霊なんていう非科学的概念を大別すれば生きながら足を浮かす「生霊」と死してなお己と価値する「死霊」である
「生霊」とは生きている人間の霊で、古くは源氏物語の時代から存在する概念
その根源をちょっとだけ紐解いてみればまあアレだ。源氏の愛人が生霊になって呪い殺す、というまだまだ青臭い中学生からしてみれば~愛は深いなんだな~程度のブラックボックスである
一方、「死霊」は想像力の範疇だ
ゾンビはどうなのかは知らないが「死」というものは率直に怖い
その怖さの原因がいかにハチャメチャでも震えた手首や動静脈の律動が第六感を覚醒させる..........かもしれない
まぁ簡素な話 当、主人公のヤミヒロはまだ『生きた人間がこの世で一番怖い』ことを知らないだけの少年(ガキ)なのである
だから生霊は文字通り生きた霊なのか、それとも生きた人間の霊で霊そのものは生死が存在しないのか、といった具合にもしも当時「i」という虚数単位を知っていたならそれで代替したに違いない
___
水中で活動する方法を大雑把に分類すればこれまた二種類
「泳ぐ」と「潜る」である
泳ぐことは好きだ
幼少時代からスイミングスクールへと通わせた親のおかげか温水プールが身近にある時代に生まれてきて良かったと都会育ちのもやしっこは思う
ゆえに「潜る」は未開拓
潜水士、ダイバー、尼さん
テレビや映画で目にすることはできても『潜り続けて楽しむ安全な人工施設』たるものが建設されない限りあと10年早いスポーツだろう
___
最後に「スピナー」
・ヨーヨープレイヤー
・変化球投手
・プロペラ部品
・ルアー
このようにスピナーを指す意味は多岐にわたる
しかしながらNPC@13物語の指す「スピナー」の意味はたった一つ
三行で例えるなら、
noteへの口付けにも似た束縛から解放され..
三点間の締め付けは五指への社交とダンスする...
時に廻り、時にぶつかり、本来の用途から離れた破局と交際を繰り返す...
____
これは「ペン回し」という曲芸に心打たれた、ペンスピナーの物語である。
●
「つッつッ・・・・!!??」
目覚るやいなや声にならない悲鳴を上げる彼を表現するならまさに壊れかけた引き戸
いやいや、現時刻が“逢う魔が時”なことを考慮すれば壊れたおもちゃのオルゴールって方が奇奇怪怪でドンピシャだ
さてさて、
不覚にも寝てしまっただらしな過ぎる当、主人公。___しかしだ。その悪事を差し引いても怒らねばならぬ事態が目の前でニヤリと笑っている
「とりあえず俺、起き上がりたいんだけど?」
「チッ、やっぱ起きちまったか、つまんねぇーの」
ひょいと、もじゃもじゃ頭を引っ込めるのはNPCメンバー“テル”
・・・解せない・・・睡眠中の俺になにをしようとした・・・
名状しがたい悪寒に震えながらもとりあえずテルの全身を閲する
「・・・」それは光の速さで見つかった
____
「おいこら」
「ンダ?」
「ンダじゃない。お前の右手に握られている”ソレ”がどういう意味か説明しろ」
「いや、フツーにいいもんなんよ」
「おいバカテル」
比喩でもなんでもない、ソレはまぎれもなく夏の風物詩【花火】である。そんなものは見ればわかる。
・ッ・ッ・ッ・
顔文字じゃない。沸点だ。
俺の強固なマントルでも抑えきれない噴出欲求は_______ガ、耐えるしかあるまい
ここはヒノキ香るは住宅街の木造建築。純然たる意味で家が燃える危機感を前にしたら最後、冷静でなきゃダメだどんなことがあっても
「でバカテル、御休み中の俺をドーン!と殺る気がだったかバカテル」
「いやいやオラはただ起こそうとしただけで・・・」
舌を軽く噛み、エクセレントな発音でテルは言う
「うーん、ドゥーン!とな」
「普通に死ねよ」
相変わらずこの男の脳内細胞はニュートリノである
しばしの静寂
すっかりふやけてしまった油じゃが芋片を口にいれ部屋を見渡すと__なんということだろうか
デスクチェアに座り優々とインターネットへ泳ぐ影がある
「バドシェ・・・・」
これはこれは、ドーンされかけた仲間に気づきもせず自分はヌクっと自家発電とみた、否、他家発電か
ならばやることは一つしかない
・・・ッ!
