ウサギ、耳、伸びた、私、

このブログはたしかにイタい・・だがどうだろうか。痛みを訴えるのは大事なことだと私は思う。戦争より餓死の方が酷虐なのだから

2012年

2011-12-30 02:38:23 | 日常
「凄すぎてどのくらい凄いのかわからない」なんて評価はしたくない。

『基準の構築』を抱負に来年は、邁進していこうと心に決めた。

一周回ったこの俺がこの記事をみるとは限らないけど100回目の日常として心に強く刻んでおくとしよう。


黒で滲んだパレットも

乾いてしまえばただのシミ

そうなればまた

白で塗りつぶせることを

忘れるなかれ


・・・


・・





↑こんないつにも増して厨二な記事 一年後の俺がみたら“恥ずか死”することも忘れてはいけないけども


どうかよいお年を

第XⅡ話プロモーションビデオ編~最後の門~

2011-12-28 21:50:06 | NPC@13物語
萌えてしまうのは男の性かな

強烈な右ストレートでブッ飛ばされた俺、テル、バドシは浅瀬へ泳ぎ終わると、とぼとぼとクルーザーへ乗り込もうとしていた。

その道中、俺の脳内といったら“お嬢様”のことで頭いっぱいなのは認めてもいいだろう。

「・・・ふむう」

~あの艶やかな白髪から匂い立つ甘い香り~

癖のない自然な香りは香水ではなくシャンプーからだろうか

「・・・」

5ポイントを進呈しよう

健全な中学生男子にとって女の子を完璧に知ることなど皆無に等しい

それなのに欲求の湖はまったくもって底知らずなのだから代わりになるもの、

すなわち想像、妄想、欺瞞によって己の魂を沈めるしかないのだ

シ ャ ン プ ー の 香 り

そこから生まれる妄想のパラダイス。香水など比にならないのは言うまでもあるまい

~ドールのような華奢なからだつきと白のドレスと黒のストッキング、そして追い討ちをかけるように絶対領域から垣間見れるガーターベルト~

幼さをファッションでカバーしていると予想できる。靴擦れしそうなガラス製のハイヒールを見るに間違いない。

「・・・」

10ポイントだ

あの身長だと背の順では一番前なのだろうか

だとしたら朝礼の校長先生には嫉妬せざるをえない

全校生徒にあいさつを大義名分に先頭のパックンを特等席で視姦し放題ではないかああけしからん。

緊張症の俺だが今一度自分を見つめなおすのも悪くはない。

~穏やかなタレ目。それが二次元であればテコ入れといわれても言い逃れできないほどのっ~

反則だ。どちらかといえばツリ目派な俺の心をゴムボールを握りつぶすかのようにグッ、と掴んだのだから反則だ。

性質上、真顔でも微笑んでみえる彼女の瞳は常時笑顔を振り舞りまいていることだろう。

朗らかなベールが体を包み込み、同調するように綺麗な白肌が輝いてみえる。

「・・・」

100ポイント

ポイントの基準などどうでもいい

兎にも角にも、・・・てかなんで俺は心の中で偉そうに語ってるんだ?と自分を見ぬしないかけるほどパックンと名乗るあの女の子は超可愛かった。ただそれだけのことである。

それなのに殴り飛ばすなど、ドンマロも男情がわからんやつだなあと思うがよくよく考えてみればあいつは男ではない。

女子同士ならまた違った価値観があるだろうし中学生女子に中学生男子の心情など到底分かってもらえないことなど俺達は常に心得ている。賢者になりしその感覚は、研ぎ澄まされるだけではないのだ。

物理的な面での抗議材料として“転落によるびしょ濡れ”があるが事前から衣服が潤っていた俺らを知らないドンマロではないだろう

そんなこんなで現場に戻った俺達は定位置につき、なにも言わずにパックン一味との対峙を再開した。

・・・

・・・

・・・

相変わらず甲板上の足元は、静寂をもって支配している。

山道に棲みつく小鳥の囀りは今はむなしく響くだけ。BGMがなくSEだけ鳴り続けるゲームといったところか。

もしこんな空気が昼休みに漂っていたら、ろくに食事も喉に通らないともヤミヒロは思う。

しかしながら正面の可憐な少女に、空気をよまず感情を抱いているのは事実であって

・・・ほんとかわいいよな・・・

まじまじと彼女の顔を見ているとその口元がゆっくりと開き始めた。

「さて、・・・この時もまた・・・味わい深い美酒ですが・・・そろそろ休息タイム終了といきましょうか。」

ガラスの靴を響かせながら近づき、同時に話す

「最終関門・・・・・・・・・・・・・・・受けてみます?」

首を傾げながら近づいてくるその姿に不覚にも当然萌えたがそんなことはどうでもいい。とにかくこれは宣戦布告だ。あと俺に向かって歩いてきているのはたぶんリーダーだと予めわかっていてのことだろうがそれでも期待してしまうのは男の性。そんなことはどうでもいい。とにかくこれは宣戦布告だ。

「・・・!?」

パックンとの距離、ほんの3メートルで突如視界が背部によって遮られた。そしてそいつは言った。さっきまでヤミヒロが萌えていた彼女を、こっちにくるなと払いのけながら

「・・・ふざけんじゃないわよ」

パックンの言動はついにドンマロの逆鱗ふれたのだ

「ふざける・・・なんのことですの?」

戦いの火蓋は

「それがふざけてるっていってるのよ・・・!!!」

ブチ切られた

「なに??人の大切な物を奪っておいて、散々コケにして、おまけにその嘲笑ったかのような上から目線・・・はっきり言わせてもらうわ・・・・あんた・・・・卑怯者よ!!!」

普段の冷静沈着な彼女からは想像できない憎悪に満ちた背中を前に、ヤミヒロはカカシのように立ち尽くすことしかできない。いやむしろこの背は本当にドンマロのなのか?と顔を覗きたいぐらい常軌を逸している。・・・女ってこええよ・・・

「卑怯?・・・あらあら・・・どうやらなにもわかってないようですわね」

そういうとパックンは後ろ下がりつつ、いつのまにかカラピンが用意したであろうイスに腰をかける

「た、し、か、ドンマロさんといったかしら?・・・いいわマロさん。ヒステリックな状態の貴方に真意を言っても意味はないので・・・少し落ち着くよう、お話をしましょう」

「・・・」

「唐突ですけどポーカーはご存知?」

「・・・本当に唐突ねぇ・・・大体は知ってるわよ。ツーペアとかフラッシュとか・・・役とチップを賭けて争うゲームよね」

「お見事。さらにはそのチップを利用して心理戦ができることから“poker face”なんて単語も有名ですわ」

「・・・で?」

「そのポーカーの勝負をする時、フードを被ったりサングラスを掛けるのは・・・」

見直す形で直視するタレ目にはもう、穏やかさは微塵も感じ取れない

「卑怯だと思いますか?」

「・・・」

・・・卑怯だろ―とヤミヒロは思う。口は嘘をついても顔は正直だ、と、どっかで聞いたことがあるし、相手の顔面は心理戦において重要な要素だ。

それを見えなくして自分だけ相手を観察するなど卑怯で不公平ではないか。

だがしかし眼前の背中は、・・・それは卑怯とは言わないわ、と自分の考えと真反対の答えを発した。

「あらあら、それはまたなんで?」

「ちょっと考えただけなら、“poker faceの不平等性”を訴えるかもしれないけど・・・それは間違いよ」

なぜなら
「同時に“poker faceを逆手にとる”メリット戦略も放棄することになるじゃない。例えば・・・そうね・・・本当は頬がとろけるほど美味しい料理なのに、苦虫を噛み潰すような顔で食べているのをみたら誰も注文しようとは思わないでしょ?そういう騙しテクニックは相手にはっきりと顔を見せなくてはできない。つまりリスクとリータンがあるから公平であり卑怯ではないわ」

