昨年2011年はダイヤ改正はなし。その前の2010年も微調整のみと、ここ数年安定してた小田急線のダイヤが久々に大きく変る予感です。
現在の小田急のダイヤは2004年12月の快速急行登場時の白紙改正のものを基本としています。
その後の2008年3月のダイヤ改正では、新松田分割・連結列車の大幅縮小という変化がありましたが、新松田以東のダイヤに関しては概ね従前のものを踏破したという印象が強いです。
今度の2012年3月改正は土休日ダイヤは2004年12月改正以来、7年3ヶ月ぶりの白紙改正。
平日に関してはどの程度変るのか?詳細が発表されるまで今だ未知数な部分が大きいですが、
特急ロマンスカーに関しては、あさぎり号のダイヤや形態が変るなど変化が予想されます。
今回はだいぶ出遅れた感もありますが、現時点で発表されている内容を元に2012年3月改正発表の感想を書きたいと思います。
特急あさぎり号
今回のダイヤ改正で目玉なのがあさぎり号関連。
平成3年の特急化以来、ダイヤ・運行形態共に大きな変化がなかったあさぎり号でしたが、ここに来て大きく変化する事になりました。
私としては、便利だった(ある意味特急誘導ダイヤな)現2号と現7号が消滅してムカッというのは置いておいて、まずは「あさぎり号」に関して見ていきます。
従前、鉄道趣味関連の掲示板・サイト等では「御殿場線内のあさぎりは空気輸送」「JR東海は廃止したがっている」
という否定的な声が主流派を占めていたように感じます。
特にここ3~4年は改正前の時期になれば「次回こそは廃止になる」のような声が出て「無くなる詐欺」のような状態である一方、MSEが御殿場線対応でデビュー。という噂も聞こえてきました。
今回の改正ダイヤではそのような議論系鉄道趣味界の主流派の予想を裏切り、区間短縮で御殿場~沼津間こそ廃止になったものの、車両を替えて存続する形となりました。
あさぎり号は新ダイヤではMSE6両で
新宿発で6時45分・10時50分・12時50分(土休日のみ)・14時50分
御殿場発で9時00分・13時00分・16時00分(土休日のみ)・17時55分発
の平日3往復・土休日4往復に。
一口で言えば、新宿方から御殿場方面への行楽需要に的を絞り、御殿場線沿線からの上京需要は諦めた。という設定になり見方によっては、SSE車の連絡急行時代に戻ったともいえます。
新宿~松田間の停車駅は従来の「町田・本厚木」が、「新百合ヶ丘・相模大野・本厚木・秦野」と2駅増
ここまで増やすなら駿河小山を全列車停車にすればいいのに。と思うぐらいの状況。
さがみ号のスジに乗せる為。という大義名分でしょうが、高速バス等が使いづらい新宿以外の小田急線内から対御殿場への集客を図る。という見方も出来そうです。
「御殿場線内は空気輸送」だとか言われていたあさぎり号ですが、
一方で実際を見れば、特に週末の6・8号などは松田到着時点で7~8割以上乗車と盛況だったのも事実。
ここで御殿場線内の特急料金について確認しておくと
松田~御殿場間(25.3キロ)800円・通常期。
似たような距離の本厚木~松田(26.4キロ)は300円・新宿~町田(30.8キロ)は400円
この松田~御殿場(駿河小山)で800円を端的にあさぎり号の御殿場線内は特急料金は小田急線内に較べてとにかく高い。
乗っていないように見える時でも、松田~御殿場線時点で乗っている人は通常期で最低800円の特急料金を払っているわけで、御殿場線内は採算ラインはかなり低かったと推測されます。
これが7~8割以上乗車となればもはや濡れ手に粟のように儲かる列車だったのではないでしょうか?
この特急料金の高さが特に平日の乗車率の低さに繋がっているのは誰が見ても明らかだったのにも関わらず、特急料金値下げや企画券発売のようなテコ入れ策は殆ど行われていません。
これは無為無策だったからというよりも、下手に値下げしたら稼ぎ時の週末に減収になるので割に合わない。
ただ、御殿場~沼津間に関しては如何ともしがたいので、特急化してから間もない頃に自由席を設定して増収を図る。
といった内実だったのではないかと推測します。
とはいえ、それでも平日限定割引のようなものを導入しても良かったんじゃないか?と思いますが、
良し悪しは別にして言えば、JR東海からすれば
「そこまでして見かけ上の乗車率を上げなければならないほど切迫はしていない」
ということだったのかもしれません。
これらの点を踏まえれば、議論系趣味界等で叫ばれていたEXEやMSEを秦野等で分割して4両。
ではなく、MSE6両になったのも、休日に漏れなく稼ぐ為には必然だったと言えそうです。
あさぎり号のライバルであり衰退の原因ともされた、高速バス(小田急箱根高速バス)の台頭。
小田急箱根高速バスは名前の通り、箱根登山鉄道と同じ小田急箱根HDの完全子会社。
ライバルである高速バスが同じ小田急系であることも、あさぎり廃止論を補強していたように感じます。
しかしながら、特に2003年代以降の箱根高速バスのダイヤの変遷を見ても、増強されたのは朝の上りと夜の下りが中心。
台頭したのは都心方面からの観光客ではなく、御殿場など沿線住民の上京需要であったのではないか。という点。
また東名高速は上り週末夕方の綾瀬・大和近辺での渋滞が慢性化し、行楽シーズンは午前の下りの渋滞、御殿場の出口渋滞など「都心からの観光利用」で考えると、やはり不安な面が多々あるのも事実。
特に近年になって美術館などが増えて観光エリアとしての注目が高まった箱根西側へのアクセスや、御殿場が世界的観光地となっている富士山の東側の玄関口でもあるということを考えれば、
小田急としては、御殿場へのアクセスを小田急箱根高速バスだけで充分だとは考えていない。
といったところではないでしょうか?
