬である
媚びるような声も上げなければ瞳を潤ますことも尻尾も振りはしない、ただただ何も言わずについてきて、自分が立ち止まると犬も止まる
ヤミヒロは急にしゃがみ込むと前方の虚空を仰いだ
「、、、、無反応かよ・・・・これだから動物はわからないんだ」
「・・・・」
「お前は独りなのか」
「・・・・」
「友達はいるのか?」
「・・・・」
「なんだよなんか言えよ」
「グググゥ~ン」
「gggじゃない」
「・・・」
「俺は一人じゃない、家に帰れば家族が待ってる幸せものだ」
「・・・・」
「俺はお前とは違う」
「・・・・グルルルル・・・」
「grrrrじゃない。そんなの知らない。俺には飯だってちゃんとあるんだ」
「・・・・」
「じゃあな」
「・・・・」
「なんだ さよならもできないのか」
「・・・・」
「わかるか?俺と家族しかウチに住むことは出来ないんだ」
「・・・・」
「なにか言ったらどうだ」
「・・・・」
「「「「「じゃあお前・・・・・
・・・俺の家族になるか?」」」」」」
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
●
割愛するには惜しすぎる重量100キロ(全自動自立駆動式)の密輸計画は、なんとか親に見つからず自分の部屋へと運び込み、事無きを得た
本当に奇跡だった 奇跡の無駄遣いもいいとこだった
ともあれ今は、筋肉痛確実の手足を使って、なんとかこの土佐犬を寝かしつけているところである
「・・・もう一度いう。。。クソ犬が寝ないことには、おちおち風呂にもいけないんだよわかるな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ワオン?」
「いいから寝ろよっつってんの!!!もう夜中の3時だぞ!!!!」
「・・・グゥ~ン」
いっとくが動物が好きになったわけじゃない、幼い頃から育て上げられた動物拒絶の根はそう簡単に引っこ抜けるほど柔じゃないのだ。
・・・なにがグゥ~ンだ、もうちょっと可愛く鳴けないのかよお前・・・・
動物嫌いな俺が言うのもあれだがこいつ__圧倒的に世渡りが下手なタイプだ
けれども当然のことだが、元飼い主の無責任さは看過できない。いかなる理由にせよ土佐犬などという国が指定した危険種を野に放つなど言語道断___そこら辺の苛立ちも含めてヤミヒロはある意味二重で苦しんでいるのかもしれない
暖房の人工風が窓ガラスを撫でると、結露で浮き出た小さな雫が滴り落ちる
・・・やっと・・・・寝た・・・・よ・・・・
ふぅ・・・と鼻だけで空気を吐くとようやく、その涎まみれ毛まみれの衣類をひん剥き風呂場へと向かった
・・・
「くぅ~~~ 沁みるぜぁ~」
アゴを天井の白いタイルまでしゃくり、今日の疲れをはきだすように開口高
並々といれたお湯が全身を包み込み、表面はうねりをあげて排水溝へと流れ落ちる。ぽかぽかと広がる半透明の湯気がまたたくまに室温を上げればもう、このまま眠ってしまっても不思議ではない極楽空間ができあがっていた
ここ最近、ロクに食事もせず、風呂もシャワーだけの簡易なものになっていた反動もあり、今日の風呂はこれまた格段に気持ちいい
・・・やっぱ日本人は・・・風呂だよなぁ・・・・
汚れた皮脂を洗い流し、綺麗になった身体に滲みこむお湯の温かさはじんわりと心地よい感覚で精神さえも潤わしてくれる
えり○か事件からおよそ一ヶ月半経った今まで、本当に心が休まる時はなかった
そりゃその時は楽しかったかもしれない。でも楽しさはエネルギーを生み出すが、エネルギーだけじゃ熱はでない。ガソリンだけでは火はつかないのと一緒さ。楽しいければ疲れてしまうが人間というやつだ。精神力が芳しくないヤミヒロにとってみたらなおさらである。
・・・・・・・・・ホント・・・・・バカな俺・・・・・・・・・・・・・・・・
余裕の出来た心の隙間には、いつだって悩みや悔やみ、苦しみっといった感情が先行チケットを持って入り込む
・・・・
・・・
・・
・
真相を話す
パックンを怖がらせ、今後のNPC妨害を抑止するため行われた通称、真夜中戦
その終盤で事件は起きた
包み隠さず、最初にはっきりといっておく
ヤミヒロは、ドンマロの利き手である右手に危害を加え、右手首亀裂骨折全治2ヶ月の重症を負わせた
そう、あの二階からプールにダイブしたのが原因である
あの時俺がしっかりと、自分の意思で跳んでいればドンマロの手首にヒビが入ることはなかった
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見るからに痛々しい包帯を巻きながら痕が残るかもしれない腫れがあるってさ・・・。
手首を回すと、悶絶するほどの痛みが体中を駆け巡るってさ・・・。
動かすと痛いってさ・・・。
何もしなくても、ズキズキ痛みがあるってさ・・・。
時々指を動かすと手首に響くように痛いってさ・・・。
痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさいってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさいってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ痛いってさ
こんなもんじゃない 全然足りない。 俺が反芻させた自責の単語はここ一週間で一万回は唱えた___だからどうした__そんなこと____、ドンマロの受けた苦しみはこんなもんじゃない
もっと残酷で、酷虐で、苛酷なものだったはずだ。口に出さずとも分かりきってる。だって彼女は・・・・
だって彼女はスピナーだから。。。。
ペン回しをこよなく愛するペンスピナーだから。。。
こんな無慈悲な事件あってはならない。。。。
たかだかお遊びじゃないか、、、、二ヶ月で治るならいいじゃん、、、、
そんな周りの連中の励ましは、侮辱にさえ聞こえた。。。NPCメンバーなら決してそんなことは言わない
中学生なんだぞ 来年度は3年生なんだ
貴重なんだよこの中学二年という時期は、自分のやりたいことがあるのなら皆と全力で楽しむ時期なんだよ
来年は受験だ、高校生になったら会う機会も減るし、色恋沙汰もあるだろう。大学生にもなったら人間関係に忙しくなる 社会に出たらなおさらだ
今なんだよ・・・・本当に今が大事なんだよ・・・・。
もし自分の時間を食パンみたいに千切って渡せるなら、俺は今すぐにでもドンマロの自宅に押掛けて一斤まるまる渡す。
・・・でもいかんせん、そんなことはできるはずもないのだから悩んでいた
そして、、、時きたりと、、、、、、、、
ドンマロが右腕を曲げながら登校するようになって5日後、第二の事件が起きた
それが、俺の___ペン回し用のペンの紛失だ
いいキッカケだった。
だから辞めた。
NPCを。
リーダーを。
・・
・
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つづき←クリックできます。
TETUYAがかなり実在の方とキャラが一緒で感動するレベルでしたw
インフィニティバトルで指を狙われた記憶を思い出しますなぁ、来週も楽しみですわん!
そうですね第四章は前々から2ヶ月掛けて製作しておりますよ♂
シリアスブレーカーTETUYAさん><
インバドは熱く書かせていただきました!よろしぐぅ~~ん!!