・・・な、なるほどなあ・・・

「あらあら・・・マロさんのことちょっと見直しましたわ。そのとおり。現に毎年行われるポーカーの世界大会でも服装は自由。アクセサリーもよほどの機能性がないかぎりOKですの」

「ちょ・・・・っと?」

「そう・・・ちょっとですわ。マロさんは問題に正解してもなかなか前へ進めないタイプ・・・とまではいいませんが・・・・・・あらあら怒らないでください、冗談ですわ。・・・ではもっとわかりやすいお話をしましょう」



「なあなあオラよお・・・完全に蚊帳の外じゃね?」

「大丈夫っすよテルさん、俺もっすから!」

「ンダなあ・・・」

それなりの声量での会話だったが、ドンマロはもとよりヤミヒロやクルタンまで神妙な面持ちで耽っているのでスルーされた。

・・・さて、どうなるのやら・・・

リーダーの一抹の不安はメンバー全体へと飛火していく



「マロさん、イメージしてください。ワタクシとアナタは拳銃をもっています」

そして

「弾はお互いに一発づつだけ充填しており、合図とともに殺し合います」

「・・・早撃ちってこと?」

「そうです。殺害方法は射殺のみ、合図はお互いに公平と仮定。場所はここ甲板上。さてマロさん。この状況下でどちらかが“卑怯”だといえますか?」

「両者ともに卑怯ではないわ。死と生は一つしかない、価値は平等なものよ」

「では、ワタクシが他のエヌピィシィメンバーに銃口を向けてマロさんには自害するよう要求したなら?」

「卑怯よ」

「撃てば勝てるのに?」

「卑怯よ」

「では、その銃が撃たれても死なないエアガンだったら?」

「公平ね。アンタはただ自滅しているだけ」

「あらあら、ではその銃はやっぱり本物で、私の背後にも仲間がいたら?」

「公平ね。まぁ苦肉の策としてしか使いたくないけれど」

「ならば・・・」

「その状況下で・・・」

「私の銃だけ壊れていたら?」

「・・・」

・・・なにが言いたいんだパックンは・・・

話の真意が理解できないヤミヒロは爪先で顎を砥ぐ

「アンタさっきからなにがいいたいのよ」

「あらあら、まだわかりませんの」

「・・・」

「要はねマロさん。状況によって卑怯か卑怯ではないかは決まる”のですわよ。人間一人だけで量れるものではありませんの」

「マロさん言いましたわよね?ワタクシに“卑怯者よ!!!”と。自分の知りえた状況しか頭に入れず、暫定被害者の声しか聞かず、勝手に決め付けて」

「で、でもクルタンのペンを盗んだのは事実なんでしょ?」

「ええ、事実ですわ。ペンを盗んだのはワタクシで相違ありません」

ですが
「ペンを取り返すためにエヌピィシィメンバー動かしたのはワタクシではありませんのよ」

「・・・???」

「考えてもみてください。ワタクシはクルタン兄さんの実の妹ですわよ?取り返そうとすれば斬っても切れない家族の血。自分ひとりで容易く解決できるではありませんか」

「で、でも、そうできないように色々策を練ってるんじゃ・・・」

「あらあら、クルタン兄さんの策士スキルの高さはご存知でしょ?知恵で勝てるわけがありませんの。ワタクシはただ単にペンを盗み、“返してほしくばエヌピィシィメンバーと共に指定の森に来られたし”という、なんの脅迫力も持たない置手紙を残しただけですわ」

「そ、そんなはずは・・・」

「あらあら百聞は一見にしかずですか・・・いいでしょう・・・ぴいちゃん、聞こえているのでしょ? 例の物を」

「かしこまり!!!」

すると少女が奥から出てくる。その“例の物”はパックンへ渡され。そして、

「ほうらクルタン兄さん。しっかり受け取ってくださいませ」

クルタンへと投げられたそれは俺達、メンバーの象徴といえるものだった

「これは・・・私の・・・ペン・・・」

震えながら握り締める手にあるのは紛れもない、クルタン愛用のペンだ。

「そうですわ。コホン。これをもって最終関門の問題を告げる」

一呼吸置き、場を制したパックンは発する

「“ペン回しとはなにか示せ”制限時間は30分。答えがわかりしだい声を掛けてくださいませ。それでは暑いので暫し失礼」

いい終わるとパックン一味は冷房の効いたクルーザー内部へと消えていった。


・・・


・・・


・・・


静けさ。パックン一味との対峙直後とはまた違った静寂に包まれている。

相手がどう動くかではない。自分達がこれからどうしなければならないか、自分の矛先は自分に向いているのだ。

そんな最中、彼女は言った。

「クルタン、ちょっといい?」

「・・・なんでしょうか」

「さっきのことは本当なの?自分ひとりで解決できたって話」

「・・・本当です」

「・・・」

事実を確認したドンマロは、そう、とだけ言い残すと帰るようにして一人、船を下りる。

ソレを見かねたヤミヒロは追いかけようとしたが瞬間、バドシに肩を掴まれた。

「リーダー、一人にさせてあげましょう」

「いや、でも」

「ふぅ・・・この森での試練も残すところあと一つっすね」

焦り顔のリーダーとは対照的で落ち着いたバードシー

「思い出してくださいリーダー、この森で一番活躍してたのは誰なんですか?」

「・・・」

・・・そうだよなあ・・・

ドンマロだ。第一関門の閃きといい第二関門の物探し、第三関門は一緒に溺れた身だが、それくらい頑張りまた、活躍してくれたのだ。もしかすると一番楽しんでいたのも彼女かもしれない。


「根拠ないっすけど・・・たぶん休憩してるだけっすよ。大丈夫。・・・きっとっすよ」

「・・・う・・」

―きっとっすよ―そんな曖昧な思いで掴まれた肩がこんなにも暖かいのはなぜだろう。

ヤミヒロはそんなこと思うと、焦りの色は薄れていた。

「・・・わかったよバドシ。とりあえず四人で話合おう。それでいいよな?テルもクルタンも」

おう!と応答したのは片方だけで、しかし会議は始まった。



「大丈夫なんですかパッ嬢、一人脱落したみたいですけど」

クルーザーの内部。室温18度に設定させた極楽空間でお茶をするのは、二人の少女。

外はカラッカラの真夏だというのに、ホットティーに湯気がたつ。

「そうですわね、でも心配ないわ。対話をしていて感じました。彼女はそんなにやわじゃない」

「はあ・・・でも最終関門も難しいじゃないですか。“ペン回しとはなにか示せ”なんて哲学染みた問題ですよ?せめて“FSではなくペン回しを示せ”みたいなヒントを上げてもよかったのではないかと・・・」

「ヒントなら上げたじゃありませんの。“愛ペンの返却”により、答えを求める前にまず、問題に挑むか挑まないか。つまり原点を見つめなおさなければならないという最大級のヒントをね」



「なあなあ オラから質問いいか?」

開口一番、テルがなげかけた疑問は、それを言わなくて始まらない当然のことだった。


「クルタンはよお、最終関門受けたいのか?」

俺達はいままでクルタンの愛ペンを取り返すためここまで挑んできた。

しかし最終関門にきて突如、その意味がなくなったのだ。普通ならここで帰ってもいい。帰ってもいいが聞かなければならない。俺達とは違った理由で動いてきたクルタンがどう思っているのかを。その意味をだ。

クルタンはテルに問われるとやや下を見ながら、いつもより低い声で答えた。

「パックンは・・・・昔から穏便な子でした・・・・。物心ついたときから喧嘩はおろか怒った顔さえみないほどの子でした。学業も優秀でそんな妹が突然、あのような窃盗まがいなことをするとは当初は信じられませんでした・・・・。パックンの言うとおり自分でどうにかしようと思えばできました・・・・。部屋に勝手に入り、無理やり返却を要求したり、公平無私の父にチクれば容易かったことでしょう・・・」