勢いよくテメェ(バドシ)とパソコンを繋げる快楽の黒い糸(イヤホン)を引っこ抜く
『この事件、どう見ますか?』
『ええ、当人にとってみたらお遊び半分かもしれませんが、しっかりと自分が置かれている状況を把握してほしいですね』
『状況を把握ですか』
『ええ、こういうケースの事件や事故は周囲の人間に踊らさせていることが多いんですよ。“喜ばれるから楽しい、だからなにをしてもいい”と短絡的に考えず、“今やろうとしていることが喜ばれるだけなのか、悲しむ人間はいないのか”といった具合に広い視野で物事を考えることこそが大事なことだと私は思います』
『そうですか。あ、ではそろそろお時間です。 中村教授、今日はありがとうございました』
『ええ、まあ、ごきげんよう』
「あれ聞こえがわる・・・あ、ヤミヒロさん起きたんスね!まったくダメですよリーダーがそんなことじゃ」
「あ、うん・・・・・」
・・・中村教授の言う通りだ_!!!・・・
ひどい、ひどすぎる。固定概念で決め付けたダメすぎる俺とバードシーを比べずにはいられない
彼はまだ厨房なのにちゃんと世の中のことを知ろう努力している
しかもイヤホンをつけて、周りが劣等感を感じないよう慎ましくだ
なんという模範生。コレが真の優等生ってやつじゃないのか!?
はぁ・・・本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
心の中で反芻し、やはりそれだけじゃダメだと声に出そうとした______そんな矢先だった
「聞いてんスか?リーダー?おーーーい
でもあれっスよねこのニュース マジうけるというかなんというか...
だってマンション室内で花火大会っスよ?しかもそれをネット生配信だとかで
リビングで火粉が舞い上がる映像に貼られたニューステロップ
~悪質な売名行為か~はマジシュールというかむしろ....」
秀逸だったっスよ!と嬉々として語るNPCメンバー“バードシー”
前 言 撤 回 その四文字は憤怒となって響き渡る
「現実に起き”えた”話だと身を挺して痛感した俺からいわせればな、そんなのシュールとはいわない」
「はぁ?ちょっと言ってる意味がわからない」
「わかれよ!!そして気づけよッ!!!!再放送されかけたんだよ?!テメェの後ろでよ??!!」
燃え焦げるわッ!!!!!!!とも言ってやろうとしたが、状況を変えよう
「マジポン!?スポンサーになってやんよwww」
直ちに状況を変えよう
まさにシンクロナイズスイミングのような洗練さと激しさを併せ持つハイブリットな話
そう、俺はペン回しの話をしたい
部屋にいるのはヤミヒロ、テル、バードシーの三人で最後の四人目は不在中
テルは相変わらず破天荒スキル全開だしバドシに至ってはなんだか今俺、ものっそ睨まれてる。ガン眼されてる。意味が分からない。
「シュッシュッ、皆さん 元気にやってましたか?あ、ヤミヒロ君ご起床ですか」
救世主現る。登場したのはNPCメンバー兼この部屋の主“クルタン”である
「ああ悪いな 気づいたら寝てた」
「困りますよ 寝るなら寝ると言ってもらわないと
・・・ウォーターベッドの実験したかったですねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それで、お前こそなにやってたんだ?
たしか寝る前まで一緒にペンま・・・あっ!そういやドンマロは?」
「シュッシュッ、質問責めですね そういうのも悪くない ブホッ!
ドンマロ君なら帰りましたよ もう夕暮れですので」
「そうか 俺もそろそろ帰宅するかな...」
PV事件以来なぜだかブホッ!と笑うようになったクルタン
以前には一切聞くことのできなかった、ある意味貴重な笑い声である
自然とつられて笑ったり、なんだかとても温かくて
俺達は仲間だ!と他のNPCメンバー全員が感じる言葉の響き
そういうわけでブホッブホッ言わせておけばいいのである
時刻は4の文字に重なり合う短針長針夕暮れ時
11月にしては優しい寒さ気温なのだが後20分もすれば日没
愛ペンは右腰のサイドホルダーへ、体裁だけの教科書とノートは結局なにも書かないまま鞄にしまった
「よし、忘れ物はないよな」
ファッション雑誌、ダンベル、ティーカップのコースター、毛玉取り、専門書、イヤホン、ステアーAUG
「全部俺のじゃないな ではさいな・・・・ん?」
ドアノブを握ろうとし、しかし動きを止めたヤミヒロはなにも静電気に怖気づいたわけではない
~・・・なにかがおかしい・・・~
いや、そのなにかではなくて、もっと外側のおかしさというか...