ついでに高速バスと絡めて語れば、「沿線からの上京需要は諦めた」としつつも、消滅したのは下り新宿発夕方の現7号のみ。
上りに関しては、現2号よりも30分ほど繰り下がったものの、新2号として御殿場9時発が設定され、上京需要にも答えています。
そもそも、高速バスが強いのは往路よりも復路。
朝の上りで渋滞するのは東名区間よりも、多摩川から先の首都高区間と池尻大橋から先の一般道区間が主。
これらは、用賀PAや池尻大橋下車である程度の回避は可能ですが、
「やっぱり往路は時間が正確な手段を使いたい」というニーズにも新2号はマッチしています。
もっとも、何かあればすぐに運休してサボる御殿場線と、これまた何かあればすぐに運休する小田急ロマンスカー。あまり当てにならないものが2乗しているあさぎりがどこまで正確と言えるのか?
ということを考え出すとキリがないのですが・・・
行楽需要として言えば、週末など夜上りの御殿場線は御殿場~松田間で結構な混雑になるので、
アウトレットのバーゲン時期や夏の富士登山シーズン、大規模イベント実施時などは、
現7号辺りのスジで下って、御殿場20時頃発になるような新8号があっても利用されそうな気もしますが・・・
「メトロおさんぽ号」のように臨時列車で運転するのも一案だと思いますが、この辺りはJR東海のやる気。
という大きな壁も障害になりそうです。
また、昨年3月にあさぎり号の車内販売は廃止になりましたが、新あさぎり号では復活するのかも気になるところ。
車内販売がないようでは、折角のロマンスカーの旅の楽しみも大幅減で利用意欲を削ぐので、是非復活して欲しいものです。
3形式(RSE・HiSE・5000形)引退と特急車両事情
次はロマンスカーの車両面を見て行きたいと思います。
371系の小田急線からの引退は先に報道発表されていましたが、それを追う形で通勤車の5000形・ロマンスカーのRSE20000形・Hiseの10000形の3形式引退も報じられました。
小田急としては3形式が同時引退。ということで、あさぎり号と並び今回改正の目玉のもう一つとも言えるインパクトです。
私としては余命いくばくも無い状態だった5000形が3月までは安泰ということが分かってむしろホッとしたところですが、それは置いておいて・・・やはり注目したいのは特急車・ロマンスカーの車両事情。
その後の発表も合わせて、「371系1編成・RSE2編成・Hise・LSE各1編成」で合計5編成が一挙に引退する旨が判明したものの、逆に新たに増備された分はMSEが6両・4両各1本と編成数で言えば、4編成減の大幅な減量体勢になります。
新ダイヤでは休日の「さがみ」系統(旧サポート号)の枠の毎時2本(新宿発で毎時20・50分・新宿着09・39分)を整理して、毎時1本体制に。
現ダイヤでも必ず毎時2本設定されているわけではなく、歯抜けになっている時間帯も多いので、本数的にはさほど変らないとはいえ、日中の「えのしま号」は相模大野分割が基本になる(と読み取れる)など、両数面では減量化を感じます。
「さがみ」系統は「はこね」系統に較べ空き気味であったとはいえ、繁忙期など「はこね」系統を補完していた稼ぎ頭を減量したのは意外なところ。
「えのしま号」の相模大野分割も相まって、車両不足で運用を節約したかったのでは?と感じます。
また、VSEの平日6往復化(従来は平日5往復)や夜のホームウェイ号の区間短縮はこの辺りの苦しい台所事情が見え隠れしていそうです。
ここまでの特急車両減となった状況を見るに、
2005年にデビューした新時代の正統派ロマンスカーであるVSEが2編成止まりで増備の声が聞こえない。
小田急内部でLSE・HiSE・RSEの後継となるロマンスカーを車両面でどうするか決められないでいる。
といった小田急社内の特急車両政策の混乱を感じます。
一説にはMSEをベースにした展望型ロマンスカー計画があるような噂も聞きますが、小田急ロマンスカーの顔である展望車がVSE・LSE各2本の4本だけ。というのは淋しい状態です。
千代田線直通にあさぎり号、VSEの代走と広く活躍するMSEも、観光という面では今ひとつインパクトがありません。
案外に私が2008年11月に提唱した「一部特別車案」のようなものも検討課題にあがっているのカナ?
以前に小田急関係者の方に伺った時は「(下北沢近辺の)複々線が完成して蓋を開けてみないと、大きくは変えられない」という至極当然な返答ではありましたが・・・。
上で紹介した過去記事でも触れたように江の島線に関しては2004年12月改正の快速急行の設定で、対都心利用は便利になった反面、「追加料金を払ってでも快適に座って行きたい」という需要には答えられていなかったのが実情です。
一方で江の島線のライバルである東海道線・湘南新宿ラインはほぼ全列車にグリーン車を連結しています。
新ダイヤでの休日のえのしま号増強は、江の島線の特別車需要の喚起や、どの程度まで利用されるのか見極めをしたい。という面があるのかなと感じます。
一方で平日日中に関しては手をつけなかったのは、江の島線の特別車需要は諦めているのかどうなのか?気になるところでもあります。
といったところで、今回はこの辺りで・・・。
これ以外にも土休日の小田原快速急行の件や通勤車の分割・連結廃止の件など、書きたいこともありますが、ここまででかなりの分量になってしまったので、また次回としたいと思います。
あさぎり号に関しては「後出し感たっぷり」な内容になってしまいましたが、やはり思っていることは面倒がらずにさっさと書かないとダメですね。
2012/2/8 0:13(JST)
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