「でも・・・それができなかった・・・・・偽善心からではありません・・・・求めてしまったんです・・・・“パックンがなぜこのようなことをしたのか”を・・・」

「変な話ですよね・・・人の大事なものを盗んだ人間の真意が知りたい・・だなんて・・・でも興味があった・・・不思議なことだった・・・そして真意は・・・関門をすべて解かなければ・・・パックンは解き明かしてはくれないでしょう・・・」

だから
「・・・受けたい・・・受けて全てを知りたい・・・なぜこんなことをするのか・・・その真意を確かめたい・・・」

「身勝手なことはわかっているつもりです・・・お願いします・・・助けてください・・・」


・・・


・・・


・・・


再びの沈黙に、けどよぉ・・・と頭をかきながらテルは言う。

「クルタンの言いたいことはわかったけどよお・・・ドンマロがいなんじゃあなあ・・・」

話し合いの上でもっとも頼れるのはドンマロである。これは同時にドンマロがいなければエヌピィシィメンバーは骨抜きになることを指し、ぐぬぬ、となったヤミヒロは自嘲とともに心で叫ぶ。

・・・くそぉ!非力なリーダーだなあ!!!・・・

ここは俺がドンマロをとっ捕まえてきて、リーダーとしての威厳を保つこともやぶさかではないが、仮に捕獲してきたしても結局は彼女の知識力がエヌピィシィを救うのだから相対的になにもかわらない。唇をかみ締めるしかリーダーにはできないのだ。

「“ペン回しとはなにか示せ”なんて難題っすよね・・・」

会議時間5分も満たないところで早々にデッドロック。

このままドンマロの帰還を祈るしかないと思った矢先、一人少年が前へと動き出した。

「ちょっ、どうしたクルタンまだ時間はあるぞ?」

「空をみてくだい。そこまで猶予はないですよ・・・」

見上げる空、気づけば鈍い雲が一面を覆っていた。

・・・山の天気は変わりやすいというが、ここまでガラリと変化するとは

いつ大雨が降ってきてもおかしくない状況下だと知った皆に対し前方の影は言葉を重ねる

「ペン回しとはなにか示せ、そんな難しく考えることではないのでは?・・・渾身のFSをパックンに見せつける・・・これが私の答えです」

「あらあら、それが答えですか兄さん」

瞬間、前方の影の先、一つのドアは勢いよく開いた。

「答えがでたのなら見せてください兄さん」

「いいでしょう・・・私の妹よ・・・」

そしてクルタン、3日ぶりの再会を果たした愛ペンを軽く握り“解答”を始めた。


・・・


・・





「すぅ・・・・はぁ・・・・っ!」

321ドラマー⇒

フィンガーレスリバース⇒

23-45シャドウ⇒

4-ソニック⇒

3-シメトリカルソニック⇒

3-ダブルチャージ...

ゆっくりと回し始めたペン軌道を瞬間的に解析するのはヤミヒロの癖である。

決して速くはないが、つっかえもしない。双頭とよばれる重心がほぼ真ん中であるペンから繰り出される技の数々はペン回し歴の浅いクルタンにとって簡単と呼ばれる技ばかりではない。

とくにシャドウという手の甲でペンを回転させる技はかなりの練習量が必要だっただろう。

・・・まだまだクルタンのFSは続く、

2-バックアウンドリバース>>

スクエア(1.1スプレッドダブル)⇒

コンティニュアンスフィンガーレスリバース×2⇒

・・・おいおいどんだけ無茶してんだ!?・・・

上級者にとってみれば朝飯前の技だとしても、スクエアをFSに組み込むのはやり過ぎている。 かろうじて成功さえしているものの手首が大幅にぶれ、不安定化している。

そしてまだまだ続く強がりなFSは案の定、その先に続くハーモニックで失敗。

ペンは甲板の床に勢いよく転がった。

しかしクルタンは間髪入れずペンを拾い上げ、前方に向かい睨みつけるようにして声を響かす。

「・・・もういっかい・・・」

321ドラマー⇒

フィンガーレスリバース⇒

23-45シャドウ⇒

4-ソニック⇒

3-シメトリカルソニック⇒

3-ダブルチャージ...

・・・なるほど・・・

・・・これがPVのために練習していたFSか・・・

さっきとまったく同じFSにヤミヒロは感づく。このFSはアドリブではなくしっかり思考して作られたFSだと。

それはPVで使う自分のFSではあること意味し、だからこんなにも無茶苦茶な構成を躊躇なく回しているのだ。

その瞬間、ペンは再び叩き付けれる。二回目の失敗だ。

「・・・もういっかい・・・」

321ドラマー⇒

フィンガーレスリバース⇒

23-45シャドウ⇒

4-ソニック⇒

3-シメトリカルソニック⇒

3-ダブルチャージ...

手の向き、回転の角度、手首の位置、寸分狂わずさっきのFSと同じもの。

・・・いったいどれだけ練習してたんだよ・・・

2-バックアウンドリバース>>

スクエア(1.1スプレッドダブル)⇒

コンティニュアンスフィンガーレスリバース×2⇒

ハーモニック(一回)⇒...

単体である技を習得したとしてもその習得した技をFSへ自由自在に組めるとは限らない。それはそれとしてスムーズにできるようひたすら練習しなければならないのだ。

ついこの前まではスクエアなどまったくできていなかったクルタン。何度でも思う。

・・・・やりすぎている・・・・・

「ガシャンッ・・・・ゴロゴロゴロ」

3回目の失敗。日本では三度を境にすることわざが多いが、そんなことなど関係なく彼は再びペンを握る。

「・・・もういっかい・・・」


・・・



・・・


・・・


何度もの何度も失敗し

何度もの何度もペンが転がり

何度も何度も繰り返す

そんな姿を眺めるヤミヒロは、ふと、パックンを見た。

冷静で、こうなることが当然とばかり突っ立ている。


・・・


・・





・・・なるほど・・・そういうことかよ・・・


気づいてしまった。

どうしてペンを盗んだのか。どうしてエヌピィシィメンバーを巻き込んだのか。その真意がなんとなくだが理解してしまった。

・・・クルタン・・・おまえ・・・・


・・・


・・・


・・・


「・・・もう・・・いっ・・・かい・・・」


FSを見せると豪語してから約10分

失敗も気づけば12回に達していた。

一番長く続いたFSは最後の〆技で失敗したらしいのだが、その〆技があろうことか1.2-スプレッドシングルアクセルというこれまた初心者には難易な技だったことから、もうこのFSは今のクルタンでは不可能という結論にいたった。

あとはどうクルタンを止めさせるか、リーダーは脳みそフル回転で知恵を絞るもなかなかうまくいかない。

「バンッ・・・ゴロゴロゴロゴロ」

13回目の失敗。クルタンの視線はもうペンにしか向いていない。

表情はやつれ、失敗を重ねるごとに眉間のしわは濃くなっている。そんな鬼の形相なので声を掛けづらいのだが、どうやらバカは違ったらしい。

「なあなあクルタン」

「・・・なんですか、邪魔しないでください」

「ペン回しってさ・・・・・・」

そのバカは場違いなほど満面の笑みで言った。


「ペン回しってさいっっっこうに、たのしいよな」


「!?」

「だから帰ろうぜクルタンよ、オラは早くみんなでPVが作りてえよ」

ペン回しは楽しくなければ意味がない―テルの言うとおりだ
小学生のときは気づきもしなかった。こんなにも心を動かし、感動し、楽しい“可能性”が学生にとってもっとも身近なこのペンに宿っているなど夢にも思わなかった。