こう、忘れ物の確認とは別次元の話というか...
簡単に部屋を出られるはずのない理由があったような...
・・・
・・
・
・・・あれ花火は・・・・・・・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・・
と結論に至るより前に事件は起きた
「___ッ!!!」
この世界にとって結論とは考え方の一つにすぎない
なぜなら結論とは事象を落とし込める穴”でしかなく、誰も複数個穴”が存在しないことを証明できないからだ
悪魔の証明 人間の思考限界 宇宙の外角 極限の概念
具体例を出すとこう↓
花火は?という穴のすぐ隣には、テルもいなくね?という奈落の底があった。そういう話である
「ほほほ本気だすぞ!巣酢素スポンサーに抗議すんぞ!!!」
意味不明な突っ込みとともに阻止へ向かうヤミヒロ
~ドアがガタガタいってておかしいと思ってたんだ。 空調がきいてるにせよ音がでかすぎる~
全力疾走、目的地は5メートル先のバルコニー
まったくなにを考えてるんだ・・・!!!
部屋がダメならバルコニーで花火やればいいじゃない、とでも思ったか!?バカテルなのか!!??? ここは閑静な住宅街だぞ!ことと次第によっては
大
問
題
に
な
る
「まにあえッ・・・!!!!」
バルコニーと室内を区別する境界線上をサッと跳び越える様子は、さながら密林に浮かぶ水溜りを跳び越える一頭のエゾシカ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
迫る
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
まだ手元に
「・・・・・・・・・・・・・・」
もうそこに
「・・・・・・」
もしかしたら
「・」
届けよ!!!
「」
「くそ___ッ!!!!!!」
バカの肩に手を置き、ぜいぜいと息を整えるヤミヒロ
・・・・
言ってしまえば無理な話だった
それでも踏んづけたり唾液でアクロバティックに沈下すればと邁進したが
結果、このバカから独り立ちした宙のアレ____もう咎められないほど綺麗な光を生み出してる
「なぁなぁ~
きれいだなぁ~」
「うるせーよ・・・・ん?」
再びの違和感 それは呼吸から派生した
余裕がとれた証か、はたまた悪運の手招きか、
こんな短距離を走った程度で呼吸が乱れたのは、単に彼がナウかったというわけではない
たぶんテルの本質を直視したことによる精神的負荷が原因だろう
目に見えない攻撃は恐ろしい 心臓の鼓動がどくんどくんと騒がしい
なぜ、そんな暇がある
それがヤミヒロの違和感。言い換えれば゛なぜ花火の爆音が響いていないのか゛
音の出ない花火があることは当然知っている
だがロケット花火の容姿で穏便なやつを彼は知らない。知りたくもない。だから慌てた。
「おいバカ、いったいなに飛ばしたんだよ」
「いやフツーにいいもんなんよう?
パッケージにはお化け花火って書いてあった、そういうのフメーリョっていうんだろ!?
