「おまえが来い!今すぐ来い!3秒で来い!」
「‥大変申し訳ございませんが45分ほどお時間頂きます。」
電話を切った私は、いつもの様に駅への道を急ぐ。
私があるメーカーのお客様相談室マネージャーを務めていた
時の日常の電話でのやり取りのワンシーンだ。
普段は仕事のできるコールクルーが踏ん張ってくれるのだが、
話がこじれ「責任者出せ!」となることもしばしば。
お客は沸騰したヤカンの様にモノスゴイ勢いで怒っている。
しばらくは何に怒っているのかさえわからない状況だ。
ハンドルを握ると性格が豹変する人がいるが、見ず知らずの
相手それも金を払って使ってやっている商品の、メーカー窓口
に対するユーザーの圧力には、凄いものがある。
ある意味真面目すぎる担当者は、この言葉の直接的な圧力そ
のものに立ち直れないほど深く傷つけられてしまうこともある。
うまく乗り切れればいいが、声の響きに不誠実さが微塵でもあ
れば、怒れる相手はそれを決して聞き逃してはくれない。
故に初動のやり取りでかけ違うこと程不幸なことはないのだ。
一息深呼吸して呼び鈴を押す。反応があるまでの数秒間が
異様に長く感じる。そして、「ガチャリ‥」
「あっどうも‥」面と向かい合った時の会話は、ほんの45分前
のあの脅迫じみたやり取りとは打って変わって大体はバツが
悪そうにモソモソと始まる。
━ 「ご迷惑をおかけいたしました!」 ━
その瞬間のこちらの第一声がほぼ勝負を決する。理屈はとも
あれ、責任あるメーカーとしてあなたに不愉快な思いをさせた
という事実に対する心からのお詫びである。
誤解されやすいのだが、テクニックとしてとりあえず上手に謝る
と言うのとはまるで異質な人質をとった犯人と折衝するネゴシ
エイターに近い感性だ。信頼関係を作れなければ命はない。
一日100件、年間で数万件に及ぶクレーム対応は神経を
すり減らす過酷な業務でもあるが、人と人とが接触する現場
全てに共通して応用できるヒントがあると密かに私は思う。
「社長を出せ!」この恐るべきキーワードの先には結構いい人
が待っていたりする。数十万件に及ぶ私の経験の中でも直接
お会いし、胸ぐらをつかまれるに至ったのは、ほんの2件だ。
公務員はそういう意味では身分が保障されている。民間の理
不尽さに比較すれば悩みどころは全然違うのであろう。それな
らば、地方公務員はやはり、雇い主である市民に尽くし切って
見せるという意地を是が非でも発揮するべきだ。
あぶかわひろしは今日も行く
あぶかわ浩(虻川浩)小平市議会議員のホームページ
ワカモノのミカタ
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