そのペン回しが楽しくなくなれば、ただの文房具になってしまう。

「・・・でもテル君・・・私はFSを・・・みせ・・・なく・・・て・・・は」

この後におよんでまだそんなことをぬかすクルタンに対し、久方ぶりに殺戮のギャップナイフが発動するのも仕方ない。

「・・・おい・・誰が・・・」

「誰がFS見せろっつたよ!!!あ!???パックンとかいう輩がゆうたのわなあ?“ペン回しを見せろ”やろうが!!!あ?????????」

・・・相変わらず切れたらおっかねえ・・・バドっつあん・・・・

「おんだらのFSはたしかにすごかった。正直な話、先にエヌィピィシィ入ったわいよりうまいと思った。嫉妬もした。」



やけどな・・・



「なんで“もう一回”なんて悲しいことゆうんや・・・」

「なんで失敗をやり直そうとするんや・・・」

「なんで失敗を否定するんや・・・」

「・・・失敗もペン回しだろうが!!!!!」

「!!??」


瞳には涙が浮かび、ハッ、としたクルタンを見るにどうやら目が覚めたらしい。


・・・そうだよなあ・・・

ペンスピナーはいったいどれくらいの失敗を積み重ねてきたのだろう。一回の失敗を0.001秒ほどの〝瞬間″に換算しても、動画に残した総FS時間よりはるかに長いと思う。

それくらい失敗してもなお、楽しいのがペン回しなのだ。

「・・・私は・・・間違っていました・・・・」

反省を言葉にしたクルタンの前には、もうパックン一味の姿はない。

・・・やっぱこれが最終関門の言いたかったことか・・・
同じ屋根の下に住むパックンは兄が四六時中ペン回しをしているのを気にしていたのだろう。あの無茶苦茶な難易度じゃ無理もない。

これはペン回しに限ったことではないが、階段は一段一段上るのが定石であり、無理に一段飛ばししようものなら上達は遅れ、ただただ苦痛だけが蓄積されていくものだ。

その苦痛が顔に出ているのをパックンに見られたのだろう。

「じゃあ帰るか!」

リーダーが合図し、エヌピィシィメンバーは船から浅瀬に下りる。

「ドンマロは結局どこいったのかね・・・」

これは長い帰り道になりそうだなと砂利を踏み鳴らしながら進むが、足音が少ない。

振り返るとそこには立ったままのクルタンがいた。

彼は目線が合ったことに気づくとうつむきながら微かに震えている

「どうしたっすかクルタン、まだなにかあんのか」

「いえ・・・そうではなく・・・私は本当に間違っていました。誰よりもうまくなろうと躍起になって大事なことを忘れていました。・・・そうですよね。・・・FSだけがペン回しではありませんよね。それを分からせてくれた仲間達には感謝しています」

しかしながら
「本当にいいのですか・・・私は・・・私は・・・・・この事件の主犯格で・・・・みんなに・・・仲間なのに・・・・大事なとこを黙っていて・・・・・」


ぽた・・・ぽた・・・ぽた・・・ぽた・・・ぽた・・・ぽた・・・




鈍い不安が解消された、晴れ直した空なのに。








「私は・・・みんなを・・・エヌピィシィメンバーを・・・使ったのですよ!!!」









崩れ落ちた。

様々な想いとともに崩壊した。

崩れて、落ちて、割れて、飛び散って、マイナスの感情はメンバーに伝播していく。

・・・ここでカッコつけたくなるのは、やっぱリーダー気質があるのかねぇ・・・

両手を地につけて泣き崩れているクルタンをみて、そんなことを思うのはいけないことだろうか

とにかく崩れた彼に言うことは決まっていて、それは皆も同じことだろう。

問題はどのタイミングで言うかなのだが、


・・・


・・





「フフッ」
どうやら骨折り損になりそうだ。

こういう俺でもカッコつけれる場面で決まって漁夫の利まがいなことをしてくるヤツのこと忘れてはいけない。

「主役は遅れてやってくるのよ!・・・なんてねっ」

決め台詞まで用意してやがった。

「ねえクルタン、なにやってんの?早く帰りましょうよ」

「・・・・私はエヌピィシィ・・・メンバ・・・・を・・・・使った・・・」

彼女は笑った。“使った”の一言で全てを理解したらしい。その上でクスッと笑ったのだ。

「たしかに私は使われたわ。ほんと・・・、あれほどムカついたのは久しぶりねえ・・・」

ドンマロは吐き出すように憎悪を叫ぶ。

「うざい!」「憎い!」「キモい!」「死ね!」「死ねよ!!!」「死んじまえっ!!!!」

「・・・」

「ふぅ・・・・ちょっとスッキリしたわ」

「そのとおりです・・・私は仲間を使った・・・さいていの・・・」

ホントバカね、アンタ!!!いつのまにか浅瀬へ。クルタンの襟首を掴んだ彼女は言う。

私たちを使ったというのなら

「なんでアンタの服は、こんなに濡れてんのよ」

「アンタねぇ・・・使うってつまり、道具として、物として、自分より常に下の位置でみてるってことよね?」

「・・・」

「丁度この場所だったわね・・・私、しっかり見てたわよ。アンタがヤミヒロを助けようとして道連れになったとこ」

「そ、それは・・・条件反射みたいな・・・もので・・・・」

「いいえ違うわ、条件反射はライターを引いたときにしか起きてない。その後、アンタはわかっていたはずよ。ヤミヒロはもう助けられないって」

「・・・」

「それでも助けに行こうとした・・・・無理だとわかっていても、アンタはなにもせずにはいられなかった・・・」


「・・・」



ただただ黙り込むクルタン。沈黙にして答え、といったところか。そして最後に彼女は言う。


それはエヌピィシィメンバー皆が言いたかったこと。代弁するようにドンマロは問いかけた。


「私たちを使ったのはクルタンじゃない・・・使ったのはアンタの妹よ!・・・クルタンは・・・」



「頼っただけじゃないの?」



「!?」



・・・


・・





「さあ帰りましょうクルタン。はい、みんな差し入れよ!」

ドンマロはリュックからドライアイスとガリガリ君の入ったレジ袋を取り出した。

「・・・おまえ・・・これ買いにいってたの?」

「なによ・・・リーダーはいらないの?ならテルにもう一本あげるけど」

「ごめんなさいなんでもありません」

こうして長いような短かったような試練の旅は終了を告げた。



「あの・・・パッ嬢? これでよかったのですか?」

「ええ、とても有意義な時間を過ごせましたわ」

「では、今度はなにをしましょうかね・・・アタイは海外に言ってみたいねえ・・・グフフ」

「あらあら、なにを言ってますのぴいちゃん。まだ終わってはいませんのよ?」

「え・・と・・・はあ???」

「これから先、どんな苦難が待ち受けるのか。エヌピィシィの本質をみていこうではありませんかフフフ」




それから数日後。夏休みは残り数日となった今日は、エヌピィシィメンバー一同が集まり最後のPV製作作業を行おうとしていた。

「これでクランクアップっすか・・・楽しかったっすねぇ」

俺達はテル家のちゃぶ台を軸に均等に座り、カメラは予め真上に固定してある。

「まだ終わってないわよバドシ。これからが楽しいんじゃないの」

最後の動画撮影。皆きちんと課題のFSを提出したのだが、ヤミヒロ渾身の1分に及ぶOPが、くどい、という理由だけで30秒まで割かれ、余った空白をこうやってみんなのペン回しを撮ることで穴埋めとしたのだ。