シンジランネッ!!!><」
「うん、とりあえずお前はウサギより耳引っ張り上げて周囲の音を聞いとけ
そして阿鼻叫喚の類が聞き取れたらその方向に走れ、迅速に」
「アベ教官???んで、走ったらどうすンダ?」
「アスファルトに額を押し付けて、顔面イチゴジャムにしながら謝り続けろ
そしたら俺の家にきてもいい
リーダーだ、包帯ぐらいは巻かせろよ」
「なるほど、優しいなヤミヒロリーダーはやさしーのな」
「・・・はぁ、なんかもうお前の理解力のなさはご愛嬌だな
それとヤミヒロとリーダーを一緒に呼ぶのはやめてくれ まるで幼女が好きな変態みたいじゃないか」
※余談すぎて申し訳ないのだが約七年後、その変態とやらに誇りさえ内包する人間に成長していることを今のロリーダーヤミヒロは夢にも思わない
益体のない会話はさておき、二人の見上げる花火は音一つ鳴らさずに上空を浮遊し続けていた
どんな仕組みなんだろう・・・純粋に見蕩れるリーダー
誰しも不思議に思うはずだ
上空のソレは、そよ風に揺られながらプカプカと緑色の発火を続けている
・完璧にインフラされた街灯光
・夕日の名残
・住宅から漏れる無数の室光
それら全てがどうしようもなく邪魔だと、たかが花火程度の光に想ってしまった少年。ああ、矛盾した話なのはわかってるさ
______________________刹那_______、
________________無音_______、
___________圧迫感_______、
ヤミヒロの世迷い言は勢いよく風に吹き飛ばされた
文字通り“風”に。住宅地特有の乱流風がこちらへと吹いてきているのだ
「窓閉めろバカ!風だ!風が吹いててこのままじゃ花火が部屋に」
入ってくるぞ!!!、すぐさま窓を閉めろと指示するリーダー
性格はマイペースだが、こと運動に至ってはかなりの俊敏さをもつテル
目にも留まらぬ素早さで窓は封鎖され花火も部屋には入ってきていない
ああ危なかったと安堵しつつ、しかし.....
まだ
終わらせてはくれなかった
「ででで、ッでたー――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
それは。
すぐ隣の部屋。
クルタンの妹(パックン)と妹の従者(カラピン)からの喚き声。
いうまでもない
おばけ花火の軌道はズレて、隣の窓へとゴールしてしまったのだ。
●
と、これが一連の事件 亡霊のダイブスピナー第一章
次のエピソードも序章っぽくになるのはおおよそ多めに見てほしい
さてさて、敵にまわしたのは誰なのか、多少の不安はあっただろうNPCメンバー達
悪い予感しかしない いつ"奴等"に果たし状を突きつけられてもおかしくない
そんな状況であるのは間違いなさそうだ
次回の見所は続々登場新キャラ祭りという感じで、どうぞよろしくお願いします。
亡霊のダイブスピナー第二章1/2 1月12日(土)公開
「生霊」とは生きている人間の霊で、古くは源氏物語の時代から存在する概念
その根源をちょっとだけ紐解いてみればまあアレだ。源氏の愛人が生霊になって呪い殺す、というまだまだ青臭い中学生からしてみれば~愛は深いなんだな~程度のブラックボックスである
一方、「死霊」は想像力の範疇だ
ゾンビはどうなのかは知らないが「死」というものは率直に怖い
その怖さの原因がいかにハチャメチャでも震えた手首や動静脈の律動が第六感を覚醒させる..........かもしれない
まぁ簡素な話 当、主人公のヤミヒロはまだ『生きた人間がこの世で一番怖い』ことを知らないだけの少年(ガキ)なのである
だから生霊は文字通り生きた霊なのか、それとも生きた人間の霊で霊そのものは生死が存在しないのか、といった具合にもしも当時「i」という虚数単位を知っていたならそれで代替したに違いない
___
水中で活動する方法を大雑把に分類すればこれまた二種類
「泳ぐ」と「潜る」である
泳ぐことは好きだ
幼少時代からスイミングスクールへと通わせた親のおかげか温水プールが身近にある時代に生まれてきて良かったと都会育ちのもやしっこは思う
ゆえに「潜る」は未開拓
潜水士、ダイバー、尼さん
テレビや映画で目にすることはできても『潜り続けて楽しむ安全な人工施設』たるものが建設されない限りあと10年早いスポーツだろう
___
最後に「スピナー」
・ヨーヨープレイヤー
・変化球投手
・プロペラ部品
・ルアー
このようにスピナーを指す意味は多岐にわたる
しかしながらNPC@13物語の指す「スピナー」の意味はたった一つ
三行で例えるなら、
noteへの口付けにも似た束縛から解放され..
三点間の締め付けは五指への社交とダンスする...
時に廻り、時にぶつかり、本来の用途から離れた破局と交際を繰り返す...