「ここは一発勝負の美学でいこうじゃないかオマエら!個々で失敗してもそれはそれとして納得する。それでいいよな?」

OPが短縮されたことはまことに遺憾だったが、その代わりのアイディアが良かったので許すことにした。全体でわいわいペン回しをする動画は個人主義のPVにおいて画期的で素晴らしいものだと思ったからだ。

「もちろん問題ありません・・・シュッシュッ」

クルタンは今回、レベルを落としての参加である。俺もそのFSは観たが、

たしかにクルーザーでみたFSより簡単なものだった。が、その分クルタンペン回しの特徴“安定性からのダイナミック”が巧みに発揮されており実にクルタンらしいFSだった。

「御託はそこまでにして早くやるンダ!あとそれはそれとして失敗したら罰ゲームな。ガリガリ君10本。オラやっぱソーダ味がいいぞお」

「御託はどっちだ!!!!!!」

俺らは知ってるぞテル・・・おまえがガリガリ君大好きなこと・・・。

そして俺は知ってるぞテル・・・万が一自分が負けても、大事に引き出しにしまってある当たり棒10本で済ませようとしていることも・・・。

カメラの撮影ボタンを押すヤミヒロ。

ぶっつけ本番。ディスプレイの右上が赤く点灯したのを確認すると速やかに定位置へと戻る。

クルタン、バドシ、テル、ドンマロ、ヤミヒロ

一人当たり平均、6秒で行う技は予め決めていた。

それは、FSでもなく、スプレッドでもなく、シャドウでもない、

ノーマルとソニックだ。

ペンスピナーにとって誰しもが必ず通る道。

簡単な技だが、練習しなければ習得できないペン回しの原点。

エヌピィシィメンバーはその二つの技をゆっくりと、想いを込めながら回す。

初心を。楽しい記憶を。挑戦することを。忘れないように。

ドンマロが回し終えると次は最後。俺の番だ。

この夏休みのこと。あの森での思いながら回す。

ソニック・・・そしてノーマル・・・。

・・・

・・





・・・ペン回しって・・・最高だよな!!!・・・













クランクアップ

これでPVの撮影はおしまいだ。あとはパソコンにデータを読み込み、ムービーメーカーで穴埋めするだけ。

・・・

・・・

・・・

・・・の、はずだったのに・・・

皆がシミジミまったり回していたせいで、最後ヤミヒロのペン回しだけ撮影時間が終わり、撮れなかったのだ

「撮影時間30秒きっちりに設定するやつがあるかよ!!!!」

そうテルに嘆いたのは後の祭りで―だって後で動画編集するのめんどくさいし・・・これも失敗のうちなンダ~、とヌかしてきたもんだ。

「もういいよ!俺単体で撮るから!!!うまく合成するから!!!!」

パソコンの前に座るテルを引っこ抜き、編集を独占したが案の定素人にうまく合成などできるはずもない。まるで卒業写真の欠席者みたいなリーダー。不憫なリーダー。

・・・ほんとにリーダーかよ俺!!!・・・・

辛くも苦い

本当にいろんな感情がつまったエヌピィシィPVその夜完成した。

プロモーションビデオ

観てくれた人に感動とまではいわないが、とにかく楽しいグループだと伝わればいいな。

パソコンの画面から反射して見える彼は夢中になりながら、左にもったライターをシュッシュッと鳴らして右手でペンを回している。そんな姿を見たリーダーは気づく。


・・・そうか・・・PV・・・とても良かったけど・・・そうか・・・


ポケットから自分の愛ペンを取り出し、回しながらボソっと独り言をつぶやいた。



・・・



・・








「2ndPVは冬休みかなぁ」











振り返るには近すぎる








そしてまた








俺達で走りだした











 【エヌピィシィ物語PV編】
    
      ~完~

人に一番勧めたいアニメと自分が一番好きなアニメが違うのはなぜか

2011-12-20 23:50:20 | 哲学/世界観
奇抜な落語家はいいました
「綺麗な笑いなど俺は面白くない」と

孤高の哲学者はいいました
「人間の最大の快楽は知的好奇心の中にある」と

半漆黒の芸人はいいました
「1クールのレギュラーより一回の伝説」と

皆に共通するのは娯楽ゆえの過酷である

それでいて至高なのだから面白い

”教えて”といわれて”見つけて”と返す

感じは悪いが極論ではないだろうか。 byヤミヒロ









第XI話プロモーションビデオ編~参の門~

2011-12-14 13:05:30 | NPC@13物語
二関門目を突破したエヌピィシィ一同は次のステージに進むべく山道を歩いていた

もうここに来て1時間は経つだろうか

ヤミヒロは歩きながら後ろを向くと一行の顔色をみてみる

・・・が、あまり芳しくない様子だ

普段ならここでムードメーカーのテルあたりが、なぁなぁ中学生なんだから元気に行こうぜ!とかなんやらいってくるのだが―

なんかもう一番顔色悪くね?

これでは元気になるわけねぇーだろうが!!!と怒りながら元気になることができない

今のエヌピィシィを二文字で表すなら“疲弊”そのものだった

なぜこんなことに・・・

そう考えているといつのまにか最後尾を歩いていた

どうやら皆の身体は良好なようだ

無駄な動きをしたり騒ぎ走ったり探し物をしたり踊ったりとそろそろ休憩を挟んででもいい頃なのだが皆の後ろ姿は実に安定している

山道は土でできていてまた整備もされているので足腰への負担が少ない

普段の都会生活ではアスファルトの硬い道なので思いのほかすいすい歩けていた

となるとやはり原因は・・・

小柄な背部を視界にロックする

ドンマロだ

「・・・」

別にドンマロが悪いわけではない

むしろここまでよくやってくれた

まだ半分しか問題は解かれていないが、だとしても今日のMVPはこいつで決まりだろう

そのくらいエヌピィシィに貢献した

・・・だがしかしドンマロだ

「・・・」

いやドンマロが原因なわけじゃない

ドンマロを見ていると疲弊の理由が分かりやすいだけだ

背中に答えが書いてあるといえばいいのか・・・

ふと前方で声が開く

「へっくしょんっ!」

「ん?ドンマロ風邪か?」

「違うと思うんだけど、誰かが噂でもしてるのかしら」

一瞬ビクつくヤミヒロ

「そうか、よかったんだぁ~・・・」

やや下に顔を向けながら話すテルに対し、全然よくないわよと呆れ顔になりながら

「テルの方が風邪なんじゃない?顔色悪いし」

返答はない、どうやら自覚はしているようだ

さて、どう労ったらいいのかと考えていると隣から話し声が生まれていた

「まだっすかね目的地、てかなんでこんな疲れてんでしょ・・・なにもしてないのに」

「バドシ君答えを言っていますよ。なにもしてないから疲れているのです・・・シュッシュッ」

「ですっすよねえ・・・」

この森に入った当初は、全員が年相応の好奇心に駆り立てられていた

あるものはラスボスに期待し

あるものは死闘の先の感動を求め

あるものは仲間との友情ドラマを先読みし

ようするに、やるぞ!という熱意で心地いい汗をかいていたのだ

それなのに

挫折する現実さえヌルイと言わざるを得ない「無」をぶつけられた超現実に

汗が冷えて風邪を引いてもおかしくはなかった

「少し話変わるっすけど、そもそもなんでクルタンは弟さんはペンを奪ったりしたんですかね」

「・・・」

「あ、話したくないならいいっすよ?こうやって協力してるにせよ家庭の事情は家庭の事情っすから」

「シュッシュッ・・・優しいのですね。しかしながら皆目検討がつかないのは事実です。三日前。私がペン回しの練習をしようと筆箱から愛ペンを取り出そうとしたら無くなっていて・・・代わりに交換条件の書いた紙が入っていました」