____
これは「ペン回し」という曲芸に心打たれた、ペンスピナーの物語である。
●
「つッつッ・・・・!!??」
目覚るやいなや声にならない悲鳴を上げる彼を表現するならまさに壊れかけた引き戸
いやいや、現時刻が“逢う魔が時”なことを考慮すれば壊れたおもちゃのオルゴールって方が奇奇怪怪でドンピシャだ
さてさて、
不覚にも寝てしまっただらしな過ぎる当、主人公。___しかしだ。その悪事を差し引いても怒らねばならぬ事態が目の前でニヤリと笑っている
「とりあえず俺、起き上がりたいんだけど?」
「チッ、やっぱ起きちまったか、つまんねぇーの」
ひょいと、もじゃもじゃ頭を引っ込めるのはNPCメンバー“テル”
・・・解せない・・・睡眠中の俺になにをしようとした・・・
名状しがたい悪寒に震えながらもとりあえずテルの全身を閲する
「・・・」それは光の速さで見つかった
____
「おいこら」
「ンダ?」
「ンダじゃない。お前の右手に握られている”ソレ”がどういう意味か説明しろ」
「いや、フツーにいいもんなんよ」
「おいバカテル」
比喩でもなんでもない、ソレはまぎれもなく夏の風物詩【花火】である。そんなものは見ればわかる。
・ッ・ッ・ッ・
顔文字じゃない。沸点だ。
俺の強固なマントルでも抑えきれない噴出欲求は_______ガ、耐えるしかあるまい
ここはヒノキ香るは住宅街の木造建築。純然たる意味で家が燃える危機感を前にしたら最後、冷静でなきゃダメだどんなことがあっても
「でバカテル、御休み中の俺をドーン!と殺る気がだったかバカテル」
「いやいやオラはただ起こそうとしただけで・・・」
舌を軽く噛み、エクセレントな発音でテルは言う
「うーん、ドゥーン!とな」
「普通に死ねよ」
相変わらずこの男の脳内細胞はニュートリノである
しばしの静寂
すっかりふやけてしまった油じゃが芋片を口にいれ部屋を見渡すと__なんということだろうか
デスクチェアに座り優々とインターネットへ泳ぐ影がある
「バドシェ・・・・」
これはこれは、ドーンされかけた仲間に気づきもせず自分はヌクっと自家発電とみた、否、他家発電か
ならばやることは一つしかない
・・・ッ!
勢いよくテメェ(バドシ)とパソコンを繋げる快楽の黒い糸(イヤホン)を引っこ抜く
『この事件、どう見ますか?』
『ええ、当人にとってみたらお遊び半分かもしれませんが、しっかりと自分が置かれている状況を把握してほしいですね』
『状況を把握ですか』
『ええ、こういうケースの事件や事故は周囲の人間に踊らさせていることが多いんですよ。“喜ばれるから楽しい、だからなにをしてもいい”と短絡的に考えず、“今やろうとしていることが喜ばれるだけなのか、悲しむ人間はいないのか”といった具合に広い視野で物事を考えることこそが大事なことだと私は思います』
『そうですか。あ、ではそろそろお時間です。 中村教授、今日はありがとうございました』
『ええ、まあ、ごきげんよう』
「あれ聞こえがわる・・・あ、ヤミヒロさん起きたんスね!まったくダメですよリーダーがそんなことじゃ」
「あ、うん・・・・・」
・・・中村教授の言う通りだ_!!!・・・
ひどい、ひどすぎる。固定概念で決め付けたダメすぎる俺とバードシーを比べずにはいられない
彼はまだ厨房なのにちゃんと世の中のことを知ろう努力している
しかもイヤホンをつけて、周りが劣等感を感じないよう慎ましくだ
なんという模範生。コレが真の優等生ってやつじゃないのか!?
はぁ・・・本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
心の中で反芻し、やはりそれだけじゃダメだと声に出そうとした______そんな矢先だった
「聞いてんスか?リーダー?おーーーい
でもあれっスよねこのニュース マジうけるというかなんというか...