「普段からそういうイタズラは?」

「まったくないですね。基本的に無口で行動力はあまりないほうだと思います」

「そうすっか・・・」

謎は深まるばかりっすねぇと顎に手を置き歩いていると足元の感触の違いに気づく

「ついたわね」

土から石に変わった先には幅10メートルほどの川が左から右に流れていた

「ここが第三関門の舞台だぞオマエら」

最後尾のヤミヒロが、刮目するように!とオンラインカメラのディスプレイをこちらに向けた



~水中でペン回しの技であるトルネード(1.2スプレッドダブル)の成功動画をこのカメラで撮り送信しろ なお水中は指定した河川の中で行うこと~


これが第三関門だ

ノーマルというペンを親指に巻きつけるようにして回す技のモーメントを利用しさらに人差し指に巻きつけてキャッチする

これがトルネード

初心者最大の壁ともいえる技でエヌピィシィメンバーはいちよう皆できるが成功率をとてもよいとはいえない数字であり、しかもそれを流れも含む水中など、成功どころかどう失敗するのかさえも分からない未知の領域なのは間違いなかった



百聞は一見にしかず

とりあえずやってみようということで濡れないように靴と靴下を脱ぎズボンを捲った

「ドンマロはスカートじゃなくてよかったな」

「そうね、スカートなんてキャラじゃないのよ」

澄まし顔のその刹那、風が舞った

その異変を誰しもが認識する

そしてただ今起きた事象に口を開け首を動かすことしかできなかった

・・・

・・



「あー・・・なんか・・・あ、あれよね?・・・今、全速力で川にダイブして・・・馬鹿みたいにいなくなったけどあれは・・・風よね?」

・・・

・・



「あー・・・なんか・・・うおおおおおおおおおおおおお!!!とか言いながら飛び込んでそのあとはなんかもうゴボゴボいってたっすけど・・・あれは・・・なにっす?」

・・・

・・



「ゴボゴボのあとに、予想以上にふっけぇっええ!!!と聞き取れたのは私だけでいいです・・・シュッシュッ」

・・・

・・



「リーダーとして話まとめるけどさぁ・・・テルは?」

・・・

・・




テルは全裸で溺れていった


一目散に川へと飛び込んだテル。相当、泳ぎたかったのか、暑かったのかは定かではないがどうやら奥はかなり深かったらしくまた、水流も増していたため一瞬で流されてしまったぽかった

助けなければとも思ったが、満面の笑みで流されていったのが確認できたのでまぁ別にほっておこう

「さてどうしましょうか?」

第三関門早々に一名の脱落者に対するこれはもしかしたら難問ではないか?と示すものはもちろんない

「まずは手だけ川に入れて回してみるか」

奥は水流が速く、深い。手前は水流が穏やかで浅い。テルのおかげでおおまかな川の構造は知ることができた

となるとまずは人員が失われかねない奥は回転領域外とするのが必然だろう

手だけ水中に入れてペンを握る

水流は微かに感じる程度だ これならいけるかもしれない

勢いよくペンを親指に巻きつける、が、慣性が少ない水中においてなかなかペンがいうことをきかない

なかば強引に手首のスナップで回転させようとするがそれでも微かな水流に邪魔されたりと、なかなかうまくいかなかった


30分後


体勢は体育座りやしゃがみこむのではなく完全なうつぶせ状態が一番回しやすいので自然と皆が川の字になってペン回しをしていた

ドンマロは他のメンバーはどう水中で回そうとしているのかが気になりふと、立ち上がったが


・・・シュールねえぇ・・・


その光景にまったく身を隠すことができていないダメダメなチーターが脳裏に浮かんだドンマロはすぐにうつぶせに戻った


そこからさらに10分後


いまだに成功者は現われていないことにリーダーは提案を出す

「このままじゃ埒があかねぇな・・」

「・・・ということはなにかいい方法思いついたってこと?」

「いい方法かどうかはわからないが・・・そうだなあ・・・ちょっとクルタン手伝ってくれね?」

そういうと、ちょっと待ちなさいよ、流されたいの?との忠告を無視しクルタンと川に中部へを入り込んだ

「ほらな?この川の中心までならギリギリセーフラインなんだよ」

「らしいわね・・・でっ?」

ドンマロは怪訝の顔でヤミヒロを見つめる 彼らがそこでペンを回そうとしていることは大方予想がついていた、だが


・・・回せるわけがないわよ


たしかにその位置からならあるテクニックが可能となる

深さを利用した上下間の動きだ

それで下から上に押し上げるようにしてペンを回転させればうまくいくかもしれない
 
が、しかし深さと同時に水流の速さも増しているのだ

ペンを押し上げる前にペン本体が流されていくのが必然だろう

「先にいっておくけど 回すのは無理よ 帰ってきなさい」

ドンマロの警告にニヤリと笑うリーダーはクルタンに指示を出す

クルタンはそれの指示を聞き終えるとヤミヒロと距離をとり

・・・

・・



「!?」



・・

・・・

なるほどなとドンマロは驚く

~水流~
 
それは流れてこそ流れていくもの
 
ならば

そこに流されぬ物を置けば・・・

「どうだドンマロこれでも回せないと言い切れるか?」
 
ヤミヒロは片足で立って見せる

「水流を緩くするためにクルタンを使ったのね・・・!?」

そのドヤ顔フラミンゴは非常に気に食わないが試してみる価値はあるかもしれない

「名づけて『作戦!テトラポットタン』だ!!!」

上げた片足と両手の人差し指をこちらに向けて宣言された


・・・


・・





・・・さむいわねえ・・・





・・


・・・


内心でイラっときたがその矢先にヤミヒロの顔色が変わったのことを瞬時に理解する

「ちょっとヤミヒロ?・・・ちょ・・え!!??」


フラミンゴはバランスを崩していた


水流の影響ではない。ただ変なポーズをとってためで・・・ようするにこのままいくと自爆だ

クルタンが慌てて助けに向かうが、それと同時にヤミヒロはバランスが崩壊し一気に傾いた

「あぶない!?」

傾いた位置が悪かった 丁度後頭部を水面に打つ体勢 そして奥側に倒れようとしている

このままではテルと同じように流されてしまう・・・!?



すべてはクルタンの救助にかかっていた



「・・・!!!」

瞬時の動き

クルタンは己の右手を最大限に伸ばすと一人では転倒確実の角度に傾いたヤミヒロの腕を握ろうとする

・・・まにあうわよ・・・!!!

心の中でそう願うドンマロは瞬間の最中一つのある変化に眉を曲げた

・・・まだ腕を掴んでいないのに手を引いてる!?