だってマンション室内で花火大会っスよ?しかもそれをネット生配信だとかで
リビングで火粉が舞い上がる映像に貼られたニューステロップ
~悪質な売名行為か~はマジシュールというかむしろ....」
秀逸だったっスよ!と嬉々として語るNPCメンバー“バードシー”
前 言 撤 回 その四文字は憤怒となって響き渡る
「現実に起き”えた”話だと身を挺して痛感した俺からいわせればな、そんなのシュールとはいわない」
「はぁ?ちょっと言ってる意味がわからない」
「わかれよ!!そして気づけよッ!!!!再放送されかけたんだよ?!テメェの後ろでよ??!!」
燃え焦げるわッ!!!!!!!とも言ってやろうとしたが、状況を変えよう
「マジポン!?スポンサーになってやんよwww」
直ちに状況を変えよう
まさにシンクロナイズスイミングのような洗練さと激しさを併せ持つハイブリットな話
そう、俺はペン回しの話をしたい
部屋にいるのはヤミヒロ、テル、バードシーの三人で最後の四人目は不在中
テルは相変わらず破天荒スキル全開だしバドシに至ってはなんだか今俺、ものっそ睨まれてる。ガン眼されてる。意味が分からない。
「シュッシュッ、皆さん 元気にやってましたか?あ、ヤミヒロ君ご起床ですか」
救世主現る。登場したのはNPCメンバー兼この部屋の主“クルタン”である
「ああ悪いな 気づいたら寝てた」
「困りますよ 寝るなら寝ると言ってもらわないと
・・・ウォーターベッドの実験したかったですねぇ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それで、お前こそなにやってたんだ?
たしか寝る前まで一緒にペンま・・・あっ!そういやドンマロは?」
「シュッシュッ、質問責めですね そういうのも悪くない ブホッ!
ドンマロ君なら帰りましたよ もう夕暮れですので」
「そうか 俺もそろそろ帰宅するかな...」
PV事件以来なぜだかブホッ!と笑うようになったクルタン
以前には一切聞くことのできなかった、ある意味貴重な笑い声である
自然とつられて笑ったり、なんだかとても温かくて
俺達は仲間だ!と他のNPCメンバー全員が感じる言葉の響き
そういうわけでブホッブホッ言わせておけばいいのである
時刻は4の文字に重なり合う短針長針夕暮れ時
11月にしては優しい寒さ気温なのだが後20分もすれば日没
愛ペンは右腰のサイドホルダーへ、体裁だけの教科書とノートは結局なにも書かないまま鞄にしまった
「よし、忘れ物はないよな」
ファッション雑誌、ダンベル、ティーカップのコースター、毛玉取り、専門書、イヤホン、ステアーAUG
「全部俺のじゃないな ではさいな・・・・ん?」
ドアノブを握ろうとし、しかし動きを止めたヤミヒロはなにも静電気に怖気づいたわけではない
~・・・なにかがおかしい・・・~
いや、そのなにかではなくて、もっと外側のおかしさというか...
こう、忘れ物の確認とは別次元の話というか...
簡単に部屋を出られるはずのない理由があったような...
・・・
・・
・
・・・あれ花火は・・・・・・・・・・・・・・・!?・・・・・・・・・・・・・
と結論に至るより前に事件は起きた
「___ッ!!!」
この世界にとって結論とは考え方の一つにすぎない
なぜなら結論とは事象を落とし込める穴”でしかなく、誰も複数個穴”が存在しないことを証明できないからだ
悪魔の証明 人間の思考限界 宇宙の外角 極限の概念
具体例を出すとこう↓
花火は?という穴のすぐ隣には、テルもいなくね?という奈落の底があった。そういう話である
「ほほほ本気だすぞ!巣酢素スポンサーに抗議すんぞ!!!」
意味不明な突っ込みとともに阻止へ向かうヤミヒロ
~ドアがガタガタいってておかしいと思ってたんだ。 空調がきいてるにせよ音がでかすぎる~
全力疾走、目的地は5メートル先のバルコニー
まったくなにを考えてるんだ・・・!!!
部屋がダメならバルコニーで花火やればいいじゃない、とでも思ったか!?バカテルなのか!!??? ここは閑静な住宅街だぞ!ことと次第によっては
大
問
題
に
な
る
「まにあえッ・・・!!!!」
バルコニーと室内を区別する境界線上をサッと跳び越える様子は、さながら密林に浮かぶ水溜りを跳び越える一頭のエゾシカ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
迫る
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
まだ手元に
「・・・・・・・・・・・・・・」
もうそこに
「・・・・・・」
もしかしたら
「・」
届けよ!!!