クルタンはその伸ばした右手をキャンセルするように引き戻し、その代わりのようにして左手を伸ばした

「・・・!!!」

だが時すでに遅し

そんな無駄な動きを刹那が許すはずもない

「うっ・・・ちょ!?・・・ぎゃあああああっうっうっ・・・ゴボボボボボボ」

「シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ」

二人は溺れていった



「・・・」

「・・・」

脱落者計三名 残されたのはわずか二名。名前はドンマロとバドシ

もしかしてこの第三関門 ウルトラ難易度じゃね?と言い出すことはもちろんない

むしろ冷静に分析を始める

「・・・っで マロさん? クルタンはなにがしたかったんですかね」

「そうねえ・・今でもまだ見えると思うから、クルタンの右手 見てみなさい」

どういうことだろうか
 
バドシは下流に首を向けると、もうかなり流されていて中々見えずらい

・・・水流半端ないっすねぇ

自然の力に恐怖しながらその手を凝視するとなにかがしっかりと握られてる

「なんか 大事そうにしてるっすけど・・・あれってまさか」

「そう 右手にはライターが握られているのよ 大事なものだから万が一にでも濡らしたくなかったんでしょうね」

反射神経はバツグンだが状況判断は遅かったためはじめから左手を出すことができなかったというのがあの不可解な動きの原因だった

「なるほどっすねぇ普通は利き手の右手で反応しますしねえ・・・ってマロさんなにやってるんですかい?」

「なにって見ればわかるでしょ、手伝って」

そういうと浅瀬から持ち上げた小石を放り投げる

まったくわけがわからないバドシだったがとりあえず手伝ってみる

そうして10分ほどの時がながれると

「ん・・よいしょっと・・・えいっ、これでできあがり!」

「え?これで完成っすか?・・・いったいなにを・・・」

浅瀬には深さ一メートルほどの穴が開いていた

川水が濁って正確な深さは把握できないがしばらくそのままにしておけば沈殿して透明になるだろう

そのあとになにをするのか・・・疑問に思ったバドシはできあがった穴を覗き込み少し考えてみるがなかなか思いつかない

この水が透明になる頃にはこのモヤモヤも晴れるっすかね・・・

水中に虚無感を覚えたバドシに対しやけに好調のドンマロが近づいてくるとなぜか見下すようにして


「なに意味深に考え込んでるのよ・・・ここでトルネードを撮るネーど?」


「あ?ねぇえよ」

まさかのドンマロギャグ(極寒)による笑いよりもいきなり冷気をぶつけられた憤怒が勝ってしまった

そしてドンマロはごまかすように話題を変える

「時間の有効活用なのよ!」

ビシィッ!と人差し指でバドシを指すと濁った水穴の中に足を入れてペンを取り出す

「透明になるまでの時間 トルネードの成功率をあげるために練習するのよ!とはいっても穴の中でやっちゃうとまた濁っちゃうから空中でね」


・・・いや今、足入れたせいでまた濁ったっすけどね・・・


と思うが言わないでおこう なぜかドンマロさんはノリノリである

「ヤミヒロが考えた策をもういちど実行するのもありっちゃありなんだけど・・・、やっぱり危険すぎるって思うのよ 現にああやって流されてしまったしね だからこうやって穴を作ってなんとか上下間の距離を安全に稼ごうってことなんだけど・・・どうかしら?」

「んー、いい策だと思うっすよ」

不安要素がないといったら嘘になる

上下間の距離を稼ぐといってもヤミヒロとクルタンが失敗した川の真ん中の水深に比べたら微々たるものだ

いざ回すとなると下手に失敗したら水が再度濁り 透明になるまで撮影を中断しなければならないという現実的な問題もある

それでも賛成した理由は二つほどあり、やはり犠牲者がでないというメリットと

・・・もう一つは・・・まぁ恥ずかしいから言わなくっていいっすよねえ・・・

少し顔を赤らめたバドシは再度 穴の中をのぞきながらペンはトルネードの軌道を描く

「なかなか透明にならないっすねえ・・・って・・・え!!!???」

眼前の白肌足が急速な変化を与えていた

・・・まずいっすかね!?これ・・・・

穴の中に足を入れ宣言どおりトルネードの練習を行っていた彼女は”とある重大な問題”を忘れていた
 
それはミスだ

空中で失敗したトルネードはその激しい回転量からどこにとんでもおかしくはない

そして今まさに彼女の手からペンが離れ、遠くへ向かっている

・・・さっきまで水中で練習してたから忘れてたっすね・・・・

失敗の軌道を追いかけるようにして白肌の踵は上がる

その無意識な行動に、”追いかけている先の光景”は目で見ていても脳が処理しない

・・・このままじゃ 同じことになるっす・・・!!!

その光景は最悪なことに川の奥、すなわち多くの犠牲者を生んだ死の境地のことだった

そこに向かったペンの放物線は、案の定と割り切るべきか、災の連鎖と悲観すればいいのか・・・ともかくバドシはそこで起こる映像を目に焼き付けることしかできない


~条件反射の一歩目
 
彼女はペンをキャッチするために脚を走らせる

が、自分が穴の中にいるということを忘れて思いきり踏み外す


~異変後回しの二歩目


なぜ踏み外したのだろう

その疑念は、とにかく愛ペンを守らねば、という想いにかき消させる

アンバランスになりながら強引に片足の脚力だけで前へ跳ぶ


~全力全開の三歩目


奇跡的に体勢を立て直し三歩目の加速に挑むが、もうあと一回しか減速は許されないだろう

そう悟った両足は最後の跳躍を試みた

全力全開 バレーボールのスマッシュを返すようなダイブで水面を飛び出し、













「助けなさいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおごぶぼぶおぼぼぼぼぼぼ」



ドンマロは溺れていった


「・・・」

テルからはじまったこの負の連鎖はついに四連続 もはや一人ぼっちにされたバードシーにエヌピィシィPVの命運は握られている

もちろんバドシ当人もそのことはいやでも自覚せざるをえない状況ではあったが、それでもをなかなか吹っ切れない”気がかりな点”が一つだけ存在した

それは



・・・僕、かなづちなんすけど・・・





一つの液晶テレビを見つめる二つの影ある

そこに映る映像は緑が多く川が流れているのだが人間も一人立っているだが震えている

バードシーだ

「あの・・・パッ嬢、これ詰みじゃないですか?」

「そうかもしれませんわね」

そういう二人はクルタンのペンを盗み出した張本人。パックンとカラピンだ

少女らはエヌピィシィの動向を外部の監視カメラ越しにじっくりと眺めている

「そうかもってパッ嬢・・・どうするんですか、このままじゃ本題の第四試練までたどり着いてくれませんよ?」

「ぴいちゃん なにか勘違いをしてるようだから言っておくけど、どうするかはエヌピィシィが決めることよ ワタクシ達はそれを見ているだけ」

分別顔のパックンはそのまま手元のホットレモンティーを口にすする

「たしかにそうですか・・・この問題って二人以上いないと解けないというかなんというか・・・」

「だからなんですの?答えのないところから答えを探す 現実じゃそんなことばかりじゃないの」



すべてを託されたバドシはとりあえず先方が残した穴を使いトルネードを試みることにした

「・・・」

・・・ダメっすね・・・

予想以上に浅く とてもじゃないが回すことはできない

となると残されたのは水深が期待できる範囲に絞られてくる

一度は川奥までいってしまおうと足を伸ばしたがすぐに正気へと戻り静止してしまうもどかしさ

なにせ泳げないのだ

そんな体で溺れでもしたら命の保障できない

泳げる連中でさえ あの溺れ方、あの非力な犬掻きだ

それでなんとか呼吸は確保できていたようだが、区民プールで犬掻きの僕はなにで酸素を獲ればいいのだろう

エラ呼吸?

できるわけがないだろうがフフッ

フフッと軽く現実逃避したバドシはそういえば、と、ある疑問を抱いた

「なんでみんな溺れたんすか・・?」

答えは簡単だ。水深が深く水流も強い場所に飛び込んだためだ

しかしそこからさらなる違和感をバドシは得ていた


「なんで深さに気づかなかったっすか・・?」


ドンマロとヤミヒロ達はふいの出来事だったため認識できなかったととらえることもできるがテルはどうだろか
バカだから
と言ってしまえばそれまでだがそれにしたってあれほどの深さなら川の真ん中ぐらいを歩いた辺りで気づいてもいいはずだ

なのにどうして・・・

考えているだけではわからない

確かめてみる価値があるかは定かではないだが、見るだけなら、と勇気を振り絞り川の中部へと進み込む

一歩、一歩、

慎重にあえて斜めで前進む。水の抵抗を最大限弱めるためだ

そうして10分以上かけて慎重に中部まで辿りつくとさっそく検証の眼を奥へと飛ばす

すると


・・・


・・





そして


・・・!?・・・


それは閃きだった

「・・・なるほどっすね・・・水中トルネード・・・できるかもしれないっすよ・・・」

そのままの右手でカメラを構え、左手でペンを持つ




この不可解な行動はパックン一味も怪訝の顔色で監視カメラ越しに凝視していた

「パッ嬢?これまでの経緯をみるにバードシーという男、泳げないんですよね?」

「そうですわね」

「じゃあ なんであんな危険地帯でペン回し始めようとしてるんですか?救助船 手配しといたほうがいいのでは・・・」

「・・・おもしろいわね」



バドシは覚悟を決めた

チャンスは一回 失敗したらペンを追いかけるのはやめよう

そう肝に銘じたのはドンマロの教訓だ

調子にのるのもやめよう

それはリーダーの教訓だ

全裸もNGっすねえ・・・

もちろんバカの教訓だ

右手を構える拳にも落とさないようしっかり握り ペンを親指と人差し指の間に挟む

・・・いくっすよ・・!!