「」
「くそ___ッ!!!!!!」
バカの肩に手を置き、ぜいぜいと息を整えるヤミヒロ
・・・・
言ってしまえば無理な話だった
それでも踏んづけたり唾液でアクロバティックに沈下すればと邁進したが
結果、このバカから独り立ちした宙のアレ____もう咎められないほど綺麗な光を生み出してる
「なぁなぁ~
きれいだなぁ~」
「うるせーよ・・・・ん?」
再びの違和感 それは呼吸から派生した
余裕がとれた証か、はたまた悪運の手招きか、
こんな短距離を走った程度で呼吸が乱れたのは、単に彼がナウかったというわけではない
たぶんテルの本質を直視したことによる精神的負荷が原因だろう
目に見えない攻撃は恐ろしい 心臓の鼓動がどくんどくんと騒がしい
なぜ、そんな暇がある
それがヤミヒロの違和感。言い換えれば゛なぜ花火の爆音が響いていないのか゛
音の出ない花火があることは当然知っている
だがロケット花火の容姿で穏便なやつを彼は知らない。知りたくもない。だから慌てた。
「おいバカ、いったいなに飛ばしたんだよ」
「いやフツーにいいもんなんよう?
パッケージにはお化け花火って書いてあった、そういうのフメーリョっていうんだろ!?
シンジランネッ!!!><」
「うん、とりあえずお前はウサギより耳引っ張り上げて周囲の音を聞いとけ
そして阿鼻叫喚の類が聞き取れたらその方向に走れ、迅速に」
「アベ教官???んで、走ったらどうすンダ?」
「アスファルトに額を押し付けて、顔面イチゴジャムにしながら謝り続けろ
そしたら俺の家にきてもいい
リーダーだ、包帯ぐらいは巻かせろよ」
「なるほど、優しいなヤミヒロリーダーはやさしーのな」
「・・・はぁ、なんかもうお前の理解力のなさはご愛嬌だな
それとヤミヒロとリーダーを一緒に呼ぶのはやめてくれ まるで幼女が好きな変態みたいじゃないか」
※余談すぎて申し訳ないのだが約七年後、その変態とやらに誇りさえ内包する人間に成長していることを今のロリーダーヤミヒロは夢にも思わない
益体のない会話はさておき、二人の見上げる花火は音一つ鳴らさずに上空を浮遊し続けていた
どんな仕組みなんだろう・・・純粋に見蕩れるリーダー
誰しも不思議に思うはずだ
上空のソレは、そよ風に揺られながらプカプカと緑色の発火を続けている
・完璧にインフラされた街灯光
・夕日の名残
・住宅から漏れる無数の室光
それら全てがどうしようもなく邪魔だと、たかが花火程度の光に想ってしまった少年。ああ、矛盾した話なのはわかってるさ
______________________刹那_______、
________________無音_______、
___________圧迫感_______、
ヤミヒロの世迷い言は勢いよく風に吹き飛ばされた
文字通り“風”に。住宅地特有の乱流風がこちらへと吹いてきているのだ
「窓閉めろバカ!風だ!風が吹いててこのままじゃ花火が部屋に」
入ってくるぞ!!!、すぐさま窓を閉めろと指示するリーダー
性格はマイペースだが、こと運動に至ってはかなりの俊敏さをもつテル
目にも留まらぬ素早さで窓は封鎖され花火も部屋には入ってきていない
ああ危なかったと安堵しつつ、しかし.....
まだ
終わらせてはくれなかった
「ででで、ッでたー――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
それは。
すぐ隣の部屋。
クルタンの妹(パックン)と妹の従者(カラピン)からの喚き声。
いうまでもない
おばけ花火の軌道はズレて、隣の窓へとゴールしてしまったのだ。
●
と、これが一連の事件 亡霊のダイブスピナー第一章
次のエピソードも序章っぽくになるのはおおよそ多めに見てほしい
さてさて、敵にまわしたのは誰なのか、多少の不安はあっただろうNPCメンバー達
悪い予感しかしない いつ"奴等"に果たし状を突きつけられてもおかしくない
そんな状況であるのは間違いなさそうだ
次回の見所は続々登場新キャラ祭りという感じで、どうぞよろしくお願いします。
亡霊のダイブスピナー第二章1/2 1月12日(土)公開