動画の撮影スイッチを入れ、ペンが射出された旋転

・・・!!

開始早々のそのペン回しはまさに異曲同工だった

その行動にパックン一味はとしたが、原因は二つある



『レンズの向き』

そして

『空間』



右手で構えられたレンズはペンの方を映しておらずそのカメラはまるで影でも撮るかのようにお辞儀しているのだ

二つ目の違和感は空間

これは単純に矛盾だ 水中でトルネードを取らなければいけないのに空中でペンを回している

いったいなにをしているのか

小屋の中にいる少女はそれに気づくやいなや声を高ぶらせた



・・・す、水面反射を利用しているだと・・・!?



バドシが策はまさに奇抜

なにせ”ペン本体を映す”のではなく、”ペンに映る水面の軌道を映す”というスピニングだったからだ

川の奥は今の時間帯だと丁度、太陽の光が木々に邪魔されず射し込む一番明るい場所

それゆえに反射光で川底まで視線は届かず、だから

・・・テルは落とし穴にでもかかるかのように溺れたっすね・・・!!

その仮定はすぐに”トルネードを虚像で映し出す”という閃きに起因した

無事 空中水中トルネードの撮影に成功したバドシはやや困惑な表情になりつつ

「ベストっすよね・・・」

たぶんこれは正規な解答ではないだろう

水中でトルネードを撮ったと豪語しても所詮は虚像 見せかけでしかない

だとしても泳げない自分が可能な限りの方法で生み出した答えだ

これが不正解でも悔いはない

その想いとともにエヌピィシィの最終生存者、バードシーはその”虚像の竜巻”を送信した


・・・



・・







仲間達はどうしているだろう

一試練を終えたバドシが真っ先に心配したのは仲間の安否だ

どいつもこいつもダイナミックな溺れようだったがそれが死因なら

うおおおおおお!!!
だの
ぎゃあああああ!!!
だの
助けなさいよお!!!
だの言っている暇などなく

ただ仏のように無言でそれでいて必死にもがき、溺れていくのが本当に危ない溺れ方だとカナヅチのバドシは幼少の頃から知っている

だからそれより後

どこまで流されてしまったのだろうかという不安が一番だった

オンラインカメラを見てみる

送信を終えたそのディスプレイにはまだなにも受信させてこない

・・・不正解っすかね・・・

二重の不安に掻き立てられるそのとき、一つの轟音が響いた



ゴオオオオオオオオオ!!!



すさまじい音に耳を塞いだがそれでもうるさい

・・・い、いったいなんすか・・・

重低音の響きは川の方からだと気づくと腰を落としながら下流方向に首を向ける



ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!



視線の先、ここは海か?と錯覚させる”あるもの”が猛スピードで近づいてきてる

はあ!!!???

クルーザーだ クルーザーが轟音エンジンと共にこっちにくる

慌てて非難したももの、それと同時に船は目の前で急停止を始め

理不尽な危機と共に全長30フィートの中型クルーザーは静止した


・・・交通事故にあうとこだった、ここ川なのに・・・


しかも

・・・甲板にいるあの見覚えのある四つの影・・・まさか・・・



クルーザーの先 黒い布で目隠しをされ拘束状態で直立している人間が見える

左から

テル、ヤミヒロ、クルタン、ドンマロ、

エヌピィシィメンバーだ

「なにやってるっすかあ!?」

すぐさま船に乗り込んだバドシは皆の拘束を解く

「うわっまぶしっ!・・・ってあれ?バドシじゃん久しぶり」

「感謝ですバドシ君・・・シュッシュッ」

「ふぅ・・・やっと開放されたんだぁ」

「た、助かったわよ・・・・・・」

生還を喜ぶ仲間達の安堵の笑みに彼はこう思う

・・・そうじゃねえぇだろ!?・・・

なんで拉致されてるんだこいつら?イミワカンネェ・・・

謎があまりにも連続しすぎてうまく言葉に出来ない

そうこうしていると近くから足音が聞こえてくる


タンタンタンタン


甲板の奥、丁度、船の中心部のドアが開くと綺麗な銀髪が風で靡いていた

穏やかなタレ目でエヌピィシィメンバーを一周すると右手で胸を押さえ華麗に頭を下げるやいなや 甘い香水のいい匂いとともに

「ようこそ皆さん。第四関門まで駒を進められたこと光栄に思います・・・当ゲームの主催者、パックンと申します」

「・・・」


ドンマロは最大限の警戒をしいた


・・・諸悪の根源と直接対面とはねぇ・・・

数十分前の溺れている最中

水流がある程度弱まった付近には犠牲者たちが皆、無事だった

まず泳ぎのうまいテルに助けられて、そこからどうやってバドシと合流しようかと会議していた矢先に突如
 
拉致されたのだ

・・・そんなことまでする奴だったとは・・・

これからなにをされるかわからない
 
いいようがない恐怖を怒りで塗りつぶした彼女は強く拳を握りパックンを睨みつけた

「・・・」

猜疑の視線がいききする

「・・・」

すると、すこししてから隣から声が響いた

「なあなあクルタン ひとついいか」

「なんですがテル君・・シュッシュッ」

「パックンってクルタンの弟っていってたじゃん?」

「・・・」

空気を読みなさいよ・・!!!とドンマロは苛立つ
 
~殺るか殺られるか~

そんな非常に重い空気なのだ。今は弟だの妹だのそんなことはどうでもいいだろう

なのにヤミヒロとバドシも あ!それ俺も思った!と暢気に同調しているもんだから


・・・まったく男って生き物はダメダメよねえ・・・


「シュッシュッ・・・そうですね 本当は妹でした」

「なんでそんな嘘ついたんすか?」

「シュッシュッ・・特に意味はありませんが、しいていうなら・・・」

一呼吸置き、はにかむと

「シュッシュッ・・・防衛的サプライズです」

・・・?・・・

「なるほどなぁ・・・」

・?????・

なぜ男どもは納得しているのドンマロは理解できなかった

そんなことよりも今は、


・・・そろそろ懲らしめてやろうかしら・・・

どうやらパックンはこちらが動いてくるまで行動を起こさないらしい

ならばやってやろうじゃない もはや第四関門などどうでもよくなった彼女は己の怒りとともに足元に力を入れた


・・・


・・





その瞬間





・・


・・・


・・・!?・・・

一つの音が隣から響いていた

それは、私とクルタン"意外"
ヤミヒロをはじめとするテルとバドシの共通の叫び声で






・・・






・・













「パックン萌えええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

・・・

・・



ドンマロは馬鹿三人を殴り飛ばした。


つづく、

面妖やのうて

2011-12-02 13:17:33 | 哲学/世界観
多のために少を犠牲にする

-わからない-


多を生み出すために少を燃やす


-許さない-


多を救うため少を棄てる

-しょうがない-


多を救い少も守る


-頼りない-


多の正義に少で抗う


-かなわない-



・・・・・・・・・



・・・・・・



・・・



少を自己に置き換える